3.6 実践に関する客観的指標
本節では、2年間に渡って行われてきた100校プロジェクトの実践に関する
客観的データを取り上げ、100校プロジェクトが果たした役割と意義をその特
徴から分析・検討したい。まず全体的傾向を紹介することから始めたい。
衆知の通り対象校は、Aグループ(回線速度は64kbpsの環境を提供)約
38校、Bグループ(回線速度は3.4kHzの環境を提供)約73校である。
実践に際して、CEC側の共同利用企画と学校側の自主企画に大別される。
3.6.1 ネットワーク利用実態の全体的傾向
CECによって、1996年7月に実施された「インターネット活用の実態調
査」の結果から、その特徴を拾っていくことにする。対象は100校プロジェク
トの参加校108校と3センターである。
[企画について]
企画内容、対象教科等は次のようなものに整理できる。
(1)企画の内容
a.情報交換/情報発信/情報収集 | 106校
|
b.共同学習(研究/調査) | 70校
|
c.ネットワーク・コンファレンス(意見交換) | 50校
|
d.その他 | 29校
|
(インターネット研修会・公開授業、テレビ会議、視覚障害者のネットワーク利
用、インターネットを利用したゲーム大会、共同制作、遠隔授業、ネットワーク
・コンテスト、地域との交流学習、CATVの利用実験等)
(2)企画の別
自主企画 | 276件
|
共同利用企画参加 | 141件(複数参加あり)
|
国外との交流校 | 55校
|
- 交流先:
- アメリカ、カナダ、韓国、中国、台湾、シンガポール、マレーシア、
香港、インドネシア、ネパール、ドイツ、イギリス、イタリア、フランス、
アイスランド、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、
ロシア、エストニア、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、
ミクロネシア等
(3)教科・領域(企画の数:417件)
CECでのアンケート結果では教科・領域にまたがる利用、すなわち合科的、
総合科的に扱われるケースが多いが、利用される主な教科として次の教科・領域
に整理できる。
国語(10)、理科(科学等を含む)(34)、社会(地理・歴史を含む)(40)、算
数・数学(4)、英語(36)、技術・家庭(22)、情報関連(23)、部活動(正規のク
ラブを含む)(18)、その他(230):その他には学級活動、課題研究、専門的教
科等が含まれる。
[ホームページ公開校]
ほとんどの学校がホームページを開いている。具体的な数は、111校(内、
英語版も公開中は63校:平成9年2月現在)であった。また、ホームページ数
は、頁数6912頁であった。さらに動画と音声(あるいはどちらか)を組み込
んでいる学校数は18校であった。
[クライアントについて]
クライアント・サイトとしての参加校および校種は以下の通りである。
高等学校 | 50校 | (中・高等学校を含む)
|
中学校 | 30校 | (小・中学校を含む)
|
小学校 | 18校 | |
その他 | 13校 | (特殊教育諸学校、センター等を含む)
|
(1)クライアント設置台数
51台以上: | 13校
| (中学校:1校、中・高等学校:2校、高等学校:10校)
|
41台以上: | 13校
| (小学校:1校、中学校:2校、中・高等学校:2校、高等学校:8校)
|
31台以上: | 4校
| (小学校:2校、中学校:1校、中・高等学校:1校)
|
21台以上: | 10校
| (小学校:3校、中学校:3校、中・高等学校:1校、高等学校:3校)
|
11台以上: | 9校
| (小学校:2校、中学校:2校、中・高等学校:1校、高等学校:4校)
|
10台以下: | 52校
| (小学校:6校、小・中学校:1校、中学校:20校、中・高等学校:3校、
高等学校:12校、特殊教育諸学校:10校)
|
未回答 : | 10校
| (小学校:4校、高等学校:3校、特殊教育書学校:3校)
|
(2)設置場所(総クライアント台数:2314台)
端末の設置場所は以下の通りである。
コンピュータ室(1486)、職員室(165)、教室(89)、視聴覚室(67)、進路相談室
(55)、図書室(29)、事務室(20)、廊下(11)、保健室(9)、放送室(5)、その他
(378)(その他は教科準備室、理科室等である)
[校内管理]
校内管理に関する状況は以下の通りである。
(1)管理者の設置
管理者は学内の人材が仕事の傍ら担当がほとんどである(86校)。管理担当
の人材がいるのは5校である。
(2)管理に要している平均時間
5時間以上10時間未満/週: | 19校
|
11時間以上20時間未満/週: | 23校
|
21時間以上/週 : | 21校
|
(3)教育利用の校内組織
自主組織あるいは正式な組織がある学校数は88校。
(4)児童・生徒へのメールアドレスの数
児童・生徒用メールアドレスを設定していない学校数は28校、
20以上のメールアドレスを設定している学校数は62校。
児童・生徒用メールアドレスの総数は約15,000アドレス。
[事務局の支援の重要度]
CEC事務局に対する運用支援の要求内容は以下の順で多かった。
a.ネットワ−クの運営
|
b.技術相談窓口
|
c.共同利用企画の支援
|
d.活用研究会等の研究会活動
|
e.成果報告会
|
その他の意見として、NOC等との調整、メーリング・リストの運営、活動内
容の広報等が挙げられた。
[技術相談窓口で支援の重要度]
技術相談の内容は以下の順で要求が多かった。
a.ネットワーク運用/監視に関する支援
|
b.ネットワーク接続に関する支援
|
c.ソフトウエア導入に関する支援
|
d.ホームページ作成に関する支援
|
e.最新ソフトウエア情報
|
f.最新ハードウエア情報
|
その他の要求意見として、教育利用に関わる支援、学校の実状にあわせた支援、
校内LAN構築支援、技術研修、巡回相談・現地指導等、技術支援地域ボラン
ティアの組織化、教育利用データベース等の整理・提供が挙げられた。
以上の内容を鑑みると、ネットワーク管理・運営スタッフの重要性が強く指摘
できよう。
3.6.2 平成7年度における実践の特徴
[使用環境]
インターネットに接続されているマシンの数は、1〜百数十台と学校間格差が
大きい。プロジェクト開始当初は、サーバ1台、クライアント1台という学校も
あり、設備の拡充が強く望まれた。コンピュータは、端末室、職員室、図書館等
に設置される例が多い。コンピュータ利用に関して、生徒/児童の要請により徐
々に開放時間を延長していった学校もみられる。コンピュータの操作の様子や
Web の検索結果を外部のモニターを通して、より多くの生徒/児童にインター
ネットを目にする機会を多く設けるなど、まだまだ一般的ではなかったインター
ネットへの興味を起こさせ、関心を引くような工夫が見られる。
生徒一人一人にアカウントを持たせる学校は少ない。また、授業以外でのイン
ターネットの利用に関して制約を設けている学校が多い。多人数のアカウント管
理を行なうだけのマシン環境が整っていないこと、生徒/児童によるネットワー
クの利活用の方法を模索している段階であること等がその理由である。その中
で、共同学習を行なう際にグループに1つのアカウントを持たせ、共同管理さ
せている例がみられる。
クラス単位での国際交流はこの形態をとることが多い。限られた環境を有効に
活用した例といえよう。小中学校では、インターネットの利活用に関して、キー
パーソン的な生徒/児童を育成するために正課のクラブを発足させた例がみられ
る。クラブでは全校での活動に先駆けて、実験的に様々な活動が行なわれ、一斉
授業でのインターネットの活用の可能性が検討された。
電子メールによる情報の交換は、日常的な活動になりつつある。従来から、パ
ソコン通信等を利用したメールのやりとりは行なわれていた(NHK主催の
NIFTY-Serve上 の teens-Net 等)。インターネットの導入により、メールが
交換される範囲が広がり、より多くの学校と交流できる環境が整うこととなっ
た。小中学校において、国内で交わされるメールは、気候や地域の異なる学校
との交流授業の材料として利用されることが多い。国際交流の一環として電子
メールをやりとりする場合、日英/英日の翻訳作業は教師が行なうこととなる。
この作業は教師の負担となり、結果として全体の3割程度のメールを処理でき
たにとどまったといった報告もある。高等学校では、生徒の自主的な活動とし
て、生徒会メーリングリストが発足し、学校行事に関する意見交換が行なわれ
た。国際メールは、メールの書き方の学習や異文化理解等に役立った。
ほとんどの対象校で学校を紹介するホームページが作成された。生徒/児童個
人のホームページの作成は、小中学校ではクラブ活動の授業の一環として、高等
学校では選択授業での一活動として行なわれた。プライバシー問題から、作成し
たホームページの公開を控えている学校もある。
[方法・内容]
(1)活動の方法・内容
ここでは、自主的に実施された企画内容についての概要を述べる。対象校が自
主的に実施した企画を、情報のやりとりの形態に応じて分類した。
- a.情報発信(学校紹介/授業での学習成果の公開/活動の成果報告/地
域情報の紹介)
- 具体例:
- 詩の広場、短歌と俳句、自己紹介ホームページ、コンピュータグラフィッ
ク作品、青い目のお人形プロジェクト、葛尾村時間旅行、エイズ教育、
日本の紹介、ネチケット情報、「制服」−「タバコ」−「ピアス」問
題に関する意見発表、「The Nine Planets」日本語版プロジェクト、
「FAQガイド&ネチケット」日本語版プロジェクト、みなとみらい21に
ついて、千葉県の情報、宮城の伝統工芸品、岡山の博物館・美術館等
- b.情報収集(ネットワークを利用したアンケート調査)
- 具体例:
- 「信長、秀吉、家康」、「北海道と沖縄」
- c.情報/意見交換
- 具体例:
- 昼休みの出来事、生徒会メーリングリスト
- d.共同観察/交流学習
- 具体例:
- 気候や地域の異なる学校間での交流授業、全国発芽マップ、木材の平
衡含水率の調査
- e.学校外機関との連携
- 具体例:
- 土星の輪の観測会、インターネットを使用した共同翻訳プロジェクト
- f.国際交流
- 具体例:
- 姉妹都市の小学校や姉妹校との国際交流(従来の交流の拡張)、
ネットワーク上でのイベント参加が契機となった国際交流、留学生が
対象校のホームページをアクセスしたことが契機となった国際交流
(2) インターネットの利用形態
上述の企画および日常的な利用や授業での活用例を、インターネット利用形態
という視点から整理する。
- a.情報発信
- 学校に関する情報の発信、授業成果の公開、文化祭の実況中継、PTAの新
聞発行、独自の課題テーマに関する研究成果報告、地域情報の発信、CATV
との連携(天体観測データを天文台からCU-SeeMe経由でCATVに流す)、市
民講座開設
- b.情報検索
- 疑似体験(東京モータショー、江ノ島水族館、ルーブル美術館、オルセー
美術館、メトロポリタン美術館、スミソニアン博物館)、事前学習(修学
旅行、社会見学:韓国、明治村)、マスコミのホームページの利用(即時
性のある正確な情報源)、学術論文の検索(物理)、栄養診断Webの活用
(家庭科)、教材となるリソースの検索、進路指導への活用(進学/就職
希望先の情報収集、面接試験対策としての話題収集)
- c.情報交換
- アンケート調査(「信長、秀吉、家康」、「北海道と沖縄」)、交流授業
(CU-SeeMe利用、TV会議システム)、共同授業(CU-SeeMe利用、TV会議シ
ステム、メール、ホームページ)、挑戦状のページ(数学の問題を記述、
だれでも参加できる)、掲示板:卒業生/地域の人々との交流、留学生
のコミュニケーションツール、メーリングリスト、学校/家庭間のネッ
トワーク懇談会、教育関係者、生徒会、ニュース・グループ、パソコン
通信:teens-Net(NIFTY-Serve内の一フォーラム,NHK主催)の利用
(3) 国際交流の内容と交流した国々
分類した企画のうち、特に、国際交流に関して、交流の内容、交流国に関して
整理する。国際交流は、集中的な活動と継続的な活動とに大別される。前者は、
世界的な学生会議や交流キャンプ等であり、後者は、複数国間での国際交流を目
的とした活動、特定の機関はバックアップする世界的な環境調査等である。
期間を限定して催された国際的な活動への参加としては、次の2事例が報告さ
れた。
- a.APEC STUDENT会議
- 韓国、マレーシア等のAPEC加盟国の高校生の交流。特定の話題に関し、発
表し、意見交換する。
- b.Russia-japan summer computer camp school
- ロシアの高校生と絵本の共同編集、ハンカチーフのデザイン、環境問題の
ポスター交換、蝶の観察などを行なう。
継続的に行なわれる国際的な活動は、対象校の自主企画として行なわれた活
動、複数国間での国際理解/交流を主目的とした活動、環境に対する世界的な
調査を兼ねた活動とに分けられる。これらの活動への参加は、次の5事例が報
告された。
- a.対象校が主催する自主企画
- key-PALプロジェクト(ハワイ−日本間)
日本からは英語で、ハワイからはローマ字でつづられたメールを相互
に交換し、添削し合う活動。
- b.国際理解/交流を主目的とした活動
- WWFAX project *95(アメリカ、スウェーデン、デンマーク、日本)
参加校間で生徒/児童の描いた絵の交換を行なう。
KIDLINK(世界で30数ヶ国)
それぞれの学校が『3日間の国内旅行』を英語で紹介し合う。その内
容を基に、異文化や地域性に関する議論、質疑を行なう。
- c.環境に対する世界的な調査を兼ねた活動
- Globe school Net
気象観測と生物調査に関するデータを収集し、アメリカに送られる。
参加校に対しては、専門家による分析結果がフィードバックされ、環境教
育や理科教育に活用することができる。
環境のための地球学習プログラム
参加校の位置する地域の気象データを収集し、NASAへ送る。参加校か
らは NASAに対して、調査結果の検索を行ない環境教育や理科教育に活用
することができる。
[対象教科]
授業に取り入れた学校と特別活動で利用する学校とに分かれる。プロジェクト
担当者の報告から、平成7年度は、カリキュラム編成の都合により試験的な利用
にとどまらざるを得ない学校も多かった。
中学校での「情報基礎」、職業高校での「情報処理」といった情報関連科目で
は、CECから配布されたインターネット活用ビデオを用い、ネットワークの仕組
み等の学習が行われた。
国語科では、生徒/児童の創作した詩、短歌や俳句を公開する場として利用さ
れる例が見られた。創作された作品をテキストデータのみならず、背景画や朗読
音声等のマルチメディアデータと組み合わせて表現する学習を行なった学校もあ
る。
社会科では、気候や地域の異なる学校間での電子メールやTV会議システム等を
利用した交流授業を通して、各地域の農業、産業、工業に関して学習した。
また、現在の時事問題を話し合うためにマスメディアのホームページを利用し
た。
理科では、NASAや気象庁で公開している気象データを利用して、天気に関して
学習した。
英語科ではAET講師が英語教材を検索し、授業で活用している。高等学校で
は、英語での電子メールのやりとりを通して、メールの書き方といったネチケッ
ト習得や異文化理解を図った。
数学科での利用は、教師からの情報発信例(だれでも取り組める数学の問題を
発信する「挑戦状のページ」)が報告された。
小学校での生活科、中学校での正課クラブの活動の一環として、事務局の提案
したプロジェクトである「酸性雨の調査」、ゴミ問題に関する「有識者との意見
交換」、あるいは世界的な環境調査プロジェクト等に参加し、気象観測や生物調
査等を行い、環境教育に役立てた。
[利用時間]
小中学校でのインターネットを利用した授業は、年間で数時間程度という学校
がほとんどである。連続した数回の授業を割り当てる等、期間を限定し集中的に
教示を行なった例が多い。授業での活動よりもクラブ活動の一環として活発に利
用された。
高等学校においては、国際科や総合学科等での利用時間は多く、週1時間程度
であった。休み時間にコンピュータを生徒に開放した学校、長期休みを利用し、
希望者(教員を含む)に対し、集中的にインターネットの利活用方法の講習会を
催した例も、数例だが報告された。
[教師の役割]
ネットワーク環境の保守・管理、コンピュータ管理といったSE的役割、生徒/
児童のインターネット活動の監視役、インターネット活用場面のコーディネー
ト、生徒の自主的/主体的なネットワーク活動のサポート等が教師の役割であっ
た。ネットワーク管理に関しては、技術的研修を受けていない教師がほとんど
であり、近隣の大学からの技術協力をうけた例が多い。また、教師のインター
ネット理解を促進させるために、職員室にyellow-cableを引き込み、インター
ネットを身近に感じる機会を設ける工夫もなされた。
[生徒の反応・成果]
インターネットを利用して、生徒は主に次のような反応・成果を示した。
- ネットワークを利用した学習に対し、意欲的に取り組めた。
- 自分の学習成果を、自作したあるいは検索したマルチメディアデータを
組み合わせて表現することに非常に興味・関心を示した。
- 情報発信した内容に関して、外部から反応があったことで学習に対する満
足感が生まれ、学習意欲が向上した。
- 創意工夫した自己表現を行なう努力がみられるようになった。
- 生徒/児童の調べ学習の対象や範囲の広がりと深まりが見られるようになっ
た。
- 自主的、主体的な活動意欲が向上した。
- 他校との交流を通し、視野を広げると同時に、自分のいる地域を見つめ直
す機会が得られた。
[課題]
インターネットを利用した教育を行う上で、主に次のような課題が挙げられ
た。
- ネットワーク環境の整備
現状は、生徒一人一人のネットワーク活動を保障するだけの環境ではな
い。ソフト面、ハード面共に更なる拡充が望まれる。
- コンピュータを利用する教育活動に関する教師教育
限られた資源を活かし、一斉授業でネットワークを活用した授業の設計
は難しい。ネットワークの利点を活かした授業を展開するという、いまま
でにない範疇の授業設計能力が問われる。
- コンピュータ管理に関する教師教育の必要性
コンピュータ/ネットワーク管理に対して知識不足である。専門のSE派遣
もままならない状況であり、一度トラブルが発生すると数週間はネットワー
ク活動が停止することもある。教育活動に支障をきたさないよう、自校内
でトラブルに対処できるだけの技術をもった人材が必要である。
- カリキュラムへの導入
コンピュータ・スキル/情報リテラシーの獲得支援キーボーディングや
コンピュータ操作に不慣れな児童が、積極的な興味・関心を持ってコンピュー
タに向かうような工夫が必要とされる。
- ネットワーク活動に対する責任感の育成
有害情報に対し自ら律する態度と、ネットワーク環境特有のマナー習得
が望まれる。現状では、生徒/児童のネットワーク活動を監視せざるを得
ない。自らの行動の自覚と有害情報に対する自律的な態度形成の育成が必
要である。
3.6.3 平成8年度における実践の特徴
[使用環境]
インターネットに接続されているマシンの数が、20〜50台という学校が全
体の約70%を占めている。中でも30台前後という学校が最も多く、全体の約
半数を占めている。インターネットに接続されているマシンが少ない学校でも、
接続されていないマシンは20台以上あるといった状況である。コンピュータ1
台に対する生徒の割合は、授業では1人か2人だが、授業以外では5〜10人と
いった割合になってしまう。また、各学校に設置されているマシンの大半は端末
室に置かれているが、生徒がいつでも自由に利用できるように開放している学校
の例もある。職員室にも2〜3台設置している学校がほとんどで、教師がコンピュー
タを身近に感じられるようになっている。
アカウントについて報告されている学校のほとんどでは、小学校で4年生以上、
中学・高校では全学年の生徒に対してアカウントを設定している。また生徒が調
査・作成したものを、教師がホームページの作成を行いインターネット上にのせ
るという形態をとっている学校と、生徒にホームページの作成をすべて任せてい
る学校に全体が分かれている。さらに、この2つのタイプを比較すると前者は小・
中学校に、後者は中学校高学年や高等学校でかつコンピュータの授業回数の多い
学校となっている。
[利用方法・内容]
インターネットの利用方法は、メールの送受信・ホームページの作成・情報検
索がほとんどを占めている。インターネット利用の内容は、情報の収集発信・遠
隔教育・協同学習・進路指導といった内容を中心としている。次に主なインター
ネット利用内容を示す。
- (1)メールの送受信(意見の交換・情報収集・コミュニケーション)
- 友達同士、国際交流、専門家への質問
- (2)ホームページ作成(情報の発信)
- 自己紹介、授業でやったことの公開、各地域の文化・伝統の紹介
- (3)情報検索
- 各授業で調べたい情報、修学旅行のための事前情報、進学校紹介情報また、
シンポジウムやプロジェクトに参加することで、あるテーマに対し意見を交
換し合ったり、各地域で調べた情報を提供し合うといった協同学習が行われ
ている。
他にも電子会議システムを利用している学校もある。視力の低い生徒(盲
学校)に対してインターネット利用は、音声合成装置により情報を音声化し
て行っている事例もある。しかし音声を利用できるインターネットサービス
が少なくまた、音声化できるものはテキストのみで、グラフィック等は無理
である。さらに視覚に比べ聴覚では情報取得に時間がかかってしまうなどの
問題がある。
[対象教科]
インターネットは各教科で利用されているが、特に国語・社会・理科・英語の
教科で多く利用されている。これは各地域の伝統や特色(方言・工業・自然環境
など)をホームページに公開することが、ほとんどの学校で中心課題としている
からである。また、これらの内容を授業の中で扱っている学校と、自由研究とし
て扱っている学校に分けられる。比率は約半々である。次に主要な利用教科の教
材内容を示す。
- (1)国語
- 学級新聞づくり(小・中・高)
各地域の方言紹介(小)
- (2)社会
- 各地域の産業や気候(小・中・高)
くらしと生活(小・中・高)
- (3)理科
- 酸性雨プロジェクトへの参加(高)
各地域の環境問題(小・中・高)
- (4)英語
- 外国の学生とメール交換(中・高)
国際交流シンポジウムへの参加(高)
[利用時間]
インターネットを利用した授業時間は、年間で10〜20時間という学校と、
週2〜3時間という学校で90%以上を占める(前者‥約60%,後者‥約30
%)。
[教師の役割]
教師は、コンピュータの管理者として技術的な部分を十分に身につけていかな
ければならない。現状では業者に保守・点検を任せている学校が多い。また教師
がコンピュータ(インターネット)に興味・関心を持つことで生徒の利用を拡大す
ることになる。メールやホームページに関する授業だけでなく、ネチケット(ネ
ットワーク上でのエチケット)の教育をしっかりと行わなければならない。
[生徒の反応・成果]
インターネットを利用して、生徒は主に次のような反応・成果を示している。
- 情報を発信することで学習に対する満足感が生まれ、学習意欲が沸いた。
- 自己評価能力が高まり表現力が向上した。
- 生徒が自発的に行動するようになり、自己表現・人格形成に役立った。
- 自らが発信する情報に対して、責任を持たなければならないという自覚
が身についた。
- 共同作業をすることにより協力性が備わった。
- 遠隔地で授業を共有することは、興味深くて楽しかった。
[課題]
インターネットを利用した教育を行う上で、主に次のような課題が挙がった。
- 現状では、コンピュータ1台に対して生徒が5,6人の割合を占めてい
るため、端末の増設は各学校とも重要な課題としている。
- 教師がコンピュータに対して知識不足で、コンピュータに対する技術的
サポートが困難であるので、教師に対する教育の必要性が問題とされて
いる。
- 専門科目とコンピュータの管理・運用を両方こなしていくことは、時間
的に厳しく、管理者の負担が大きいという問題がある。
- 学習に有益な情報源をまとめた案内(サイト)の整備が必要である。
- 教科教材としてのインターネット利用が難しい。(授業でインターネッ
トを利用すると、アクセス時間に数分かかったりなど無駄な時間が多い)
次(3.7 コスト面での評価)