地域活動に関する実践研究の総括


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4.10 長崎県:「先進的教育用ネットワークモデル地域事業」中間報告会

    • 日時:
    平成13年1月23日(火)9:00〜16:00
    • 会場:

    福江市総合福祉保健センター
    (長崎県福江市)
    • 主催:
    学校インターネット推進委員会
    • 共催:
    財団法人コンピュータ教育開発センター
    • 対象:

    長崎県 各教育委員会・五島教育事務所・県教育センター・県教育委員会
    九州電気通信管理局

平成13年1月

「先進的教育用ネットワークモデル地域事業」
中間報告会開催に関する報告書 

学校インターネット推進委員会
長崎道徳教育研究会
江ア 敏夫

1.はじめに

       学校教育における情報化は、高度情報化社会に対応すべく様々な施策が行われ、その一環として、2001年度までに、すべての学校をインターネットに接続することを文部省(現:文部科学省)は発表した。平成12年3月現在の公立学校のインターネット接続率は全体で57.4%とインターネットの普及はまだまだ低いが、双方向性や即時性をもち多くのデータを共有できる強みを持ち備え、教育的な活用と効果は大いに期待できる。

       長崎地区(五島地区)においては、平成11年度から、先進的教育用ネットワークモデル地域事業(通称:学校インターネット)に取り組んできた。五島地域を中心に小・中学校・高校の25校を高速回線で接続され、VOD等のデータベースを利用した教育的活用方法−利用するデータベースから創造するデータベースへ−の研究開発を目的として活動を始めている。

       また一方で、長崎道徳教育研究会として道徳教育における授業実践を行ってきたが、平成12年度に「楽徳ネット」という道徳教材データベース構築を目指しソフトウェアの研究開発も行っており、先進的教育用ネットワークモデル地域事業においても現在実験的に道徳や簡易オーサリングソフトの実証実験を行いつつある。
        しかし学校インターネット対象校25校がそれぞれ研究開発に努める中、相互のコミュニケーション(他校の研究実践内容、進捗状況、思い・悩み、などの)不足が徐々に懸念されてきた。

       そのような背景により、「学校インターネット」参加校による相互の情報共有、またプレスも含めた、地域その他への情報発信の場として、今回(学校インターネット事業のプログラム中には存在しないが)「先進的教育用ネットワークモデル事業」の中間報告会を開催するに至った。

2.組織について

       まずここで、主催組織である学校インターネット推進委員会とそのコアメンバーで構成する長崎道徳教育研究会について、また(今回の活用データでもあるデータベースの基となる)その実践された研究開発「楽徳ネット」について触れておこう。

      2.1 学校インターネット推進委員会について

         長崎県における「学校インターネット推進プロジェクト」の核になる組織として位置付けられる。平成10年度旧郵政省の補正事業「先進的教育用ネットワークを活用した教育方法に関する研究開発」を委託され、対象となった五島列島の25校は高速回線で接続された。
         この形成されたコミュニティにおいて、各種データベース(地域学習、衛星学習、気象衛星、ソフトウェアライブラリ、指導案、地域紹介、地域人材など)の構築、活用を主題とし研究開発を行うものである。
         このような取り組みを進める中、参加校は各島に点在しているため物理的に日常の交流、情報共有が難しく、各研究開発もそれぞれの学校内のみで進捗することが多くなってきており、隣接校で取り組みの進捗も分からない状況に陥りつつあった。学校インターネット推進委員会の定期連絡会において、各学校間での情報交換=中間報告会の必要性が取り上げられ、今回任意の発表会を持つに至った。
         中心的に活動を行ってきたのが、学校インターネット推進委員会の中でも「長崎道徳研究会」に籍を置くメンバーであるが、今回の発表テーマである学校インターネットの研究主題策定の段階でも、その実施し蓄積された活動成果を活かすためのプランが採用されている。
         次項ではその「長崎道徳研究会」の実践、その成果について触れる。

      2.2 長崎道徳教育研究会について

         平成元年に改訂となった学習指導要領を受け、臨教審答申では道徳教育用教材について「道徳的な判断力やひろい心を養い、実践的な意欲を培うのに資するため、小・中学校の児童・生徒が適切な副読本を使用するように奨励する」とうたっている。
         各方面で、道徳の優れた資料と優れた指導方法の研究が行われるなか、それらはまだまだ広く現場に浸透しているとはいえないだろう。
         道徳の授業が、優れた資料を用い、優れた指導方法に沿って行われれば、子ども達にとって魅力的な時間となることは、想像に難くない。教師は、子ども達が人と人との関係の中で望ましい生き方ができる一助となるような、「児童・生徒が共感できる指導資料」を必要としているし、児童・生徒も「楽しい道徳の資料」を望んでいる。
         しかし、深く検討された資料の作成には多くの時間と労力が必要なため、週1時間の授業毎に、充分な準備が出来ないのが現実である。さらに、道徳の質の高い授業の実践には、学校の取り組みや教師の道徳教育への正しい理解と資質とが必要だといわれていて、教育現場の環境にも大きく左右される。

         道徳におけるインターネットを備えたコンピュータの活用は、はじまったばかりである。 これまでの読み物資料に、自由に絵を加えたり、音を加えたりすることで、より資料は現実味をおびる。授業に必要な資料のあるアドレスへリンクさせることで関連の項目を調べられ、児童・生徒の興味関心を高めたりすることができる。

         長崎道徳教育研究会により開発研究された「楽徳ネット」は、教師一人一人が、一元管理された優れた資料や指導案を参照し、登録された画像データ利用したり、参考にしたりして、授業がより「自ら考え主体的に判断し行動する力を育てる」時間となるように利用することが可能となっている。道徳の授業の内容についての関心がより高くなり、広く一般化していく中、本システムは道徳教材データベース構築の一助となっている。

         この学習用ソフトウェアの研究開発では、インターネット拠点整備事業で整備されるインフラを利用し、インターネットを活用して資料の共有化を図るべく目的として設定された事項は下記である。

         第一の目的は、道徳教材をインターネット上で一元管理を行う為のソフト開発である。資料の収集を継続的に行い、量・質ともに充実したインターネット上のデータベースを構築することである。このためには、教師の意識の問題とともに、簡単な操作で、教師自身がインターネット上のデータベースに登録できるような操作性の良いツールが使える環境が、教育現場に整っていることが大切である。
         インターネット上のデータベースから素材を利用して授業を行おうとする教師は、今回研究開発したソフトを使い、資料を閲覧し選び出し、アレンジして授業中パソコンで動く資料として、また掲示用の印刷された画像データとして、簡単に活用できる。特に、道徳の授業があまり得意でない教師や、経験の少ない新任の教師には、道徳の優れた資料と優れた指導案が身近になり、広い範囲で、質の高い道徳の授業が実践できる。扱うデータの種類は、授業で利用する画像データ、音声データ、実践記録、参考となるホームページの情報、ワープロソフトで作成したプリントなどの補助資料に広く対応する。これらの資料は、授業で活用され、更に優れた教材資料として進化し、データベースに再び登録され活用されることを繰り返す。新鮮で深く検討された資料が、インターネットを通じ、地域や時間の枠に関係なく、実践記録や指導案とともに公開されることは、道徳の授業を模索している教師のための、「役に立つ道徳教材データベース」となるであろう。

         第二の目的は、インターネットではメールを利用して教師間のネットワークを広げ道徳教育の活性化を図ることである。道徳の資料を公開した教師、それを参考にした複数の教師間で、意見交換が行える環境を提供し、その結果、同じ悩みをもつ教師のコミュニケーションや情報交換が行われ、児童・生徒にとって意義のある道徳の授業が新しく創造されることを期待している。

3.学校インターネット研究開発テーマについて

4.組織運営・開催計画等

       今回の中間報告会開催にあたり、いくつか注意すべき事項や気付いた点、また今後同様の取り組みを行う際に取り入れるべき事項が多々見受けられた。ここでは、それらを各項目に沿って述べてみたい。

      4.1 開催組織、開催計画等

         研究会組織だけでは、なかなか教員を集めての開催は難しいものである。県の後援・共催をとることについても、難しいものがある。
         しかし、例えば、大きな組織の研究支援を受けている活動を認めてもらうことで、発表会等の場合に案内を出しやすくなることがある。
         県の研究指定校や文部科学省の指定と言ったものである場合は問題ないが、チームを組むときにも「学校全体としての取り組み」といった形にすることが可能であれば、比較的動きやすいものとなるだろう。
         このごろは、学校が日頃取り組んでいる校内研修を発展させる主体的な指定研究(公募制研究指定)を考える県も出てきつつあるので、このような指定を受けることもいいのではないだろうか。

         運営方法について気付いた点は、組織のメンバーが学校関係者ばかりでなく企業や大学関係者が入っている場合は、それぞれの立場でものを言われることがあるので、運営上すぐに決をとることはさけた方がよいと考えた。

         また会則等は作成することにこしたことはないが、あまり難しく作るとそのことが制限や負荷になり嫌気がさしてやめるメンバーがでることもあるので注意が必要である。

         計画については、会場、参加者等早めに連絡をすることは大切である。土・日などについては、勤務を要しない日として対応がしやすいが、平日に開催するとなった場合は、勤務時間、旅費関係で難しいこともでてくる。
         また、今回は特に開催時間についても、配慮をしないと間に合わない場合があるので注意が必要だった。

      4.2 会場環境・発表等

         会場については、参加人数と使用機器との関わりで選定していく必要があるが、今回は交通の便についても十分に顧慮する必要があった。
         会場での時間的な進行上のトラブルの時には、休憩時間の調整や終了時間の延長などにより解決して行くが、場所がへき地の場合、船の時間やバスの最終時間等を考えて進行して行かないとうまくいかない。時間を変更するときには、必ず全体の場所で了承を取っていくことが大切であろう。
         今回も30分程度時間が押してしまった関係で、後半の発表者がフェリーの時間を気にしつつ発表することになってしまった。時間の許す限り参加して頂く、という対応になってこと無きを得たと思う。

         会場の機器の活用については、パンフレットだけでは、絶対信用できない面があるので、面倒でも一度確認に出向き、担当者と打ち合わせをしておく必要がある。今回は2度ほど会場確認、打合せを行った。

         その他会場について気付いた点であるが、開催する会場次第ではコンセントを使うときにも許可が必要な場合がある。このごろ、話を聞きながらコンピュータへ入力する人が、無断でコンセントを利用している姿を見るが、そのようなことについても事前の配慮が必要である。

         また、発表について留意した点もいくつかある。
         このごろの発表は大抵パワーポイントを利用したものが多いが、ビデオやOHCといったものに対しても、充分な準備や配慮が必要である。
         また、機器を使っての発表にはトラブルが付き物である。パソコン等については事前に機種を調べ、対応可能か、あるいは、専任の担当者を機器の場所に置き、対応させることが必要となる。
         発表時間についても、1発表当たり20分は取る必要があった。その際、機器の取り付け等それぞれの準備時間についての余裕を見ておくことが必要である。
         学校からの情報を短い時間で示しながらの発表は、一人ではなかなか難しいものである。今回はほとんどの発表者が一人で行ったが、できれば発表者と機器操作の二人であればスムースな発表が可能だったのではないかと感じた。

         質疑応答も何点かあったが、出された質問等については後日何らかの方法で必ず回答していかなければならない。例えば、「問題点については、HP上の議事録のなかで回答します」といったことを最後に伝え、それを実際に実施していくことで、今後の協力が得やすくなると考える。

         今回は時間の関係で省いてしまったが、基調講演等の講師や来賓等のゲストについてもいろいろと配慮が必要であろう。

         講師としては、名前が有名であるといった理由だけでなく、内容が自分たちの研究内容に合っているか、話はわかりやすいかといった、聞く人たちのことを考えた講師選定が必要である。
         来賓やゲストへの時間については、短く与えるのでなく余裕を持って、主旨を説明し、このくらいの時間でいかがでしょうかという、事前の打ち合わせが必要である。
         ゲストの話を録音することがある場合には、必ず了承を取ることと、取れない場合は会場できちんとその旨を皆に伝えることも忘れてはならない。

      4.3 告知方法、意見収集方法

         学校インターネット参加校と推進委員会の連絡用としてメーリングリストが立ち上がっている。ほとんどの連絡はこれで行っているが、今回の報告会の案内もメーリングリストを利用した。また文書による通達としても、各学校の担当者宛てに郵送した。
         報告会後、メーリングリストによる意見交換を行った。
         このように五島の学校が対象のため、距離的な問題があり、ほとんどのやり取りをメーリングリストで行っている。

      4.4 運営全般について

         今回は実施しなかったが、下記については「覚書」として記しておく。

      4.4.1 実施費用

         会費より運営されているものであれば、特に参加者から徴収することはないようにすべきである。仮に、当日資料として実費が必要となることが最初からわかっているときは、事前の案内状にきちんと明記する必要がある。

      4.4.2 企業等の協力を得るには

         開催内容で、企業等の協力として、新製品の展示とかある場合が考えられるが、展示については、場所を決める程度で、特に研究会や学校が立ち入らないようにすることが大切である。

      4.4.3 後援・支援団体等に対する依頼方法

         後援名義を得る場合には、審査があるので、要綱とともに説明に出向く方がよい。また、実施後必ず報告書を出す。

      4.4.4 参加者の募集・宣伝方法

         後援等を得る場合は、市町村教育委員会等を通じてお知らせが可能であるが、そうでない場合は、学校へ案内状を送るといったことが考えられる。しかし、そのような場合もきちんと、管轄の市町村教育委員会の担当者と連絡を取り、了承を得ることが必要である。
         参加されたものの、名前や基本的なデータをHP上で勝手に流すと言ったことをすると、個人情報保護に違反する場合があるので、むやみに流さないようにすることが必要である。

      4.4.5 マスメデイアの利用方法

         メデイアの取材を受けた場合についても、きちんとした対応と誰から取材をされたか、あとからわかるようにしておかないと、間違って報道された場合問題となる。

5.評価と今後

       今回の発表会は、それぞれの学校での取り組みを出し合い、お互いの相乗効果を計れたと考えている。
       事務局としては、発表会での様子をより多くの教員に伝えたいと考え、要点をCD-ROM化して配布したい考えがある。
       ただ、短い時間ながら、担当者は多くの情報を提供し、忙しい中資料等の作成もおこなってくれたことには、本当に感謝している。それだからこそ、この雰囲気をみんなに還元したい。

       学校での身近な出来事を簡単に教材化できるオーサリングツールの開発と各教員が作成した教材を、インターネットを介して共有するといったことは、これからすべての学校がインターネットでつながれることを考えれば、有用なことと考える。
       市販されているオーサリングツールは確かに安くなったが、教員のニーズにあった物かというと「まだまだこれからの物」という感触は否めない。

       今後、動画像や音声などがスムースに送受信できる環境が整ってくれば、これからの教材は、今までと違ってくるであろう。これらの、教材データコンテンツがどうあるべきかを、今後検討し、より使いやすい、わかりやすくきめ細かい教材へと仕上げていきたい、と考えている。

       近々の予定としては、今後、義務教育の学校へ楽徳メイトの配布及びマニュアル配布を行うとともに、小学校用のオーサリングツール”しっとくぞう”の配布等を考えて活動をしていくつもりである。

       最後に、本研究成果を元にデータベース活用・学校間における情報の共有の素地ができたわけだが、今後も学校インターネット推進委員会を中心に(主にメーリングリスト中心にはなるが)情報交換を行っていく。データベースのコンテンツ蓄積とともに授業での活用もしやすくなり、より活性化されることを願う。



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