「酸性雨/窒素酸化物(NOx)調査プロジェクト」
実践研究報告書


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2. 全体概要

2.1 本年度活動の概要

       学校における教育実践は、その大部分が学校の中に留まってしまう。ネットワークの教育利用は、これを打開する切り札と期待されたが、学校をはじめとする教育機関の体制が整わず、いまだ第一歩を踏み出したばかりである。本プロジェクトは、酸性雨や窒素酸化物の測定を核にして、ネットワークを利用した新しい教育システムを総合的に開発しようとするものである。

       本年度の取り組みの概要を表 2-1に示す。

      表 2-1 本年度の取り組み概要

      作業項目

      概要

      広げる仕組み作りの推進

      • 大学、学校現場、企業、CECが参加したプロジェクト方式で、酸性雨/窒素酸化物調査プロジェクトを実践し広げる仕組み作りを検討した。
      • 地域でプロジェクトを推進できる中核的な推進委員を育成するため、幹事校及び推進委員と連携して、プロジェクトのあり方や意義を共有するとともに、今後のあるべき体制に関する検討を行った。
      • 参加校の教師が集う研究会を開催して、環境教育の講演、酸性雨/窒素酸化物測定マニュアルの説明、事例発表、情報交換など行いプロジェクトを広げるための動機付けを行った。
      • パンフレットを作成して広報を行った。

      広げる仕組み作りのノウハウを収集

      • 過去5年間の問題点、課題及び良かった点(継続できた理由など)の整理を行い、実践マニュアルに盛り込んだ。
      • 幹事校をサポートする地域の推進委員を配置したプロジェクト推進体制の検証を行い、広げる仕組み作りのノウハウを収集した。
      • 多数の学校が参加した全国規模プロジェクトを行いプロジェクト推進上の課題を探った。

      全国規模プロジェクト実践マニュアルの作成

      • 広げる仕組み作りのノウハウ、課題をマニュアルに反映した。
      • 幹事校をサポートする地域の推進委員を配置した全国規模プロジェクトの実践マニュアルを作成した。

      ネットワークを利用した新しい教育システムの開発

      • 酸性雨や窒素酸化物の測定を核にして、ネットワークを利用した新しい教育システム(教育手法)を総合的に開発し、いくつかのモデルカリキュラムを実践マニュアルに盛り込んだ。

       これまでプロジェクトは、すべてネットワーク上で行ってきたが、プロジェクトを広げ、深めていくことを考えた場合、ネットワーク上のやり取りのみでは限界がある。そのため、参加校の教師がオフラインで一同に会す「指導者研究会」を開催する。これは、各参加校が、本プロジェクトに参加しつつ地域展開していくためにどのような活動を行っているか、また、活動における留意点・課題等をどのように認識しているか、意見交換したり問題を共有したりすることは重要である。また、専門家による観測の意義や観測方法に関する講義も盛りこむ。このようにしてプロジェクトに対する意識を高めることにより、プロジェクトへの取り組みが活性化、それが波及してプロジェクトが広がっていくことが期待できる。

2.2 開発作業の概要

       Webアプリケーションの開発は、本プロジェクトで過去に作成されたものを改良・機能追加することにより行う。これまで本プロジェクトは、30〜40校規模で展開されてきており、Webページ上からデータ登録を行い、データを蓄積する仕組みはできている。生データを蓄積し、授業での活用は教員の創意工夫に任せようと意図したものである。しかし、ネットワークの活用に時間をとられ、教員独自の手で生データを活用することは困難なのが実状である。従って、本年度はデータを授業時にも容易に活用できるよう、データの加工・表示機能を中心に新規開発を行う。また、本年度は参加校を広げることがテーマとなっているため、これまでのようにすべての参加校で観測機器を統一することは困難である。従って、Webページも、多様な参加形態に対応しうるよう、観測機器に応じて柔軟にデータ登録・表示を可能となるように既存登録システムの改良を行った。

2.3 実施体制

       本年度の企画では、これまで通り広島大学附属福山中・高等学校が幹事校として、プロジェクトのとりまとめを行い、環境に関する専門家として広島大学からの支援・助言を仰ぐこととしている。また、企業として三菱総合研究所が入り、学校現場のニーズをシステムに反映させたり、三者間の隙間を埋めるための作業を行ったりした。

       さらに広げるための仕組みを検討するという意味合いから、参加校の中で独自の活動を行うなど、積極的に取り組んでいる学校をサブ幹事校として選定し、サブ幹事校を拠点とする活動を試行することとした。

       このような体制でプロジェクトを遂行していくとともに、よりプロジェクトを深めていくための課題、学校における取り組みを推進するための課題、広げる仕組み構築にあたっての課題などを討議するため、幹事校、サブ幹事校、大学、企業とで推進委員会を組織することにした(図 2-1)。

      図 2-1 プロジェクト実施体制



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