「酸性雨/窒素酸化物(NOx)調査プロジェクト」
実践研究報告書


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3. 企画の実施

3.1 本年度の活動

       本年度の活動概要を表 3-1に示す。

      表 3-1 本年度活動概要

      時期

      内容

      5/26 〜 6/23

      参加校第1次募集

      8/21

      指導者研究会(全参加校を対象としたオフラインミーティング)

      8/22

      第1回推進委員会

      9/1 〜 9/29

      参加校第2次募集

      10月はじめ〜中旬

      窒素酸化物(NOx)調査期間

      10/22

      第2回推進委員会

      11月末 〜 12月はじめ

      (適宜)

      プロジェクト参加校チャット大会

      (時間的調整のついた参加希望校のみ)

      12/1 〜

      雨水データの詳細分析(イオンクロマトグラフィー)

      全国のデータの統計的分析

      12/17

      第3回推進委員会

        各々の活動に関する詳細は以降に記述する。

3.2 参加校の募集

      3.2.1 参加校募集に向けた方針

         本プロジェクトは大規模プロジェクトであり、参加校同士の交流に比べ、学校内での活動の比重が高い。交流へと発展していくことが望ましいが、とりあえずの活動は、参加校においてデータを測定し、それをWebへ登録するという活動をしっかり行うことである。従って、交流のためへの適した学校であるかどうかは募集基準とはせず、継続してデータ観測・登録を行えることを第一条件として募集を行うこととした。

      3.2.2 参加校の募集

         参加校のプロジェクトへの参加形態は、地域の酸性雨の状況を自分達の手でしっかりと確認してそれを他地域のデータと比較したいという学校から、データの観測はそこそこにして蓄積されているデータを授業の中で利用していきたいという学校まで様々である。これまでは、多くのデータを集めてこそ、授業の中で本プロジェクトを有効活用していくことが可能であるという認識の下、測定のためのプラットフォームを統一し、すべての参加校に対して継続的なデータの蓄積を求めてきた。しかし、参加校を広げていくことを考えた場合、すべての学校にこれを求めることは困難である。そこで本年度は、酸性雨/NOxとも綿密に測定するグループ(第一次募集)、酸性雨のpHのみを簡易的に観測するグループ(第二次募集)とに分けて募集を行うことにした。

         第一次募集は、Webによる広報、教育関係のメーリングリストまた、教員間の人脈から別のメーリングリスト等でも参加を呼びかけてもらうなどにより行った。個人的なつながりによる募集もあるが、ほとんどがオンラインでの募集である。

         第二次募集は、プロジェクトにはより気軽に取り組めるため、ネットワークの利用がそれほど活性化されていない学校においても可能であるようにしたつもりである。従って、これまでオンラインにより募集を行ったのとは違った層に呼びかける必要を感じた。また、本年度の課題である「広げる仕組み」ということを考えた際、地域ネットワークの活用がどの程度の効果を発揮するか、実験的な意味合いからも、地域の拠点となりうる人物に接触して階層的に募集をかけることを試みた。ただし、あまりにも急に膨れ上がった際には、本年度のプロジェクトでは、予算的にも体制的にも処理しきれないため、東京地区に限定して行うこととした。

         本プロジェクトへの参加形態のイメージを図 3-1に示す。

         その結果、第一次募集で継続参加も含めて68校、第二次募集で38校集まった。特に、第二次募集では、東京という同一地域内から約30校が集まり、地域ネットワーク活用が、参加校を増やすという面から見た場合、ある程度有効に機能することが確認できたと言える。

        図 3-1 プロジェクトへの参加形態イメージ

       

      3.2.3 参加校に対するサポート

         本プロジェクトでは開始以来、観測機器を参加校に向けて無償貸与している。こういった活動の黎明期にプロジェクトを活性化していくためには必要なことではあるが、今後、普及させていく際には、すべての学校に無償貸与することは不可能である。本プロジェクトのような活動もカリキュラムとして学校に根付かせ、学校内で予算化できるようにしていく必要がある。そのためにも教科書的なモデルを構築することが不可欠と考えている。従って、その元となるデータのいま少しの充実を考え、第一次参加校に向けては本年度も従来同様、機器の無償貸与を行っている。

         今後、参加校自身に観測機器を整備してもらうことを考えた場合、同じ機器でないと参加を許可しないというのでは、広がりが出てこない。小学校などの低年齢層や気軽に取り組みたい学校への広がりを出すためには、簡易な測定機器での参加も認めていく必要があるだろう。そこで本年度はモデルケースとして、第二次募集は小学校を中心に行い、これまでの機器より簡易(かつ安価)に利用できる測定機器により参加してもらうこととした。これにより多様な参加形態によりプロジェクトを運営していく際の、問題点・課題を探ることにした。

3.3 サブ幹事校の選定

       既に述べたように、参加校を増やすということを考えた場合、地域ネットワークが有効に機能することが確認できた。しかし当然ながら、参加校をただ単に増やせばよいというものではなく、それをより意義深い活動に結び付けていく必要がある。従って、第一次募集の参加校が集まった段階で、本プロジェクトにおけるこれまでの取り組み状況、他ネットワークにおけるアクティビティを勘案の上、地域における拠点となって活動できると考えられる学校をサブ幹事校として選定し、担当教員に依頼した。表 3-2にサブ幹事校を示す。

      表 3-2 サブ幹事校

      都道府県

      学校名

      委員人数

      北海道

      札幌市立発寒中学校

      1

      東京都

      大田区立矢口小学校

      1

      神奈川県

      大和市立光丘中学校

      1

      広島県

      広島大学附属福山中・高等学校

      2

      ※ 広島大学附属福山中・高等学校は幹事校も兼ねる

3.4 データの観測及び登録

      3.4.1 測定マニュアルの作成

         酸性雨のpH及び電気伝導度の測定値は、少しのことで大きく異なる可能性がある。決して測定の精度のみを追求しているプロジェクトではないが、標準化された方法により、より高精度の測定を目指すことは学習的にも意味のある活動である。従って、測定器具ごとの観測マニュアルを作成し配布した。作成したマニュアルは付録に示す。

      3.4.2 Webページの整備

         Webページはその大部分が過去から運用されているものであり、その全体像に関しては、操作マニュアルに記述する。ここでは、本年度の活動と関連した主だった部分に関して触れることにする。

        (1) 学校選択部分インタフェースの改良

           参加校は、本年度、従来までの40〜50校から106校と、一気に倍増した。データ登録をする際には、学校名の選択とパスワードの入力という作業が必要となるが、参加校が多くなるに連れ、自分の学校名を探すのが大変になる。そこで、「地域 → 都道府県名 → 学校名」と絞り込んでいけるようなインタフェースを用意した(図 3-2左)。ただ、階層的に何度も選択するよりも、一度に学校名だけ選択できたほうが楽であるという学校もあるだろう。従って、当該画面にて従来通り学校名だけを選択しても受け付けるようにしている。

          図 3-2 学校名選択画面

         

        (2) 窒素酸化物データ処理部分の改良

           窒素酸化物の観測は昨年度はじめて行われたものであるが、簡易測定機器による単年度のみの活動を想定したものであった。本年度、測定機器も変更になり、また、来年度以降も継続的に活動を行うということで、本年度の活動に則してデータ登録・表示が行えるよう、システムの改良を行った。

        (3) データ表示プログラムの開発

           プロジェクト当初は、本システムではデータを蓄積して提供するのみで、そのデータ活用は各参加校の自主性に任せるというスタンスをとっていた。しかし、データが蓄積されるに連れ、Web上でも簡単に測定データがビジュアライズされると、授業においても活用しやすいとの声が大きくなってきた。そこで、一昨年、測定データをもとにリアルタイムでグラフを作成するシステムをWeb上に構築した。

           さらにデータが蓄積されるにつれ、データを統計的に処理することにより、それなりの傾向が出てくることがわかり、さらなる種類のグラフに対する要望が高まってきた。また、学校間のデータを比較できるような機能に対する要望も強くなってきた。これは、学校間の交流にもつながっていく部分であり重要である。

           本年度は、授業で本プロジェクトがより活用されること、参加校の交流が活性されることを願い、これらの要望に応えた分析・表示インタフェースを開発することにした。これら表示インタフェースによる表示画面例を図 3-3 〜 図 3-6 に示す。

          図 3-3 2校間のpH値の比較

          図 3-4 2校間の降水量によるpH変化の比較

          図 3-5 2校間の導電率とpHとの関係比較

          図 3-6 2校間での降水量に対する導電率の変化比較

           これまでに蓄積してきたデータから、比較的顕著な傾向があらわれる分析結果をWeb上から容易に確認できるようにしたものである。操作手順は「観測データ収集・表示システム操作マニュアル」に、グラフ中のデータの表す意味に関しては本報告書4章にその詳細を記述する。

3.5 参加校間の交流

      3.5.1 オフラインミーティング

         交流・共同学習におけるオフラインミーティングの重要性がよく指摘される。本プロジェクトでも同様の認識ながら、全国規模で運営するプロジェクトだけに、個別の付き合いはあっても多くの参加校が一同に会すようなことは実現に至らなかった。本年度は、プロジェクトの意義を共有し、今後活性化していくため、オフラインミーティングを実施した。当日の様子を図 3-7に、プログラムを図 3-8に示す。

        図 3-7 オフラインミーティング時の様子

        13:00

        開会

          進行: 広島大学附属福山中・高等学校 山下雅文教諭

        13:05 〜 13:10

        挨拶

          コンピュータ教育開発センター 原田静男

        13:10 〜 13:15

        事務手続き

        13:15 〜 13:30

        プロジェクトにおける取り組み

          広島大学附属福山中・高等学校 長澤武副校長

        13:30 〜 14:00

        講演:「酸性雨/窒素酸化物(NOx)調査プロジェクト」について

          広島大学生物圏科学研究科 中根周歩教授

        14:00 〜 14:30

        観測方法・データ登録方法について

          広島大学附属福山中・高等学校 平賀博之教諭

        14:30 〜 14:40

        休憩

        14:40 〜 15:00

        大和市中学校酸性雨観測ネットワークの立ち上げについて

          神奈川県立大和市光丘中学校 中村孝夫教諭

        15:00 〜 15:20

        自然との共生を目指して 〜屋久島からの挑戦〜

          鹿児島屋久町立岳南中学校 山内耕治教諭

        15:30 〜 16:30

        情報交流会

          閉会

        図 3-8 オフラインミーティングプログラム

         本プログラムには、北は北海道から南は鹿児島の屋久島まで、全国から約40名が集まった。この会により、これまで顔を合わせたことのなかった参加校の担当者の先生方が初めて集い、これをきっかけにしてメンバーの間に仲間意識が育ったのと思われる。特に授業実践事例紹介のあとで、フリートークの時間を持ち、気軽に話をすることが重要なポイントではなかったかと感じる。「生の平賀先生に会えた。」という迷言も飛び出し、和やかな雰囲気で会を終えることができた。

         同じ意見交換を行うにしても、相手がどのような人であるのか、それがたとえ一度あっただけの人でも、まったく面識のない場合に比べると様子が変わってくる。人間の絆は、やはり直接会って話をしなければ育たないものだと感じている。

      3.5.2 掲示板の運営

         観測方法や身の回りの環境の様子について交流を行うことを目的に電子掲示板を運営している。現在、特に教員・児童生徒の区別をすることなくコミュニケーションに使っている。電子掲示板はWebの上から書き込みができるので、メールアドレスを持たない生徒も自由に書いたり読んだりできる点が、生徒同士の交流には有効である。

      3.5.3 チャット大会

         これまで毎年実施してきたアンケートの結果を見ると、生徒は「積極的に参加した」「インターネット利用に対する関心が高まった」「環境問題に対する意識が高まった」という高い評価を得ている。酸性雨や大気の汚染を観測し、それをインターネットを利用して共同して学習を進めていくというこのプロジェクトは、生徒にとっては魅力的な存在となっているのは間違いないだろう。さらに教育的な効果を高める方策として今年度は、生徒同士の交流の深化と学習の深まりを目指して、「チャットによる交流」を実験的に実施した。 チャットのシステムは今では様々なホームページ上に設定されており、中にはアイドルやミュージシャンのホームページなどにあるチャットを毎日のように楽しんでいる生徒もいるような状況である。遠く離れた同じ興味関心を共有する人たちと文字によって交流するチャットのシステムは、生徒にとってはインターネット利用の楽しみの一つになっている。

         12月の学期末で、教員の多忙な時期であり参加校数は限定されたが、実験的な試みとして生徒の反応や、今後の第2回・第3回と続けていくためのノウハウを蓄積することができたと考えている。あとに示すチャットのログを見てもわかるように、中学生と高校生ではチャットの会話の流れに大きな違いが見られた。中学生は我先にと書き込み、書き込みが溢れて、誰がどの書き込みに対する答えを書いているのか、話題の流れがつかめないほどに速い展開だったのに対し、高校生は一つ一つの書き込みの流れを見ながら、それに答えていくという、自制の効いた書き込みで整然と交流が進んでいったという印象である。生徒の発達段階の違いが現れたものかもしれないが、次回にどのように運営すればよいかという指針を与えてくれる実践となった。

3.6 広げる仕組みの検討

      3.6.1 プロジェクトの広報

         生徒にとっては自分たちが活動しているプロジェクトが、社会の中で評価されれば、活動に対して自信を持ち、より活発な活動を展開することが期待できる。そうした意味で、酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトの活動を、機会があるごとに広報して社会的な認知を広める活動を行った。

         こうした広報活動は、プロジェクトの活性化による広げる仕組みとなると共に、直接的に参加校を増やすことにもつながると考える。

        (1) 環境学習フェアへの出展

           プロジェクト事務局としての広報活動としては、三重県で行われた「環境学習フェア」への出展が最も大きな活動である。「環境学習フェア」毎年各県の持ちまわりで開催されている、環境教育に関する国内最大のイベントである。各県の教育委員会の環境教育担当者や環境教育の実践校の教員が集まり実践の交流を行っている。この場に酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトの出展ブースをいただき、測定器具や活動を紹介したパネルを展示したり、ホームページを実際にコンピュータを操作しながらブラウズできるコーナーも設けた。数多くの環境教育関係者、特に教育委員会の関係者に広報することで、教育委員会の担当者が酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトを認知していただければ、各県の学校から環境教育に関する問い合わせが教育委員会に行われたときに、何らかの形でご紹介いただけるのではないかと期待している。また環境教育を担当する先生方にプロジェクトを広報することで、直接的に参加校の増加につながるのではないかと考えた。各県にもどられてから、この展示を見られた先生方が酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトを説明しやすいように、募集情報も含めて、プロジェクトの概要を示したパネルや印刷物を作成し、これを配布した。これはフェア後も適宜活用している。展示会の様子を図 3-9に、当日の配布物、パネルを図 3-10に示す。

          図 3-9 環境学習フェアへの展示の様子

          図 3-10 作成したパネル及びパンフレット

        (2) 酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトの教科書への掲載

           新学習指導要領が発表され、現在新課程における教科書作りが行われている。その中で、このプロジェクトがいくつかの教科書で紹介される予定である。高等学校において新設される教科「情報」の教科書や高等学校「国語表現」など、発行する出版社から連絡が入っている。

           生徒に伝えたところ、自分たちの観測の結果が教科書に載って、その教科書を使って学習できることはとてもうれしいし、責任を感じるという感想を述べている。国語というのが意外な感じもするが、色々な切り口で本プロジェクトを活用できるということを示しているのだろうという感想もメーリングリストに流れた。

           これは特別な広報活動を行った結果ではない。地道な活動を継続していたからこそ認められてわけであり、プロジェクトにしっかりと取り組み、「深める」ことが結局は「広げる」ことにつながるということを示唆していると言えよう。

        (3) 環境イベントへの参加

           今年度は事務局を中心に、様々な環境イベントへ積極的に参加し、酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトを広める活動に力を入れた。広島大学附属福山中学校では、平成7年度から酸性雨調査プロジェクトの活動と同時に、環境庁が主催する「こどもエコクラブ」に登録し、環境に対する活動を行ってきている。今年度はこれまでの活動が評価され、11月に広島県で開催された「国民文化祭2000」の閉会式で生徒の代表が酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトの活動のようすを紹介し、このようすはNHKの総合テレビでも放送された。また、2月には日本で開かれる「第2回こどもエコクラブ アジア・太平洋会議」に日本代表として参加し、酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトの活動について発表し、海外からの参加者との交流や意見交換を行うことになっている。

           こうした活動を通して、酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトがマスメディアなどにもいろいろな形で取り上げられ、社会から注目されるにしたがって、生徒たちの活動もより充実したものになっていくであろう。このプロジェクトに参加しているこどもたちが、こんなすごいプロジェクトだったんだと、あらためて感じることができるような形を残すことができるように、様々なチャンスを生かして広報活動につとめることが、プロジェクトの活性化にもつながると考えている。

      3.6.2 オフラインミーティングの実施

         オフラインミーティングを実施したことは3.5.1 に述べた。その後、メーリングリストは全体的に活性化してきていると感じたが、それはメーリングリストに投稿されたメールの数でも知ることができる。昨年度(平成11年度)に1年間に流れたメールの総数が131通だったのに対し、今年度(平成12年度)は、6月から12月までの6ヶ月間で320通のメールがやりとりされた。参加校の増加を考えても、この数は圧倒的な増加の様子を示している。

         このように参加者間の交流が活性化するようになることにより、プロジェクトに対する親近感もわき、他の人にも声をかけてみようと思うようになる。オフラインミーティングと広げることとは一見無関係のようだが、ネットワーク越しにつながっているという意識を高めることは、広げることにも大きく寄与すると考えている。

      3.6.3 プロジェクト推進委員会の開催

         本プロジェクトでは、これまで幹事校が運営及びその方針検討などをすべて担っていた。しかし、今後プロジェクトを広げ、深めていくためには通常の参加校としての立場からの意見も重要である。従って、本年度は、図 2-1に示した体制に従ってプロジェクト推進委員会を組織し、プロジェクトに関して様々な観点からの検討を行った。

         第1回の委員会は、サブ幹事校選定前ということもあり、大学、幹事校及び企業の3者で開催した。本年度の活動予定の確認、重点的に取り組んでいくことに対する意識のすり合わせを中心に議論を行った。

         第2回委員会は、一般参加校(サブ幹事校として選定された学校)からのメンバーを含め、プロジェクト自身に関する様々な検討を行った。プロジェクトを見る視点が幹事校とは異なり、また、参加校自身でも様々な取り組みを行っているところもあり、多種多様な意見・アイデアが出された。当然ながら問題点もしてきされた。そのような中から、本年度に取り組み可能なものに関しては、実践に移してみることとした。具体的には、地域における様々な活動の中から参加を呼びかけてもらうという活動を試行してみることにした。参加校が増えた場合の対応は、当然ながら幹事校及び事務局が負うことになるため参加校の一存で募集を募るようなことは出来なかったわけだが、これを実施してみたわけである。本年度は広報活動を中心に行い、興味を示す学校が出てくるなど反響は出始めている。来年度以降の広がりが注目される。

         第3回の委員会では、これまでの活動を踏まえた上で、参加校に有効となる実践マニュアル作成に関する議論を行った。

      3.6.4 プロジェクトの運営体制に関して

         プロジェクトを広げていくためには、その運営体制を確立しておく必要がある。本年度、参加校106校を集めて試行錯誤で運営していきながら、あるべき運営体制に関する検討を行った。幹事校を以下フラットな体制及び各地域にサブ幹事校を配置した階層的な体制が考えられる(図 3-11)。

        図 3-11 大規模プロジェクトの運営体制

         両者をうまく使い分けることにより、大規模プロジェクトはうまく機能すると考えている。全体的な連絡事項はメーリングリストを通じて一括で行い、それに対するフォローをサブ幹事校で行う等である。例えば、電話での確認をとるだけでも参加校における取り組みは随分違ってくる。ただし、本年度試行したところでは、サブ幹事校がカバーできる範囲は同じ区町村レベルの学校まで、という意見が多い。適当数のサブ幹事校に区町村を超えた活動をしてもらうためには、単なる本プロジェクトの趣旨の理解にとどまらず、一緒に育て上げていこうという強い動機付けが必要である。広め、深めていくためには今後検討していかねばならない課題である。

      3.6.5 観測データの分析

         授業等におけるデータの有効活用のためには、専門家による学術的にも裏付けられた分析の結果が必要である。一見、児童・生徒の活動に高度な分析は必要ないとも思えるが、児童・生徒が自分達なりに分析するための基盤とするためにも本活動は必須である。事実、データの活用に取り組んでいる学校では、データの詳細な分析を求める声が多い。あえて詳細な分析を行い、その結果を提供していくことが、結局は広がることにつながると考えている。

         上記の考えの下、本年度は広島大学総合科学部 中根周歩教授にデータ分析の方向性検討と、サンプルデータの集計・分析を行って頂いた。本年度の分析は予備的なものであるが、その分析状況を4章に示す。ここで示す分析状況は予備的なものであり、また、そのままで授業に活用することは困難を伴う学校も多いと思われる。今後、本年度見出した方向性に従って、全参加校からのデータをさらに綿密に分析した上で、学校現場で容易に、かつ広く利用可能なプロジェクト活用モデルを構築していきたいと考えている。



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