教育現場におけるインターネット教育利用の実践研究

「学校企画」


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はじめに

       平成12年度の学校企画では採択51校に対し,51件の教育テーマを実践していただきました。

       51件の教育テーマと参加校等の名称は次のURLで公開しております。

        http://www.cec.or.jp/es/E-square/gakko/jissen.html

       企画紹介,学校紹介のリンク先は全て実践担当の先生からの連絡に基づいております。

       企画紹介では実践状況が日々更新され,企画実践状況が手にとるようにわかりました。

       学校紹介では学校の実践状況がわかり,学校紹介と合わせて地域ならではのユニークな内容も参考になりました。

       本年度の教育実践事例報告の成果はCECの「授業情報システム」で公開しております。

       http://edb.schoolhelp.cec.or.jp/cis/html/index.html

       授業情報システムでは校種,学年,教科・単元,キーワード等,全文検索でも実践内容を見ることができます。

       授業情報システムに登録した教育実践事例が,他校の参考となれば幸いです。

       以下本年度に報告された共通的な事柄につきまして要点のみ記述いたします。

1 事例数

       51テーマの参加学校種別テーマ数,都道府県別の参加数を次表に示します。

      (1)参加学校種別・テーマ数

      中高

      特殊

      その他

      合 計

      22

      10

      2

      9

      5

      3

      51

      (2)都道府県別の参加数

      北海道

      青森

      岩手

      宮城

      秋田

      山形

      福島

      茨城

      栃木

      群馬

      1

      0

      0

      5

      0

      1

      0

      4

      1

      0

      埼玉

      千葉

      東京

      神奈川

      新潟

      富山

      石川

      福井

      山梨

      長野

      2

      0

      2

      3

      0

      1

      0

      2

      2

      1

      岐阜

      静岡

      愛知

      三重

      滋賀

      京都

      大阪

      兵庫

      奈良

      和歌山

      3

      0

      3

      2

      2

      2

      2

      3

      0

      0

      鳥取

      島根

      岡山

      広島

      山口

      徳島

      香川

      愛媛

      高知

      福岡

      0

      0

      2

      0

      3

      0

      0

      0

      0

      0

      佐賀

      長崎

      熊本

      大分

      宮崎

      鹿児島

      沖縄

      0

      0

      0

      0

      1

      2

      1

      (3)地区別参加学校種別・テーマ名称について

        今年度の特徴として次のことを各学校に実施していただきした。

        • 企画の実践状況をWebで公開し,可能ならば公開可能な学校のホームページにもリンクを張りました。

          1.  http://www.cec.or.jp/es/E-square/gakko/jissen.html

             このホームページに企画テーマ名と学校名を北海道〜沖縄まで,ブロック毎に校種順で紹介しています。

             H12年度参加校の実践内容を一括して参照したいときに役立ちます。

        • Eスクエア・プロジェクト活動を広める意味で,Eスクエアのバナーを各紹介ページに張り付けていただきました。バナーは自由に利用していただいております。

          1. バナーのURL<http://www.cec.or.jp/es/E-square/banner.html

          Eスクエア・プロジェクト

2 実践教科等の区分と内容

       授業実践事例を教科/分野/領域別に,次の22項目に分類しました。

       多いものから列挙すると,次のようになりました。

       「情報24,地域13,国際6,環境5,その他の教科・科目1〜3(美術,数学,音楽,国語,社会,理科,保健体育,英語,生活,商業,機械,電気,電子,建築,土木,課外活動etc)」

       先生の情報化への関心は高く,教育実践は総合的な学習が最も多かった。

       数は少ないが,他の科目とか複数の科目にも応用する事例等も見られました。

        http://edb.schoolhelp.cec.or.jp/cis/html/index.html

       事例内容は多岐に亘りました。

       企画実践担当者の熱意でインターネットの活用方法の広がりを感じました。

       さらに,他校の事例とか地域・学校間の交流が児童・生徒,先生達の参考になっているようです。

       インターネットをあくまでも教育手段として利用しており,特に「人の心」に触れるところでは,児童・生徒,先生,地域,PTA,ボランティア等との直接的なふれ合い,意見交換の必要性が挙げられていました。時代が変わっても,コミュニケーションの重要性を再認識していただいたようです。

       今後,地域と密着した活動が継続実施され,良い人間関係ができていけば地域の中での広がりが出てくることを予感しました。

3 成果発表会での発表

       平成12年度成果発表会(52テーマを発表)では,学校企画から半数以上の28テーマを発表しました。

       各テーマの実践状況を20分程度で発表していただきました。

       テーマは目的別に8つの分科会に分けて発表しましたので好評でした。

        [分科会名称]

         A 教育と先進技術,B 教科教育,C 情報教育・情報リテラシー,D 地域学習

         E 環境・協働学習,F 地域の情報化,G 国際交流,H 特殊教育

          http://www.cec.or.jp/es/E-square/seika/program.html

4 キーワードとワンポイントアドバイス

       51の実践事例は「授業情報システム」に各実践校から直接登録していただきました。

       今年度の報告の共通的なものを「キーワードとワンポイントアドバイス」から,いくつか紹介します。

       個別の実践事例の詳細は授業情報システムを見てください。

        http://edb.schoolhelp.cec.or.jp/cis/html/index.html

      (1)キーワード

         各報告書で延べ,役90種類のキーワードが紹介されております。

         キーワードの多いものは,総合的な学習(18),ネットワーク(13),地域(10),TV会議(8),学校間交流(8),共同学習(7),国際(5),Webページ作成(4)の順になりました。その他はユニークなキーワード(1〜2)が挙げられています。総合的な学習の時間等で新しい教育にチャレンジしているため,幅の広いキーワードになっているものと思われます。

      (2)ワンポイントアドバイス

         これからの授業にインターネットを活用しようとする先生のために,実践経験に基づいたアドバイスをしていただきました。

         アドバイスのポイントは大きなものからすぐに役立つようなものまでありました。

         詳細は「授業情報システム」のテーマ毎に「メディア情報」欄に記載していますのでそちらをご覧ください。

         ここでは,主なポイントのみをご紹介しますので,今後の授業計画の参考としてください。

        (a)コミュニケーションについて

        • 事前にメール,掲示板,チャットなどを使い交流を深めておく。

        •  見学の観点や疑問点を事前のやりとりで,当日の交流が生きてくる。

        • 中継では,なるべく現物を見せるようにする。

        •  また,専門家にそばにいてもらって質疑応答すると良い。

        • なるべく実施する場所,時間帯で通信実験をしておく。見学先担当者との打ち合わせは不可欠。

        •  工場などは撮影禁止の所も多い。

        • まずは地域の生涯学習センターやボランティア団体の門をたたいてみることである。

        •  そこで,指導者がボランティアの方々と良い人間関係を作ることが大切である。

        • 通信手段は手紙とメ−ルの良さとの違いのように必要な時に適切な手段を利用することが大切である。

        • 教師間の意志疎通は,複数学校間の教師の連絡とお互いの意志疎通を密にする必要がある。

        • 物事を進めていくときには「教職員の理解を得る」ということが必要である。何度も何度も繰り返して説明し,根気強く説得できるかどうかで企画した内容が実行できるかどうかが決まる。

        •  また,授業展開の打ち合わせでは,教科間の枠を越えてそれぞれの会議などに積極的に参加して意見交換をおこなうことが有用である。

           今進めていることを教職員や生徒,あるいはPTAにWEBで紹介したり,月に何度か発行する通信文にできるだけ情報公開し,内容を理解してもらうことが大切である。

        • 学校間交流にあたって,校内電子メールで子どもたちにネチケットを身につけさせることが必要である。本校では,学校外への発信に先立って,校内電子メールや校内電子掲示板を利用するなかで,ネチケットの指導を行っている。校内の通信で子どもが犯すネチケット違反は,子どもたちにとって体験的に学ぶことができる大切な教材になる。

        • 複数校との共同学習の場合,お互いの進捗を知り,情報交換する手段として電子掲示板の活用が有効である。

        • プロジェクト型学習の場合,プロジェクトに参加する生徒・先生だけで行うのではなく,周りの生徒や先生を巻き込むことにより,協力を得ると共に,自分達はすごいことをやっているのだという充実感を得ることができる。

        • 生徒はもとより教員も商店街等の関係者と仲良くなることが,時代に遅れた的外れな学習活動を行わない第1歩である。

        • 援助をいただく方とは事前に綿密に打ち合わせをし,双方の思いをすりあわせておくことが大切(一方的にお願いするだけではだめだ)。そして,オンラインとオフライン両方の活動を,うまく取り合わせて計画することが大事である。

        (b)児童・生徒とのかかわり

        • 数多くの課題を同時に進行させる場合は教師がすべてを指導しようと考えず,他の機関との連絡調整に当たったり,児童の進行状況を把握することに力を注ぐことが大切である。児童も「私たちは先生も知らないすごいことを調べているんだ」という意識付けが学習意欲にもつながってくる。

        • 学校間交流を実施するにはたいへんな苦労があるように思われがちだが,計画さえしっかりしていれば,児童生徒は日常的に自由なやりとりを始めるようになる。

           なかなかコンピュータに近づいてくれない先生方には計画の意図を説明し,いかに賛同を得るかがポイントである。

        • 教材選びを生徒と教員が一緒に取り組むことで,教員自身が教科教育を再認識できる。

           また,生徒の理解度も向上できる可能性がある。

        • 生徒にインストラクターの役割をさせることにより,学ぶこととコミュニケーションを取ることに対して大きな問題提起となった。なるべくこのような場を多く設定してあげることが教育に有効である。

        • 参加者については,生徒にできること,ボランティアとしてできることを明確にし,よりよい関係を育てるための方法を初期の段階で関係者間で話合っておくべきである。

        • 教育終了後のアンケートで,参加者の求めるものを整理し,次の計画に反映するべきである。

        • インターネット検索をする上で,キーとなる用語を全体の場で話し合っておくことにより,絞り込み検索が容易になる。他の学習場面で自分が課題を持ったときに自分で考え自分で判断し,見通しを持って解決に取り組む力を育てるためには,教師が用意したリンク集を与えないことが大切である。

        (c)著作権

        • 文学作品そのものを紹介しようとする場合,当然のことながら著作権の問題が派生する。作者がすでに没後50年以上経過しているか,著作権フリーの作品であるかなどに十分配慮して学習教材を選定し,単元を構成していく必要がある。

        (d)運営体制

        • テレビ会議交流を実施してわかったことは,実施にはそれを支えるスタッフの手が不可欠であるということである。例えば,司会進行役,コンピュータ操作担当,テレビ電話に切り替える場合には,音声ミキサー,ビデオカメラ担当など授業の担当者1人ではとてもまかないきれない。今回は,外部より支援を受けることができたが,校内で協力体制をつくることが必要である。

        •  また,テレビ会議の場合,通訳ボランティアが通訳だけでなくコンピュータの操作や通信について熟知していることも実施の条件の一つになってくる。

        • 外部のボランティアの協力で一味違った,授業への取り組みや,思いがけない発見がある。
        •  学校図書館を,情報発信基地,新たな地域社会との交流の場にするのも有効である。

        • 総合的な学習の時間などの教育実践は複雑な要素を含むため,教師が監督,コーチ,プレーヤー,サポーターなどの複数の役割を校内,校外で連携を図る必要がある。

        •  また,情報化推進コーディネーターの配置が進められようとしているが,派遣が実施されるとコーディネーターとの連携も必要になってくる。

           学校情報化マネージャーのサポートをスポーツのチーム運営にたとえると,

            基本操作のサポート(基本練習),

            環境整備のサポート(グランド整備,用具の準備,手入れ),

            実践運営にかかわるサポート(練習試合,大会引率,他チームの顧問との連携),

            情報化推進コーディネーターとの連携(外部コーチとの連携)

           というように考えることができる。

        • メールボランティアや情報化推進担当者などの学習支援体制をインターネットやコミュニティ放送といった地域に開かれた「ネットワーク」と結びつけて活用することにより,子どもたちの学習活動は大きく活性化される。

        • 地域の協力が必要である。

        •  子どもたちの広がった課題を地域調査にどのように反映させていくかが大切である。

           ゲームソフトウェア・インターネット等,課題設定に多くの時間を使うことになるので,時間配分を考慮する必要がある。

        • 地域社会を対象としたインターネット研修会の実施は,学校職員の日頃の地域活動(例えば研究会活動等)があれば比較的容易に運営することができる。
        •  また,地域の教職員を対象にする場合は,地域の教育委員会等の連携は欠かすことのできない条件であろう。

           ネットディに相当する地域活動は,幅広い知識や経験・技術を必要とするので,地域社会の専門家の援助が避けられない。そのため情報技術に関連のある業界団体やボランティアの参加した組織があると活動し易い。

        (e)その他

        • デジカメは多いに越したことはない。せめてグループに1台は必要である。

        • お宝探しは1年間かけてじっくりと取り組み,取捨選択するとよい。 

        • インターネットTV電話は簡単なシステムであり,気軽な交流にはとてもよい。

        以上



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