3部 インターネット教育利用の先進的実践研究

全体編 先進的実践研究の総括


戻る 次へ
目次へ 総目次へ

5.各企画の概要

5.1 インターネット小中学校安全教育ガイドCD-ROM作成(報告書

      (1)概要:

         当プロジェクトでは、小中学校の教師がネット安全教育を行う際に必要な知識を体系化したCD-ROMを作成することとした。ネットの本当の危険とはなにか、どのような事件が実際に起こりまた想定されるか、それらを未然に防ぐにはどうしたらよいか、ネットを使った授業で安全教育をどのように盛り込んでいくべきか、問題が起きたらどうしたらよいかなどの、家庭や教室で即応用できる項目を具体例(過去の事件例)を参照できる形で提示する。また、理解しやすいステップバイステップの解説とともに近年利用されている子供用安全ソフトウエアの検証結果も加え、一枚のCD-ROMに最新のネット安全資料を最大限に盛り込むこととする。これをもとにすれば、親と教師は子供の理解能力と年齢に応じた具体例と教訓(=ルール)を、わかりやすく適切に提示することができる。

      (2)成果

         ネット安全について指導するための系統立った指導書や参考書はない。このプロジェクトの成果物である「インターネット安全教育ガイド」によって、教育現場で必須になると予想される将来の教育項目を提示すると同時に、教師の意識を高め、教師を通じて子どもたちの安全意識が高まることが期待できる。目標収集例150点を上回り、252点を収集、うち179点を実例としてあげることができた。収集にあたって困難だった点は、子どもに関する事件は、他のネット関連事件に比べて大きく報道されないことや年齢不詳の場合が多いことなどである。

         東京都台東区立根岸小学校、富山県福光町立吉江中学校、京都府立城陽養護学校、茨城県取手市立第一中学校、福岡県わくわくパソコンくらぶ等の教育現場でベーターテストを実施し、指導者の先生方の意見を収集することもできた。用語、インターフェース等について具体的な改善要望も出されている。

         今後の課題として、

        • 操作性・内容のさらなる充実

        • 大量のCD−ROM作成による普及

        • CD−ROMとネットとの連携による情報の鮮度の維持が上げられる。

5.2 「ネット社会の歩き方」教育指導カリキュラム及び体験ソフトの開発(報告書

      (1)概要

         いわゆるネットルール教育の重要性は多くの教員が認識しつつも、ほとんどの教員が「何をどのようにして教えればよいのか」が解らないのが現状である。他方、技術の進化と普及(例えば、i-modeの普及、プレイステーション2のネット接続、MP3ウォークマン等)により、小中学生のネット社会への参画はもはや現実のものとなっています。トラブル等を未然に防ぐ(あるいはそれに的確に対処する)ためにも、ネット社会における一定のルールを教えておく必要性は高く、学校教育はもとより、ネット教育の出来ない家庭からのニーズも強い状況である。そこで児童・生徒が教室で可能な限りリアルな情報社会との接触を体験し得るソフトを開発し、ネット社会の歩き方を学習させるためのカリキュラムとともにEスクエアで公開するなどして学校、家庭に広く供することとする。

      (2)成果

         以下の教材が提供可能となった。

        <教材の内容>

          a.カリキュラム

             それぞれの学習テーマに応じて、どのソフトウェアを利用して、どのように授業を進めるか指導資料(学習事例)を用意した。学習テーマが現在の学習指導要領に準じていない部分もあり、教える側にも充分な知識や資料が無いケースがあり、できるだけ参考データのURLも掲載し授業で利活用できるようにした。

          b.ソフトウェア

          • 学習ユニット:それぞれの学習テーマに関連したムービーを児童・生徒が見て、問題点を発見したり、何故そのような問題点が発生したのか、原因を考える。また、問題が発生した場合の対処方法について話し合ったり、調べたりしながら、ネット社会でのいろいろな知識を身に付けるための糸口とする。そのテーマとして、個人情報の保護、チャットの危険性、ウィルス等14場面を設定した。

          • 電脳商店街:それぞれの商店でショッピングを体験し、気を付けるべき事柄を知る。ショッピングサイトを選ぶポイントや問題点が発生した場合の対処方法、注文する時の注意点などが体験をとおして身に付ける。

        <学習の進め方(案)>

           この教材を用いて、いくつかの授業展開が考えられる。

           第一に、ひとつのスクリーンを皆で見ながら話し合う。教える側がそれぞれの場面ごとに簡単に説明を加えながら、生徒に問いかける。

           第二に、グループでひとつの画面を見ながら、与えられた「問いかけ」について話し合い、そこで出された児童生徒の意見をワークシートや「掲示板」「アンケート」に記入する。

           第三に、ひとりひとりが、自分のペースでムービーを見ながら、ひととおり見終わった時点で「アンケート」に記入し、その後、話し合いを行う。

           その参考にするためにそれぞれ「学習指導案」や「アンケート」も用意した。さらに、関連するウェブページのURLリンク集も用意されているので、グループや個人でテーマを発展させるための研究にも役立つであろう。

           今後の課題としては、教材の充実及び改良と指導資料及び実践事例の充実を図る必要がある。

5.3 国際交流支援システムの開発及び実証実験(報告書

      (1)概要

         国際交流の第一歩としての英文作成を考えた場合、障壁を低くするための手段として、翻訳エンジンを利用することが考えられる。しかし、現状の翻訳エンジンの性能では、任意の日本語文章を正しい(意味の通じる)英文に翻訳することは困難である。生徒が各々異なる文書を作成することを考えると、翻訳の誤りを教師が逐一指摘・修正することは現実的ではなく、授業において利用することは難しい。授業での利用を考えた場合、任意の日本語文章に対して、意味が通じない可能性のある精度の低い英文を提示するよりも、記述したいイメージに対して文法的な正しさ(意味が通じる)は保証された候補例文が提示される方が望ましいと考えられる。

         そこで本システムでは、表現したいイメージやキーワードを入力することにより、それに対応すると考えられる候補例文が提示される方式を採用する。

      (2)成果

      課題

5.4 特殊教育支援機器活用相談ネットワーク・センターの実践研究(報告書

      (1)概要

         これまでの特殊教育における実践研究では、コンピュータやインターネットの活用が、障害がある子どもたちの主体的な学習活動、自立的な生活、社会参加の支援に欠かせない手段となっていることが報告されている。しかし、コンピュータやインターネットの活用を進めるにあたっては、現在の情報機器操作環境やインターネット環境が必ずしも障害のある子どもたちが操作することを想定していない。その利用上の障壁を乗り越えるための支援の方策、つまり、「支援機器」(ハード及びソフトを含めたアクセシビリティ機器)の提供、活用が必須である。

         ところが、近年、支援機器が市場に提供されたり、支援機器を紹介する情報がインターネットで提供されたりするようになっているにもかかわらず、学校現場や家庭などで支援機器の活用が十分に進んでいないのが現状である。

         この問題の研究のため、インターネット上に「特殊教育支援機器活用相談ネットワーク・センター」を開設し、機器の支援や活用相談を行うことにより「支援機器活用に関する実際的なニーズ、課題、解決策」や「インターネットによる支援機器活用に関する相談業務の可能性と課題」を調査、明確にすることを目的とする。

      (2)成果

        a.インターネットによる支援機器活用に関する相談業務の可能性と課題

           本実践研究を通じて、「本センターは障害がある子ども、教師、保護者等に必要である」「本センターからの回答・支援は支援機器活用推進に役立った」等の結果が得られ、インターネットを利用した本センターの必要性・有効性が検証できた。この背景として、障害者用の支援機器が高価であり、機能や使用方法に精通している人が少ないため、相談だけでなく貸し出しも行う本センターが貴重な存在となったことが考えられる。

           今後の課題として、高速ネットワークを利用したテレビ会議システムでの相談対応、相談者自身が次の相談者へのアドバイザーとして対応、相談事例の蓄積を通して系統化されたQ&A集を作り上げること等が考えられる。また、地域ごとの相談センターや貸し出しセンターが整備されることで、相談者にとって支援機器がより利用しやすい身近なものになっていくのではないかと考えている。さまざまな情報交換を行うためには全国規模での相談センターも必要であるが、より地域に密着した相談センターも必要であり、特殊教育諸学校が本センターのような役割を持つ可能性も考えられる。

        b.まとめ

           本実践研究は、障害がある子どもたちの教育における支援機器の活用を促進するための相談センターの機能と効果的な運用の在り方を検討するために行われた。本センター開設後、約5ケ月間に相談28件、貸出13件の利用があり、特殊教育における支援機器のニーズの高さを示している。今後、地域密着型の一次的支援センターとそれら相互の連携を図る広範な二次的支援体制の整備が求められる。本実践研究のようなボランタリーなシステムが先行的役割を果たすにしても、将来的には公的機関やNPO、企業等も含めた全国規模の相談ネットワーク体制の確立が必要である。

5.5 インターネット電子地図を利用した協働学習環境の構築(報告書

      (1)概要

         総合的な学習の導入などにより、コンピュータを利用したグループ学習や、インターネットを利用した調査や情報発信がますます重視されるようになってきている。グループ学習では、学区内などの身近な地域を対象として、あるテーマに沿った調査発表を行うことが広く行われている.このような学習では、大縮尺の地図を用いて調査したり、地図に調査結果を書き込んだりして学習を進める。また、異なる地方の生活や文化を学習する際には、小縮尺の地図やインターネットなどを利用して調査を行うと共に、異なる地方への情報発信と交流・協働学習などを行う.どちらの場合でも、取り纏めや発表などに、地図やコンピュータのマルチメディア機能が重要な役割を果たすことになると考えられる。

         このように、地域や全国の様々な事柄を調査・学習するために地図が利用されており、コンピュータの利用やインターネットの利用と相乗効果をもたせるためには、単なる紙の地図ではなく、コンピュータ上で利用できる電子地図の役割が非常に大きくなると考えられる。さらに、調査結果の取り纏めをグループで行うためには、電子地図に複数の生徒が様々な調査結果を書き込める機能が必要である.また、学習結果の発表を教室内にとどめず、全国に発信することが非常に重要となる。情報の発信により児童・生徒の学習意欲が向上するし、多くの人々に見てもらうことにより、大きな達成感を得ることができる。逆に、その学習内容を見る方にとっては、様々な地域の特徴などを調査・学習する優れた教材ともなる。

         本プロジェクトは,インターネット電子地図を総合的な学習や社会科学習に応用する実証実験である.本プロジェクトでは,以下のような活動を行う.

        • インターネット上で教育機関が利用できる電子地図サーバーを設置・構築する

        • 児童・生徒が,各種のデータを場所に関連付けて,電子地図に記録,検索できるようにする

        • 複数の学校による協働実践を支援できる機能を構築する

        • インターネット電子地図を利用した学習の方法と効果を実証的に研究・検証する

        • インターネット電子地図の利用マニュアルや,実践例を取りまとめる

        • インターネット電子地図サーバーのアクセスパターン等の運用情報を収集する

      (2)成果

         本プロジェクトの中核となるインターネット電子地図は、文章や画像などをはじめとするマルチメディア情報を、場所と関連付けて記録・参照できる機能を持っている。この機能を利用することにより、子供たちが学習における調査などで得た多様なマルチメディア情報を、コンピュータ上の電子地図上に記録、整理、分析、表現などしていくまとめ学習に利用することができる。学習の対象としては、簡単に思い付くものだけでも、地域の産業、商業、風物、歴史、環境、動植物、保健福祉など多岐にわたり、その活用範囲は非常に広い。

        a.教育の実施内容

        • 自分たちで調べた地域の情報をインターネット上の電子地図に記入し、全国に公開できる。

        • インターネット上の電子地図を通じて、多数の学校と協働学習を行える。

        • インターネット上の電子地図を利用することにより、社会科、理科、総合的な学習の時間をはじめ、様々な教科でコンピュータを活用した教育を実施することが出来る。

        b.実証授業の実施

           以下のような教科の単元で実証授業を実施した。

          • 粕屋中央小学校 第3学年 社会科 単元「わたしたちのくらしと物をつくるしごと」

          • 大川小学校 第6学年 総合 単元「森と地球環境」

          • 粕屋西小学校 第5学年 社会科 単元「これからの工業と環境」

        c.教育分野における基幹情報サービス

           本インターネット電子地図システムは汎用性があり、実証授業の結果から、教育分野における基幹情報サービスの可能性を秘めている。

        d.成果と課題

           実証授業を3小学校で行うことにより、インターネット電子地図の教育分野での活用の有効性が確認された。インターネット電子地図は、小中学校の既存のコンピュータ利用環境で容易に利用できる上に、地図に関連した多様な分野での利用可能であるため、多数の小中学校での利用が急速に進展するものと考えられる。

           今後の課題としては、インターネット電子地図の特徴を積極的に活用した授業・カリキュラムの研究、開発、実証、普及が上げられる。特に、環境調査マップやバリアフリーマップなどを対象とした、広域の協働学習での活用が考えられる。また、現在のインターネット電子地図には情報を入力し表示するといった基本的な機能しか実装されていないが、今後は、様々な学習利用法に対応したシステムの機能整備が必要である。

5.6 モバイルGIS(地理情報システム)を用いたフィールドワーク〈野外調査〉ツールの開発(報告書

      (1)概要

         今後、小中学校における社会科、理科や総合的学習では、フィールドワークによる児童・生徒が独自の地図を作成することが重要な学習活動となる。

         また、学校・教室のマルチメディア化は徐々に進んでおり、それに対応した携帯型コンピュータによるフィールドワーク用の簡易な機材及びソフトの開発が要求されている。

         本プロジェクトでは、すでに開発されている学習用GIS(地理情報システム)とモバイルを利用したフィールドワーク(野外調査)ツールを開発し総合的に連携させることによって、マルチメディアを利用した新しい学習形態を模索する。

         小学校段階での環境教育(川の調査や森の調査など)や中学校での地理、理科学習における身近な地域の調査(街の環境地図、商店街の変化など)などの「総合的学習」で利用する。

         作成された成果は学習者がHPなどで発信し、また、授業者が所属する教育研究学会である生態学会、環境教育学会、地理教育学会、地図学会等で発表することによって、広く教育の場での利用を啓発することができる。今後、デバイスの低価格化、GISの考え方が教育の場で普及すれば、総合的学習の重要な学習活動となるフィールドワークで、モバイルGISを用いた学習形態が一般的なものとなるであろう。本プロジェクトはその先駆けである。

      (2)成果

         ハード,ソフトとも,インターフェース部分でいくつか課題(日光下でのTFT液晶の視認性、文字入力の煩雑さ等)は残ったが,実際に授業で使えるようなツールが開発できた。

         本プロジェクトでの成果は中学校段階での環境教育や地理学習の他,2002年より導入される「総合的な学習の時間」で利用でき,新しい情報環境を利用した新しい形の教育の提言に役立つと考える。

         さらに多くの学校で利用されるためには,このツールを使った授業プログラムの整備とその学習材としてある程度パッケージ化したソフト提供のしくみが必要と考える。

5.7 不登校児童・生徒を対象にした電子カウンセリング支援システムの構築(報告書

      (1)概要

         近年、いじめや学級崩壊などが教育現場の大きな問題となってきていて、中でも不登校児童・生徒が顕著な問題として表れている。国としても、これらに対して教育相談体制や「心の教育」の充実や図っているが、すべての問題を解決するに至っていない。

         児童・生徒の心をめぐる問題は広範で多様であり、その対応にも各種の施策が必要である。現在、対面のカウンセリング、電話相談などの方法が一般的に採られているが、いままでの研究からインターネットが、対面方法と異なったコミュニケーション方法を提供し、児童・生徒と、両親、カウンセラー、学校のクラス担任とのコミュニケーションを促進することが予想されている。

        a.目的とねらい

           本プロジェクトは「児童生徒の心」を扱うものであり、単年度では完全な成果を目指すことは難しいため、今回は次の項目の内、実施期間内で可能な基本的な事項について目標を絞り実施する。

            a)児童生徒と、両親、カウンセラー、教師にとって有効なカウンセリングシステムの要件の調査、作成と運用

            b)インターネットでのカウンセリング方法の確立

            c)セキュリティを含むシステム運用方法の確立

            d)電子カウンセリングシステム利用によるコミュニケーションの改善状況の評価

      (2)成果

        a.プロジェクトの方針

          a)電子カウンセリングシステムとしての基本機能の確立

          •  今後日本国内で電子カウンセリングシステムのモデルとなるよう、特定のカウンセリング方式に依存しない一般機能を構築した。これにあたり、すでに稼動している韓国の同等システムの調査を行った。

          •  相談者とカウンセラーのコミュニケーション機能だけでなく、カウンセリング記録の評価、運用上のセキュリティ等の、電子カウンセリングシステムとして必要な総合的な機能の検討、構築を行った。

          b)実際のカウンセリング現場での使用

          •  一時的な研究評価ではなく、教育センターという一般のカウンセリング現場でインターネット・カウンセリングを導入するまでの手順、問題等を確認することとした。

          •  今回のシステムは、今後いろいろな場面での利用普及を考慮し、いくつかの運用形態に対応するよう設計した。

          c)電子カウンセリングシステムに対する要件

             韓国でシステムを開発している研究者より、カウンセリングシステムの留意点として

            • システムのセキュリティ

            • カウンセリング経過の記録を重視するようにアドバイスを受けた。

             韓国国内でも、カウンセリングデータの評価・分析をでるきような機能の追加が始まっているとのこと。

             同様な指摘は、所沢市立教育センターでメールでのカウンセリングを実施した担当者からも、指摘を受けた。また、評価機能としては、今回同教育センターで使用している不登校児童の状態変化のチェックリストを組み込んだ。

        b.システム概要

        • 学校でのコンピュータの専門家がいない場所での運用を考慮し、Webベースで利用できるようにした。

        • データアクセス及び操作の権限の階層をカウンセラーに想定して、各カウンセラーの権限を設定できるようにした。

        • カウンセラーと相談者のメールアドレスと内容の保護と管理のため、中間メールアドレスを利用した仕組みを構築した。

        • 評価において、カウンセラー自身のコメントや区分けができるようにするとともに、外部研究者にデータを提供するため、相談者情報を隠す伏せ字機能等を組み込んだ。

5.8 世界規模の仮想企業経営学習プログラムを支援する電子商取引システムの開発(報告書

      (1)概要

         仮想企業経営プログラムは、参加する生徒が、実存の企業であるビジネス・パートナー(支援企業)の支援のもと、販売する商品を決め、広報ツールを作成し、他の参加校と商取引きしながら企業運営を行う国際ビジネスのシミュレーションである。このプログラムは、世界規模のネットワークプログラムの一部であり、現在、30カ国以上、約3,000校が参加しており、その数はここ数年急速に増加している。生徒の主体的な教育活動を支援し、国際化、情報化社会に対応できる人材を育成するプログラムとして、このような仮想企業経営プログラムを導入するのは、国際的な流れと言える。このネットワークの参加国は、それぞれその国の事情にあった銀行システムや商取引システムを開発し、国内外の参加校と取引きを実施している。

         本テーマで開発する電子銀行システムは、従来、マニュアルで実施していた商取引決算を、インターネット上で電子的に行い、企業経営をよりリアルに体験することを可能にする。また、従来、地理的・時間的な条件に制約され容易でなかった、複数校による共同学習環境を提供するものである。

      (2)成果

        a.電子商取引システム概要

           「電子商取引システム」は参加校の生徒が設立したバーチャル・カンパニーのセントラル・オフィスの役割をする起業家教育センター内に設置され、銀行システムのような機能を持たせ、そのサービスを参加校に対して提供した。

          機能の一部

          • 会社・社員の口座(普通預金、定期、クレジット)の開設と管理

          • オンラインショッピング

          • クレジット決済

          • 国内外の参加校への送金

          • 残高照会、取引照会    等々

           参加校は、センターから発行されたIDとパスワードによりこのシステムに入り、会社登録と社員登録を実施して、システムを利用し他校と電子取引できるためのIDとパスワードを発行される。

        b.まとめ

           3校ともに、電子商取引システムを使ってのバーチャル・カンパニーの導入が初めてであったこともあり、予期しなかった問題が発生し、学期初めに作成した授業計画どおりには授業が進まなかったが、その中で、生徒と教員がお互いに工夫しながら、問題を解決した1年となったようである。

           今後の課題としては、1)教師から指示がないと積極的に活動できない生徒への誘導をどのように図っていくか、2)支援企業とのより効果的なパートナーシップづくり、3)教員へのシステムの利用などの研修の充実、4)システム機能の向上、5)授業担当教員では指導できない分野(英語、ホームページ作成、企業知識など)においての他の教科担当教員との連携、6)体験をよりリアルにしていくための商品の実際販売、7)海外の参加校との活発な交流などがあげられた。

          <参加校情報>

            京都府立大江高等学校ソフト経済科情報処理コース「総合実践」3年(28名)

            京都市立西京商業高等学校情報処理コース「総合実践」 3年 (75名)

            学)武田学園呉港高等学校機械学科3年 (25名) 「課題研究」

            参加人数:生徒 計128名

            支援企業:大江高等学校―グンゼ株式会社宮津工場、大江町商工会

            西京商業高等学校―京都三条会商店街振興組合、大阪ガス(株)、京セラ(株)

            学)呉武田学園呉港高等学校―(株)ミツトヨ、呉糧配協同組合



Eスクエア プロジェクト ホームページへ
トップへ