I.「特殊教育支援機器
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100校プロジェクトをはじめとするこれまでの特殊教育における実践研究では、コンピュータやインターネットの活用が、障害のある子どもたちの主体的な学習活動、自立的な生活、社会参加の支援に欠かせない手段となっていることが報告されている。しかし、コンピュータやインターネットの活用を進めるにあたっては、現在の情報機器やインターネット環境障害のある子どもたちが操作することをが必ずしも想定されていないため、その利用上の障壁を乗り越えるために「支援機器」(ハードウェア及びソフトウェアを含めたアクセシビリティ機器)の提供、活用が必須である。障害のある子どもたちにとってコンピュータやインターネットは、障害の状態に適合した支援機器を活用することにより、障害によるコミュニケーション活動の制約、社会参加の制限等を軽減し、自立的な生活を支援する有力な手段と成り得るのである。
ところが、近年、支援機器が市場に提供されたり、支援機器を紹介する情報がインターネットで提供されたりするようになっているにもかかわらず、学校現場や家庭等で支援機器の活用が十分に進んでいないのが現状である。
学校現場や家庭等で支援機器の活用が十分に進んでいない要因として、以下の点を指摘することができる。
子どもたちの障害の状態に適合した支援機器の機能や利用方法等に関する詳しい情報の提供が不十分である。
実際に試用してみないと子どもたちに有効な支援機器であるかどうかの判断が困難なことが多い。
支援機器は高価な場合があり、このため、教育現場や家庭等で複数の支援機器を購入して最適な支援機器を試用し、選択することが困難である。
d)子どもたちの障害の状態は一定ではなく時間の経過とともに変化するケースも多いため、最適なアクセシビリティを確保するには支援機器の設定変更、あるいは、異なる支援機器が必要となる。
支援機器の接続やセットアップ等は専門的な知識を必要とするため、経験のある支援者のサポートが必要である。
支援機器に関する知識や経験のある支援者がニーズのある子どもたちの近隣に存在しない場合が多く、実際的な支援を受けることが困難である。
ニーズに対応した支援機器の提供がまだ不十分である。
これらの課題を解決し、子どもたちの障害の状態に適合した支援機器の利用を推進するためには、次の3つの条件を確保することが必要である。
ニーズに応じた支援機器の情報及び活用の情報が提供される。(情報の提供)
試用できる支援機器が提供される。(機器の試用)
支援者の直接的なサポートを受けることができる。(支援者のサポート)
そこで、距離、時間等の障壁が無いというインターネットの特性を利用し、上記条件が機能する「特殊教育支援機器活用相談ネットワーク・センター」(以降、本センターと記す)を設立、運営し、a.〜g.の課題を解決すること(以降、本プロジェクトと記す)は、コンピュータやインターネットの活用を推進する極めて有効な対応であると考えた。
本プロジェクトでは、本センターの開設、運営を通して、支援機器の活用に関して以下1.2.を調査、明確にすることを目的とした。
支援機器活用に関するニーズと課題
インターネットによる支援機器活用に関する相談業務の可能性と課題