I.「特殊教育支援機器
活用相談ネットワーク・センター」の実践研究


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6.研究のまとめ

       本実践研究は、障害のある子どもたちの教育における支援機器の活用を促進するための支援センターの機能と効果的な運用の在り方を検討するために行われたものである。現代社会においてコンピュータやインターネットの普及は、多くの人々に様々な恩恵をもたらしている。これらの情報機器は、障害のある人々にとっても有効性の高いものであろう。むしろ、障害のある人々にとってこそ、その障害ゆえの不便さを補い学習や生活をより豊にし、社会参加を可能にする機器として活用し得るものとして期待されている。

       このように障害のある人々の支援機器利用に対するニーズは高いのだが、それを利用できる条件は十分には整っていない。いわゆるデジタルディバイド(情報格差)が社会問題として認識されてきた現在、障害のある人々にとっての情報機器へのアクセシビリティの向上は、社会的急務となっている。

       平成12年9月、特殊教育における支援機器に関する情報の提供、活用にあたっての相談、機器の貸し出し等の機能を持つ本センターを設置し、その窓口としてホームページを開設、支援機器の情報を提供すると共に、その活用にあたっての教師や保護者からの相談をインターネット上で受付け、それに応えるという活動を行った。また、必要に応じて機器の貸し出し、セットアップ等の訪問支援も行った。支援者には本実践研究の委員があたると共に、委員の推薦をもとに外部にも支援スタッフを依頼した。本センターの設置について、関連学会でのアナウンス、新聞、雑誌等での紹介を通して周知に努めた。

       開設後、約5ケ月しか経過していないが、それにもかかわらず少なくない利用があり、特殊教育における支援機器に関するニーズの高さを示していると思われる。相談者に対するアンケート結果からも、本センターの必要性・有効性が示唆された。しかし、いくつかの課題も明らかになった。特に、障害のある子どもたちへの支援機器及び支援方法の個別性の高さに鑑み、その相談もまた個別的にならざるを得ず、オンサイトを含む地域密着型の支援体制が一次的には求められる。文部科学省が「21世紀の特殊教育のあり方について」で示した特殊教育諸学校の「地域センター機能」の中に、このような機能を期待したい。

       本実践研究の相談事例は比較的障害の重い子どもたちが多かったが、学習障害やADHD、高機能自閉等、比較的障害の軽い子どもたちへの支援については今後の大きな課題である。文部科学省が新たに示した「特別支援教育」構想で方向づけられた、通常の学級における特別ニーズへの対応においても支援機器の果たす役割は大きく、相談センターの活動が期待される。

       今後、地域密着型の一次的支援センターとそれら相互の連携を図る広範な二次的支援体制の整備が求められる。障害のある子どもたちへの支援は、個別的であるがゆえに、より広範なノウハウの蓄積や支援機器の充実が必要であり、全国規模でのネットワークの下での情報の交換と集積が不可欠なのである。

       これらを実現するためには、本実践研究のようなボランタリーなシステムが先行的役割を果たすにしても、将来的には公的機関、NPO、企業等も含めた全国規模の支援ネットワーク体制の確立が必要であることが指摘された。

実施企業・団体名:富士通 株式会社



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