ネット社会の歩き方 実践研究報告書


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8.課題とまとめ

       以下の項目について示す。

      ○中間成果発表会での指摘事項の対応
      ○最終段階での委員からの意見・要望
      ○実践授業結果(教師の立場)からの感想・意見・要望
      ○児童・生徒からの意見・感想
      ○まとめ

8.1 中間成果発表会での指摘事項の対応

       平成12年11月10日に実施された中間成果発表会で指摘された以下の項目について、その対応を示す。

      ○教科との対応
      ○開発内容が関連業界へ与える影響についての配慮
      ○どの部分が先進性か
      ○進捗について

      (1)教科との対応

         「ご利用上の注意」のページ「教科との対応について」で、学校教育現場でのご利用に際しての留意事項で、以下の様に記載した。


         当サイトのテーマは、インターネットの利活用が学校のみならず家庭でも急速に普及し、かつ、携帯電話など端末の多様化が進行する現状を踏まえて、生活安全教育(消費者教育)やネットワークモラル教育を行うものであり、扱う内容は必ずしも現行の学習指導要領には準じていない内容となっております。


         また、山梨大学教育人間科学部付属中学校の実践報告の中において、どの教科で行うか、その具体例を記載した。「7.2項参照の事」

      (2)開発内容が関連業界へ与える影響についての配慮

          消費者教育の一つであり、教材の内容については関連業界への配慮も必要である。そのため、開発途中で一般公開し、i-ethics(情報倫理メーリングリスト)やその他の教育関連のメーリングリストで開発したコンテンツに関して意見を求めた。また、「ご利用上の注意」のページにおいて、学校教育現場でのご利用に際しての留意事項「教材の内容について」で、以下の様に記載した。


         当サイトは、開発主旨において、電子商取引などの生活を豊かにする社会サービスについて賢い利用者・賢い消費者を育成することで、これらの社会サービスが健全に発展し、利活用が進むことを意図しております。

         生活安全教育の観点から消費者保護の立場での内容が中心となりがちですが、同時にプラス面についても扱っておりますので、教育学習の場面におきましても、マイナスの面だけでなくプラス面についてもバランスよく扱うようにお願いいたします。また、もし、教材内容についてお気づきの点があれば、当事務局までご連絡をお願いいたします。


      (3)どの部分が先進性か

         インターネットを活用した先進的な授業を実践している現場の教師の意見をもとに、インターネット社会向け消費者教育のための新しい学校教育用コンテンツの開発という考えで取り組んだ。そして、開発成果はインターネットを活用した教育について経験豊かな教師のためでなく、広く一般の教師にも利活用していただくよう利用手引き(学習指導資料や関連資料)を併せて開発した。

      (4)進捗について

         開発の一部遅れが発生していたが、開発した学習ユニットで実践授業を実施し、その成果を他の学習ユニットの開発に反映し、最終的には計画した教材(学習ユニット、電脳商店街、アーカイブ)とカリキュラム(指導資料、リンク集)を開発した。

8.2 最終段階での検討委員会からの意見

      最終的な開発成果に対して、委員からの意見をまとめた。

      番号

      内容

      カテゴリ

      備考

      効果音、BGMなどによる興味・関心の向上(授業ではうるさい場合があるので、有無を指定できるように)

      改善案

      学習ユニット

      最後の画面から教師の操作で解説画面を表示。あわせて解説のナレーションを入れる

      改善案

      学習ユニット

      クイズ画面(学習成果の確認や知識の定着)

      要望

      新規教材

      ムービーのクオリティ向上

      要望

      学習ユニット

      漢字にルビがふる

      改善案

      学習ユニット

      アニメーション・ムービーで問題提起から解説(問題の解説・対処方法・正しい習慣)を1セットの学習ユニットを60個位作る

      改善案

      学習ユニット

      電脳商店街にオークションサイトの開設

      (現実に発生して重要な問題)

      要望

      電脳商店街

8.3 実践授業結果からの感想・意見・要望

      実践授業後、教師からの感想・意見・要望をまとめた。

      番号

      内容

      カテゴリ

      備考

      現実に発生している事例の追加

      (例えば、実際に送られてきた勧誘メールの提示など)

      追加要望

      学習ユニット

      動きのある絵(アニメ風)による学習テーマの提示は生徒の興味・関心の向上に効果がある

      感想

      学習ユニット

      BGMや効果音、ナレーションの追加

      追加要望

      学習ユニット

      疑似体験により、主体的な生徒の活動時間があり、授業し易い

      感想

      電脳商店街

      擬似的にでも体験できることは意味がある

      感想

      電脳商店街

      サイバー調査官という設定でショッピングサイトを批判的に分析する態度が養われた

      感想

      電脳商店街

      「着払い」を選んだのに、記入欄があると、すべての欄に記入してしまう

      改善要望

      電脳商店街

      注文個数が、いたずらできる。巨大な数字をいれて、乗数表示になってしまう

      改善要望
      対処済み

      電脳商店街

      解説画面を追加し、自習教材での活用も可能とする。

      改善要望

      学習ユニット

      10

      これまで自分たちが作ってきたホームページについても責任ある情報だったか振り返る良い機会となった。

      感想

      学習ユニット

      11

      知的所有権の保護の立場からすると、出版物の方が出版物の方がわかりやすいが、現実的にはホームページの写真やアニメキャラクタをコピー&ペーストする場合が多い。また、図工などで他人の作品の良い部分をまねしたりすることが結構あるので、知的所有権の概念はなかなか子どもたちの頭では理解しにくい概念のようだった。

      感想

      学習ユニット

      12

      お金を払ってしまうと、商品の取り替えができない学習ができた。特に学習後「電脳商店街」の体験をし、何人かが「雲隠れ」を疑似体験できたので、効果的だった。前払い、代引き、暮れジッドカード利用など、いろいろな入金方法があることを合わせて学習した。

      感想

      学習ユニット

      13

      学習ユニット後に電脳商店街を疑似体験させた。意図的に数値が違う商店があり、入力者が各画面で注意深くしていないと大変になることを学習できた。

      それぞれの学習ユニットにおいて、一斉学習したあと、疑似体験コーナーを設置すると効果が高まると感じた。

      感想

      学習ユニット

      14

      専門用語をかみ砕いた形で説明するページをアニメの中に入れ、例えば「こんなことですよ。・・・」といってアニメを見せられるようになると自学システムとしても完成度が高くなるのではないか。

      感想

      学習ユニット

8.4 児童・生徒からの意見・感想

      実践授業後、児童・生徒からの意見・感想をまとめた。

      番号

      内容

      備考

      インタ−ネット上では、全国のたくさんの人がそのペ−ジを読んでいるので、個人的な悪口やウソや周りの人に迷惑になるようなことは、載せてはいかないことが、よくわかりました。

      学習ユニット

      マンガは良かったけど中途半端で終わってたから最後までやったほうがいいとおもいました。

      学習ユニット

      内容が少ない

      学習ユニット

      表示する速度が遅い

      学習ユニット

      わかりやすいのでもっと種類を増やしてほしい

      学習ユニット

      非常に分かりやすい説明で、登場人物達が動くのが面白い。と思っている。それから、動くのが遅かった。

      学習ユニット

      商品が届く画面などが出て本当に買い物をしているようだった。どこを注意して買い物をすればいいか分かった。

      電脳商店街

      やはりこういうことは学校で教えるべき問題なのだろうと思った。
      いろいろなコースがあるので、そちらもやってみたくなり技術が楽しみです。

      電脳商店街

      このような疑似体験ができるホームページやソフトを開発していくことを望みます。

      電脳商店街

      10

      インターネットは便利だと思うが、問題点もたくさんあることがよくわかった。

      電脳商店街

8.5 まとめ

       教師からの授業実践の報告や約980件の生徒からのアンケートを得え、前項において主な意見・感想や課題を載せた。ここでは、それらをもとに開発された教材の有効性や課題などをまとめた。

      (1)技術的観点からの評価指標

         本プロジェクトでの技術的観点での評価項目として、コンテンツの表示速度とデザインについて報告する。評価方法は、授業実践後、直ちに生徒たちから評価アンケートを回収し、その結果を集計した。専門的・科学的分析は別の機会に行うこととし、ここでは統計数値を中心に報告する。

        a.コンテンツの表示速度

           教材として開発した学習ユニットと電脳商店街は、生徒の興味・関心をひきつけるためにアニメーション・ムービーによる表示を行った。マクロメディア社のFLASH5日本語版で開発し、ムービー再生はFLASH Playerで行うようになっている。

           ムービーファイルは、サーバーからダウンロードして再生される。このダウンロード時間が長くならないよう、ファイルサイズの最大を200KBとした。

           −ダウンロード時間の計算方法−

            学習ユニット毎、電脳商店街ともにファイルサイズは40KB〜200KBであり、10BASE-Tの実効速度8MBPSの40台同時アクセスの場合、

            8,000KBPS/8ビット/40台=25KB/秒

            よって、40KB〜200KBの場合、ダウンロード時間は1.6秒〜8秒。

           ISDN(64KBPS)で1台の場合は

           50KBPS/8ビット=6.25KB/秒

           よって、6.4秒〜32秒

          −実際の授業での表示速度についてのアンケート結果− 

          番号

          校種

          早いと答えたデータ件数

          遅いと答えたデータ件数

          合計データ件数

          高等学校

          14(4%)

          220(67%)

          328

          中学校

          22(15%)

          73(49%)

          150

          小学校

          127(25%)

          183(36%)

          505

           

          合計

          163(17%)

          476(48%)

          983

          教材を学校内サーバーにアップロードせず、学校から本サイトへ接続しての授業であり、学校からISPへの接続環境、本サイトISPの環境も影響し、アンケート結果をみると、ブラウジングではストレスが発生するようだ。

        b.デザインについて

           デザイナー選定は事務局でテーマを決めてデザイナーに試作を依頼した。その作品を参考に検討委員会のメンバーでデザイナーを決定した。

          それぞれコンテンツの種類毎にデザイン方針を多少変えた。学習ユニットの基本編ではなるべくシンプルに、多少幼稚であっても明るい色と単純なデザインとした。学習ユニットの応用編ではコミック本的なデザインとして、少し年齢設定を高めて中学生向けデザインとした。電脳商店街は小学生から大人までを対象としたデザインとした。

          −実際の授業での表示速度についてのアンケート結果− 

          番号

          校種

          見やすいと答えたデータ件数

          見ずらいと答えたデータ件数

          合計データ件数

          高等学校

          170(51.8%)

          51(15.5%)

          328

          中学校

          92(61.3%)

          14(9%)

          150

          小学校

          369(73%)

          61(12%)

          505

           

          合計

          631(64.2%)

          126(12.8%)

          983

          アンケートの統計数値からみると、それほど違和感無いデザインとみることができる。

      (2)興味・関心

         扱うテーマへ興味・関心を引き寄せるためにアニメーション・ムービーを用いて、学習テーマを提示した。この方法はアンケートから分析すると、非常に効果があったことが認められる。そして、自分で操作をしながらムービー画面を次々と表示させることで授業への参加意識も高まることが実証できた。

         なお、台詞は音声が入っている方が、より一層興味・関心が増すであろうとの意見があった。但し、ミュート機能を持たせる必要がある。

         慶應義塾幼稚舎でのグループ学習では、学習成果を発表する時にあらかじめ担当学習ユニットをクラス全員に見せるが、その時、生徒が劇のように台詞をしゃべり、生徒の個性も出て、生徒達も楽しい授業を体験したようだ。

         今回はプロの脚本家が開発スタッフに加わっていないが、関ることにより完成度を高めることができるであろう。

      (3)教材の有効性

         教師からの意見・感想や生徒のアンケートから有効性については、高く評価を得た。但し、学習方法により、その有効性には評価に差があるようだ。

        <一斉学習の場合>

           教師がプロジェクターに提示し、画面毎に説明や生徒への問いかけをしながら、進める方法では非常に効果がある。但し、教師の事前準備や経験が重要な要素となる。

        <グループ学習>

           数人のグループで学習ユニットや電脳商店街を見ながら、問題点を話し合ったり、他の教材やリンク集で調べ発表する形式は生徒達の判断の正しさをアニメーションで見せたり、調べた結果を発表することで知識の定着につながり効果があると判断できる。

        <個別学習>

           生徒一人一人のペースで学習ユニットを見て学習する方法は、知識(解説)まで表示していないため、「結局、何だったの?」という疑問を持つ生徒もいた。家庭や自習時間での利用を想定すると、アニメーション・ムービーで問題提起から解説(問題の解説・対処方法・正しい習慣)を1セットの学習ユニットとする。それも、ナレーションや台詞などを入れる。

      (4)教材の数と種類

         学習ユニットが20個であり、代表的なテーマのみ扱っているが、現在の携帯電話やインターネットショッピング(オークション)などの普及によるトラブルの増加から60テーマ以上の学習ユニットが必要になると考える。

         以下にそのテーマの例を挙げるが、それぞれ2〜3の学習ユニットで基本編(小学生版)と応用編(中学生版)を用意する。

        <インターネットの安全な利用>

          個人情報の扱い
          チャットの楽しみ方
          コンピュータウイルス
          セキュリティ対策
          パスワードの扱い

        <情報モラル>

          ひぼう中傷
          プライバシーの侵害
          いやがらせ
          チェーンメール
          スパムメール
          ダイレクトメール
          責任ある情報発信
          知的所有権の保護
          電子メールのマナー
          電子掲示板の賢い利用方法

        <賢い消費者として>

          クレジットカード番号の扱い
          マルチ・ネズミ講(マルチまがい商法)
          雲隠れ
          海外接続ソフトの危険性
          違法商品の購入・販売
          個人売買サイトの賢い利用方法
          オークションサイトの賢い利用方法
          ショッピングサイトの賢い利用方法
          仮想現実,人間関係の希薄化などのテーマ

      (5)教材の使いやすさ

         電脳商店街についても,現状では授業の限られた時間内ではやや使いづらい感がある。インターラクションを減らしたバージョンとか,紙芝居バージョンを用意するなどが考えられる。

         学習指導資料についても,PowerPoint資料を添付するなどして、(アメリカのERICのように)レッスンキット化して蓄積する。

−−謝辞−−  

検討委員会の委員の皆様にはお忙しい中、貴重な時間を割いて本プロジェクトの推進に最後まで多大なご尽力をいただきました。

 最後に、この場を借りて厚く御礼を申し上げます。

「ネット社会の歩き方」開発事務局一同  平成13年1月

実施企業・団体名:株式会社 ランドコンピュータ



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