地域におけるインターネット教育利用環境と推進方法に関する調査報告書
− 学習者のための情報教育環境に関する調査 −

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 1 序

1.1. 調査の概要
これまでの100校プロジェクトの地域での教育ネットワーク運営形態調査で浮かび上がってきた問題点は端的にいえばインターネットの導入に関する理解不足に起因する「予算不足」であったが、学習指導要領が改定され必然性は認知され、急速に整備が進められている。
そこで、ネットワークの接続環境や研修の状況、危機管理など、インターネットの教育利用を進めるために不可欠な運用体制にかかわる基礎データを調査し、現実の教育実践プログラムの連関を把握できるようにすることで、インターネット利用環境整備の指針となるだけではなく、コンテンツ開発やサービスシステムの開発においての助言を提供することにより、今後の地域での教育ネットワーク利用の普及を促進する。

1.2. 調査の目的
学校のインターネット接続が進み(平成11年3月末現在で35.6%)、次の段階として、学習者である子どもたちの情報教育環境の整備が大きく進もうとしている。学校での日常的なコンピュータ等の活用を実現し、すべての子どもたちの情報リテラシーを向上させるだけでなく、情報化によって学校運営のあり方も変わろうとしている。
そうした変化に対応して、学校が自立的に取り組んでいくための体制、それに対する何らかの支援体制がますます必要となってくると予想される。そこで現在整備が進められている「学習者のための情報教育環境」の実態を調査し、その分類・分析による類型化を通して、これからのインターネットの教育利用に向けた課題を明らかにし、調査結果は自治体などに情報提供する。

1.3. 企画の設定経緯
インターネットの教育利用は、すでに全国的な整備計画も決まり、各地方自治体における具体的な計画の実施の段階を迎えている。ただでさえ苦しい緊縮予算のなかで、陳腐化のはげしい情報機器の充実は先延ばしにされていたが、待ったなしの状況が認識され導入に向けての工夫が本格化されだした。
次に重要になるのは、インターネットの教育利用をいかに進めて行くかという内容の問題であり、あるいはこのための周辺環境(運用・研修・セキュリティ・支援体制)の改善の問題である。
文部省は、インターネットの接続状況や端末の整備に関する詳細な調査を実施しているが、これは、どちらかといえば、インフラストラクチヤーの整備計画を立案するための基礎データという色彩が強い。
そこで、実際の各学校や地域の設備状況と先にのべた周辺環境、すなわち、運用・研修・セキュリティ・支援体制などとの相関を調べることに主眼をおいた調査を企画した。
Eスクェア・プロジェクトの活動のねらいを、「全国各地で活動している先生がインターネットの活用をさらに進展させるための情報を得る場所」、あるいは「情報を交換する場所」、さらに「交流から共同プロジェクトを芽生えさせる場所」であるととらえるならば、これらの活動を支援するためのプログラムやサービスの立案においては、現在それぞれの学校がかかえている問題点を、その整備状況や運用状況との相関のもとで、分析することが不可欠であり、各地域での具体的かつ詳細な運用状況の調査が求められている。
例えば、我々の調査項目から得られるデータには、
(1)学校の端末設備と研修実施状況の相関
(2)学校の端末設備と危機管理状況の相関
(3)学校の端末設備と外部支援体制の相関
などがあり、さらにこれらを実際の個別ヒアリングから得られる実践活動の具体的内容と比較することによって、今後のインターネット活用プログラムの方向性や可能性が明らかになる。
また、設備が未整備な地域と整備された地域の比較などから現場におけるサービスプログラムへのニーズなどの将来動向を予想することが可能になる。

1.4. 調査の実施について
都道府県及び政令指定都市と、教育用インターネット環境を整備したと思われる地域、あわせて204の教育委員会宛にアンケートを郵送し、76の教育委員会から回答が得られた。
インターネット環境を整備したかどうかは、本調査に指導・助言をいただいている大阪教育大学 越桐國雄教授が運営されている「インターネットと教育」ホームページに教育委員会関係施設(教育委員会や教育センターなど)のリンクがあるかどうかで判断した。
つぎに、回収できたアンケートや、調査担当者が入手した情報、過去の調査をもとに10地域を選び面談調査を実施した。

1.5. 本報告書の構成
「2.教育ネットワークの現状」は本調査の背景である。教育ネットワークについての現時点での総括を示し、今後の教育ネットワークがどのように展開すべきかを展望するとともに、本調査(アンケート調査、面談調査)の方向性を導いた。

「3.教育ネットワークの課題とノウハウ」は面談調査のまとめである。面談調査の対象となった10地域は、アンケート調査および過去の調査との関連で選んだ。日本における教育ネットワークの状況と問題を把握するために、教育ネットワークの設置・管理・運営の主体となる教育委員会や教育センターにおける教育ネットワークの構築・活用状況をとらえ、問題別にそのノウハウを抽出し、今後における教育ネットワーク構築にあたって問題解決の資料となることを目的にまとめた。

「4.地域調査」は面談調査の地域別の報告である。それぞれの地域の状況とともに実践活動の事例を、項目別に整理し、提供していただいた図表も添えた。

最後に、資料として回収したアンケート調査のまとめを掲載した。


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