地域におけるインターネット教育利用環境と推進方法に関する調査報告書
− 学習者のための情報教育環境に関する調査 −

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 4.7. 学校ネットワーク(三重県)

4.7.1. インターネット利用環境整備の計画から構築まで

学校ネットワーク(仮称)
ネットワークの名称はとくになく、単に「学校ネットワーク」(仮称)と呼んでいる。各種の補助事業を利用しながら整備を進めてきた。「mie-c.ed.jp」のドメイン名を平成11年2月に取得、4月から運用を開始した。利用対象者は県立学校と公立学校で、私学は含まれていない。県内に学校を接続するための4拠点を分散させ、これによって一部を除くほとんどすべての地域から市内通話料金で接続できるようにしている。県立学校はすでに全校(79校)を接続しており、小中学校も平成11年度末には全校接続を目標にしている。
県レベルの教育ネットワークとして、センター設備の管理運用をアウトソーシングしているのが特徴である。

整備の経過
文部省の拠点整備事業とドッキングして平成10〜11年度に整備した。
平成10年度に全県立学校のインターネット基盤整備と拠点整備を行い、県立学校の学校内に情報コンセントとモデム、ルータを設置。一方、ネットワークの拠点を津市に、サブ拠点を津、桑名、伊勢、熊野の各市内にそれぞれ置き(津市の拠点はサブ拠点を兼ねる)、拠点とサブ拠点間はフレームリレーで接続して、79県立学校の全校を接続した。
桑名、伊勢、熊野の3サブ拠点へは学校からISDN回線を使いダイヤルアップで2B(128Kbps)接続。津のサブ拠点へはCATVを使って接続する(小中学校はISDN回線によるダイヤルアップ接続も選択できる)。拠点からインターネットへはCATV経由で接続。
市町村立の小中学校についても平成10、11年度で全校のインターネット基盤整備をめざし、県が1/3を補助(1校あたり9万2000円を上限)を出しながら、市町村で対応を進めている。平成10年11月現在で175小中学校を接続、平成11年度は400校を予定。

アウトソーシング
津市の拠点設備はNTT西日本津営業所に設置して、運用管理を委託している。ハウジングサービスの形態である。総合教育センターには設備を設置する場所がなかったことに加えて、「情報機器の更新はサイクルが早く、それを職員がやっているとかなりの負担がある。専門家に任せたほうがトラブルも少なくできる」という理由から。委託契約の中にはヘルプデスクも含まれているので、トラブルにも対応してもらえる。
一方、イントラネット用のコンテンツサーバは総合教育センター内に置いて、拠点との間を専用線で結び、総合教育センターで管理している。

イントラネットとして構築
ファイアウォールを拠点に設置し、イントラネットとして構築している。イントラネット内にメールサーバ(2台)、WWWサーバ(内部用と外部用)、プロキシサーバ(2台)、ニュースサーバを設置。
メールサーバ、プロキシサーバとも小学校用と小学校以外用に分けている。
イントラネット内のドメイン名は「center.mie-c.ed.jp」を利用。

4.7.2. インターネット教育利用の進め方について

メールアドレス
メールアドレスについては以下のルールで発行されている。(1)
  1. メールアドレスは「電子メールアドレス及びパスワードの付与ルール」に従って下記のように登録される。
  2. 「学習用アドレス」は、主にパソコン教室で児童生徒の学習用に登録されており、パソコン教室の各パソコンに振り分けて利用してもらう。学校区分により以下の個数が発行される。県立高校41、県立盲・聾・養護学校15、中学校41、小学校21。
  3. 「学級用アドレス」は将来の利用計画に基づき、各学校の学級数用意される。利用方法は教育委員会から連絡される。
  4. 「管理用アドレス」は三重県教育委員会、ネットワーク管理者及び学校間の連絡用に、各学校に1つ登録される。メンテナンス情報などネットワークの利用に関する情報はこのアドレスに送信されるため、定期的にメールの確認をするようにとされている。
このルールには規定されていないが、教員用として1校20個のメールアドレスを発行している。しかし、教員個人用ではない。メールを活用している教員はすでに個人で取得しており、それを使っているという。

(1)三重県教育委員会「学校ネットワーク利用説明書」第1版(平成11年3月、三重県教育委員会事務局学校教育課)

4.7.3. 教育利用のための周辺環境

電話料金
県立学校からのダイアルアップ接続に要する電話料金として1カ月20時間分を教育委員会が予算化。これは2B(128Kbps)接続で計算しているため、64Kbps接続にすると1カ月40時間分になる。それを超えた分は学校が負担する。
「非常によく使っている学校では、この予算ではまったく足らない」という。インターネットの便利さを知っている教員がいて、学校内で活用されている学校である。とくに進路指導で、インターネットを使った大学情報の検索などに役立てられている。
小中学校の電話料金は市町村が負担。

パソコンはレンタル
県立学校は、1校あたり42台をレンタルで整備(県費事業)。普通学校65校中40校以上の整備を終えており、平成14年度末には全学校で40人が授業できるように整備予定。

校内LANの整備も計画
将来的には全県立学校の校内LANを整備する計画。県内各学校に配布した「学校ネットワーク利用手引書」にも、理想的と思われる構成例として校内LANを紹介。最小構成でもターミナルアダプタによる各パソコンからの接続を紹介せず、校内LANで結び、ダイアルアップルータによって接続する方法を示している。
平成11年度に1高校でモデル的に校内LANを整備した。平成12年度には数校で整備予定。平成9年度に整備した木本高校では校内LANの利用の様子を学校ホームページで公開している 。
このほか、PTA会費や職員による自主的な校内LAN整備も数校で行われていることは承知しているが、整備済みとは認識していない。

メール爆弾攻撃
平成11年9月から10月にかけて夜間に50MB〜100MB単位のデータがメールで送られてくる事件があった。発信元はアメリカと見られる。サーバのダウンが相次いだが、このときには外部委託していることの安心感を強く感じたという。「ヘルプデスクという形でやってもらっているので、緊急対応ができる。われわれが管理していれば、他の仕事が入っているときには緊急対応ができないので、授業開始までにダウンしたサーバを立ち上げ直すことは不可能になる」

スクールリーダーを集中的に養成
平成11年度から県立学校を対象に、各学校で中心となって情報化を進める人材として「スクールリーダー」の養成を開始した(5年計画)。年間200人。総合教育センターから約100台のノートパソコンを貸し出し、8〜10日間の研修や研究授業を義務づける。
ほかにも初任者研修、経験者研修(6年目、11年目)、さらに教頭研修、校長研修も実施。これらと合わせて、スクールリーダーを集中的に養成することで、最終年度の平成15年度にはすべての教員がパソコンを使えるようにするという計画。
また、総合教育センター独自で企画している研修も約30講座あるが、人気が高く、どれも抽選になっている。
平成11年度には、市教育委員会主催研修会にのべ931名、県教育委員会主催研修会にのべ247名が参加した。

メンバー公募でコンテンツ開発
研修講座とは別に研究チームを作って学習用の教材開発を進めている。3〜4年前から「マルチメディア開発事業」で実施しているが、この研究チーム制度はそれ以前からある。
総合教育センターが学校から研究開発員を公募する形式をとっている。めぼしい人材をピックアップすることもある。
総合教育センターのAV機器などを利用し、3〜5人がチームを組み、平成11年度は22本のコンテンツを製作した。

障害対応
学校からの問い合わせはヘルプデスクを兼ねるNTT西日本津営業所が対応する。各学校からの問い合わせは1日1件程度。内容はインターネットへの接続方法やデータの登録方法についてが多い。
また、ヘルプデスクは緊急対応が可能で、土日にダウンがあっても、電話連絡で再起動してもらいすぐに復旧できる。

Webメールについて
学校によってはWebメールを使用しているところもある。イントラネットで練習を積ませている学校がWebメールを利用しているケースもある。
それらは学校の判断に任せている。

4.7.4. その他

県情報政策課の「デジタルコミュニティ」計画と連携をとっている。

インターネットが利用できるCATVは県下に5社あるが、まだ正式に運用を始めていないため、研究には利用できてもインフラとして契約できない。

【資料】 ネットワーク概要図1
ネットワーク概要図2


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