地域におけるインターネット教育利用環境と推進方法に関する調査報告書
− 学習者のための情報教育環境に関する調査 −

目次へ


 4.9 神戸市教育情報ネットワーク(兵庫県)

4.9.1 インターネット利用環境整備の計画から構築まで

神戸市教育情報ネットワーク
「神戸教育情報ネットワーク」は神戸市のイントラネット網を基幹とするシステムである。つまり、行政ネットワークに相乗りする形で構築されている。平成11年6月にドメイン名「kobe-c.ed.jp」を取得。平成11年度補正予算で整備が一気に進展し、平成12年夏に予定する神戸市立全学校(271校)の接続完了に向けて、管理運用体制づくりを急いでいる。
また行政ネットワークと相乗りという複雑な関係が一般の人には理解されないため、ネットデイなど配線や設定作業を伴うボランティア活動を受け入れにくいという事情も抱えている。

整備の経過
直接のスタートは平成7年の阪神淡路大震災後の防災ネットワーク整備がきっかけ。震災前からパソコン通信ホスト局を運営していたが、インターネットの活用に向けて10校程度を対象とする実験ネットワーク整備計画があり、その予算獲得に向けて市長部局ヒアリングが予定されていた日が、ちょうど震災当日(1月17日)だった。
このように、パソコン通信を使ったネットワークが考えられていたが、震災後はインターネット網の構築に方針を変更した。
平成7年度の補正予算で「次世代総合防災通信ネットワークに関する研究開発」が始まり、平成8年10月には市内の全学校の職員室に端末パソコン1台が設置されたが、このネットワークは防災の目的で整備されたために、教育利用は認められなかった。
このため、研究開発実験が終了し、防災ネットワークの設備が神戸市に移管されるのを待って、「神戸市教育イントラネット」の整備に着手。平成11年度補正予算で100校を接続し、さらに平成12年度当初予算で残り全校を接続する予定。

神戸市防災ネットワークをベースにしている
防災ネットワークは複数のイントラネットに分割され、神戸教育イントラネットもそのひとつを構成している。

イントラネットとして設計
「神戸市教育イントラネット」(intra.sch.ed.city.kobe.jp)に学校接続拠点(INS1500が3回線)を設け、学校との間はISDN回線を使ってダイヤルアップ接続(64Kbps)。1小学校(1.5Mbps)と1高校(128Kbps)のみ専用線で接続している。総合教育センターは1.5Mbpsで学校接続拠点に接続。接続拠点から神戸市光ケーブルで神戸市のイントラネットに接続している。

対外接続
商用プロバイダと学術系のマルチホーム接続。
学校接続拠点は神戸市光ケーブルで神戸市のイントラネットに接続(intra.city.kobe.jp)。
インターネットはOCNに接続(kobe-c.ed.jp)。

サーバは保守契約
メールサーバ、イントラネット向けWWWサーバ、外部向けWWWサーバなどは神戸市が契約するネットワーク管理業者に保守を委託しているので、学校から連絡があれば、総合教育センターで集約して業者に連絡する。
しかし、学校のキャッシュサーバまでが保守対象になっているため、フィルタリングを設定した場合、学校でフィルタを変更できないという問題がある。

対応に大わらわ
多くの学校はインターネットにつながったパソコンは職員室の防災端末1台しかなかったため、児童生徒がWebを閲覧するさいは、そのパソコンのキャッシュをコンバートしてパソコン教室に持っていって閲覧していた。このためフィルタリングの役目も果たしていた。
しかし、全校接続が一気に進むことになり、個人情報保護審議会への答申をはじめ、フィルタリングをどのように設定するかなど、時間をかけて対応する予定だったのに急いで解決しなければならなくなった問題が山積みの状態という。

4.9.2. インターネット教育利用の進め方について

メールアドレス
全教頭(防災担当者)をはじめ教員用に約950人のメールアドレスを発行している。

4.9.3. 教育利用のための周辺環境

ホームページの公開手続き
学校がホームページを作成した場合、ホームページのハードコピーを添付して許可申請書を教育委員会に提出。内容をチェックして問題がなければ、学校に通知される。そして、学校はFTPを使ってFTPサーバに転送。その連絡を受けた総合教育センターが、FTPサーバからWWWサーバに転送して、ホームページを登録・更新する。この手続きはイントラネット用のホームページについても適用されるが、平成12年度からはハードコピーの添付による許可申請は廃止し、画面上での査閲にする予定。

ネットワーク管理委員会
平成9年度に、庶務課、学校振興課、指導課、総合教育センターから委員を出して、教育委員会内にネットワーク管理委員会を設置し、インターネット利用のガイドラインなどを整備した。それまでは、総合教育センターの指導主事2名ですべてをまかなっていたため、この委員会ができてから、総合教育センターの指導主事は気が楽になったという。
平成12年度より教育委員会に情報企画係が新設され、情報教育・ネットワーク運用に関して窓口が明確化された。

コンピュータ利用研修を行っている
4〜5年前は、パソコン操作面の研修が中心だった。ソフト会社のインストラクタに使い方の研修を受けた。しかし、ここ数年は授業での活用方法の研修になっている。実践報告もあり、どのような場面で、どう使うと、どのような効果があるのかを紹介している。
また、ワード初級、エクセル初級のコースでは、学校ですぐに使える事例を使用する。
研修には定員の2〜3倍の応募がある。研修に参加する教員の8割は小学校教員。

使えない先生のための研修
現在の研修は、午後3時〜5時(2時間)の講習を週に2〜3回実施。夏休み期間は1日研修以外に3日連続研修を4回実施している。
昨年度の参加者はのべ2000名にのぼるが、それを総合教育センターの2名の指導主事が担当した。講習によっては、大学や企業の講師も依頼している。
現在は選択研修(自主研修)ばかりを実施しているが、パソコンを操作できる教員を増やすためには、悉皆研修の実施も選択肢のひとつと考えている。

ソフトの選定
中学校では技術科以外の教員をパソコン教室に呼び込む誘い水として各教科で利用するソフトを選定。ワードやエクセルなどのアプリケーションソフトではなく、生徒が授業で使うことを念頭に置いている。ワードやエクセルだと操作方法を覚えるためだけに時間がかかるのが理由。
全校で入れているのは、教科ソフト以外にハイパーキューブ。小学校は「えほんらいたー」、中学校であればスタディノート。教科に関係なく使えるソフトを大きな柱に位置づけている。

4.9.4. その他

理解されにくい制限事項
授業での円滑な利用を維持するため、子どもたちが勝手に環境等が変更できないよう、学校のパソコンにはいろいろな制約を設定している。しかし、平成9年秋に実施されたネットデイでは、学校にやってきたボランティアから「マイコンピュータをダブルクリックしても開かない」とクレームを付けられた。行政ネットワークに相乗りしているイントラネットでは、セキュリティ面からの制約など、ネットワーク運用ポリシーがあることを理解してもらえなかった。あるいは教員の中でも、そういう事情はなかなか理解してもらえない。


【資料】 神戸教育情報ネットワークシステム図


Eスクエア・プロジェクト 次へ