地域におけるインターネット教育利用環境と推進方法に関する調査報告書
− 学習者のための情報教育環境に関する調査 −

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 4.10. DREAM NET(高知県)

4.10.1. インターネット利用環境整備の計画から構築まで

DREAM NET
「DREAM NET」は全県の情報化をめざす「KOCHI2001プラン」の中の1プロジェクト(教育の情報化)として位置づけられている。KOCHI2001プランの推進組織である高知県ネットワーク協議会でドメイン(net-kochi.gr.jp)を取り、各プロジェクトにサブドメインを与える形。教育はサブドメインの「edu.net-kochi.gr.jp」。
利用対象者は、県内の学校、教育委員会及び教育関係機関など。私立学校は除外していないが、接続されていない。調査時点では高知県下の全公立学校(498校)の99%を接続しており、未接続校はあと9校になった。(現時点で100%)

整備の経過 という手順で「高知県教育ネットワーク」の整備が進められた。
このようにスムーズに展開したのが特徴であり、その理由の1つに、高知県が平成8年度からスタートさせた5カ年計画の「KOCHI 2001 プラン」がある。KOCHI 2001 プランは橋本大二郎知事が提唱したもので、10プロジェクトの中には、小・中・高の教育の情報化および人材育成をはかる「DREAM NET」が含まれる。
高知県教育ネットワークは引き続いて「DREAM NET」として整備され、教育委員会の学校教育課(平成9年に義務教育課と高校教育課を統合)と、知事部局の情報企画課が共同でプランを立て、企画書を作り、各メーカーに提案してもらった。平成9年度にKOCHI2001プランのサブドメインに変更。高知県情報スーパーハイウェイを利用したネットワーク構成に移行した。

バックボーン回線を増強
接続学校数が増えたため平成11年度、教育センターの専用線を1.5Mbpsから6Mbpsに増速した。センターはこの専用線を利用して高知スーパーハイウェイに接続され、対学校接続(イントラネット)と対外接続(インターネット)している。

小中学校の校内LANを県が補助
モデル校としてサーバを設置しているのは32小学校、34中学校。県立高校は12校で校内LANを整備、平成14年までには残り40校に設置予定だが、市町村の小中学校が校内LANで接続する場合も平成9年〜平成11年まで、校内LAN化の費用の半分を県が補助している。これは他の都道府県に例を見ない。

教員用のパソコン整備もスタート
平成11年度は県立学校を対象に478台のノートパソコンを教員用に配備した。目標は教員2人に1台。初年度なので校長、教頭、事務長に各1台(合計163台)を割り当て、残りを教員用とした。平成15年度には1人に1台の体制にしたいが、知事部局も2人に1台体制であるという理由から厳しい状況におかれている。

教員の意識が変わった
整備の始まった3年前は「パソコンは操作できなくてもよい」と公然という教員が相当いた。ここ3年でそういう教員はほとんどいなくなり、退職まであと少しの教員も「老後のためにも勉強しておかんといかん」と熱心に研修に参加する。

4.10.2. インターネット教育利用の進め方について

メールアドレス
教員すべてにメールアドレスを渡し、意見交換を活発にするのが教育長の考え。
メールの利用については、小規模校のメールアカウントの管理は教育センターで対応し、中規模校以上はメールサーバを学校に設置する方向で検討している。
しかし、メールアカウントに対して誤解があるという。所属と氏名のみの登録ではあるが、「メールアカウントを持つと、ハッカーがメールアカウントに侵入して個人情報を盗られる」と心配する教員もいる。

「底上げ」から「どう使うか」へ
今までは底上げ(インターネット接続の啓発、パソコンを操作できる教員の養成)を目的にしていたが、これからは「どう使うか」にシフトしていく予定。そのためには、先進的、モデル的な実践の取り組みを示していくことが必要だと考えている。英語と数学の教材を開発中で、ほぼでき上がっており、CD-ROM化あるいはインターネットで公開を考えている。
たとえば、次のようなものがある。
  1. 先生が持っている財産(教え方)の共有
    教え方の上手な先生の授業をみて吸収したいが、地理的ハンディがある。その先生が育て上げてきた教材を共有すればもっと生徒の学力もついてくるのではないか。
  2. 「土佐ブランドの教材」を開発
    ある先生が作成したプリント教材をネットワークで公開する。それを各学校で使ってみて、修正して、どんどんよくしていけば、DREAM NETの中からネットワークの教材ができる。

4.10.3. 教育利用のための周辺環境

教育委員会と教育センターの連携
ネットワークの管理運営は教育センターと教育委員会で分担している。ネットワーク機器の管理は教育センター情報教育部が担当し、学校が接続するさいの申請など全般的な管理は教育委員会学校教育課の情報教育班が担当している。

オールティーチャーセミナー
パソコンを操作できない教員をゼロにするため、平成11年度から「オールティーチャーセミナー」を実施した。3年間の予定。
まず「操作できない」ということを明確にするため、「できることリスト」を作成、事前調査を行った。「できることリスト」はワープロ、表計算、電子メール、Webの4項目からなるチェックシートで、自己採点によって、一つでも不安がある教員は受講できることにした。調査の結果、全教員8089人中約3800人が対象となったが、この数字は文部省の統計資料とほぼ同じ。
2日間の研修を、13学校とセンターの14会場で、24講座実施。1講座40名定員。講師は1講座あたり4〜6名。平成11年度開催分には1221人が応募したが、実際に参加できたのは877名。他の研修とバッティングしたのが不参加の理由。
「研修前プリント」で予習してもらい、研修中に実施したアンケートはワープロソフトで回答してもらい、電子化できた。校内研修に活用できるよう、研修資料は研修後にすべての小・中・高等学校に配布した。

タイピング
平成11年度のオールティーチャーセミナーを通して、講習担当者は、パソコン研 修の内容が身に付きにくいのは、キーボードからの日本語入力操作に手間取ることであると実感した。
日本語入力ができるようになると、ワープロ、電子メールはもちろん、表計算ソフトもできるようになる。

メダカ作戦
ネットワークに接続された学校で、逆に初心者ユーザを教えられる生徒が出てくるよう期待している。平成9年度「新100校プロジェクト」地域教育ネットワークに関する調査では、これを「メダカ作戦」と名づけていた。
参加した教員が、次年度には講師となるよう期待している。

都市部と山間部の格差
県の当初の考えは、都市部も山間部も同じように情報を利用できるようにすること。このため、県内どこからでも3分10円の電話料金でアクセスできる環境を整えた。
接続の専用線化も同じように県内一律に考えているが、実際には電話局からの距離が15kmを超えると、専用線でもかなり高価になるという悩みがある。
他方、都市部ではケーブルテレビ網が普及し、ケーブルテレビを使った高速インターネットサービスが安価で提供されている。このようなインフラ格差をどう解消すればよいかが課題。

ファイアウォール
県情報ネットワーク(スーパーハイウェイ)と教育センターの2段階のファイアウォールがあり、その管理は県とNTT間の保守契約で管理をまかせている。しかし、一番こわいのは「背後からの攻撃」、つまり内部からの攻撃である。

フィルタリング
コンテンツフィルタはブラックリスト方式で運用している。

4.10.4. その他

高知県では児童生徒の学力向上が学校教育の大きなテーマとなっている。
インターネットを導入して賑やかなことだけではなく、子どもたちの学力向上・生きる力につながる教育通信ネットワークに作り上げなければならない。


【資料】


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