2.2.3. 幹事校,参加校の活動

(1) 幹事校の活動

 現在,全国発芽マップの幹事校は宮崎大学教育文化学部附属小学校である。その役割として以下のことを行ってきた。 

1) 参加校に対する種子の提供 

 本企画の準備段階で全国の参加校に対して,種子の有無を全国発芽マップのメーリングリストで問いかけ,種子のない学校や新しく参加した学校については幹事校から種子を送付する必要がある。

 平成11年度も昨年度と同じく,ケナフを共同で栽培していくことに決定したため,これまでの参加校は種子を収穫している場合もある。しかし,成育の状況,地域差による気候の違いによっては種子を収穫できなかった場合もあった。しかし,各地のボランティア団体や近隣の参加校から種子を分けてもらうなど新しいネットワークも広がってきている。

 本年度の場合は新しく参加した学校を含め,全国17校にケナフの種子を送付した。また,Eスクエア・プロジェクト開始が平成11年9月ということで,途中から参加した学校については,幹事校が余分に育てておいた苗を送付して参加していただく形式をとった。

2) 観察結果の共有化(Web化)

 観察結果の共有化については,本企画が全国規模でしかも観察データの活用が望まれていることから,子どもたちでも容易に活用することができるホームページを作成する必要がある。

図11 クリッカブルマップ

図12 参加校一覧

 現在のところ,全国発芽マップの公式なホームページは存在しない。そこで,幹事校として,平成11年度は参加校の数,学校名,場所等を一目で確認でき,ジャンプできるように参加校同士でリンクをはったクリッカブルマップを作成した。しかし,現時点では参加校の子どもたちや教師が,発芽や成長の様子等の比較を容易にできるようなホームページではないため,今後は一覧比較できるようなホームページの在り方の検討していくことが必要である。

 また,ホームページのリンクの許可などの取り決めがほとんどなかったため,メーリングリスト上で,参加校ホームページのリンク(発芽マップ関係)については,お互いの許可なしにリンクを張って差し支えないというルールを設けた。

3) 観察活動の推進

 観察活動の推進については,各参加校にまかされている部分が多い。このことは,各参加校の教師や子どもたちが自主的な活動を期待しているともいえる。ただ,全国発芽マップの節目でもある,発芽,成長の観察,開花,収穫等については,これからは一斉観察報告日等を設けて,継続して観察・報告していく呼びかけを行うことも考えている。

4) 観察結果を活用した授業を実践

 全国発芽マップを活用した授業実践は理科をはじめ,学級活動,創意,総合的な学習など様々な教科,領域等で実践されてきている。

 ここでは,宮崎大学教育文化学部附属小学校の子どもたちと富山県水橋中部小学校の子どもたちが,観察した結果や育て方の工夫などについて,富山県水橋中部小学校とのテレビ会議を通して話し合っている例を紹介する。

 これまで,本校の4年生の子どもたちは,ケナフの播種をしてから,継続的に富山県のある小学校とケナフの成長の様子を電子メール等で情報交換してきた。そこで,今度は実際に遠く離れた相手の顔を実際に見ながら情報交換できたらということになり,テレビ会議システムを活用して交流することになったのである。

富山県水橋中部小学校:

「中部小のケナフは3m70cmにまで成長しました。茎の太さは…。今度,富山県ケナフの会のコンテストに出ようと思っています。」

附属小学校:

「こちらのケナフは台風で折れてしまいました。花は…。」(写真を見せながら)

富山県水橋中部小学校:

「中部小4年花組『アースケナフ』の取り組みを紹介します。『水プロジェクト』,『ごみプロジェクト』,『大気プロジェクト』にわかれて発表します。」 「『どうしたら水がきれいになるのか』やごみを減らすことやリサイクル,酸性雨について調べています。」

附属小学校:

「今度,参観日があります。『ケナフとともに』でケナフ入りホットケーキを作ってみようと計画しています。」

富山県水橋中部小学校:

「ホットケーキの作り方教えてね。」

附属小学校:

「そちらのケナフはどうしてそんなに大きくなったんですか?」

富山県水橋中部小学校:

「今年の夏は暑かったからだと思います。また,肥料に卵の殻を使うなどして工夫してみました。」

 この後も活発な意見交換をすることができた。  また,このテレビ会議は「こねっとプラン」の支援のもと実施されたものである。

図13 テレビ会議紹介のページ
図14 発表する子どもたち
   

図15 テレビ会議の様子

図16 送られてきた葉書
5) 観察を通した児童同士の交流の実践

 宮崎大学教育文化学部附属小学校の子どもたちと富山県水橋中部小学校の子どもたちの交流は,昨年度の2月から始まった。始めのうちは,自分たちの学校の紹介や学級の紹介等が主な内容であった。次に平成11年度から両方の学校が発芽マップに参加していることで,ケナフという1つの植物を中心に交流を続けていったのである。

図17 電子メールをうつ子ども

図18 送られてきた葉書

 手紙での交流が主な交流手段であったが,電子メールやインターネットを使った交流も次第に見られるようになった。子どもたちは交流を通して様々なことを感じている。そのことは,宮崎大学教育文化学部附属小学校の子どもたちが書いた,交流をふりかえっての感想に表れている。

「これまでの活動で一番楽しかったのは,富山県の水橋中部小学校のお友だちとテレビ会議をしたことです。理由は2つあります。

 1つ目の理由は,富山県のケナフと宮崎のケナフとの違いが分かり,あとケナフだけでなく,気候や今,どんなことをしているのか分かるので,テレビ会議が楽しいです。

 2つ目の理由は,テレビ会議をしているとき,富山県の友だちが近くにいるような感じがするからです。」

「ぼくは,富山県の水橋中部小学校のお友だちとテレビ会議やケナフの葉書で交流したことが特によかったです。メールのとき,ローマ字が苦手なので,字を打つのがちょっと大変でした。テレビ会議は初めてやったときは,ちょっとはずかしかったです。」

 約一年間,この子どもたちは手紙,電子メール,テレビ会議,ケナフの手作り葉書などを通して交流してきたのである。感想にあるように,子どもたちはケナフのことはもちろんのこと,交流相手の地域の気候,自分たちの行っている活動等もテーマにしながら交流していきている。テレビ会議だけでなく,これまでの一斉播種や共同栽培,手作り葉書の交換等の活動を行っていく中で相手意識ももつこともできたのである。

(2) 参加校の活動

 平成11年度の全国発芽マップの参加校は計53校である。  実際には全国各地の学校でボランティア団体との交流など,学校間だけでなく様々な活動や交流が生まれている。また,全国発芽マップの特徴の1つでもある,参加している参加校が独自の提案ができることから自主的な活動も生まれはじめている。

 ここでは,それらの各学校等の独自の取組や提案を紹介する。   

1) ホームページや掲示板の活用

 宮崎県の宮崎市立本郷小学校では,富山県水橋中部小学校との年間を通した交流行う上での交流の一手段として「ケナフ掲示板」を設置している。年間を通して,富山県の水橋中部小との交流を行うことにし,そのテ−マを「ケナフ」にして,全国発芽マップとの関連も図りながら取り組んだのである。この他にもホームページ,テレビ会議システムを準備して活用している。

 掲示板については,水橋中部小学校の子どもたちとの自由な意見交換・情報交換の場として設置したが,その中に一般の方や予想していなかった他校からの書き込みもあり,子どもたちの意欲を高めることにもつながったのである。また,掲示板だけでは相手を意識することができないこともあり,テレビ会議システムを活用して,毎週金曜日朝に交流をしている。

 三重県三重大学教育学部附属小学校では,参加校一覧の他に,クリッカブルマップを作成し,電子メールも容易に送ることができるホームページを作成している。このページは子どもが扱えるように学校名をひらがなにしたり,イラスト等も活用しながら,より子ども側にたったものとなっている。

図19 三重大学教育学部附属小学校のページ

図20 宮崎市立本郷小学校掲示板
2) 観察活動の提案

 観察活動を行っていくと,地域差による違い,育てている場所の違いなどで成長の違いが見られてきた。そこで,宮崎県の中山研究室から発芽マップのメーリングリストで次のような提案をしていただいた。


「おそらく,葉が全部落ちている学校と,今でも花を咲かせている学校があると思います。これは,単なる地域差ではなく,ケナフが植えてある場所の差のような気がします。

 そこで,このメーリングリストに入っている学校のケナフの現状について情報交換し合いませんか。たとえば,以下のような形式です。」

------ケナフ開花状況 1999年11月上旬------------  

1 調査日  

2 学校名  

3 都道府県と市町村名  

4 担当者名  

5 ケナフの葉の状態  

6 ケナフの開花状況  

7 ケナフの種子のでき方  

8 ケナフが植えてある場所   

(1)建物に近いかどうか   (近い・遠い)   

(2)「近い」の場合,建物の東西南北のいずれか (東・西・南・北)   

(3)日当たりは,一日に,(半日以上,ちょうど半日くらい,半日未満)  

9 その他(            )

----------------------------------------------------------------------

 これに呼応して,次のような各地のケナフの開花や成育の状況が報告された。

------ケナフ開花状況 1999年11月上旬------------  

1 調査日 1999年11月6日  

5 ケナフの葉の状態 ほとんどない  

6 ケナフの開花状況 ほとんどない  

7 ケナフの種子のでき方 殻が茶色くなって,種子ができているものが半分程度  

8 ケナフが植えてある場所 わかたけ農園   

(1)建物に近いかどうか   (周囲に建物なし)   

(2)「近い」の場合,  (北)   

(3)日当たりは,一日に,(半日以上)  

9 その他( 4月の土作りをほとんどしておらず,7月に施肥のみ )

 その他,終日,陽が当たる学級園(校舎の南側)にも植えていますが,そちらはほとんど葉が落ちて,種も茶色になっています。日当たりは,成長にかなり関係がありそうですね。


 全国発芽マップは,ほとんど制約もなく参加者の提案が可能である。また,その提案から活動が 広がったり,学習が始まっていくことも全国発芽マップの特徴の1つである。


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