3. 企画のまとめ

3.1. アンケート調査の実施


 平成11年度全国発芽マップの成果と課題,そして来年度以降の取組の方向性を探るため,全国発芽マップ'99参加校に対して発芽マップのメーリングリストを通して,次のようなアンケート調査を実施した。なお,このアンケートは98年度の発芽マップの参加校の1つである宮崎県の中山研究室の志々目安希子研究室生が実施した質問項目を使用した。

3.1.1. アンケート調査項目一覧表

 質問項目は全部で13個です。回答は,基本的に,○×でお願いします。質問の内容について,その通りだと思うものには○,そうではないと思うものには×でお答え下さい。

学校名:(             )         回答者名:(               )

全国発芽マップ参加年度:平成(    )年度より参加

質問1 全国発芽マップに参加することで,私自身が他の学校と交流できた。 ( )

※ ○と答えられた方は,具体的にどのような場がありましたか?
   (                           )

質問2 全国発芽マップに参加することで,子どもが他の学校と交流できた。 ( )

※ ○と答えられた方は,具体的にどのような場がありましたか?
   (                           )

質問3 全国発芽マップに参加することで,子どもが植物成長の地域差を認識することができた。( )

質問4 全国発芽マップに参加することで,子どもに観察をする習慣ができた。  ( )

質問5 子どもが成長の記録をとり続けるのは大変だった。( )

※ ○と答えられた方は,具体的にどのような点が大変でしたか?
   (                           )

質問6 全国発芽マップに参加することで,子どもの学習意欲が向上した。 ( )

質問7 全国発芽マップに参加することで,私自身が環境問題を考えるきっかけとなった。( )

質問8 全国発芽マップに参加することで,子どもが環境問題を考える きっかけとなった。( )

質問9 全国発芽マップのデータを授業に活用した。( )

※ ○と答えられた方は,具体的にどの教科等でどのようなことを されましたか?
   (教科等名:          内容:            )

質問10 全国発芽マップに参加したことで,子どもの学習に変化があった。 ( )

※ ○と答えられた方は,具体的にお答え下さい。
   (                           )

〈webページについて〉

質問11 全国発芽マップに関するwebページを作成した。( )

※ ◯と答えられた方におたずねします。

(1) 作成者はどなたですか?(自分・他の先生・子どもであれば学年も)
  (              )
(2) 苦労されたことがあれば書いてください。
  (              )

〈メーリングリストについて〉

質問12 私は,メーリングリストを利用した。( )

 ※ ◯と答えられた方におたずねします。
 (1) メールチェックはどのくらいの間隔で行いましたか?次から選んで下さい。

  a. ほぼ毎日 b. 週に3・4回 c. 週に1回ぐらい d. もっと少ない ( )

 (2) 自分からメールを出す回数はどのくらいですか?次から選んで下さい。

  a. 週1以上 b. 月1以上 c. それより少ない d. 出したことがない( )

 (3) メーリングリストをどのような目的で利用されましたか?
  (                            )

〈紙すきについて〉


質問13 ケナフの紙すきを行いましたか。( )

 ※ ◯と答えられた方におたずねします。

 (1) 具体的にどのように行いましたか?  (             )

 (2) ケナフの葉書等で他の学校と交流できましたか?( )

  ○ その他,全国発芽マップへの要望等がありましたらお書きください。
  (                            )

 ご協力ありがとうございました。来年度もよろしくお願い致します。

 

3.1.2. アンケート調査結果 回答数(20)

(1) 全国発芽マップ活用による交流に関して

質問1 全国発芽マップに参加することで,私自身が他の学校と交流できた。

(16) ×(4)

※ ○と答えられた方は,具体的にどのような場がありましたか?

など

質問2 全国発芽マップに参加することで,子どもが他の学校と交流できた。

(8) ×(11) 無答(1)

※ ○と答えられた方は,具体的にどのような場がありましたか?

など

(2) 全国発芽マップ活用による学習に関して

質問3 全国発芽マップに参加することで,子どもが植物成長の地域差を認識することができた。

(13) ×(6) 無答(1)

 

質問4 全国発芽マップに参加することで,子どもに観察をする 習慣ができた。

(10) ×(9) 無答(1)

 

質問5 子どもが成長の記録をとり続けるのは大変だった。

(7) ×(11) 無答(2)

※ ○と答えられた方は,具体的にどのような点が大変でしたか?

 

質問6 全国発芽マップに参加することで,子どもの学習意欲が向上した。

(14) ×(4) 無答(2)

 

(3) 全国発芽マップ活用による環境教育への発展に関して

質問7 全国発芽マップに参加することで,私自身が環境問題を考えるきっかけとなった。

(17) ×(2) 無答(1)

 

質問8 全国発芽マップに参加することで,子どもが環境問題を考えるきっかけとなった。

(14) ×(5) 無答(1)

 

(4) 全国発芽マップデータ活用と学習の変化に関して

質問9 全国発芽マップのデータを授業に活用した。

(6) ×(13) 無答(1)

※ ○と答えられた方は,具体的にどの教科等でどのようなことを されましたか?

(教科等名: 総合的な学習  内容:ケナフを育てよう)

(教科等名: 総合学習    内容:ケナフジュース)

(教科等名: 理科      内容:植物)

(教科等名: 理科      内容:ケナフを育てよう)

(教科等名: 学級活動    内容:環境教育)

 

質問10 全国発芽マップに参加したことで,子どもの学習に変化があった。

(14) ×(4) 無答(2)

※ ○と答えられた方は,具体的にお答え下さい。

 

(5) webページについて関して

質問11 全国発芽マップに関するwebページを作成した。

(12) ×(8)

※ ◯と答えられた方におたずねします。

(1)作成者はどなたですか?(自分・他の先生・子どもであれば 学年も)

自分(9)、他の先生(1)、4年生の子ども(1)、 5年生の子ども(1)

(2) 苦労されたことがあれば書いてください。

  • 子どもがHTMLエディタを自由に使えるようになるまでに,かなり時間がかかった。 児童主体で作成できなかった。

  • 入力は子どもたちでもできるようになったが,そのままUPするわけにいかず,チェックしたり,直したりするのに結構時間がかかった。自分でやった方が早いが子どもたち自身で発信することに意味があると思い,任せられる範囲で技術を教えるのに少々苦労した(4年生ということもあるかもしれません)

  • 苦労というほどではないですが,複数のウィンドウを開く技をおぼえたことなど。

  • 継続的に発信していくにはどのような内容がいいのか考えさせられた。

  • 毎週の様子をアップする為に,毎金曜日撮影していたが,それが大変だった。


(6) メーリングリストについて

質問12 私は,メーリングリストを利用した。

(20)

※ ○と答えられた方におたずねします。

ア メールチェックはどのくらいの間隔で行いましたか? 次から選んで下さい。

    1. ほぼ毎日(17)
    2. 週に3・4回(2)
    3. 週に1回ぐらい(1)
    4. もっと少ない(0)

イ 自分からメールを出す回数はどのくらいですか?次から選んで下さい。

  1. 週1以上(0)
  2. 月1以上(6)
  3. それより少ない(11)
  4. 出したことがない(3)

ウ メーリングリストをどのような目的で利用されましたか?

(7) 紙すきについて

質問13 ケナフの紙すきを行いましたか。

○(14) ×(6)

※ ◯と答えられた方におたずねします。

ア 具体的にどのように行いましたか?

イ ケナフの葉書等で他の学校と交流できましたか?○(7) ×(7)

○ その他,全国発芽マップへの要望等がありましたらお書きください。

 

3.1.3. アンケート調査結果の分析・考察

(1) 全国発芽マップ活用による交流に関して

 交流の内容としては,ケナフの栽培や紙すきの仕方等についての情報交換が主な内容となっている。更に自主的にテレビ会議や学校のホームページに掲示板を設置するなど各学校独自の取組にまで発展している。また,電子メールやテレビ会議だけの交流だけでなく育てたケナフからできた葉書による交流にも発展している。

 また,学校間だけでなく,地域の方々,ボランティア団体とのネットワークも生まれていきおり,発芽マップこれからの学校に期待されている「開かれた学校作り」にも貢献していることが明らかになった。

 ただ,これまでのところ教師は発芽マップのメーリングリストを通して直接情報を得ることができているが,子どもたちが直接,情報をやりとりする手立てが不足していることが分かる。これまでも自主的に掲示板などの取組が生み出されてきたが,これからは子どもたちが自分たちで情報をやりとりし交流を深めることができるような手立てをとっていく必要がある。

(2) 全国発芽マップ活用による学習に関して

 子どもたちの学習意欲の向上についてはかなりの成果を挙げていることがうかがえる。発芽マップのねらいの1つである地域差による植物の成長の違いや継続観察については,ケナフという1年草でしかも成長も速いことから,観察比較をすることが比較的容易だったことも考えられる。また,参加している教師が学級担任か理科専科かという学校の組織での位置付けも影響している。これらの点については共同栽培する植物の選定にも大きくかかわる問題である。

(3) 全国発芽マップ活用による環境教育への発展に関して

 ケナフという環境にやさしい植物を共同栽培の植物として取り上げているため,教師も子どもも環境問題を考えるきっかけとして発芽マップの役割は十分大きかった。しかし,このことは共同で栽培する植物の選定にも大きく左右されるところであるため,発芽マップの目的や趣旨を十分ふまえていく必要がある。

(4) 全国発芽マップデータ活用と学習の変化に関して

 発芽マップのデータを授業に活用することに関しては,教科等では主に理科の学習で実践されている。また,総合的な学習での取組が数多く報告されている。これはケナフが総合性の高い植物であることが要因として挙げられる。しかし,データの活用という点では今一つである。このことは,成長の様子のデータを分かりやすく,しかも容易に比較できるシステムが不足していることが要因として考えられる。

(5) webページについて関して

 観察した結果等を教師が主体となってwebページを作成している状況である。ただ,小数ではあるが,子どもたち自身がwebページを作成している学校もある。しかし,子どもたちが作成したものをそのままアップするわけにはいかず,教師の確認作業が必要になってきて,そのため時間をかなり要しているようである。また,内容についても検討する必要がある。

(6) メーリングリストについて

 発芽マップのメーリングリストについては回答のあった参加校全てが活用したとしている。内容としてはケナフの育て方,活動のお知らせ等の情報交換が主なものである。現在のところホームページでの情報交換よりも,電子メールでの情報交換の方が活発に行われて入る状況である。これからは,子ども自身が使えるようなシステムの構築が望まれるところである。

(7) 紙すきについて

 ケナフからできた紙でこれまで電子メールやホームページだけでの交流が手作りの葉書による交流を実施することができた。また,学校間だけでなく,地域でお世話になった方々や発芽マップに参加していない学校とも交流できたようである。また,学校だけでなく,教育委員会の協力を得るなど地域といったになった活動もうまれてきている。

3.2. 企画のまとめ

 全国一斉にケナフの種子を播いたことから,全国で様々な子どもたちの取組をみることができた。インターネット,電子メール,テレビ会議システムを活用した他の地域との交流,紙すき,料理,工作,環境問題,などのそれぞれの活動で子どもたちは進んでかかわり,学習してきたのである。ケナフや全国発芽マップに対する子どもたちや教師の様々な思いがこれまでの活動や学習を支えてきた原動力になったのではないかと感じる。

 成長の様子をデジタルカメラを使って撮影したり,ワープロソフトを使ってまとめたりする活動を通して,コンピュータやインターネット,テレビ会議等がより子どもたちの身近なものになってきた。また,それらの電子媒体での交流だけでなく,実際に自分たちで育て作った手作りの葉書での交流も意義のあることであった。その過程には播種から収穫までの世話,パルプ化,紙すきなど子どもたちや教師の様々な活動があったことも意味深いことである。また,それらの活動を行っていく中で,学校間の交流だけでなく,地域のボランティア団体の方々との交流なども生まれ,地域展開も期待できる企画であるといえそうである。

 発芽マップ企画の目的1つである,栽培学習を通して子ども達の交流と栽培結果を利用した授業実践や交流についてはおおむね達成できたと考える。ただ,これまでのところ教師が主体となっている部分が多いため,これからは子どもが主体となった仕組みを作っていく必要がある。例えば,共同で育てていく植物の成長の様子を一覧比較できるようなホームページの設置,子ども自身が使えるメーリングリストの設置,掲示板機能や会議室機能をもったホームページの設置などである。

 また,共同栽培していく植物として,ケナフが3年目をむかえていることもあり,今後積極的な取組がどこまで期待できるか疑問が残る。来年度の植物の選定については参加校の考えや共同栽培していく植物としての教育的な意義等も踏まえて選定していく必要がある。

 全国発芽マップの取組は,参加校の先生方,子どもたちの積極的な活動によって生み出された貴重なものである。また,アンケートについても,全国の参加校の先生方に積極的にご協力いただいた。全国発芽マップのこれまでの5年間の活動は,参加校の一人一人が主役で,1つ1つの取組が支えていったものであるといえる。

 最後に全国発芽マップに参加して年間を通して交流してきた小学校4年生の子どもの感想を紹介してまとめとする。

「私が一番心に残ったことは,遠く離れた学校のお友だちとテレビ会議や電子メールなどで,交流できたことです。初めて顔を見た時は,少し驚いてしまいました。私は『今までメールをやりとりしていた人はこんな人だったんだ。』と思いました。自己紹介などをテレビでした時は,とてもはずかしかったです。でもメールの相手の顔を見ることができてとても嬉しかったです。今までいろんなことをメールで交換してきたので,これからもいろいろと分からないことを質問したり,返事を書いたりして,楽しいメール交換をしていきたいと思います。  『ケナフ』という1つの植物で私たちと全国の友だちと交流できてとても嬉しく思っています。」

執筆者一覧
中西 英 宮崎大学教育文化学部附属小学校

〈参考文献〉

1)明治図書:インターネットがひらく総合的な学習 中山迅・奥村高明・根井誠 編著

〈参考URL〉
1)三重大学教育学部附属小学校
   http://www.rakko.fuzoku.edu.mie-u.ac.jp/
2)宮崎市立本郷小学校
   http://www.mnet.ne.jp/~hongo/cgi-bin/kenafu/g_book.cgi
3)富山交流学習会
   http://www.wnn.toyama.isp.ntt-west.co.jp/wnn-s/kouryuken/index.htm
4)宮崎大学教育文化学部附属小学校
   http://www.fes.miyazaki-u.ac.jp/HomePage/kyoudoupuro/hatuga11/hatuga11.html


 次へ →