酸性雨調査プロジェクトは、スタートして5年が経過した。「継続は力なり」合言葉のようにしてプロジェクトを推進してきたが、着実に学校教育の中に浸透してきた感がある。参加校における実践も、インターネットを実験的に利用してみようの段階から、選択理科の授業・総合的な学習の授業・環境学習等、授業の中での利用が増えたことも、定着へ一歩も二歩も進んだ事を裏付けている。
今回のプロジェクトにおいては、酸性雨調査に加えて、窒素酸化物の調査を、期間と場所を限定して行ったが、環境問題を取り扱う授業において、利用できる教材が増えたことも、プロジェクトに取り組む意欲を強くすることになった。学習指導要領の改訂により、「総合的な学習」の時間が小学校から高等学校まで実施されるが、このプロジェクトの内容は重要な実践例として、参考にされ実施されていくものと考えられる。
これからの学校教育は、1つの学校の中だけの教育活動だけでなく、地域や世界に広く開かれたものに、ならなければならないと言われている。しかし学校教育は、各学校毎に学校の特色を生かして行われており、授業において学校間の連携をとる事は、非常に難しいとされてきた。インターネットの学校教育への導入は、学校間の連携を取り易くする手段として期待されているが、連携を取るための教材が開発されなければ、インターネットを導入しただけに終わってしまう。
環境問題は、これからの社会にとってきわめて重要な課題であること、年齢にこだわらず取り組めること、他校の実践と比較する事で学習効果が増すこと等、共同学習のテーマとして最も適したものの1つである。今回のプロジェクトの内容である酸性雨と窒素酸化物の調査は、環境問題の議論の中でよく知られていること、作業量が多くない事など、取り組みやすい内容であると言える。さらに学習内容を、学校や活動場面によって自由に設定できることも特色であり、参加校からの報告において、多様な実践ができたことを見ることができる。
共同学習を効果的に進めるためには、プロジェクトを推進するための組織が必要である。今回の体制は次のようであった。
幹事校 |
広島大学附属福山中・高等学校 |
プロジェクトの支援 |
広島大学総合科学部 中根研究室 |
Eスクエア・プロジェクト事務局 |
コンピュータ教育開発センター |
窒素酸化物測定器具・ホームページ作成 |
外部企業に委託 |
サーバーやホームページの管理をしながら、参加校への指示や質問に答えて、プロジェクトの円滑な運営をする幹事校の負担は、かなり大きい。その意味で、プロジェクトの業務を外部に委託することで、幹事校の負担を小さくすると共に、最新の技術によるサービスを提供できることの意味は大きい。本年度の実践は、今後の運営体制を考える第一歩と位置付けることができる。
酸性雨調査と窒素酸化物調査を、一体化したホームページを作る事ができた。環境問題を総合的に取り扱うホームページができたことの、教育的な意味は大きい。データの送信・データの収集・データの表示・他校との交流のための掲示板など、授業の流れに沿ったホームページができた事は、今後類似した共同学習の設計に参考になるものと考えられる。
専用のサーバーを、広島大学附属福山中・高等学校に置き運用を始めた事も、このようなプロジェクトの今後の姿を模索する上で、価値があると言える。具体的な問題点については、今後の実践に待つ所が大きい。
1) |
酸性雨調査プロジェクト発足時から、指摘されていたことであるが、学校という組織は、何年にもまたがる長期的なプロジェクトには、対応しにくい組織である。教職員の移動や対象となる生徒の変化、クラブ活動における年度毎の変動などが理由である。そのために、データの収集が継続的にできないことになる。また学校の事情で、プロジェクトに参加しても、活動できないこともある。プロジェクトの立案にあたっては、このような実情を十分考慮しておく必要がある。 |
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2) |
今回のプロジェクトでは、観測器具の配布を行ったが、配布をすることで参加出来た学校は多い。各学校は予算的に大変苦しく、破損した部品の補充が出来ない学校も少なくない。今後参加校への支援の仕方を検討する必要がある。 |
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3) | 学校における、インターネット環境の整備が不充分であり、担当教師への電子メールによる連絡は殆どうまくいかない。連絡は郵送に頼らざるを得ないのが実情である。生徒用のパソコンだけでなく、教師一人一人に対してパソコンを配布する事が望まれる。電子メールを利用する場合、担当教師だけでなく、校長にも趣旨がきちんと伝わるような手順が必要である。 | |
4) | 授業に利用する場合、データをどの様に利用すればよいか、わからない事が多い。酸性雨調査プロジェクトの5年間の経験から、事務局サイドでデータの加工をし、ホームページに掲載しているが、参加校からは積極的にデータの加工についての、要望を出すべきである。 |
1) |
継続性
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2) |
サーバーの管理
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3) |
学校間・生徒間の交流の拡大
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酸性雨調査・窒素酸化物調査の、環境学習に関する総合的なプロジェクトが、多くの方々の協力と、参加校の教師・生徒の努力によって出来たことの意義は大きい。今後次に示すような観点から、プロジェクトの充実を図っていきたい。
1) |
学習内容の拡大・充実。 |
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2) |
授業実践記録のデータベース化。 |
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3) |
学校間の交流の拡大。外国の学校との交流。 |
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4) | ホームページの機能強化。 | |
5) | 大学の指導教官との交流。 | |
6) | 参加校を中心にした「酸性雨サミット」の開催 |
新酸性雨調査プロジェクトに関するアンケート
参加校名 [ ]
このアンケートは
以下の質問に,記号でお答えください。複数回答可です。また必要に応じて記述ください。
ア:10回以上 イ:6回〜10回 ウ:1回〜5回 エ:0回
ア:降った雨はほとんど毎回測定をしている。
イ:雨の降った回数の半数程度,測定をしている。
ウ:雨が降っても測定できないことが多い。
エ:昨年度は測定していたが,今年度は測定ができていない。
オ:昨年度は観測体制が整わなかったが,今年度は観測体制ができている。
カ:観測の体制ができていない。
ア:クラブ活動でおこなっている。 クラブ名「 」
イ:学級活動でおこなっている。
ウ:授業でおこなっている。 教科名「 」
エ:測定はおもに教員がおこなっている。
オ:その他 :具体的に記述してください
ア:教科の授業の中でおこなっている。
イ:課題学習や選択などの教科以外の授業の中でおこなっている。
ウ:クラブ活動などの特別活動や課外活動の中でおこなっている。
エ:生徒会などの全校組織の活動の中でおこなっている。
オ:担当教員の個人的な活動の中でおこなっている。
カ:その他 :具体的に記述してください
ア:レインゴーランド イ:pHメータ ウ:導電率計
故障の状況を詳しくお書きください。:
ア:pHメータの校正液(pH7) イ:pHメータの校正液(pH4)
ウ:導電率計の校正液
ア:常時屋外に台に固定して設置してある。
イ:常時屋外においてあるが,固定はしていない。
ウ:雨が降り出す前に,屋外に持ち出すように準備がされている。
エ:まだレインゴーランドを組み立てていない。
オ:レインゴーランドが壊れて使用不能の状態である。
常時屋外に設置ができない場合は,どのような方法で観測する計画になっていますか,詳しくお書きください。
(http://p100.mgt.ipa.go.jp/prjlist/joint/acid/)
を見たことがありますか。 回答[ ]
ア:生徒が自由に見られるようにしている。
イ:教員がデータを取りだして生徒に見せている。
ウ:見ていない。
ア:ちゃんと登録できた。
イ:登録に失敗した。
ウ:登録を試みていない。
ア:知っていた。
イ:知らなかった。
ア:読んでいる。
イ:読んだことがない。
ウ:郵便で送ってほしい。
酸性雨・NOx調査 掲示板(酸性雨・窒素酸化物調査の意見交換・情報交流) |
E-mail 所属(学校名等) Title |
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メッセージ(1999年10月15日 午後07時00分〜1999年12月06日 午後01時34分) |
No.0047 |
渡邉 隆広さんよりのメッセージ |
1999年12月06日 午後01時34分 |
E-mail:miyacyu@d1.dion.ne.jp 所属:上屋久町 宮浦中学校 Title:データ処理 |
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屋久島は、今回酸性雨のpHが高かった。 |
No.0046 |
Akira Takahashiさんよりのメッセージ |
1999年11月29日 午前05時04分 |
E-mail:ib6a-tkhs@asahi-net.or.jp 所属:相模湖町立千木良小学校 Title:測定終了 |
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全6回の窒素酸化物(NOx)の測定を終了しました。 |
■調査キットの内容
(1)試験管
窒素酸化物(二酸化窒素)を吸収するトリエタノールアミンを、約0.2mgしみこませたろ紙を内部に入れたもの。
(同薬品は、皮膚に触れると人によってはかぶれなどを起こす可能性があるため、ろ紙に手が触れないように通気孔を有する中ぶたを設けている)また、測定時以外は、外気に触れないように外ぶたをつけたものである。この1本で1か所の測定ができる。キットには2本が入っている。
この試験管の外ぶたをはずし、大気中に24時間さらして、二酸化窒素を吸収させるものとする。
(2)NOx調査薬
試験管内のろ紙に吸着した窒素酸化物と反応して赤変する液状の試薬。酢酸、スルファニン酸、N・1・ナフチルエチレンジアミン二塩酸塩、水の混合物で、一般にザルツマン試薬と呼ばれている。約2mlが紫外線を通しにくい褐色の容器に入っている。約半量を回収した試験管に加えて、その液の色の変化を見る。窒素酸化物の濃度が高いほど赤くなる。
(3)NOx比色表
化学反応で赤変したNOx調査薬の色から、ろ紙が吸収した窒素酸化物の濃度を知るための6段階のカラーチャート。各段階には数字を与えてあり、これを測定値とする。数字は、NOx調査薬にとけ出した窒素酸化物(二酸化窒素)の濃度をμg/mlで表したものである。
■空気中の窒素酸化物濃度と測定値の相関関係
本調査試薬での測定値は、風や気温の影響があるので、直ちに空気中の正確な窒素酸化物の濃度(ppm)には換算できない。実験から割り出したおおよその対応関係は次の表のようである。
比色表の数値(μg/ml) 大気中の窒素酸化物の濃度(ppm)
〜0.1 〜0.019 0.2 0.019〜0.038 0.3 0.029〜0.056 0.4 0.039〜0.075 0.5 0.048〜0.094 0.6〜 0.058〜
(資料は(株)学習研究社提供)
サーバーOS:Linux
開発言語:Perl
開発に用いたOS:Windows98
開発に使用したツール:テキストエディタ各種
Perlで記述されたCGI(ホームページ上で実行されるプログラム)により、ホームページのフォームで入力された値をCSV形式のデータに変換、これをさらに整理・加工し、ホームページ上に測定データや登録データを表示させた。同様に、データの入力・変更・削除には必ずパスワード入力が必要とした。
これらのCGIは、すべてサーバー上のディレクトリcgi-binに収められている。各CGIモジュールの内容は以下の通りである。
CSV形式にしたデータも同じディレクトリに置かれている。
cgi-bin ├disp.cgi - 測定データの一覧HTML表示 ├check.cgi - 測定データの確認HTML表示 ├write.cgi - 測定データの保存 ├pass.cgi - 各学校のパスワード確認 ├setplace.cgi - 各学校の測定場所の保存 ├setplace.csv - 各学校の測定場所の名前のデータ ├data.csv - 各学校の所在地などのデータ ├chgpass.cgi - 各学校のパスワード変更 ├chgdata.cgi - 各学校の測定データ変更 ├deldata.cgi - 各学校の測定データ削除 lib ├util.pl - 各プログラムで使用するサブルーチン ├jcode.pl - Perlの日本語関係のサブルーチン
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シンプルがよいと考え、よけいな飾りはいっさいつけていない。タイトルに「環境」をイメージできる地球をデザインした。
あとで「酸性雨/NOx掲示板」へのリンクを追加。
画面イメージ:データ閲覧
測定結果の閲覧や調査に関しての注意や参考になるデータなどを見ることができる。
画面イメージ:測定結果閲覧
参加校一覧の中から学校名を選択するとその学校の測定結果を見ることができる。また、写真がある学校に関しては、写真も見ることができる。
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