ミー&メディア(Me and Media以下M&Mと略)は1992年に同志社国際高校2年次の英語特別選択科目として発足し、7年の活動実績を持つプロジェクトである。
M&Mは発足当初から週2回(計90分)、教えと学びのアプローチに対する先駆的な実験の場として活用されてきた。数年にわたり本校以外の様々な学校にM&Mへの参加を呼びかけてきており、年ごとにさまざまな成果を生み出している。
1997年より日本国内他校のM&Mへの参加を呼びかける努力が始まった(それまでの活動は主に本校とヨーロッパの学校による交流であった)。これは、日本の学校における国際交流活動の促進を支援するCECとの協力関係の下で行なわれたもので、今年度の目標は、日本国内参加校とのより緊密な交流と、日本国内参加校が成功裡にこうしたプロジェクトに参加できるようなモデルプロジェクトとしてM&Mを再構築することであった。
昨年度のプロジェクト終了時点では、日本国内の5校とヨーロッパの6校がさまざまな交流を行った。今年度はそれに国内1校が加わり、ヨーロッパ3校は参加できなかったため、1998年4月現在の参加校は以下のとおりである。
日本国内
参加校1: 同志社国際中学校・高等学校 (京都)
参加校2: 京都橘女子高等学校 (京都)
参加校3: 松山東雲中・高等学校 (愛媛)
参加校4: 帝塚山学院泉ヶ丘中・高等学校 (大阪)
参加校5: 南山国際高等学校・中学校 (愛知)
参加校6: 東京国際学園 (東京)
ヨーロッパ
参加校1: Kooperative Gesamtschule Rastede (ドイツ)
参加校2: rsg Broklede(オランダ)
参加校3: Obchodna Akademia (Secondary Commercial School) (スロバキア)
1998年3月にコペンハーゲンでESP(European Schools
Project:1988年にアムステルダム大学により発足した教育に関する世界的なネットワーク団体。電子メディアを利用した教育活動や教育機関間のコミュニケーションの支援を行っている。現在その活動は26カ国に及び300名を超える各国の教師と数万人の生徒が活動に参加している。http://www.esp.educ.uva.nl/
) の会合が開かれた際、M&Mのヨーロッパ側参加校を募るための会合が持たれた。この会合ではさまざまな討議がなされたが、その中で、5,6名の教師が「メディアとしての戦時宣伝活動」というテーマで、第2次世界大戦中の各国の映画や教科書その他のメディアを見るということに強い関心を寄せた。ヨーロッパ諸国も日本もこの戦争への関与は深かっただけに、このテーマは幅広く関心を集めると考えられた。
しかしながら、その翌月の日本国内での打ち合わせの際に、積極的にプロジェクトに参加している2つの学校(東雲中・高校および帝塚山学院)の先生方より、「メディアとしての戦時宣伝活動」という一つのテーマに限定するよりは、前年度から引き続いたより一般的なテーマのほうがよいという意見が出た。前年のテーマのリストはプロジェクトに参加した各校の生徒達によって選ばれたもので、今年度分は以下のとおり編成されている。
Me & Media 1998年度研究テーマ
メディアとしてのマンガ |
メディアとしての麻薬 |
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メディアとしての家族 |
メディアとしてのファッション |
メディアとしてのインターネット |
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メディアとしての映画・ビデオ |
メディアとしての音楽 |
メディアとしての国籍・民族 |
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メディアとしてのプライバシー |
メディアとしての宗教 |
メディアとしての性 |
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メディアとしての暴力 |
メディアとしての戦時宣伝 |
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本校においては、週90分という時間が授業内に確保され、その時間は英語や社会という科目に特にこだわることなくメディアを考えることができる。生徒はそれぞれ各自がEメールのアドレスを保有し、日常的に自由にコンピュータを使用できる環境にあるため、他校とは全く異なる活動ができた。生徒達はグループに分かれ、活発にそれぞれの対象メディアのリサーチを行ったので、昨年末には各グループともかなり広範囲にわたってテーマごとのホームページを作成することができた。
一方、プロジェクトに参加した国内他校の状況はさまざまであった。京都橘女子高校と南山国際高校はプロジェクトへの参加を表明したものの、実際には活動に参加することはできなかった。各校および各担当教諭はそれぞれに可能な範囲で独自の参加形態をとったが、こうした状況はすべての学校が参加できるプランを策定するためには非常に困難な状況であった。
すべての学校が参加できるミニ・プロジェクトの試みとして、1本の映画を参加各校がそれぞれに見る、という企画が初めて行われた。この企画を子細に検討すると、将来のプロジェクトに関して普遍的な課題が見てとれる。コペンハーゲンのESP会合で、教師たちは映画を一緒に見ることに興味を示した。私たちは戦時中のドイツの青春を描いた
“Swing Kids” や戦争や原爆が子供たちに及ぼした影響を描いた「蛍の墓」や「はだしのゲン」などを候補として語り合った。しかし結論には至らなかった。というのは何を見るかは後日実際にプロジェクトに関わる教師と生徒にゆだねられるべきと考えたからである。しかしこのアイデアについては一同非常に熱心であった。
後日日本の教師たちの間で、見る映画を決定すべく話し合いが持たれたが、本校は当初のM&Mの理念 - 出来る限り生徒自身に選択させる - に則り、教師が決定するよりも生徒自身の決定に任せる方を希望した。時間がかかる等の懸念もあったが、最終的には各校の生徒間でどのような映画を見るか決めるためのBBS(電子掲示板)を作ることとなった。BBSは出来たものの投書はわずかであり、唯一複数の得票があった「フォレスト・ガンプ」に決定した。プロジェクト全体としては300名以上の生徒が参加している中で、投書はわずか20通たらずであった。
投票終了後、2つの方法で「フォレスト・ガンプ」は各校に通知された。ひとつはホームページへの掲載、もうひとつはEメールを通じて各校の教師に連絡し、クラスで連絡・発表をしてもらうよう依頼したのである。しかしながらこの通知をした後も反応があったのは3校のみであった。日本国内の2校はすでに他のテーマに取り組んでおり、この上この映画視聴企画に参加する時間的余裕がない、または特定の映画を見ることへの関心がないという反応であった。
ドイツのあるクラスでは全生徒が映画を見、その感想をBBSに掲載すると言ってきた。「フォレスト・ガンプBBS」作成の1ヶ月後、日本国内のM&M会議で、1校の教師より、すでに生徒たちは映画を見ており、間もなくBBSに感想を載せられる旨報告があった。しかしこの連絡にEメールは使われなかったため、会議で報告があるまでの間生徒たちの活動については全くわからなかった。
とうとう2月の初めにフォレスト・ガンプについての9通のEメールが帝塚山学院の生徒たちから寄せられた。ドイツの学校からもそれに対する反応あるいは彼ら自身の感想が送られてくることになっている。また教師のひとりはこうしたメッセージに対する感想を書き送ってきた。
M&Mに関わったすべての教員がそれぞれの環境 - プロジェクトに割ける時間の違い、生徒を取り巻く技術的な環境の違い、校内サポート体制の違い、活動する上でさまざまなメディアを使う場合の熟練度の違い等を考慮に入れて
- において最善を尽くしてくださったことには疑う余地はない。教師たちはEメールを送る、ホームページを作る、多様なメディアのテーマを考え、調査を行い、そして映画を見るというさまざまな活動の中でそれぞれに自分の担当クラスを発展させるべく努力をして下さった。