4.5.3 既存のメールソフトウェアの試用結果と動向

4.5.3.1 子供が楽しめるメールソフトウェア「ポストペット」

 ポストペット2001(Sony Communication Network Corporation)は、メールをやりとりすること自体を楽しめるように考えられたメールソフトウェアで、操作が簡単なだけでなく、画面上でクマやウサギなどのペットが動いたり、ペットがメールを運んだりするようになっている。女性ユーザが多いようであるが、基本的な機能は他のメールソフトウェアと変わらないので、上級者にもユーザが多いという。
 ポストペット2001は子供用あるいは障害児用に作られたわけではないので、そのような視点による評価はできない。しかし、従来のメールソフトウェアに比べて、障害のある子供でもメールのやりとりを意識しやすいという意味であえて、それぞれの機能を障害のある子供が使った場合で説明したい。

4.5.3.2 ポストペットの基本的操作手順

 初心者がメールソフトウェアを使うときにもっとも戸惑うのは、いうまでもなくインストールとメールアカウントやメールサーバ等の設定であろう。しかし、学校での利用を考えた場合には、インストール、設定については担当者が事前に行っているので、子供が使う時点では正常に動作しているということを前提にしたい。
 そうすると、現状のソフトウェアの基本的な操作手順をポストペットを例にとって整理すると
<電子メールを読む>
 ・『メールチェック』ボタンをクリック
 ・メールが届いていれば、リアクションがある。
 ・『受信簿』をクリックして、一番上のメールをクリックすれば中身が読める。
 メールを「読む」のは、「書く」ことに比べて簡単といえる。しかし、知的な障害のある子供にとって「メールチェック」ボタンを押すことは、さほど難しくないが、受信簿のインタフェースは、アイコン化したり、未読・既読の別をわかりやすくつけたり、既読は別のフォルダに入れるなど、直感的に操作できるようにすることで、より理解がしやすいだろう。
 また、「メールチェック」ボタンを押したときにすぐ到着したメールが自動的に開くようにすることも理解しやすい。ただし、その場合複数同時にメールが到着した場合には一度に開くのではなく、到着したメールの発信人を判別できる形でアイコン化することが必要である。

<電子メールを書く>
 ・『メールを書く』ボタンをクリックする。
 ・メールを出したい、相手のメールアドレスを書く『TO 〜 へ』
 ・メールのタイトルを書く
 ・本文を書く
 ・送信する(『ペットにわたす』『ポストマンにわたす』ボタンをクリックする)

 メールアドレスを記入するのは、障害のある子供のみならず、初心者には大きな障壁となる。そこで、メールソフトウェアには「アドレス帳」機能があり、あらかじめメールを送りたい相手のメールアドレスを登録しておき、該当する相手の名前をクリックするとメールアドレスの手入力をしなくてもよいようになっている。この機能を利用すれば、『おともだち帳』をクリックして、メールを送る相手の名前をクリックすることで「タイトル」「本文」に進むことができる。この部分については、相手をアイコン化できればさらに直感的に操作できると考えられる。

 メールの送信で問題となるのは
 ・文章の構成
 ・キーボード入力
 である。文章の構成については、従来の電子メールが文字を主体としたコミュニケーションであることから、文章作成のスキルがあることが前提となっていることから必要最低限であるともいえる。しかし、「添付書類」という形で手描きの絵や文字、あるいは画像を送るということなら可能である。(京都府立南山城養護学校インターネット活用中間報告 平成10年3月)基本的には文章のやりとりによるコミュニケーションが電子メールではあるが、簡単な絵を送ることでコミュニケーションが成立することも可能である。
 一方、文章の作成はある程度できるが、キーボード入力が困難、あるいは不慣れである場合もある。運動機能による入力困難に対しては代替キーボードや特殊なインタフェースを考える必要がある。また、標準的なキーボードでは入力が理解しにくいが、ひらがなの50音順配列なら理解できるという場合もある。例えば、「イージープロローグ」などのオンスクリーンキーボードを組み合わせることでマウスクリックや外部インタフェースを接続して1〜2点スイッチで入力することで、キーボード入力による障壁を軽減することができる。
 ポストペット2001は、メールの送・受信ともにキャラクターがリアクションをして、従来のメールソフトウェアではわかりにくかった、送・受信が直感的にわかるという利点がある。障害のある子供が使う場合、操作が単純であるだけでなく、自分が行った操作の適切なリアクションがあることが非常に大切であると考えられる。

 

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