4.7.4 今後の研究の方向

また、こうした学習を行うために必要なものは、ソフトウェアやハードウェアの供給だけではなく、確実に子供たちにコミュニケーションスキルを身につけさせていくための教育課程の検討が是非とも必要である。特に知的障害児の教育については前述のように身の回りの日常生活的題材による「経験主義的」な教育方法が長年にわたって行われ、ある意味ではその方法論から一歩も抜け出せないでいる現状がある。そうした社会適応を前提にした教育方法を否定するものではないが、それはあまりに現代の社会構造の変化や、21世紀に向けて子供たち一般に求められている情報スキルの獲得と断絶している。
 本稿の貴重な事例に示されるように、知的障害を併せもつ子供たちも、適切な題材と支援体制を整えることによって、確実にコミュニケーションスキルを育てていくことができるのである。改訂間近な新学習指導要領でも障害児の情報教育は大きな学習要素として示されており、今後早急に教育課程の検討を進める必要がある。
 さらに、こうした学習を進めるにあたっては、教師や指導スタッフ、あるいは家庭でも実施しようと考えると保護者側にも相応の技術的知識が必要になる。とりわけ、個々の障害に応じた適切なアクセシビリティの支援方策を講じるためには、単にコンピュータに関する知識以外の素養も必要になる。それらの知識や技術が十分に共有できる体制が造られないと、なかなか子供たちの教育ニーズに応じた指導が達成できない。
 よって、今後の研究として必要なことは、教師や家庭を支援するシステムの検討であろう。それこそが広域ネットワークを利用して専門的知識やノウハウを共有することで成し遂げられるはずである。併せて、さまざまなボランティア活動(メールボランティアや設置・フィッティングを行う技術ボランティアなど)の育成が大切である。これらを組織的に行い、財政的なものも含めた活動支援を行う公的な機関の必要性を強く感じる。
こうした教師支援システム構築の研究も来年度以降の重要な検討課題としておきたい。

 

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