2.8 まとめ

 全国の学校へのインターネット導入を進めるためには、ネット上でアクセスできる膨大な情報の中から教育に適したものを選択して利用可能とする手段を整備する必要がある。発信側を規制する法的手段は、表現の自由を侵す可能性があるため、現実的でない。また、情報の選択は、校種・学年・科目・指導方法等に応じ、教師の判断により柔軟に行えることが望ましい。このためには、あらかじめコンテンツを格付け(レイティング)した結果をラベルデータベースとして準備し、受信側で濾過(フィルタリング)を行うためのソフトウェアを利用することにより条件に合致したもののみを選択することが適切と考えられる。

しかし、このシステムの実用化にあたっては、レイティングの基準、フィルタリングの具体的方法など、利用形態に応じて解決すべき課題が多い。これらの課題を解決するためには、レイティングシステムを教育の現場において利用しながら評価を行う必要がある。そこで、本プロジェクトでは、財団法人ニューメディア開発協会が開発したレイティング情報データベース(SafetyOnline)およびフィルタリングソフト(IFS)を利用して評価実験を行った。

 その結果、全般的には当初期待した通りの評価を得ており、アンケート調査でも今後とも継続してレイティングシステムを利用したいという意見が大半だった。一方では改善を要する点もいくつか明らかとなった。その内容は上述の通りであるが、主要な点には次の点がある。

(1)レイティングのカテゴリーについては、RSACiのものをべースにして拡張するのが良いという点で基本的には意見が一致している。一方、ショッピング、犯罪・不法行為等のカテゴリーを追加することなどの提案もあった。

(2)レイティング情報提供サービスについては、SafetyOnlineが役立つという意見が多い一方、登録件数の充実、更新等の要望もあった。また、セルフレイティング促進の重要性、レイティング内容に問題があったときに対処など、今後検討すべき課題もある。

(3)フィルタリングソフトについては、安定性と高速性の要望が多かった。なお、あるべージベのアクセスがフロックされたときの画面表示を工夫することが必要だとの意見が出された。

(4)教育現場からの要望としては、フィルタリング情報の設定や変更を容易とするためにプロキシ版を導入することが必要であるという意見が強かった。教育センターにおける利用についても同様の要望が出された。さらに、効率的な運用を可能とするため、目的とする教育活動に合った情報を検索できるようラベル情報を一定の型式でメタ言語等で記述する(例えば「小学校低学年、社会、農村の生活、環境、河川、食料など」)という方式の提案もあった。

(5)有害情報をフロックするだけでなく、見せたい情報を積極的に格付けする必要性があるとの主張も多かった。

 今後、これらの要望を参考としてシステムの改善を行い、学校への導入を進める必要がある。

 

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