3.5 学校現場での開発と利用の課題

 学校現場で教育用ソフトウェアを開発し、そのソフトウェアを広く利用を図り、更に改善利用して行くことについて参加者よりアンケートを取り、評価分析を行った。
 現状では、少数の一部のプログラム知識を持った先生が、組織的な支援もなく独自に学習を行い教育ソフトウェアを開発している。このような状況を打開するためには、良質の廉価な市販ソフトウエアの普及と平行して、共同で開発し、そのソフトウェアを共有し合う環境が今後必要とされている。また、開発言語等の技術的な部分においても先生が学習できる環境と、更に学習の容易な言語仕様もしくは開発ツールが必要とされている。

(1) 通信系のソフトウェアについて
 本企画の趣旨であるインターネット上で動作する教育用ソフトウェアの活用において、開発、管理・流通、および利用について通信系、特にインターネットを利用する特徴、課題に付いて分析した。

・共用の有効性
 通信系で提供されるソフトウェアは、ソフトウェアを作成した先生の利用だけでなく、他の多くの先生や生徒が利用できる利点がある。アンケートでは、80%以上がこの点を評価している。個人で作成した場合、活用の場面がかぎられていることで、インターネットを活用することにより、作成者に対して発表や評価の場を提供することと共に、利用者にとって幅広いソフトウェアの選択が可能となる。ただし、現在のインターネット環境の普及状況においては、直ちにこのような利点が発揮できる訳けでない。

・即時利用の有効性
 ブラウザソフトウェアの上でソフトウェアを動作することの利点として、即時起動をあげることが出来る。アンケートでは、80%以上が即時起動を有効性としている。この即時利用の背景として、学校にある多数のパソコンヘのインストールや、メンテナンスなど管理者の労力の低減化を期待している。また、授業の準備という面からも期待されている。反面、現状では通信費の増大を懸念し、実際面としてインターネットだけでなく、インドラネットを含めた検討が必要である。

・受け渡しの有効性
 受け取り側として、自分の授業準備のタイミングで自由な時間にソフトウェアの入手できること、場合によっては授業中であっても入手できることで、授業の準備が容易になることが期待されている。

・共同開発の有効性
 ソフトウェアの共同開発をインターネット上で行った場合、ソフトウェアの機能追加、拡張、改善等の意見の交換、更に他者が作成したソフトウェアの改変、将来的にはモジュール単位の共同作成が可能になると想定される。
 アンケートでは、非常に有効が70%以上ではあるが、やや有効から全然有効でないまでの回答が多岐に渡っている。現状の様に個々のソフトウェア開発でも改変や意見交換、評価等に付いてインターネットを活用する事で効果的に行うことは可能であるが、将来的な形として共同開発に向けた環境や著作権等についてのルールの整備、評価・意見交換等の土壌が必要である。

・児童・生徒の興味関心
 児童・生徒がソフトウェアを利用する場合、インターネット上のソフトウェアとスタンドアロン上のアプリケーションソフトウェアを区別する必要性はない。教材としては、意識せずに使えることが必要である。児童・生徒の興味関心を引くインターネットらしいソフトウェアを挙げるとすれば、他校や生徒問の交流を促すような意見交換、アンケート集計等のソフトウェアが、らしさを引き出せるソフトウェアといえる。

(2) ソフトウェアの提供方法について
 本企画では、ソフトウェアを特定のサーバ上に登録し、そのサーバを検索して必要とするソフトウェアを入手する方法を取った。これは、作成者の管理の負担軽減、作成者側の管理の不統一を避けるためにこのような方法を取った。
 ソフトウェアを管理、提供する方法としてこのような集中管理方法、作成者側で管理しそのリンク先を管理するリンク管理方法、両者の併用管理方法がある。
このようなソフトウェアの管理や提供方法に付いて分析した。

・ソフトウェアのライブラリの形態
 インターネット上で動作する教育ソフトウェアを一個所に集めた形でライブラリ化した場合、1)教材を探す手間が省ける。2)一覧性が保たれる。3)ソフトウェアのダウンロードが容易。等の利点を見出すことが出来る。ただし、ライブラリ化する場合の課題として、分類方法、検索方法、管理方法を十分に検討する必要がある。

・ソフトウェアの蓄積方法
 ソフトウェアの蓄積・管理する方法として、特定のサーバ上での管理する方法、学校等のサーバに自分の作成したソフトウェアを管理し、リンク集的に管理する方法がある。これらの方法について、一長一短があり一意的に決めることは出来ない。
集中管理の利点:1)管理の容易性。2)一覧性。3)検索の容易性
集中管理の難点:2)登録が面倒。2)情報収集の手間。3)回線負荷、遅延
 結果的には、集中管理方式が良いが、ミラー化の対応やソフトウェアの種類によって管理するサーバを分散化し、データの小容量化や回線負荷の回避が必要である。また、個別URLリンクも併せで管理し、登録の簡易化や情報収集の容易性等の自由度の向上を図ることが必要である。

・ソフトウェアの蓄積の運営管理
 教育用ソフトウェアを蓄積し、それを運営管理して行く場合の方法として、サーバ管理は特定の機関が行い、内容に関して先生方が自主的に管理するという方法が望まれている。
 継続的にソフトウェアの管理を行う場合、サーバの管理運営については技術的な専門家を有する特定の機関が当たり、ソフトウェアの選定や内容の評価について教科等の知識を持つ現場の先生方が当たる方法が望まれている。

(3) 教育用ソフトウェアの内容について
 このような企画を推進する上で、適したソフトウェアの種類や必要とされているソフトウェアの種類について分析した。

・ソフトウェアの規模
 インターネット上で扱うソフトウェアとして小規模なソフトウェアを希望している。これは、現状の学校環境を考慮するとソフトウェアのロード時間、実行時間を短縮し、利用を容易にする事を理由としている。また、利用形態として小さなソフトウェアを複数組み合わせて応用を図る意図もある。
 ただし、若干の規模増大には夜間のダウンロードの方法を取るなど規模拡大への対処の可能性もある。

・ソフトウェアのタイプ
 インターネット上で配布できるソフトウェアとしては、Web上で動作するアップレットソフトウェアだけでなく、スタンドアロンで動作するアプリケーションソフトウェアやサーバ・クライアント型のソフトウェアも必要とされている。

・ソフトウェアの応用可能な教科
 インターネット上で動作するソフトウェアの応用可能な教科として数学や理科系の場合、既に先行的にソフトウェア作成がされており適しているが、社会科や国語などほぼ全教科に応用が可能と言う意見が多い。

・ソフトウェアの種類
 インターネット上の教育用ソフトウェアとして今後必要とされて行くソフトウェアとして、シミュレーション型の要望が多い。ただし、シミュレーション型にも数学の図形シミュレーションから理科等の現象シミュレーションなど多岐にわたる中で一般的には図形や画像の動きのあるソフトウェアが求められているようである。

(4) 教育ソフトウェアの開発について
 教育用ソフトウェアの開発についての今後の課題を分析した。

・自作ソフトウェアの開発の課題
 Web上で動作するソフトウェアは、言語環境やツール環境等の開発環境が整いつつある。教育現場においての課題として、全体の70%の参加者が自作時間が取れないことを問題としている。次の課題として相談相手が見つからない、マニュアルの入手等技術的情報の入手がある。

・自作の動機、必要性
 Web上の自作ソフトウェアは、次の理由により必要とされている。
ホームページだけではインターネットの活用にならない。教科に合った教材が必要である。機種に依存しないソフトウェアが必要。Webが基盤であり、作りやすい。ネットワークを介して全国の教育機関を結び、教材や教育内容を共有することは極めて意義深い。等

(5) 利用の環境

・ソフトウェアの利用環境
 ソフトウェアの利用環境は、現状では十分とは言えないが、将来的にどのような利用環境を必要としているか分析した。

基本的な環境)  予算を気にしないで利用できる通信環境が必要である。また、インターネットを活用できるパソコンが最低限必要とされている。

通信回線)  常時接続状態にある専用線の要求、1クラスの生徒が一斉にアクセスできる速度が希望されている。

パソコンの設置)  校内LANの設置、利用状況の増加による複数のコンピュータルームの要望など、生徒や先生が自由に手軽に利用できる台数や接続が希望されている。

技術環境)  パソコン環境に左右されないスピードのOSの出現、完全プログラミンクレス言語やオーサリングツールの出現が望まれている。

指導等の環境)  各小中学校にコンピュータに詳しい人を最低1名以上ずつ配置することが必要。高速の回線、インドラネット内のサーバなどのインフラとそれを維持管理できる人材が必要。

・ソフトウェア自作の環境
 教師がインターネット上のソフトウェアを開発するために必要な環境を分析した。

技術的資料、講習会等の環境)  言語を無料でCD-ROMで配布して、講習会や勉強会があること。プログラムの相談ができる人がいること。開発ツールのソフトの容易な入手。アイデア、技術情報などをなどを自由に交換できる場。開発委員会を設け、学識経験者やシステムエンジニアが1名ずつ以上いて、数名から10名前後の委員が開発を担当する様な組織。ビジュアルベーシックなどのような環境ツールとテクニカルアドバイザーとなるようなガイドWeb。人的ネットワークと情熱。

等簡易な言語、ツール類の環境)  整備開発に必要な言語のようなものが、誰でも使えること。パソコン環境に左右されないスピードのOSの出現、完全プログラミンクレス言語の出現。優れた開発ツール、部品ライブラリ。等

開発PC整備環境)  現行のように学校に教師用パソコンがわずか1台というのではなく、全教師に各1台ずつパソコンが配置されることが必要。できれば、あいた時間どこでも利用できるようなノートパソコンがベスト。
ダイヤルアップにしろインターネット接続された環境とツールソフトが端末に側にあればよい。インターネットに接続できる、マシンの能力がそれなりにある、開発環境があること。最終的にはサーバーが自由に使える環境。

意識環境)  教育行政がインターネットの必要性を認識すること。何にもまして、現場の管理職や地教委への啓蒙活動が必要である。上の理解が得られないと何事も先へ進まない。

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