3.8 企画のまとめ

 本企画において、Web上で動作するソフトウェアを対象に、その開発、管理運営、利用について現場の先生方と共同で行える方法や技術について検討してきた。本企画の対象とされる開発技術や応用技術、利用技術は現在進行形のものであり、本企画を進める上では多くの課題が内在している。例えば、Javaでソフトウェアを開発する上での言語仕様の変化、開発ツールやマニュアル等の困難な入手、作成したソフトウェアを管理するシステムの開発の遅延、当初予想していなかったサーバクライアント型の教育用ソフトウェアの二一ズなどである。これらの変化する環境の中で、益々インターネット上で動作する教育ソフトウェアの可能性は高まっていると考えられる。今後も、これらの課題を少しずつ解決して行き、より一層の学校におけるインターネットの教育利用環境の向上に結び付ける必要があると感じている。

(1) 技術の変化
  本企画を進める上で技術的変化に伴う課題が浮き彫りとなった。今回Javaを中心的な言語と事務局では考えた。しかし、Javaは、本年度開始時点においてはVer1.Oであったものが9月時点でVer1.1に仕様改定が有り、終了時点ではVer1.1.5に改定された様に言語仕様が次々と変化をしている。また、100%純粋なJava、マイクロソフト社風Javaなど、どの仕様が主流になるか流動的な状態である。同様にScriPt言語においては、WebブラウザメーカによりJavaScriptやActiveScriPt, VBScriptなど今後も変化を続けている。
 このように、技術的な変化が激しい世界であるが、であるからこそ学校現場において一層の新しい技術を進んで取り入れて行く必要を感じる。

(2) 情報の入手
  JavaやScriPt等において、現状では米国開発の技術であり、米国においてツール類や書籍が開発されている。これらの技術を国内の学校の先生が利用する場合、情報入手に2点の課題が残る。

・日本語による書籍、資料の入手
 Javaを例に取るとVerの改定に伴う日本語書籍の入手は米国の3ヶ月後れの状況である。教育現場においては若干の時間差が伴っても影響がないと思われるが、学校の先生方を指導する立場にある人々(現状では制度的に特にいない)が消化した上で学校の先生方が利用する場合、更に時間差が増大し影響が大きい。
 これらの日本語の情報提供は、大学の先生方や企業等がボランティア的に行っている。今後もこのような企画の推進する場合、インターネットに関わる情報提供において一層の大学や企業の協力が必要となる。
・指導資料、相談相手
 学校現場の先生方がこのような技術を学習する方法として、現状では独学に頼らざるをえない状況である。3ヶ月や半年単位に変化する技術を体系的に学校の先生に反映することは難しいとおもえるが、インターネットはこれを可能にする。インターネット上では、これらの技術をリアルタイムで企業及び大学の方々が日本語に翻訳、マニュアル化している。今のところこれらの作業を体系的に行っていない事や、学校現場において、これらの技術を身につける必要性を認知されていないため、学校現場への反映は機能していない状況である。
 今後、このような技術的な学習面において学校現場に向けた指導、相談をするための機関又は集まり等が必要と思われる。また、学校現場においてこのような技術習得について何らかの認知が必要と考える。

(3) 技術の複雑化
  Javaはオブジェクト指向の言語であり、言語構造は単純化されている。しかし、インターネットやマルチメディア等の機能要素が増大し、モジュール(昔のサブルーチン)の階層化や多種化が進み、学習するには難しくなりつつある。
もし、一つの言語を網羅して学習しようとすると相当な困難を伴う状態にある。
 当初、Javaの言語仕様及びモジュールはすべてソースコードも含めてインターネット上に公開され、すべての部分が明らかにされたオープンな言語環境であり、利用者サイドに立った言語であった。しかし、現在では学習する者が自ら情報をブラックボックス化を行わないと情報のオーバーフローを起こす状況となっている。
 教育用ソフトウェアの容易な開発環境を作る場合、機能を目的別に整理し、適したモジュールや部品の体系化を行い、適度なブラックボックス化を行う必要性を感じる。例えば、幾何学等向けの場合は、線分の描画、、定義された線分の平行移動や回転のアクション、これらを結び付けるボタン等に絞るとか、物理系ではこれらに図形描画、図形の移動回転、物理系の関数を加えるなど、目的別に機能を整理した開発ツールが今後必要となるのではないかと考える。

(4) ソフトウェア管理手法
  学校現場で作成した教育用ソフトウェアを自由に利用する場合の管理形態として次の様な形態がある。1)各自が自由に作成し、各自が自由に自校サーバで管理公開する。2)各自が公開したソフトウェアのリンクを検索機能を加えて集中管理、3)特定のサーバ上にソフトウェア自体を登録保管し検索しながら利用する集中管理型の管理。4)目的別にソフトウェアを分類し、対応するソフトウェアをサーバを分けて管理する分散管理型の管理。
 このように、ソフトウェアの管理形態が発展して行くと思われるが、どの管理形態も単一のものではなく全てが共存する管理となると考えられる。本企画においては、3)の集中管理について実験を行ったが、この管理形態を円滑に進めるためには1)及び2)の促進が必要であり、この管理を行うためには、参加者との十分な協力体制、支援態勢が必要であった。
 また、今後2)以降の何らかの形で集中管理を進める場合、公的組織による継続的なサーバ管理を中心に、学校現場が自ら参加する形でソフトウェアの内容管理組織を作り、連携して管理する方法が必要である。

(5) 今後の共同開発、共有利用
  過去、研修機関の教員研修の中でBasicやオーサリングツールソフト等を用い、多数の教育用ソフトウェア作成されてきた。これらのソフトウェアの中には非常に有用な教育用ソフトウェアも多数含まれている。しかし、従来これらのソフトウェアは流通の煩雑さか少数の先生にしか利用されていないのが現実である。
 今日、インターネットの利用により革命的なソフトウェア交換手段が提供された。学校現場や研究機関において作成されたソフトウェアは、その場で全国の先生から利用できる状況になった、しかも通信回線とブラウザソフトウェアさえあれば、機種の違いを超えて、準備等の作業も不要で動作する。まさに、教育利用に適した環境が整いつつあると考えられる。
 このような、環境を作るためには、開発技術の簡易化や支援態勢の整備、作成されたソフトウェアをより多くの人が改善出来る体制、作成されたソフトウェアをより多くの人が批判や利用できる体制が必要であり、これらの課題が本企画で改めて明確になったと考える。

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