5.3 企画のまとめ

5.3.1 利用状況およびシステム上の問題点
システムに記録されたアクセスログを分析し、利用の状況を調査した。


図5-6

 平成9年10月15日から平成10年2月28日までの間、実質アクセス数は2026回であった。
 図5-6からもわかるように、アクセスが特定の日にちに集中している。これは授業で利用を行っているため、利用単元が同じ時期に集中することが考えられる。多い日は400件近いアクセスがある。授業等が実施された場合にこの回数が増えているものと考えられる。実際40人の生徒がアクセスしたと考えると、一人当たり10回程度である。現在のところ実際の授業においてはこれよりかなり回数は少ないものと考えられるが、今後これらが日常的に利用されるようになれば、かなりのアクセスがあるものと考えられる。

 同様に、時間帯別のアクセス数を見たところ、図5-7のようになった。このグラフからも明らかなように、午前中の1、2時間目の利用が多いことがわかる。利用の回数がそれほど多くないことを考えると、


図5-7

 これは一般的にいえることであるかは不明だが、同じ時間帯にアクセスが集中することは示していると考えられる。システムを構築する際に、これらの瞬間的な集中アクセスにも耐えられるシステムにしておく必要がある。
 授業時間以外の利用も見られる。放課後の時間帯は生徒が課題学習等の調べ学習に利用したのではないかと思われる。また深夜や早朝のアクセスは、教師が資料作成用にアクセスしたのではないかと思われる。


図5-8

 学校別のアクセスを見てみると、学校毎にかなりの差があることが見られる。図5-8ではアクセス回数が10回以上あった学校をグラフ化している。その他にはプロバイダなどからアクセスしたもの、または登録していないホスト等からのアクセス数を含んでいる。(ドメイン名の逆引きが上手くいっていないアクセスに関してはその他に入っているため必ずしも正確な数字を現していない)学校毎に利用環境や利用体制が大きく異なっているため正確な分析は不可能であるが、学校毎のおおまかな利用の様子を把握することができるものと考えられる。
 これらのアクセスのうち、検索のためのアクセスは1238件、記事の表示を行ったものは505件であった。パスワードの間違いや登録されていないホストからのアクセスにより検索を拒否されたものは103件、検索中にタイムアウトしたものは159件である。回線の細い学校からのアクセスで検索期間を大きく設定した場合にタイムアウトが発生していると思われる。
 検索キーワードは様々であるが、検索キーを入力せずに検索を行ったものが92件あった。また検索キーを2つ用いたものは99件、3つ入れたものは33件、4つ2件、5つ1件であった。

 検索期問を入力したものは703件あった。その中の17件は期間を全角で入力しており、正確な表示を得られなかったものと思われる。 またデータの存在しない時期やデータ形式の間違いも数件見られた。
 どのような検索方法を用いているかを見ると、次のようになる。

1) 全文の文字列検索(デフォルト)  867件
2) 見出しの文字列検索  287件
3) 全文のキーワード検索  53件
4) 全文の組み合わせ検索  31件

 検索方法を見ると、デフォルトのまま利用したものがほとんどであることがわかる。
 このシステムのインターフェースは現在一般的に利用されている検索エンジンと異なり、AND検索を行う際には「全文の組み合わせ検索」を選択する必要がある。このあたりは利用者の混乱を招いたものと考えられる。

検索結果の最大表示数をどの程度に設定しているかを見ると、以下の通りであった。

1) 500 98件
2) 200 52件
3) 100 68件
4) 50 63件
5) 20 22件
6) 10(デフォルト) 735件

 この項目もほとんどデフォルトのままで利用されたことが明らかである。ただ、多くの結果を得ようと闇雲に表示行数を大きく設定する場合があることもみられる。表示行数を大きくした場合検索結果のデータ転送に時間がかかり過ぎることが考えられる。このあたりは利用場面等で教師の指導が必要となるのではないだろうか。

5.3.2 アンケート調査の分析・評価

 インターネットによる一般データベース利用の教育的有効性と、システムのインタフェースの教育的側面からの評価を目的として、実際にシステムを利用している学校の教師・生徒双方に対して5.2.3.2のような内容でアンケート調査を実施した。ここでは、このアンケート調査の結果の分析・評価を行う。なお、有効回答数は教師(7名)、生徒(20名)である。

5.3.2.1 アンケート調査結果

(1)利用状況に関して
:高3 ■■■■■■■■■■■■■■■■(16)
 高2 ■■■■(4)
:情報処理 ■■■■(4)
 ソフトウェア ■■■■■■■■■(9)
 社会 ■■■■(4)
 課外活動 ■■■(3)
:教師の演示用として利用 ■■(2)
 教師の教材作成用に利用 ■■■■(4)
 教師の指導の下、授業中に利用 ■■■■(4)
 教師の指導の下、授業時間外に利用 ■■■■(4)
 生徒が自主的に利用 ■■(2)
 利用総時間:O.994時間(生徒の平均)

(2) システム評価
各評価項目とも平均評定値が高いほど評価が高いことを示す。


図5-9システムに対する評価

(3) 実践的利用に関する感想

(3-1) 実践的利用の具体的内容
・記事を印刷し配布して使用
・特定のテーマに対する調べ学習や研究(グループ学習)
・グループワーク形式で生徒問の相互作用をはかる
・データベース利用方法の実習

(3-2) システムの有効利用の可否など
各質問項目とも割合(%)が高いほど評価が高いことを示している。


図5-10実践的利用に関する感想

(3-3) システム利用の教育的効果
【教師から】
・調べ学習が容易に実践できる
・興味をもって取り組むことができる
・自らデータを吟味し消化することによって思考力を養成することができる
・自主的に情報収集する態度が養成できる
・環境問題への関心が高まった
【生徒から】
・様々な情報(過去の情報、最新の情報)が容易に入手できる
・新聞を読むより楽しい
・コンピュータに興味がもてる
・自主的に学習できる

(4) 改善点・要望など

(4-1) データベースの内容に関して
【教師から】
・新聞の種類の充実(他社、地方新聞など)
・ジャンルの充実
・過去のデータの充実
【生徒から】
教師からの内容と同様であった。

(4-2)インタフェースに関して
【教師から】
・期間(入力)によって検索時間が非常に長くなる
・全文表示の場合、新聞紙面のような表示が欲しい
・用語の解説(辞書)が欲しい
・検索条件の認識方法の検討(条件の絞り込みが弱い)
【生徒から】
・文字だけでなく絵や写真を入れて欲しい
その他、教師からの内容と同様であった。

5.3.2.2 分析・評価のまとめ

 まず、「インターネットによる一般データベース利用の教育的有効性」に関しては、「様々な情報(過去、最新)を用いての調べ学習やグループ学習などが容易に実現可能である」との理由から「生徒の自主的な学習活動が可能」であると高い評価を得ている。
特に、「自ら情報を収集、吟味、加工する」という情報を扱う上で極めて重要となる活動が実現されていることは、高度情報化社会においてインターネットによる一般データベース利用の教育的有効性が高いと判断できる。さらに、システム利用を通してコンピュータに興味をもったなど付加的な教育効果も報告されている。しかしながら、「教師の指導の下で」実践されている例が多く、このごとは、「生徒の自主的活動」を実現するためには常にナビゲーター的な存在の必要性を示唆するのであり、授業実践にコンピュータを導入する場合の今後の大きな課題となろう。
 次に、「システムのインタフェースの教育的側面からの評価」に関しては、やはり「検索速度」が大きな問題としてあげられている。このことはネットワークの回線速度に依存するところが多く、今後のインフラ基盤の整備に期待するものである。また、インタフェースに関しては、「文字情報だけはなく絵や写真などの充実」に対する要望が強く、この点はインターネット上のデータベースの今後の課題である。特に、今回は実践された科目がコンピュータ関連以外のものでは「社会」だけであり、文字情報だけでも資料として成立する可能性が高いものである。しかしながら、理科や数学(算数)および芸術系科目など、文字情報だけでは資料・情報として成立しないものへの対応を検討する必要がある。ネットワーク上で文字情報以外の情報(マルチメディア情報)を扱う場合、データサイズの問題からやはり回線速度に依存するところが多い。

 以上より、本企画を通して、「インターネットによる一般データベース利用は生徒の自主的探求活動を実現する上で教育的有効性は高いが、その有効性を更に高めるためにはネットワークの回線速度の向上に期待する点が大きい」と纏めることができる。

5.3.3 訪問調査の分析・評価

 各学校での利用の実態を調査するため、訪問調査を実施した。本調査では担当者が直接学校に出向き、利用環境、生徒の利用の様子を見学し、また担当教師へのインタビューを行い、利用上の問題点等を聞き取り調査した。

本調査の目的は以下3点である。
・データベース利用環境の把握
・生徒の利用状況、利用の実態の把握
・教師の利用状況、利用の実態の把握

5.3.3.1 訪問校のプロフィール

 富山県立富山西高校は、富山市南西部の田園地帯の中に位置する。大正12年に農学校として開校し、75年近い伝統を持つ。各学年普通科5クラス、土木科1クラスで、生徒数671名、教職員数70名、約65パーセントの生徒が大学等へ進学をしている。
 普通科の中の特別コースとして1クラス、英語実践コースが設置されている。本コースでは普通科の学習内容のうち、特に英語教育に力を入れているコースであり、カリキュラムの中に通常の英語科目に加えて、英語表現、外国事情など特色ある授業を取り入れている。そこではインターネットやLL(Learning Laboratory))教室を活用して、生きた英語力、外国の諸事情について学習を行っている。
 本校は平成7年度より100校プロジェクトに参加し、インターネットの教育利用に関する実践研究を行っている。平成9年度からは新100校プロジェクトヘ継続参加している。

5.3.3.2 ネットワーク環境

 本校は100校プロジェクト(グループB)参加校として指定され、28.8Kbpsアナログ接続でインターネットの利用を開始した。平成9年度より回線速度が64Kbpsデジタル接続に変更され、現在に至っている。
 ネットワークのルーター、サーバー等は従来化学工業科(平成8年度廃止)が利用していた化学工業実習棟の3階に位置するLL教室に設置されている。そこをHUBとして、10BASE-5ケーブルを利用し、別棟の職員室、事務室までネットワークが張り巡らされている。

 LL教室内は10BASE-2ケーブルを中心としたネットワークでパーソナルコンピュータ40台が設置され、すべてインターネットに接続されている。サーバーには電子メール等のインターネットサーバーとしてUNIXマシンが1台、ファイル共有用のマシンとしてWindowsNTマシンが1台それぞれ用意され、Wndows95を搭載したクライアントマシンから利用が可能である。

5.3.3.3 利用実践事例

  今回、新聞記事データベースは2つの実践で利用された。
 一つ目は、3年生の選択教科倫理で利用された。受講生とは12名で一人1台の環境で授業が実施された。
 「世界の中の日本人」の単元で、世界平和に向けて日本人としてどのような行動をとっていくかを考える場面において、戦後50年といわれた1995年の新聞記事を利用し、首相の記念式典での話などを検索し、それを元に授業が進められた。生徒の習熟度、興味・関心に応じて進められた授業では、50分の授業の間に、生徒一人一人が様々な資料を検索・収集し、利用した。
 もう一つの事例は、世界史の資料として教師が利用した。ある出来事に関するフランスとイギリスの首相のコメントの記事を取り上げ、各国の立場、国際関係の歴史的背景に関して解説を行った。

 この授業を行った担当教師はコンピュータ歴は10年ほどあるものの、Windowsやインターネットといった最新の技術に関してはほとんど知識が無かったが、コンピュータ担当の教師や操作等に詳しい生徒の力を借りて、授業を行っている。

5.3.3.4 発生した問題点

 富山西高校の実践において、次のような問題点が発生した。
 まず、接続におけるタイムアウトである。富山西高校は専用線デジタル64Kで接続されているものの、複数クライアントからの同時接続を行った場合、タイムアウトが多発した。これは今後このようなデータベースを学校で利用していく際に発生が予想される問題であろう。根本的な解決のためには学校の接続回線容量の増大を期待するしかないが、当面は教師の指導の際に一斉にアクセスすることの無いように配慮を行っていく必要があると思われる。今回の利用は一斉学習中の利用であったため、この問題が発生したが、課題学習などの際に個別に利用する場合はそれほど問題は発生しないものと考えられる。

 次にインターフェースの悪さが指摘された。一般的な検索エンジンの利用には慣れている生徒も、今回はシステムの勝手が違い、うまく検索できなかった。これらのインターフェースの設計も利用促進のための重要な課題であろう。インターフェースの悪さから、その利用方法の説明にほぼ1時間を費やしている。いったん利用方法を習得し、継続的に利用することが可能であればこれらの問題もそう大きなものではなくなることが期待できるが、忙しい学校現場において操作の説明に1時間を必要とするインターフェースはいただけない。早急な改良が望まれる。

 インターフェースの問題に含まれるが画面デザインがあまりにも無機的であることもあげられた。生徒の親しみやすいデザインを行う必要もあろう。
 最終的に得られる記事について、写真等がついている場合はそれらの表示を行ってほしいとの要望も出された。学習を助けるための道具として写真は有効に機能することが考えられる。著作権等の問題で写真が掲載できない場合は、写真や資料の有無を表示するだけでも学習の手助けになる。学校の図書館では新聞などはかなりの量のストックを持っており、また新聞記事の縮刷本やCD-ROMなどもそろえているところも多い。これらのメディアと組み合わせて利用することを考えた場合、補足資料の有無を明示するだけでもかなりの学習の助けになると考えられる。

 最後の要求として出されたものに、利用可能なデータベースの種類を増やすことがあげられた。日経新聞は政治、経済に関しては詳しい記事があるものの、文化面等の記事は他の一般紙に劣る部分も多い。また学校の学習活動では地方紙の情報が有効に機能することも多いが、学校の所在地以外の新聞を集めることは難しい。これらがネットワーク上で利用できれば学習をより幅広いものにすることが可能であろう。多くの新聞杜が記事をホームページで掲載しているが、これらの掲載期問は長くても1週間程度であり、また検索機能が無いため実際の学習活動で利用することは難しい。今後の活用のためにもこのあたりの検討を期待したい。

5.3.3.5 まとめ

 今回は残念ながら1校のみの訪問であったが、インターフェースなどまだまだ改善の余地は残されているものの、比較的良好な評価を得られた。このことは今後このようなデータベースが学校での学習活動に有効に働くことを意味しているものと考えられる。
 生徒の利用スキルの向上速度は教師を大幅に上回っている。教師がすべて操作を覚えてから指導するのではなく、生徒の自主性に任せてもある程度は上手くいくことも訪問から明らかになった。今後の利用場面、方法等を考えていく上で重要なデータを数多く得られたと考えている。

1. 成果および教育的有効性

 本プロジェクトの結果、新聞記事データベースのようなシステムを教育現場で利用する際の有効性が確認できた。今回は高等学校が参加の中心であったが、取り扱った新聞記事データベースの種類等を考えてもこの学年段階は妥当であったと思われる。

 今回は一斉学習における個別の課題追求学習場面における利用が多かったが、特に個別で課題を追求するタイプの学習には有効性を発揮するものと考えられる。今回の参加校の多くが総合学科を持つ学校であったことも、その可能性を示唆するものであろう。
 今後課題学習が多くの学校で実施され始めた場合、このようなデータベースがより有効に機能するものと考える。このことは、アンケート調査、訪問調査の両方から明らかになった。

 今回は詳細な分析を行っていないが、検索キーに用いられたキーワードを見ていると、最新のものよりも、教科書や学習テーマに沿ったものが多く見受けられた。このことは、今後このようなデータベースに求められる意味を示唆しているものと考えられる。最新の情報は新聞やテレビなどで数多く流れているが、検索を必要とするものはやや古い情報である。そのため、これらのデータベースに求められる情報の性質として、最新のものよりも過去にさかのぼって長期間にわたるデータがより有効に利用されるものと考えられる。今回用意されたデータベースには過去20年あまりのデータが蓄積されているが、生徒の要求するものはそれ以上に古いものも多い。これらのデータの利用可能性も今後の活用を広げていく上で重要なものになりそうである。

2. 課題

本プロジェクトを通して以下のような課題が明らかになった。

(1) 同時アクセスに対するシステムの頑健性と検索速度の向上
 アンケート、訪問調査ともに多くの学校から要望があった検索速度の問題は早急に改善の必要がある。しかしながら、この問題は回線容量の問題とも絡んでいるためにシステムだけで改善が不可能な部分もある。学校の接続速度の向上を期待するとともに、システム側の検索速度を向上させることも重要であろう。
 今回長期問のデータを対象に検索を行った際や多くのクライアントから同時に検索要求を行った際にタイムアウトを起こすといった問題が発生した。検索に利用していたマシンのパワー不足の問題であると考えられる。教育利用を行う際には、時間帯によるアクセス度数の大きな変化があることが予想される。全国でほぼ同じカリキュラムで同じ時期、同じ時間帯に利用するため、特定の時間帯にアクセスが集中してしまう。これは一般のデータベース利用ではあまり発生しない問題である。それらに対応するためにもかなり強力なシステムが必要となろう。

 今後全国的に多くの学校が利用することを考えた場合、システムの分散化なども考えていく必要がある。情報転送の経路等を考慮した配置も検討しなければならないだろう。

(2) インターフェースの改善
  今回のインターフェースデザインは、まったく飾り気の無いものであった。カラフルで凝ったデザインのぺ一ジが多い中でこのようなぺ一ジデザインは学習者の興味関心を引きつけることは難しい。機能面だけでなく、見せ方の部分も考慮していく必要がある。
検索に関するインターフェースの悪さも指摘されている。入力の方法がわかりにくかったり、検索方法を選択することが難しいなどの問題が明らかになっている。一般的な検索エンジンのインターフェースに準じた形に設計し直す等の改良が必要であろう。
またわかりやすい利用マニュアルなども用意しておく必要がある。
 検索という概念自体が難しく、特に検索の絞り込みを行っていくことは低学年の子どもには難しい。カテゴリー別に話題を分類したぺ一ジをあらかじめ用意しておく必要が考えられる。また今回は対象が高校生であったためさほど問題にならなかったが、表示される漢字や言葉の意味の解説も盛り込む機能としては重要な意味を持つものになると考えられる。検索のキーワードの選び方もひらがな、漢字、カタカナなど実際の記事の中に用いられているものと違った表記を利用した場合も検索が可能なようなシステムを開発する必要もあると考えられる。また関連事項にリンクが貼られたり、絞り込みのためのキーワードがハイライトされるといった工夫も盛り込んでいきたい機能である。

(3) データベースの種類の増加
  データベースはそれぞれ特徴をもって作られている。今回の日経新聞データベースは政治・経済に関するデータは多いが、文化・家庭情報などは他の新聞に譲るところが多い。学校での活用場面を増やすためにも、様々な新聞のデータベースが利用できるようにしたい。
現在、様々な新聞社が有料でデータベースを提供しているが、これらの利用インターフェースはそれぞれ独自のものが用いられており、学習の妨げになることが考えられる。
 また一回の検索にかかるコストは高額であり、日常的に利用できるものではないのが現状である。これらを今回と同じように、共通のインターフェースで利用できるようにしておくことは大変重要なことであると考える。

(4) 登録方法の簡素化
  今回のプロジェクトでは利用学校を特定するためにホスト名によるアクセス制限を仕掛けた。本来有料で高額なデータベースを無料で提供するために必要な措置ではあるが、PROXYサーバーを利用する方法では一般ユーザーからの不正アクセスを防ぐことは難しい。現在導入が検討されているEDドメイン名による制御なども今後検討していく必要があろう。
 また利用学校を登録制にする場合、その対応が問題となる。今回は事務局が手作業で登録の対応を行っていたが、本格的な活用の場合は対応が不可能になることが容易に予想される。
 生徒一人一人にパスワードを割り当てる方式も問題が多いことは明らかである。セキュリティ面を含めた登録の簡素化を考えていく必要がある。

5.3.4 最後に

 本プロジェクトを通して、新聞データベースのような既存データベースの教育利用の可能性を調査することができた。学校現場の利用形態は一般企業等の利用とは異なり、アクセスが特定時問に集中するなどの問題をはらんでいる。また小学生から高校生までに対応したインターフェースを用意するなど木目細かい配慮も必要であることも明らかになった。
 これらの調査をもとに、今後このようなネットワークを利用した、個に対応した学習環境の提供を政策的に行っていく必要性も確認できたものと考える。
 今後の更なる活用の拡大を期待したい。

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