第2節 実施段階

 相手が見つかったさあ始めよう。

1. どんなコーディネータがいいのか

 交流の申し込みはどんどんやってくるでしょう。しかしすべてに参加する事は無理です。教育効果の上がるものを選択するにはどの様な基準があるのでしょう。

 継続性のあるプロジェクトを進めて行くにはコーディネータの働きが重要です。次のような相手であればこのプロジェクトは成功したも同然です。

1)一日一回は必ずメールを開く人

 打ち合わせ,あるいは,交流のための授業準備など電子メールは重要な手段となります。このように考えると一日一回はメールを開く人でなければ連絡が取れません。

 そのため最初は毎日メールを送り連絡を取り合いながら,こちらの熱意を伝えるとともに,相手の反応も見ていくことが必要です。

2)インターネットのおもしろさを知っている人

 やはり,いろんなツールを使って,交流を試みる人がよいといえます。交流の基本は電子メールですが,その交流をさらに豊かにするためにビデオメール(画像を簡単に送ることができる)やチャット(表情のでるチャット)などで生徒のやる気を引き出すような工夫が必要でしょう。

2. 起こりやすい問題

 せっかく始まった交流も学校行事などによって中断されることもあります。約束通り返事が書けないケースも起きてきます。大まかな年間行事をお互いに確認することによってこのような事態を回避したいものです。

3. プロジェクト成功の要件

 計画──大まかでもいいから決めておくと,お互いに心の準備ができます。取り組むプロジェクトがどのような成果を生みだしたのかを明確にするためにも重要です。アンケートなど少なくとも最初と最後にとると生徒の意識の変化もよく分かり,教育効果を計る事ができます。

 基本計画案として次の様なものが考えられます。

 打ち合わせで決めたいこと───・生徒は週何回メールを送るのか・定期の打ち合わせ(国際職員会議)は毎週いつするか(Cu-SeeMeあるいはチャットで)   

 「生徒がメールを送ったから返事をください」と依頼ばかりお互いにするのはちょっとまずいものです。日常的な教師同士の交流が生徒の交流の土台となります。指導から支援へという教師の役割の変化に対応したいものです。また,メールの届かない生徒の相手を変えるなどの配慮も教師の仕事です。

4.  いくつかのステップ

1)自己紹介(基本英文を使って)

 項目を埋めていく方法なら生徒も抵抗感無く書き込むことができるでしょう。その中にちょっと国際比較できそうな項目を入れると意外な事実が浮かび上がってくることがあります。

 例へば,下記の様ないくつかの項目を書き込みます。

・年齢
・家族
・趣味
・好きな食べ物
・あなたの国で知っている都市
・知っている人物・食べてみたいもの
・行ってみたいところ
・将来のパートナー像などです。

 また,英文メールのやり取りは回数を多くすることによって,英語力も付いてきます。10行程度のやり取りを相手側とも話し合って決めておくと,生徒の負担も少なくなります。短時間で読めることが交流を進めていく上で重要です。

2)テーマの決定

 テーマが何であれ,交流の中で多くのものを生徒たちは発見していきます。テーマはあくまで論議の土俵として設定し,生徒の取り組みやすいものにしましょう。

(例)「私の国に来たらここに連れていきたい」

   「あなたの国で知っている都市」

   「高校生のおもしろグッズ」

   「どんなに使うおこづかい」

   「コカコーラの値段比較」

平野小学校作品ハンバーガーの値段
http://www.hirano-es.shiga.jp/

3)ゴールの決定(プロダクト)

 最後に何か作品ができると,その作品完成に向けてがんばる事ができます。調べたり交換した情報をどのように残したらいいのでしょう。国によって学年の終了時期が違うこともあるので,とりあえず早い方に合わせて何らかの作品を具体化したいものです。

(例1)共同資料作り

お互いに提供しあった情報を分担してWeb上に掲載していきます。

コカコーラの値段比較は日本が作る,あるい新聞の値段は相手校が作るなど共同で作品を作ってはどうでしょう。

この作品がプロダクトとして他校の教材になることもあります。

(例2)共同マガジン

共同で本を作り,それを世界に向けて発信してみるなどいいでしょう。生徒の間ではやっているものなど,画像をつけて共同でページを作成すれば,それは立派な作品になります。 それぞれのページにリンクを張るだけですばらしい「共同マガジン」の完成です。

4)レポート

 作品制作,交流の流れなどWeb上に公表して行けば,それはすばらしい生徒のレポートとなります。まとめることによって生徒自身も自分のやったことが整理され,学習活動を自分自身の知識として把握できることでしょう。

 次のような項目を満たすだけで立派なレポートとなります。

・相手のメール
・私のメール
・交流の中での発見
・私の最初のイメージと今の気持ち
・共同で作った資料


幌南小学校
http://www.kounanes.chuo.sapporo.jp/iin-club/german.htm

5. 小学校の国際交流(ボランティアの確保)

 小学校での国際交流は英語が一つの壁となります。しかし,大丈夫です。

 インターネットの世界は多くの人の協力をネット上で得ることができます。

 呼びかけによって地域の人や高校生,大学生の翻訳ボランティアの助けを得ることができます。

 また,最初から海外の日本語を学習する生徒との交流を考えるのもおもしろいと思います。アメリカ・ハワイなど,小学校と交流を希望している大学生は多くいます。

 逆に日本語の指導が小学生にできるかもしれません。

6. 交流の形態

 電子メールだけではちょっと寂しいものです。そこで月に1度はCu-SeeMeなどのリアルタイムの交流を入れると活動に変化がもたらされます。メーリングリスト+メール+Cu-SeeMeが基本形といえます。

 例えば,交流校と CU-SeeMeでクリスマスパーティを共同で行って,変化をもたせることもできます。また,インターネットだけでなく,手作りのクリスマスカードやビデオレターなどを送ることも交流を支える重要な手段といえます。


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