第2部 交流学習 実践マニュアル |
交流学習の相手校を増やし,確実に進めるためには, i) 交流相手校を探す段階, ii) 交流を始める段階, iii) 交流が進んでいる段階,それぞれの段階で工夫が必要である。しかし,これらについて述べる前に,地域題材での交流学習について述べなければならない。
郷土の題材を扱う地域の交流学習は,今後の重要な学習として位置づけられると予想される。特に,「総合的な学習」を進める上で,重要な内容となるであろう。なぜなら,地域題材は,自分の生活や身の周りの文化と直接かかわりがあり,学習の中に体験活動や調査活動を取り入れやすく,学習が広がり・深まりやすいからである。そして,それらを扱う交流学習は,子どもたちにとって,身近な内容で交流できるし,オフラインで交流することもできるので,交流が深まり,学習効果も高くなる。また,近い学校同士の交流なので,教師間も打ち合わせがしやすく,教師が安心して進めることができる。
以上のように,地域題材を扱う交流学習は,子どもにとっても教師にとっても,無理なく進めることができ,交流学習のよさを感じながら,そのノウハウを体得できる絶好のスキルアップの場ともなる。しかし,地域の交流学習は,本来1校の呼びかけで始まるものではなく,教育委員会や市町村の研究会などの組織が,意図的にスタートさせることが望ましい。そして,次のような手順で,計画的に進めていくことが必要である。
1) 各校の管理職者,研究主任等の中心になる先生のための研修会を行い,交流学習の良さと必要性を理解してもらう努力をする。
2) 各校の交流学習の中心となる教師同士が話し合う機会を設け,どんな題材を,誰が中心になって,どのよう計画で進めていくのか,互いに調整しながら立案するようにする。
3) 各校から担当教師が集まり,考え方・情報交換の技術を高める研修会を何回か行う。
こうした企画がうまく進むと,地域のより多くの学校が参加するようになるだろうし,質の高い交流学習が可能になることは確実である。
まず,探す前に,自校の交流学習の成果や考え方を,研究誌,広報誌,ホームページ等で広く公開し,自校の取り組みを多くの人に理解してもらうことを第一歩としたい。
次に,自校の交流学習の交流相手として適すると考えられる学校を探し出すことである。探す視点としては,次の i) と ii) がポイントになるだろう。
1) 場所で選ぶ(題材について交流学習のねらいを達成できると考える地域)
2) 同じテーマで学習が進められている学校
交流学習というのは,位置の違いによる差異・同一性を明らかにするために行うことが多い。その結果を得るために適した場所にある学校に協力してもらうことが必要である。また,同一のテーマで学習を進めている学校同士が交流できれば,質の高い学習になることは間違いない。
これらの学校をどう見つけるのか。とにかく情報に敏感になることであろう。各学校のホームページ,CEC・JAPET・こねっと等のホームページ,研究誌,研修会など,情報を得られる場所はたくさんある。
しかし,相手として是非お願いしたい学校が見つかったとしても,これまでにまったく交流のない学校に直接お願いしても,なかなか引き受けてもらえないのが現状であろう。結局は,人のつながりが一番である。いろいろな研修会に参加し,自分の学校の取り組みをアピールして知ってもらうと同時に,多くの先生方とのつながりをつくることが有効である。
(3) 交流を始めるときの工夫(推進校が参加校の不安を解消するための努力を)
すでに交流学習を進めている推進校同士の交流は成り立っても,これまでに交流学習をさほど進めていない学校は,参加を求められてもなかなか踏み切れないことがよくある。
その主な理由となっているのは,
1) 十分な経験のない我が校が推進校と一緒にやっていけるのか。
2) 交流学習を進められるほどには,インフラ環境が整っていない。
3) 我が校にはコンピュータや交流学習に詳しい教員がいない。
などである。これらの不安を解消し,安心して交流学習に参加してもらえるように推進校が努力することが必要である。
その努力とは,参加を考えている学校・参加してもらいたい学校の先生方に,
1) 題材の持つ可能性,題材に対する交流学習の必要性と役割
2) 交流学習の成果
3) コンピュータの活用方法・情報交換の方法
等について説明し,理解・共感してもらうことである。
そして,このときに大切なのは,成功した結果だけでなく,成功に至るまでの経緯と失敗を含めて正直に話すことである。このことが,参加校に安心感を与えるのである。
(4) 交流を進めるなかでの工夫(交流を継続し,お互いが成就感を得るために)
推進校が経験を生かして,交流のコーディネートをしなければならないのは言うまでもない。特に,最初の段階で,交流校の教師同士が打ち合わせを行い,お互いの学校のインフラ環境・教員の体制・研究体制・学校行事等を把握し合ったうえで,この交流学習は,「何をねらう学習」で,「交流はどんな意味を持つのか」を十分に理解し合い,その上で,自分の学校ができること,できないことをはっきりさせることが重要である。ここがしっかりしていれば,途中で方向がずれることは少なく,無理な要求をすることもなくなる。
しかし,それでも実施・実践できない部分,迷う部分が実施の途中で出てくる。教師同士,メーリングリストや,オフラインで話し合いができ,お互いにサポートができる体制にしておくことが同時に必要である。逆に,推進校が引っ張りすぎて,お互いの感情にずれが生じて,うまくいかなくなることもあるので,注意したい。