インターネット電子地図を利用した
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社会のあらゆる分野において,情報通信技術を活用したいわゆるIT革命が進展ししつつある。コンピュータを代表とする情報通信機器は,我々人間の知的能力,表現能力あるいはコミュニケーション能力を拡大し,より豊かに生きるために無くてはならないものとなりつつある。万人がこのような技術や機器の恩恵に浴するためには,教育が非常に大きな役割を担う事になる。
国の方針として,教育の情報化(ミレニアムプロジェクト)が打ち出され,2001年までにすべての公立小中高校がインターネットに接続され,2005年までにすべての学級のあらゆる授業においてコンピュータを活用できる環境の整備がうたわれている。この目標に向けて,国や自治体などの財政的な裏づけによって,学校へのコンピュータの導入やインターネット環境の整備が急速に進んでいる。その一方で,導入されたコンピュータやインターネット環境を利用して,何をどのように教えるかが,教育現場における深刻な問題になりつつある。
地図を利用した情報の整理・分析をコンピュータ上で行えるようにした電子地図は,地理情報システム(GIS)とも呼ばれ,最近では,インターネット上で提供される電子地図(WebGIS)も利用され始めており,様々な分野での活用が広がりつつある。小中学校においても,地図を利用して調査や取り纏めを行う学習は,様々な教科・単元にわたって広く行われており,教育の重要な位置を占めている。このため,インターネット上で利用できる電子地図をこれらの教科・単元で利用できれば,幅広い教育分野においてコンピュータやインターネットを活用できると共に,子供たちのコンピュータ・リテラシィの向上も期待できる。
インターネット電子地図の活用効果は,教育の情報化という狭い範囲に留まらない。社会と教育,学校,あるいは子供たちの関係を変革する力を秘めている。これまでの教育や学習の成果は,基本的にクラス内や学校内で提示されるだけで,社会や家庭では,学校でどの様な教育が行われ,子供たちが何をどの様に学んでいるかを日常的に知ることはできなかった。インターネット電子地図を利用して学習成果の取り纏めを行うと,特別な労力を払うこと無く,その結果がインターネットを通じて自動的に社会に発信,公開される事になる。社会や家庭において,学校内での教育の様子が手に取るように分かるようになるのである。一方,子供たちにとっては,自分たちの学習成果が広く社会の人に見てもらえることは,社会への参加意識を育むと共に,学習意欲や達成感の向上に寄与する事になる。このように,インターネット電子地図は,社会と学校を結ぶ強力な架け橋になるものと考えられる。
九州工業大学情報工学部の硴崎研究室と福岡県糟屋郡粕屋町の小中学校は,CECの助成により,住商エレクトロニクス(株)およびエリアスの技術支援を受けて,インターネット上で利用できる電子地図の教育への活用を実証的に検証した。ここでは,インターネット電子地図のシステムおよび実証授業の成果を報告する。
本報告書は,プロジェクトメンバーの協力の下に,九州工業大学情報工学部の硴崎が取りまとめた。特に,粕屋中央小学校の寺本教務主任,粕屋西小学校の佐藤教務主任,中尾教諭,大川小学校の御手洗教務主任,粕屋中学校の興津教諭には,指導案や子供たちのアンケートの提供をはじめ,多大な協力を頂いた。