国際交流支援システムの開発及び実証実験


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2.全体概要

2.1 開発作業の概要

       授業での利用を考えた場合、任意の日本語文章に対して、意味が通じない可能性のある精度の低い英文を提示するよりも、記述したいイメージに対して文法的な正しさは保証された候補例文が提示されるほうが望ましい。

       そこで本プロジェクトでは、表現したいキーワードを入力することにより、それに対応すると考えられる候補例文が提示されるシステムを開発した。これにより文法的な正しさは保証され、生徒は自信を持ってシステムを利用できるとともに、文法の正否を気にする必要のない教師側の負担も軽減される。

       また、英文メールを作成する際、英語が得意な人やネイティブの人が利用した表現を控えておいてそれを利用するということがある。本システムでは、このような「英借文」をシステム的に行えるようにし、国際交流によく利用される文章を例文として登録しておく。電子メールで利用する文章は簡単明瞭であることを考えると、いくつかの例文の組み合わせおよび単語の差し替えで、かなりの範囲をカバーできると考えられる。

       これらの機能は、授業という限られた時間内で利用することを前提に、例文および画像の検索・編集から相手へ送信するまでの一通りの動作は、すべてWebブラウザで利用可能とした。各種データはWebサーバ上で一元管理する。例文や交流文書の事例などをWebサーバで一括管理することにより、インターネットに接続された他校と連携することも可能であるし、例文に対する日本語を整備しておくことにより、海外交流校における日本語学習者を支援することも可能である。

       以上のように、従来の英語学習ソフト・翻訳ソフト等の枠組みを超え、国際交流への適用を可能にする新しい形態のシステムを開発した。

       図 1に、本システムを用いた国際交流のイメージを示す。

      図 1 システムを用いた国際交流のイメージ

       本プロジェクトでは、表 1に示す機能開発を行った。当初、海外の日本語学習者用の機能をどこまで実現するかは確定していなかったが、中間報告会で「海外の日本語学習者の利用にも力を入れてはどうか」という旨のコメントを頂いた。このコメントを受け、英語版のページを用意し、英語をキーワードに日本文を検索し、日本語文章の作成を支援する機能の開発も行うこととした。

      表 1 開発機能

      機能名称

      概要

      例文検索・提示機能

      データベースに格納されたメール例文を、単純なキーワード、利用場面、感情等の検索キーを指定することにより検索を行う。

      検索インタフェースはWebブラウザをフロントエンドとする。操作性を第一に、必要最小限のことを効率的に実現できるように留意したものとする。

      英文作成機能

      検索された複数の例文の中から、必要な英文を容易な操作でメール記述用のウィンドウへ反映可能とし、当該ウィンドウでの編集機能を実現する。

      Webブラウザをフロントエンドとし、例文検索・提示機能同様、容易さを重視したインタフェースとする。

      日本文作成機能

      検索された複数の例文の中から、必要な日本文を容易な操作でメール記述用のウィンドウへ反映可能とし、当該ウィンドウでの編集機能を実現する。

      Webブラウザをフロントエンドとし、例文検索・提示機能同様、容易さを重視したインタフェースとする。

      メール送信機能

      検索・作成された英文に加えて、画像データを合わせてWeb画面上からそのままメールとして送信可能とするインタフェースを提供する。

      また、送信した文章はWebサーバへ蓄積する。送受信したメールを参照して自己の進捗確認や交流履歴の確認が効率的に実現できるよう、体系的に蓄積する。

      画像検索機能

      言語という限られたメディアでメール送受信による国際交流を行いその結果を参照するのみでなく、画像と音声により国際交流の様子が参照できる機能を提供する。

      コンテンツとして、実際に国際交流が行われている際のインタビューを中心に提供する。

2.2 実験環境構築作業の概要

       表 2に、システム開発に際しての実験環境構築のための作業項目と概要を記述する。

      表 2 実験環境構築作業概要

      作業項目

      概要

      実験用サーバ設置等

      本システムはWebベースで提供するため、Webサーバをはじめとする環境設定を行った。

      画面インタフェース設計・プロトタイプ開発

      学校現場で利用する機能に関し、具体的な画面遷移およびそのプロトタイプを開発した。本プロトタイプは検討用のたたき台とし、実験時にはこれをもとに開発した正式版を利用した。

      データベース設計/開発

      データベースのテーブル設計、データ処理プログラムの開発を行った。

      画面インタフェースの開発

      エンドユーザが実際に利用する画面インタフェースの開発を行った。また、データベースとのやり取りを行う処理プログラムとの連携をとれるよう、CGIプログラムの開発もあわせて行った。

      例文・画像収集

      本プロジェクトに適切と考えられる例文および画像の収集を行った。本システム用に新規作成するほか、利用可能な素材の収集も行った。

      例文は、国際交流の実践校を中心に、実際に現場でよく利用されるものを集めるように心がけた。データベース項目に合わせて、利用場面、キーワード、和文、英文をエクセルファイルで提供していただき、データベースに登録した。

      画像は、実際に国際交流が行われている際のインタビューを中心に収集した。

      カテゴリ分類

      収集された例文・画像データは、データそのものに存在するキーワード以外でもユーザが検索可能となるよう、適切なキーワード付けを行った。

      例文に関しては、例文を収集・作成した者がキーワード付けを行った。

      画像に関しては、インタビューの項目ごとの分類を行った。

       なお、開発したシステムの導入に関する詳細は3章に記述する。

2.3 実証実験作業の概要

       表 3に、実証実験実施に際しての作業項目と概要を記述する。

      表 3 実証実験作業概要

      作業項目

      概要

      体制整備

      小学校、中学校、高等学校を通して汎用的なシステムであることを実証するために、実証実験参加校は学校種別が偏らないように留意した。

      本実証実験では実際に国際交流授業を実施するため、国際交流に興味や実績のある学校および教員に参加いただくよう留意した。そのため、主に国際交流に関する研究会や発表会等で本システムや本実証実験の趣旨について説明し、実証実験参加校および協力教員を募集した。

      実証実験実施

      実際の国際交流における英文作成から送信までの作業に適用した。

      教員にシステムを提示するとともにシステムを利用した国際交流授業の指導案を提示し、それぞれの学校の特性に応じて適切な授業を実施した。

      評価実施

      授業実施後に、教員および児童・生徒にアンケートを実施した。アンケートは、回答者の利便性を考慮してWeb上で行った。

      授業を実施した教員に対しては、実証校の報告として実施内容や実際に授業を実施した所感、システムを利用したことにより発生した児童・生徒の変化、システムに対する所感について調査を行った。



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