世界規模の仮想企業経営学習プログラムを支援する
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また、平成11年12月に出された中央教育審議会の「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」の答申では、生涯の各時期にわたって、いつでも学習できるような環境や条件を整備するとともに、知識の一方的な教え込みではなく「自ら学び、自ら考える力」の育成の重要性を述べている。
このような、“自ら学び、考え、国際化や情報化社会に対応できる人材”を育成するには、生徒が主体となって自ら課題を見つけ、知識を得、判断できる機会を与えるような教育環境が必要である。そして、その教育活動は学校内にとどまらず、家庭・地域社会が相互に連携しつつ、生徒の主体的体験活動の充実を図るものでなければならない。
京都リサーチパーク(株)、(株)京都ソフトアプリケーション、(財)京都高度技術研究所は、このような生徒の主体的な教育活動を支援するために、仮想企業経営プログラム(バーチャル・カンパニー)を開発し、生徒が地域社会と連携し実体験を通して学べる機会を提供していく計画である。当該テーマでは、このプログラムの運営を支援し、より多くの学校の参加が可能になる電子銀行システムの開発を行った。
当該テーマの電子銀行システムを開発することで、従来、マニュアルで実施していた商取引決済を、インターネット上で電子的に行い、企業経営をよりリアルに体験することを可能にする。また、従来、地理的・時間的な条件に制約され容易でなかった、複数校による共同学習環境を提供するものである。
当該テーマにおいては、この仮想企業経営プログラム(バーチャル・カンパニー)を支援する電子銀行システムを開発することにより、多数の学校が授業に参加できることを可能にし、またより現実社会に近い電子社会環境の中で仮想企業経営を学習することによってその学習効果をあげ、教師の授業展開を支援することを目標としている。
仮想企業経営プログラム(バーチャル・カンパニー)の参加生徒は主体的に会社を立ち上げ、運営していくなかで、様々な問題に直面し、グループで相談しながら、地元企業人や指導教官の支援のもと意思決定を行っていく。この過程で、生徒達が自ら考え物事を進めていける業務遂行能力、また商品開発や企業運営に関わるビジネス知識やITスキル、自分自身の職業観を培うことがねらいの一つである。
もう一つのねらいとしは、生徒達が自分達自身で決断しなければ何も進まない共同作業の中で、自分の役割や責任を認識し、グループワークの中で必要される技能(プレゼンテーション能力、問題発見・解決能力、判断力、決断力、リーダーシップなど)を習得し、また海外の参加校との交流などを通じて国際理解を深めることにある。
そして、最後に、上記のような技能習得とあわせて、生徒達が地元企業で活躍する社会人と交流することで教員以外の大人と接し、そのことで地域や地場産業などに目をむける機会を得ることにある。そして同時に、教員が企業人から刺激を受け、また企業人が学校教育に参加していく機会を得ることも、このような産学連携の教育においては重要な要素である。
今回のテーマでは、高等学校に焦点をあて、会社運営において商取引する際に、電子商取引システムを導入することで、学校間の取引や交流にどのような効果や影響があったか、またこの仮想の企業経営を体験することが、どのように生徒の主体的な学習活動を支援し、職業観の育成や、ITスキル・ビジネス知識の習得、共同作業能力開発につながったかを、アンケートや指導教官の感想をもとに検証する。また同時に、仮想企業経営プログラム(バーチャル・カンパニー)のような産学連携の授業に関わることで、担当教員や企業人がどのような感想をもったかについても検証する。
そして、この新しい教育手法が広く利用され、答申が述べているように「高等学校教育の段階で、生徒が自らの在り方や生き方を深く考え、将来の進路を選択し、決定する能力や態度を身に付けるとともに、各自の興味・関心、能力・適性、進路等に応じて選択した分野の学習を深める」きっかけとなることを期待する。