国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
新谷 隆
shintani@glocom.ac.jp
キーワード 子ども,広場,インターネット
子どもの広場のメディアとしてのシステム的な性質を決定する要件を抽出し、内外の事例を整理した。さらに、子どもの広場のあるべき姿について考察した。
前章で紹介した事例を見ると、こどもの広場のメディアとしてのシステム的な要件が浮き彫りになる。広場性を実現するサービスを構築するには、例えば、子どもだけを想定しているか、それとも大人の参加を認めているか、といった利用対象者の違いや、参加資格や方法などの参加形態に関わる取り決めなどをどのようにするかによって、広場ないしオンラインのコミュニティーの性格が、おのずと決定されてくるであろう。また、利用技術の違いや、運用方法の違い、とりわけ子ども同士のメッセージ交換の際のモデレーションの仕方などの要件設定の違いによって、広場での活動内容が大きく異なってくるであろう。
そこで、子どもの広場をデザインする際に考慮すべき要件を以下のように整理しリスト化することを試みた。
子ども
大人
- 児童・生徒としての子ども(主に学校での活用)
- 個人としての子ども(主に家庭での利用)
- 先生
- 父母
- 一般
- 参加資格
- 参加方法: 登録制かどうか
- 匿名性(記名性)
アプリケーション
他の技術の組み合わせ
- 電子掲示板/メール及びメーリングリスト/チャット/テレビ会議
伝達領域
- Webコンテンツ/検索システム/リンク集/
蓄積
- グローバル/ローカル(グループ)
情報帯域
- 蓄積性/蓄積情報へのアクセス性
- テキスト/音声/静止画/動画
児童・生徒による活用
家庭からの子どもの活用
- 学校内イントラネット
- 学校間交流ネットワーク
- 学校=家庭間コミュニケーション
- 地域ネットワーク
- テーマ別学習ネットワーク
- 遊びのネットワーク
- オンライン塾
調査した事例は、それぞれ異なった特徴を有しているものの、上記の要件をベースに個別の事例を整理することが可能である。そこで要件ごとに前章で紹介したインターネット上に実在する広場性を実現する子ども向けのオンライン・サービスの分類を試みた。内外の事例を一覧表により傾向分析したのが
「参照資料 図3.1」およびである。
「参照資料 図3.2」
前節の一覧表をみると、際立った画一的な傾向は見当たらない。むしろ、明らかなのは、多様な要件選択が実施されている、という傾向である。つまり、一概に子どもの広場としての強い共通の特徴を浮かび上がらせることはできず、要件の組み合わせにより、多様なメディアとしての特徴を実現しているという傾向が読み取れる。
このことは、子どもの広場のあるべき姿に関しての重要な示唆を含んでいる。すなわち、具体的にどのような子どもの広場を実現したいか、という目的に応じた多様な展開が可能であるということを示唆している。子どもの広場の実現のための要件の抽出とは、現在ないし今後において求められる子どもの広場の「コンセプトや目的の具体化や明確化」という作業に他ならなず、それを踏まえた「要件の選択」を意味する。
![]() |
次へ → |