E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告 北海道赤井川村立都小学校

みんなで作ろう! 百科事典ネットワーク

小学校,中・高学年,総合的な学習/情報・環境領域
北海道赤井川村立都小学校 都築愛一郎
学校ホームページ http://www7.ocn.ne.jp/~miyasho/
キーワード 地域調べ,地域の教育資源,テレビ会議,百科事典作り,学校間交流

インターネット利用の意図
 「個」による主体的な学習活動が中心となる「総合的な学習」では,学習テーマや学習活動がばらばらになり,児童間で共有化することや学年間で積み重ねることが難しい。そこで本企画では,インターネット上での「百科事典作り」を大きなテーマと設定することで,学習の共有化・積み重ねを果たすことができるのではないかと考えた。
 また,本校は全校児童14名の小規模へき地校であり,児童は同学年の子どもたちと共に学習する機会をほとんど持っていない。インターネット上の「百科事典作り」を協力校と同時に進め交流することで,小規模へき地校の問題の解決を試みようと考えた。
 さらにインターネットは公開性,双方向性に特徴があり,その特徴を「百科事典ネットワーク」は,さらに推し進めるものと考えた。

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1. 単元名 「みんなで作ろう! 百科事典ネットワーク

(1) ねらい
・百科事典作りの過程を通して,児童一人ひとりが,みやっこタイム(総合的な学習の時間の名前)の5つの力「見つける,調べる,まとめる,伝える,ふりかえる」(*)を身につける
・児童が,協力校の子どもたちとネットを通して交流することによって,共に学習活動を高めあう喜びを感じる
・自分たちが生活している地域のよさを知り,ふるさとを愛する心情を培う

(2) 指導目標
(*)みやっこタイムの5つの力の定着

A 見つける力

百科事典を作るためのコンテンツ(事典の見出しとなる題材)を探すことにより,身近にあるがこれまで気づかなかった事象に気づくことができる力

B 調べる力

いろいろな方法で自分が見つけ出したものを追求することによって,問題解決に対する継続的な取組みができる力

C まとめる力

自分が追究したものを順序良く整理し,取捨選択する力

D 伝える力

自分がまとめあげたものを,さまざまな方法を通して相手に伝える力
また,伝えることを通して,自分の考えに自信を持ち,相手を尊重する態度を持てる力

E ふりかえる力

自分が学習してきた成果を整理することを通して,自分の考えを修正し,その考えに自信を持つことができる力

(3) 利用場面
本単元では以下の場面でコンピュータやインターネットを利用した。
・コンピュータの基本的な操作方法を学ぶ
・ふるさとについて調べたことを百科事典の形にまとめる
・学芸会や参観日で学習の様子をプレゼンテーションする
・メールの仕組みやルールを学ぶ
・同じ百科事典を作っている学校の事典を百科事典用ホームページ「100ka-net」を使って学習する
・交流校(沖縄県立名護小学校)について調べる
・メールで交流校と交流する
・テレビ電話会議で交流校と交流する

(4) 利用環境
利用機種   NEC PC98-NX Mate Mate R 8台
周辺機器   デジタルカメラ
プリンター
液晶プロジェクター
動画CCDカメラ,マイク,
SONY DSC-S70 2台
Canon BJF660 3台
VT440JK/VT540JK
使用ソフト   ホームページビルダー2001,ワード2000,Internet Explorer5.5
Netgroup Cntact(Ver.2.00) CU-SeeMe Pro(Ver4.0.1)

(5) 稼働環境
・コンピュータ室 NEC PC98-NX Mate Mate R 7台
・職員室 NEC PC98-NX Mate Mate R 1台

(6) 主な利用ホームページ
都小学校ホームページ   http://www7.ocn.ne.jp/~miyasho/
100ka-net   http://www7.ocn.ne.jp/~encarta/
マルチメディアキッズフォーラム   http://mmkf.net/
名護小学校   http://www5.ocn.ne.jp/~nagosho/

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2. 指導計画



単元と学習活動

コンピュータ等の利用/他教科・領域との関連

4

3

(1) オリエンテーション(今年度の目標作成)
・ みやっこタイムでつけたい5つの力を児童が具体的に考えて設定する

 

5

6

18

(2) 稲について調べよう<1>(種まき,田んぼつくり)
・ 農家に行き,種まき・田んぼ作り風景を観察し,疑問に思ったことについて質問する
・ 各自百科事典のコンテンツを決め,それについて図鑑等で調べ,百科事典の下書きを完成する
・ 百科事典のページを完成する

デジタルカメラで画像を撮影
ワードを使い,テンプレートに沿って百科事典を作る

7

8

6

(3) 都の歴史について調べよう<1>
・ 地域に出かけ,地域の「歴史」に関係するものを写真に撮る
・ 地域の「歴史」に関係するものの写真をもとに,お年寄りから,赤井川村の歴史について,お話を聞く

デジタルカメラで撮影

7

6

(4) 1学期のまとめと発表をしよう
・ 参観日でみやっこタイムの学習成果を発表する練習を行う
・ ポートフォリオのふりかえりを行い,1学期の各自の成長のあとを確認する

パワーポイントで発表資料を作成
プロジェクターとノートパソコンを接続し,発表

9

9

(5) 稲について調べよう<2>(収穫)
・ 農家に行き,収穫風景を観察し,同時に疑問に思ったことについて質問する
・ 各自百科事典のコンテンツを決め,それについて図鑑等で調べ,百科事典の下書きを完成する
・ 百科事典のページを完成する

デジタルカメラで画像を撮影
ワードを使い,テンプレートにそって百科事典を作る

10

9

(6) 歴史について調べよう<2>
・ 各自百科事典のコンテンツを決める
・ 百科事典のコンテンツについてお年よりからお話を聞き,百科事典の下書きを完成する
・ 百科事典のページを完成する

デジタルカメラで画像を撮影
ワードを使い,テンプレートに沿って百科事典を作る

10

9

(7) 学芸会で発表しよう
・ 学芸会でみやっこタイムの学習成果を発表する内容を決める
・ 学芸会でみやっこタイムの学習成果を発表する練習を行う

ワードで今までの学習成果をまとめ,学校のホームページにアップする
ホームページを投影
学芸会と関連

11

12

(8) コンピュータの操作を知ろう
・ 基本入力を学ぶ
・ 入力操作を学ぶ
・ メールの送り方について学ぶ
・ メールを送る際のルールについて学ぶ

校内Lanの中でメール交換を行い,起きた問題に対して,ルールを作る

12

1

9

(9) 百科事典を作っている学校と交流しよう
・ MMKFにアクセスし,他校の百科事典を見る
・ 沖縄県名護小学校の6年生にメールで自己紹介をする
・ 沖縄県名護小学校の6年生とメールの交換をする

同じ取組みをしている学校の事典をホームページで見る
児童間でメール交換を始める

12

6

(10) 2学期のまとめと発表をしよう
・ 参観日でみやっこタイムの学習成果を発表する練習を行う
・ ポートフォリオのふりかえりを行い,2学期の各自の成長のあとを確認する

パワーポイントで発表資料を作成
プロジェクターとノートパソコンを接続し,発表

2

9

(11) よい百科事典について考えよう
(本時の小単元)
・ 百科事典作りの秘訣案を考える
・ 百科事典作りの秘訣作りについて協力校と交流する(テレビ会議交流)
・ 百科事典作りの秘訣集を完成し,ホームページにまとめる

交流の発展として,テレビ会議を行い,その成果をまとめ,ホームページにアップする

3

9

(12) 1年間のまとめ
・ ポートフォリオでふりかえりを行い,1年間の各自の成長のあとを確認する
・ まとめの発表会の内容を考え,準備する
・ 保護者,今までお世話になった方を招待して,学習成果の発表会を行う

ワードで今までの学習成果をまとめ,学校のホームページにアップする
ホームページを投影
学芸会と関連

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3. 学習の展開

図1 史跡調べ(1) 百科事典データの作成
 本校は今年度研究テーマを「ふるさと」と設定しているため,百科事典として調べる内容も,「ふるさと」をテーマとして,主に「稲作」「地域の歴史」について行った。
 学習は,地域の史跡や水田を観察し発見したものについて調べていくという流れで進んだ。子どもたちは,発見したものをデジタルカメラで撮影し,それについて分からないことを,図鑑やインターネットで調べたり,地域のお年寄りに直接聞いたりして調べた。
 調べたことは学習段階でメモしておき,それをまとめて百科事典の形式のワークシートに鉛筆で記入した。そして,その記入したワークシートをワードのテンプレートに子どもたちが打ち直し,画像を貼り付けて,HTML化した。これは,児童が考えながらローマ字をキーボードに打ち込むことが難しかったからである。
 子どもたちが,まとめ,HTML化した百科事典のページは,担任がまとめ,学校のホームページにアップした。その際,検索しやすいように事典検索のページを作成した。

(2) ホームページを活用した発表
 作成したホームページは,参観日などで学習の様子をプレゼンテーションする場で活用した。特に学芸会では支援してくださった地域の方や保護者が大勢参観している中で,完成した百科事典をスクリーンに投影したり,学習の様子を劇にして発表すたりした。

図2 100ka-netホームページ(3) 100ka-netを利用した他学校との交流
 本単元のねらいの一つに,百科事典作りを他校と協力して行い,交流することがある。そのためには,各学校の百科事典のページをリンクする扉となるホームページが必要となったので,学校ホームページとは別に,「100ka-netホームページ」を作成した。「100ka-net」とは,百科事典ネットワークのためのホームページの意味である。
 ルールや取り組み方の大枠を決めた後,メーリングリストなどを用いて,参加者を幅広く求めた。現在(2002年1月)のところ,本校,愛知県半田市立亀崎小学校,宮崎県宮崎市立本郷小学校,鹿児島県大島郡瀬戸内町立古仁屋小学校とリンクし,また稚内の個人の方も参加している。

(4) 名護小学校との交流
 本単元は,同じ百科事典作りをしている学校との交流が,重要な学習活動の1つであるが交流校探しが難航した。
 2学期に入りなかなか交流校が見つからず困っていたところに,国際交流をねらいとしたホームページ「マルチメディアキッズフォーラム(MMKF)」の事務局の方から,同ホームページの「マルチメディア百科事典」の紹介のメールをいただいた。検討の結果,「マルチメディア百科事典」にデータを提供している沖縄県名護小学校を紹介していただき,交流を開始することとなった。
 交流は「マルチメディア百科事典」のコメント機能を利用して始まった。百科事典の内容について,掲示板のようにコメントを書き込めるのである。最初は,本校の児童が名護小学校の事典について,質問や感想をコメントとして書き込んだ。交流は児童同士のEメールのやり取りとなり,さらに2月8日に行われる研究発表会では,北海道と沖縄県をつないだテレビ電話会議に発展した。内容は,お互いの百科事典を比べあい,百科事典を作るときに重要なことを来年の学習者に向けて共有化するというものである。

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4. 成果と課題

 コンピュータ・インターネットをさまざまな学習活動場面で導入した成果は,児童の基本的なコンピュータ操作技能の向上,インターネットモラルの向上,そしてメールやテレビ会議を通したコミュニケーション能力の向上となった。小規模へき地校のハンディを乗り越え,子どもたちの世界が広がった。
 情報能力の育成や単なる交流が目的ではなく,それらの活動を通して,どのような力を子どもたちにつけさせたいのか,という視点が重要である。
 「100ka-net」を立ち上げ交流の場を設定し,またさらに交流の場を求めて,マルチメディアキッズフォーラムとも連携し,日本各地の学校と交流をすることができた。
 100ka-netの取組みは,2002年1月現在で,4校と1個人という状態である。「百科事典」としては,より多くの参加者を求め,数多くのデータとリンクしていきたい。

ワンポイント・アドバイス
・ 地域調べ学習をする際は,あらかじめ教師がテーマを設定しておくことが重要である。
・ 協力校探しは難しいが,普段からさまざまなメーリングリストに加入していると,いろいろな方面からのアドバイスをいただける。
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