(1)ネットワークを利用するためのきめの細かい情報基盤整備
インターネットを利用して,継続的な活動が要求される,実践活動を行うためには,快適なネットワーク環境を学校の中に作る必要がある。高速の専用回線の確保,担当の教師の負担にならないように配慮されたネットワークの管理体制,教師それぞれが自由に使うことが出来る,個人用パソコンの設置など,予算的な措置を講じることで解決することが多い。具体的に言えば,先生あての電子メールが,確実に機能する環境を作ることである。さらに実践活動に必要なツールの充実も重要である。パソコンやOSのサイクルが短いことも,学校での継続的な取り組みを難しくしている一因である。学校での使用を考慮した,簡単である程度長期間利用できるアプリケーションの開発も,考えなければならない。
(2)人的なネットワークの構築 〜オフラインミ−ティングの必要性〜
Webを利用して情報の発信を行ったり,電子メールで連絡は簡単に出来ても,継続的な協働作業を進めていくためには,先生や生徒が集まって,直接的な交流をもつことが不可欠である。プロジェクトの規模が大きくなると,その規模の大きさ故に他校との関係が希薄になりがちである。お互いを知らない場合,メーリングリストへの投稿もためらわれがちである。そのための方法としては,担当教師の研修会や生徒を交えた研究発表会の実施,このプロジェクとの場合は「酸性雨サミット」の実施などが考えられる。
全国的なプロジェクトの場合は時期の問題,旅費の問題があるが,計画的に実施することで,参加が増えていくものと思われる。このプロジェクトにおいては,平成12年度8月に行ったオフラインミーティングによって,活動が活発になった実績がある。
(3)広域プロジェクトを支えるための推進組織の構築
多様な校種,多様なグループにまたがるプロジェクトを,運営していくためには,事務局だけのポリシーで,長期間推進するには無理が生じる。これを解決するための1つの方策が,参加校の先生の中で,指導的な立場にある方に,自主的に参加していただくことで構成する,推進委員会の設置である。
推進委員会は電子メールによる情報交換に加えて,定期的なオフラインミーティングをすることも必要である。こうした活動に対して,教育委員会に後援してもらえる可能性は十分にあり,全国の参加校が参加しやすいよう,協力を得やすい関係を構築しておくべきである。
(4)観測データの運用と活用に関する諸問題の解明
内容は次の2点に整理することができる。
観測データを登録するためのサーバーの管理
事務局にとって,サーバーの管理はきわめて重要な業務である。サーバーの故障によるデ―タの破壊は,プロジェクトの停止を意味するからである。セキュリティーの面でも安心出来るサーバーを運用すること,バックアップを定期的に取ることなど,事務局の負担を大きくすることばかりである。管理をどのような組織の誰が行うのか,検討するとともに,受け皿を作らなければならない。
観測データの教材化 −使いやすい教材としての観測結果の提供―
観測し登録されたデータは,各参加校で自由に利用しても良いことになっているが,現実的には利用難しい。プロジェクトが始まってから7年の経験から言えることである。データをどのように見ればいいのか,どのように整理すればいいのか,といったことは専門家の指導を受けないと,学校現場の先生方には難しいのである。
現在このプロジェクトでは,データを加工し,わかりやすいグラフにしたものを,ホームページ上に掲載している。どのように加工すれば良いかを検討するのも,推進委員会の業務である。
(5)プロジェクトを推進するための,資金の調達について
このプロジェクトでは,スタートした時点から,観測機器を参加校に貸与している。このことがプロジェクトが成功した要因の1つである。日本の学校の予算は,新しい試みに無条件でお金を充当できる状態ではないのである。加えて,プロジェクトを推進するための事務局経費,ホームページを作成するための経費など,かなりの資金が必要になる。
このような予算を研究開発費ではなく,経常的な運営経費として予算化出来る方法と受け皿を見いださなければならない。
(6)学校における教育活動を,長期的に継続するためには
学校の教員は,様々な仕事を持っていて,大変忙しい。そのような中で,長期的にプロジェクトに参加して,活動していただくためには,プロジェクトの推進方法に工夫が必要である。毎年変わる生徒,転勤で勤務校の変わる先生,学校という組織のなかでの,プロジェクトの受け止め方など推進を妨げる要素は多い。
プロジェクトを推進するためのポィシーは,簡潔で参加校の負担(経済的なものを含めて)を出来るだけ小さくすることと,活動出来ない状況が続いても認めあうことである。
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