E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
目次へ戻る総目次へ戻る

特別支援教育ネットワーク・センターの実践研究

5. 研究のまとめ

 本実践研究は,障害のある子どもなど特別な支援を必要とする児童生徒の教育において,情報技術を活用するにあたっての支援システムの在り方を検討するために行ったものである。
 科学技術の発展を背景に情報革命が叫ばれて久しい。それは教育現場にも大きな恩恵をもたらしつつある。コンピュータをはじめとする様々な情報技術が学校に導入され,子どもたちのリテラシーの向上や学習効果の向上に大きな成果をあげている。障害のある子どもたちの教育における情報技術活用の効果についても,大いに期待されているところである。しかしながら,これら子どもたちの支援の必要性,教育ニーズは,その障害の状態が様々であるがゆえに極めて多様である。したがって,これらの子どもたちの教育における情報技術の有り様や活用の方法は,一人一人に応じたきめ細かな対応が求められることになる。
 しかし,一般に普及しつつある情報機器やソフトウェアは,一定の不特定多数を対象としたものであり,障害のある子どもたち個々への適用には限界がある。そのため,教員や保護者は,様々な工夫を加えながら試行錯誤を繰り返しているのが現状である。また,これら教員や保護者の知識,技術も必ずしも十分ではなく,子どもへの適切な支援の実現には,多くの課題が残されている。
 この課題解決の一つの方策として,支援機器の活用についてのノウハウをより広範囲に蓄積し,ハードの改良やソフト面での改善に生かしていくためのネットワークの構築が求められている。多様な障害の状態は狭い地域や個々の学校では稀なケースであっても,全国規模で見れば共通項が見出せる場合が少なくないのである。
 本実践研究は,平成12年度に立ち上げられた「特殊教育支援機器活用相談ネットワーク・センター」の実績を踏まえ,新たに「特別支援教育ネットワーク・センター」の運用を通して,「インターネットを利用した情報技術活用支援センターの望ましい在り方」を調査・検討することを目的に行われた。具体的には,全国22名の支援スタッフが,本センターのホームページを通じて寄せられた相談についてメーリングリストにより協議し,適切な支援機器とその利用方法,地域のリソース等についての情報を相談者に提供した。また,必要な場合は,本センターが所有する支援機器を貸し出すことも行った。さらに,可能な範囲で相談者を訪問し,よりきめ細かな対応をする体制をとった。本年度1月末までの相談件数は92件であり,ハード・ソフトの貸し出しは48件であった。また,訪問等による直接支援は1件であった。相談事例の一部について,本センターホームページ上に公開することで,支援機器活用に関する情報を,より多くの関係者に提供することができた。これらのプロセスについて,相談者によるアンケートを収集した結果,高い評価が得られた。
 今後の課題としては,支援者の確保,試用機器の確保,他の支援センター等との連携の必要性などがあげられた。広範なネットワークの構築と同時に,より地域に密着した顔の見える支援システムの必要性も明らかにされた。ネットワーク間の階層的な連携を可能にするシステムの構築が求められている。
 障害のある人々の,学習の機会の保障,より自立的な生活の実現,これらを通してのQOL(生活の質)の向上のために,情報技術の活用が大きな役割を果たすことを確信し,研究,実践のさらなる蓄積に努めたい。

目次へ戻る

前のページへ このページの先頭へ戻る


CEC