7.院内学級でのeラーニング実施例




7.1 ライブ授業システムの活用

7.1.1 本校の人権集会の中継

(内容) 小学校と院内学級を結び人権集会の中継を行い、本校における発表と院内学級への質問等を行う。
 院内学級の様子を体育館のプロジェクタで映し出し、全校児童との間でのやり取りができるようにする。

(場所) 庄小学校:体育館
院内学級:院内学級内

 (使用機器)

学校側: ○テレビ会議用PC(できればノートPCが良い)
○カメラ
●マイク
●20mのLANケーブル
○は学校既設 ●は別途用意 △はあればよかったとおもわれるもの
院内学級 ○テレビ会議用PC
○カメラ
○ヘッドセット
△スピーカー(PCのスピーカーは貧弱なため、音質が落ちる)
△プロジェクタ(高画質でできる場合であれば大画面の方が迫力が出る)

 (設置)

現在校内LANが敷設されていないため、PC教室もしくは職員室のラック内にあるHUBから線を体育館へもっていく必要がある。
  この学校の場合、倉敷市教育委員会に許可を得たうえで、体育館に設置されている遠隔監視用ネットワークカメラ用ネットワークを利用し、体育館へLANを敷設した。

(LAN敷設の際の問題点)

    1. 遠隔監視用ネットワークカメラの設置位置が高い
      遠隔監視用ネットワークカメラの設置位置が高いため、ケーブルの接続や準備に大変な時間と危険が伴った。今回は工事会社の協力を得て設置を行ったが、学校の先生だけで作業を行うのは危険である。
    2. ネットワーク設定変更
      遠隔監視用のネットワークはPC教室と別ネットワークが利用されているため、別途ネットワーク設定の変更が必要であった。今回は情報システム課の協力を得て設定変更を行ったが、今後同様の作業を学校独自で行うのは難しい可能性がある。

 (中継について)
  (映像)

 撮影はプロジェクタや児童の立つ位置を考え、体育館の真ん中にビデオカメラを設置し行った。内容によってビデオのチルト、パンを適宜行った。なおこのテレビ会議用にビデオを動かしていたが、今回の状況であれば下記のようなことも検討できる。

リモコンカメラ:院内学級内からコントロールできるカメラを用意し見たいところに移動させることが可能。今回も用意していたが、開始時にトラブルがあり断念。
※なおリモコンカメラは現在のところPHS経由で接続するしかない。通信速度の関係で、どうしてもレスポンスが落ちるのでプリセットでいくつか用意しておけばよい。
児童が撮影しているビデオカメラ:今回も最後の方にはこのカメラを利用。このビデオカメラでも体育館の様子、出し物の様子を撮影しているので活用できる。

  (画質)

今回は320×240 7フレーム 128Kでの実施を予定した。

 <画質設定>

320×240ドット 7フレーム 384K程度
ズームを利用し、児童の動きをわかりやすくする。

  (音声)

 音声はワイヤレスマイクを用意し利用を予定した。

 (全体的に)

 当小学校と院内学級の人権集会の中継は結果的には失敗に終わった。原因はネットワークの突然の切断であり、前日のテストはうまく動いていたが当日直前になってネットワークが接続できなくなってしまった。そのため、学校では急遽携帯電話で院内学級に電話をし、携帯電話にマイクをつけ、簡易の音声会議を行って急場をしのいでいただいた。
 今回はどうにかしのぐことができたとはいえ、ネットワークに関しての問題は急遽起こる可能性があり、それに対処した方法も事前に検討せざるを得ないであろう。
 なお、当ネットワークの障害は後に原因を追究・解明し現在は正常に稼動している。
 またこの結果、他の学校で実施予定であった院内学級との授業をやめざるを得なくなった。これは学校において週5日制で通常でもタイトなスケジュールで授業予定をたてており、中継による授業が行えなくなった場合の影響が大きくなることがあげられる。


7.1.2 原籍校への復帰支援のための中継1

(内容) 原籍校へ復帰を控えた児童が原籍校のクラスメイトと交流を行い、スムーズな復帰を支援。
なおこの交流授業は2回実施。1回目は院内学級にいる児童が知っている子供と先生の自己紹介と挨拶を実施し、2回目は知らない児童の自己紹介と学級の様子の紹介、合唱を行った。

(場所) 小学校:PC教室
院内学級:院内学級内

 (使用機器)

学校側: ●テレビ会議用PC
●USBカメラ
○PC用マイク

○は学校既設 ●は別途用意 △はあればよかったとおもわれるもの
院内学級 ○テレビ会議用PC
○カメラ
○ヘッドセット
△スピーカー(PCのスピーカーは貧弱なため、音質が落ちる)
△プロジェクタ(高画質でできる場合であれば大画面の方が迫力が出る)

 (設置)

PC教室を利用したため、特別な設定変更や、ネットワークの引きなおしは発生しなかったため、設定・準備はスムーズに終わった。

 (中継について)
  (映像)

 撮影は教室の前から児童全体を映す形となった。当初用意していたUSBカメラでは三脚を取り付けることができないため、先生がUSBカメラを持ち児童の動きにあわせて動かしていただいた。また、児童たちは相手の顔を見ながら話をするとプロジェクタを見なければならず、相手側が自分の顔を見ながら話しているように見えないように見える。相手の顔を見ているように話をするためにカメラを見ながら話をすると、相手の反応がわからないというジレンマに戸惑いを見せていた。

  (画質)

 今回は320×240 7フレーム 384Kで実施した。ただUSBカメラがオートフォーカスではないため、フォーカスの甘さと色の再現性の悪さが目立ってしまった。また改選状況によってはブロックノイズが出ることもあり、児童が違和感を感じている様子も見られた。

<画質設定>

320×240ドット 7フレーム 384K程度
ズームを利用し、児童の動きをわかりやすくする。

  (音声)

 音声はPC用のマイクを利用した。そのマイクを発表する児童、先生が持ち話していただいた。音声に関しては院内学級、学校とも音声は聞き取れないということはなかった。ただ一本のマイクで先生と児童が受け渡しをし利用していたため煩わしい場面が見られた。

 (全体的に)

 今回はまず顔合わせということもあり、短時間にしかも院内学級の児童が知っている児童が参加するという形をとった。お互い知ってはいるものの、1年近く会っていないこと、またテレビ会議の形式に慣れていないこともあり、お互い緊張していたようである。さらに院内学級の児童は病気の関係でマスクをしていたため、どうしても音声がこもってしまうということもあった。

 (反省点)


7.1.3 原籍校への復帰支援のための中継2

(内容) 原籍校へ復帰を控えた児童が原籍校のクラスメイトと交流を行い、スムーズな復帰を支援。
2回目の今回は院内学級の児童が知らない児童の自己紹介、児童同士の質疑応答、クラスの紹介と合唱を行った。

(場所) 小学校:PC教室
院内学級:院内学級内

 (使用機器)

学校側: ●テレビ会議用PC
●デジタルビデオカメラ
●○PC用マイク・ボーカルマイク
 
○は学校既設 ●は別途用意 △はあればよかったとおもわれるもの
院内学級 ○テレビ会議用PC
○カメラ
○ヘッドセット
△スピーカー(PCのスピーカーは貧弱なため、音質が落ちる)
△プロジェクタ(高画質でできる場合であれば大画面の方が迫力が出る)

 (設置) 前回の設定を残していたため、特に別途設定は必要ではなかった。

 (中継について)
  (映像)

 撮影は教室の前から児童全体を映す形となった。今回は前回の反省からデジタルビデオカメラと三脚を利用し撮影を行った。デジタルビデオカメラではオートフォーカスであること、ズームができることなどからクラス全体の撮影や発表する児童を大きく映しだすことができたため、中継には効果的であったようである。また視線が異なることがないようにカメラ近くに液晶ディスプレイを設置し戸惑うことが少ないようにした。

  (画質)

 今回は320×240 7フレーム 384Kで実施した。前述のようにデジタルビデオカメラを利用したため、前回に比べ画質は良くなった。ただ回線状況によってはブロックノイズが出ることもあり、児童が違和感を感じている様子も見られたが、全体的には前回のテレビ会議を知っているために慣れた雰囲気ではあった。

<画質設定>

320×240ドット 7フレーム 384K程度
ズームを利用し、児童の動きをわかりやすくする。

  (音声)

 音声は前回の反省からPC用のマイクとボーカルマイクを利用した。PC用のスタンドマイクは児童が立つ前の机の上に置き発表に利用し、ボーカルマイクは先生がお話する際に利用した。ただ当初スタンドマイクは設置したまま動かさないこととしたが、児童によっては声の大きな子や小さな子がいるため、最終的には先生が児童の前にマイクを動かして利用することとなった。また前回の音声状況を見て、先生も児童もゆっくりとそしてはっきりと大きな声で話しすることを心がけたため、はっきりと声が聞こえたようである。さらに児童は慣れてきてリラックスしているようであり受け答えもしっかり行い、交流として成立していた。

  (白板共有機能)

 白板共有機能を利用し、原籍校の児童が学級の様子を院内学級の児童に伝えた。これはあらかじめ先生がデジタルカメラで学級の様子や行事を撮影し、あらかじめ白板に貼り付けて準備していたものである。お互いこの写真を見て交流の内容を深めた

 (全体的に)

 2回目ということもあり児童もテレビ会議に慣れ、大きな声で発表していた。また院内学級の児童もはっきりと受け答えができていた。低学年同士のやりとりであったために操作はほとんどせず、画面を見るだけの授業となったが、お互いの顔を見、状況がわかっただけでも収穫があったというお話をいただいた。

 (反省点)

 ネットワーク状況により、開始直前に院内学級と接続することができない現象が起きた。復帰するまでの時間を先生につないでいただいたこと、また授業時間が45分ではなく、短い時間で設定していたため、事なきを得たが、テレビ会議の信頼性を高めなければ通常の授業では利用することは困難であると考える。

図35 院内学級へ学級の写真を見せながら説明している様子

図36 院内学級の児童が挨拶している様子


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