7.院内学級でのeラーニング実施例




7.1.6 英語授業

(内容) 本校のAET(Assistant English Teacher 外国人による英語指導助手)が院内学級の生徒に対して英会話の授業を実施

(場所) 中学校:職員室
院内学級:院内学級内

 (使用機器)

学校側: ○テレビ会議用PC
○デジタルビデオカメラ
○ヘッドセット
○タブレット
○は学校既設 ●は別途用意 △はあればよかったとおもわれるもの
院内学級 ○テレビ会議用PC
○USBカメラ
○ヘッドセット
○タブレット
△スピーカー(PCのスピーカーは貧弱なため、音質が落ちる)
△プロジェクタ(高画質でできる場合であれば大画面の方が迫力が出る)

 (設置)

 既設の場所を活用したため別途設置や設定は行っていない。

 (中継について)
  (映像)

 中学校の画像は職員室のPCの前に置いたデジタルビデオカメラを利用し、院内学級ではノートPCに取り付けたUSBカメラを利用した。

  (画質)

 今回は白板共有を前提としたため、画質を落とした形で行った。ビデオカメラの設定もしくは画質を落とした結果か中学校側の映像のコントラストがあまりよくなかったようである。ただ今回は相手の画像を見ることも重要であるが、スムーズに授業を行えることを優先した。

<画質設定>

240×144ドット 5フレーム 64K程度

  (音声)

 音声に関して、今回は学校側のAETと院内学級の生徒間で授業を行うことを想定していたため、AET、生徒共ヘッドセットを利用しお互いに音声のやり取りを行った。発言者が限られているため、今までのような音声を拾うことができないなどの問題点は発生しなかった。

  (白板共有)

 AETが院内学級の生徒に対し、問題をだすために白板共有を活用した。白板共有を利用することによって、行き方などを英語で話すなどの学習を実施した。また地図上にタブレットのペンを利用し、アドバイスを行うのにも活用した。
 なおこのデータはあらかじめAETが作成したものである。

 (全体的に)

 AETの先生の評価としては全体的にとてもよく、使いやすいシステムとの評価をいただいた。音声に関しては授業を進めるにあたってはなんら問題なく聞くことができたとのことであった。
 一方いくつか課題も挙げられた。一点は初めて操作を行っていただいたため操作方法に慣れておらず、白板共有の際に生徒側に白板の操作ができる操作権を渡すことができなかったこと。この点に関しては授業終了後にAETから指摘を受けた。実際の授業の中で、地図を見ながら地図上にある店に関して英語で説明し、それを生徒にどこにあるのか答えさせるときに使用したり、行きかたの説明を行うときに利用したかったようである。これはAETの操作が慣れていないこととあわせて、こちら側との授業内容の打ち合わせ不足からきたものである。
 ただ今回は事前に資料(地図)が院内学級に届いていたため、この地図を利用した授業に関してはどこの部分を指しているのかは紙の地図の上で指し示したものをカメラで撮り、相手に知らせるという方法を利用した。
 2点目は音声についてである。音声に関しては概ね合格点を出していただいたもののの、音声が相手に伝わるのにタイムラグが発生し、しゃべり始めるタイミングがずれてしまったり戸惑うことがあったこと。さらに音声はヘッドセットで行ったためにテレビ会議の際に発生する細かな雑音が気になるとのことであった。
  3点目にはネットワーク帯域に関してであるが、AETの方が事前にパワーポイントの資料を20数枚用意し授業に備えていただいていたが、残念ながらパワーポイントのAP共有を行った際に音声の質が落ちたため、白板共有を利用するように急遽変更していただくこととなった。
  院内学級側では院内学級の先生としては効果的な授業ができたとの評価をいただいた。ただ下記の点に関して課題が残るということであった。
  一点目はお互い機能を良く知っていればもっと活用が進むということであった。今回の授業は先ほど述べたとおり、あまり打ち合わせを行うことができず授業を行ったため、AETがどのような教材を用意しているのかこちらはわからず、一方AET側もどのようなシステムが利用できるのかあまり把握しないまま授業に望むことになってしまった(これはシステムが事前に利用できなかったことも一因であり、本当は院内学級の先生ならびにAETは事前にシステムを利用し、システムに慣れたいとの要望があった)。従ってお互いの映像を見ながら音声を交わすという基本的な機能は利用できたものの、白板共有などの機能になると、残念ながらうまく活用したとは言えない状況であった。
  二点目はお互いをサポートする人間が現在どのような状況にあるのかを把握することができなかった点である。今回はAETと院内学級の生徒共、ヘッドセットをつけての授業となった。これは受講する人間が限定されていたことが大きな理由であったが、もう一点スピーカーを利用するとスピーカーからの音声をマイクが拾いエコーが起こり、授業が行えないというのも理由であった。そのためヘッドセットを利用したのだが、音声が他に聞こえないため院内学級で立ち会った先生が現在授業でどのようなことをしているのか、また生徒がどのような点で戸惑い、つまっているのかを把握することができないこと。また、今回のように慣れていない先生が授業を行った際に、相手の先生に指示、もしくは立ち会った技術者に対しての指示がマイクがないために行うことができないなどの問題が発生した。実際に先ほど述べた白板共有の操作権の問題についても院内学級と学校側の授業を行っていない立会いの人間は操作権の受け渡しをすることにより、より効果的な指導ができることを指摘したがっていても相手に伝える手段がないこと、そして授業終了後に院内学級の先生が生徒に対してフォローをするだけの情報量を得ることができないことが課題となった。
   院内学級の生徒はこの授業に関して概ね好評であり、授業についてはプリント教材で行うよりもわかりやすかった。音声もわかりやすかった。そして何よりも40分の授業が20分ぐらいに感じられるほど授業が楽しかったとの評価を得た。

 今後の課題

 今回の授業に関してはAETの先生が授業準備をしていただいたにもかかわらず、システム側がネットワークの状況にもよりうまく活用することができなかったこと、操作方法をまだAETならびに生徒が把握していなかったこと、音声を先生や操作を補助する人間にも聞こえるようにする必要があったことが大きな課題として考える。
 これらの課題に関しては下記の対策を検討している。

    1. 授業準備について
      授業準備については今回パワーポイントの資料を用意していただいた。しかしながらパワーポイントの共有化はネットワークに大きな負担をかけるため、ネットワークの状況によってはうまく活用することができないことがある。しかしながらこのような教材を作成するにはパワーポイントにて資料を作成することが先生にとっても負担をかけず用意することができる。そこでこのようなパワーポイントの資料をHTML化し、WEB上にあげることにより、WEB連携を利用し授業を行うことを検討している。これはお互いのネットワークおよびマシン資源を無駄に利用せず使うことができる。
    2. 操作方法について
      操作方法に関しては一連の操作方法の浸透をはかるため、あらかじめ授業を行う先生に対して授業の準備や授業の内容を打ち合わせをすることが重要と考える。また空いた時間に気軽にテレビ会議を利用していただき、活用方法を検討していだけるようにしていく。
    3. 音声の共有について
      音声の共有はスピーカーの利用を検討したが前述したようにエコーが起こってしまった。そこで下記の2点を検討する。
      1. スピーカーの位置の調整
      2. マイクの形状変更
      3. ミキサーの使用
      4. 分配器の使用
         以上の方法を検討し、エコーを起こさず音声を共有する方法を検討する。

     

図40 地図を示して英語でやりとりをしている様子

 

図41 地図の記号を示している図。白板共有の2枚目を提示

 

図42 白板共有の1枚目に戻り地図に書き込みをして説明している図

7.1.7 本校の総合的な学習の時間を利用した院内学級との交流

(内容) 現在まで本校と院内学級とは手紙を通じて交流を行っていたが、残念ながらリアルタイムでの交流を実施するまでにはいたらなかった。またどのような児童と交流をしているのかもわからなかった。そこで本校と院内学級をテレビ会議で結び交流をさらに活発に理解を深めることを目指した。
(場所) 小学校:PC教室
院内学級:院内学級内

 (使用機器)

学校側: ●テレビ会議用PC
●デジタルビデオカメラ
○デジタルビデオカメラマイク
○は学校既設 ●は別途用意 △はあればよかったとおもわれるもの
院内学級 ○テレビ会議用PC
○カメラ
○ヘッドセット
△スピーカー(PCのスピーカーは貧弱なため、音質が落ちる)
△プロジェクタ(高画質でできる場合であれば大画面の方が迫力が出る)

 (設置)

PC教室を利用したため、特別な設定変更や、ネットワークの引きなおしは発生しなかったため、設定・準備はスムーズに終わった。

 (中継について)
  (映像)

 小学校はPC教室に設置したデジタルビデオカメラを利用した。学校側の出席者は4名だったため、学校の先生がカメラのコントロールを行った。院内学級ではノートPCに取り付けたUSBカメラを利用した。

  (画質)

 今回はお互いに前回実施した学芸会の感想と質疑応答、笛の演奏、合奏そしてプレゼントの紹介を行った。他の機能(白板共有等)を利用しなかったため画像を大きくし、画質を上げて利用した。

<画質設定>

320×240ドット 7フレーム 128K程度

  (音声)

 音声に関しては、前述したようにお互いのやりとりが中心となるため、重視した。しかし後ほども述べるが、マイクの影響もしくはネットワークの影響を受けハウリングが起こることもあった。

 (全体的に)

 セレモニーの際に始めて手紙でやり取りをしている友だちを映像で見ることができ、院内学級の児童も本校の児童も今回のこの授業を大変楽しみにしていたようである。また院内学級の先生も日ごろ練習している笛を演奏し、みんなに聞いてもらえる場として児童の意欲の高まりを感じておられたようである。実際に授業が始まると、本校の児童の表情は硬かったものの、院内学級の児童たちははしゃぎながら(はしゃぎすぎて先生にたしなめられる場面もあったが)話を進めていくことができた。また楽器の演奏も細かなニュアンスはわからなく、ステレオ音声ではないため臨場感に欠けるものの、お互いの雰囲気はつかむことができ、本校・院内学級の児童も楽しむことができたようである。院内学級の児童からはまた是非行いたいとの感想であった。

 今後の課題

 内容的には本校、院内学級ともうまく実施できたと考えられるが、一点だけ課題を挙げることができる。それは音声の問題である。
  今回のテレビ会議を行うにあたってリハーサルを実施したのだが、リハーサルの際にはまったく問題なかったハウリングが授業開始後にひどくなり、一時的に相手の音声が聞き取れない状況も発生した。マイクを切断するなどの処置をとったが残念ながら根本的な解決にはならなかった。
  問題の原因は院内学級のマイクとスピーカーの位置と考えられる。リハーサルの際は問題がなかったため、マイクとスピーカーの位置をシビアに見なかったことも反省点である。今回院内学級は先生だけでNECの技術者が派遣されなかったため、授業開始後マイクとスピーカーの位置等の変更ができなかったので、学校側(学校側にはNEC関係の人間が待機)のマイクやスピーカーを調整し対処した。
  今後マイクとスピーカーの位置、マイクの種類等を配慮し実施することが必要である。



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