7.院内学級でのeラーニング実施例




7.2 オンデマンドコンテンツを利用した授業

 オンデマンド授業において今回はDSI社のe点コンテンツを活用した。このe点のコンテンツは小学校1年生から6年生までの国語と算数の全単元の動画コンテンツ、中学校1年生から3年生の国語・数学・物理・化学・生物・地学・歴史・地理・公民・英語の全単元の動画コンテンツを用意し活用できるようにした。これらのコンテンツは予備校や塾の先生経験者が教える、各5分から10分ほどのクリップ集でできている。またこれにあわせた確認テストの問題も用意されている。
 これらの約1800点の動画は好きな時間に好きな場所から見ることができるため、児童・生徒の体調は学習の進み具合により学習をするこができるようになっている。
 実際には児童・生徒の自習学習教材として、また授業の際の先生の教材として日常的に活用された。さらに受験を控えた生徒などには復習の教材として利用された。
 児童にとってはPC上の映像にて学習するということが新鮮だったということもあり、実際にテレビのように、また自分を見ながら授業を行っているという雰囲気になったとのことである。
 なお今回は活用されなかったが、受講した講義は履歴として残るため、院内学級の先生をはじめ、原籍校の先生もインターネット上を通じて、児童・生徒の学習状況を確認する機能もある。この機能を利用することにより、原籍校の先生が児童・生徒が原籍校に復帰する前にどこまで学習が進んでいるのか確認することも可能となる。
 ここで利用したコンテンツの一部を紹介する。

表1 小学校4年生算数コンテンツ一覧
大単元 小単元 講義No 講義内容
整数 大きな数(1) 1 大きな数のしくみ
大きな数(2) 2 10倍、100倍、10分の1、100分の1
大きな数(3) 3 かけ算
大きな数(4) 4 0の多くついたかけ算
わり算(1) 5 2けた、3けたの整数 ÷1けたの整数
わり算(2) 6 あまりのもとめ方
わり算(3) 7 2けたの数でわる計算
わり算(4) 8 わり算のくふう
がい数 およその数(1) 9 がい数 1
およその数(2) 10 がい数 2
およその数(3) 11 がい数からはんいを考える 1
およその数(4) 12 がい数からはんいを考える 2
およその数(5) 13 がい数の利用
およその数(6) 14 がい数の計算
式と計算 式と計算(1) 15 かけ算やわり算がまじった計算
式と計算(2) 16 かっこを使った式の計算
式と計算(3) 17 計算のきまり
式と計算(4) 18 計算のかんけい( □を求める)
式と計算(5) 19 計算のかんけい( □を求める)の文章題
式と計算(6) 20 1つの式に表し、答を求める文章題 1
式と計算(7) 21 1つの式に表し、答を求める文章題 2
式と計算(8) 22 くふうして計算する
式と計算 表と折れ線グラフ(1) 23 整理のしかた 1
表と折れ線グラフ(2) 24 整理のしかた 2
表と折れ線グラフ(3) 25 整理のしかた 3
表と折れ線グラフ(4) 26 折れ線グラフ
平面図形の性質 角(1) 27 角度
角(2) 28 角の大きさ(直角)
角(3) 29 角の大きさをもとめる
角(4) 30 対頂角の利用
角(5) 31 三角定規でできる角
垂直と平行(1) 32 垂直、平行、平行線でできる角 1
垂直と平行(2) 33 垂直、平行、平行線でできる角 2
三角形(1) 34 直角と直角三角形
三角形(2) 35 二等辺三角形と正三角形
四角形(1) 36 台形、平行四辺形、ひし形
四角形(2) 37 四角形の対角線
四角形(3) 38 四角形の角の大きさ、辺の長さ
円と球 39 円と球
平面図形の性質 面積(1) 40 長方形や正方形の面積
面積(2) 41 大きな面積の単位 1
面積(3) 42 大きな面積の単位 2
面積(4) 43 大きな面積の単位 3
面積(5) 44 単位に注意して面積をもとめる
面積(6) 45 長方形の面積から辺の長さをもとめる
面積(7) 46 くふうして面積をもとめる 1
面積(8) 47 くふうして面積をもとめる 2
面積(9) 48 くふうして面積をもとめる 3
小数 小数(1) 49 小数の意味・あらわし方
小数(2) 50 小数のしくみ、大きさ 1
小数(3) 51 小数のしくみ、大きさ 2
小数(4) 52 単位と小数 1
小数(5) 53 単位と小数 2
小数(6) 54 単位と小数 3
小数(7) 55 小数の10倍、10分の1
小数(8) 56 小数のたし算
小数(9) 57 小数のひき算
小数(10) 58 小数のたし算とひき算の文章題
小数(11) 59 小数のかけ算 1
小数(12) 60 小数のかけ算 2
小数(13) 61 小数のかけ算の文章題
小数(14) 62 小数のわり算 1
小数(15) 63 小数のわり算 2
小数(16) 64 小数のわり算 3
小数(17) 65 小数のわり算(あまりあり)
小数(18) 66 小数のわり算(商の四捨五入)
小数(19) 67 小数のわり算(計算のたしかめ)
小数(20) 68 小数のわり算の文章題
分数 小数(21) 69 小数の文章題
分数(1) 70 分数の意味とあらわし方
分数(2) 71 分数のたし算・ひき算 1
分数(3) 72 分数のたし算・ひき算 2
分数(4) 73 帯分数と仮分数 1
分数(5) 74 帯分数と仮分数 2
分数(6) 75 帯分数と仮分数 3
不等号 76 不等号(<や>)の意味とあらわし方
分数(7) 77 分数の大きさ
分数(8) 78 分数のたし算
分数(9) 79 分数のひき算 1
分数(10) 80 分数のひき算 2
分数(11) 81 分数のたし算とひき算
分数(12) 82 分数のたし算とひき算の文章題
規則性に関する問題 かわり方 83 いろいろな数列
立体図形の性質 直方体と立方体(1) 84 直方体と立方体
直方体と立方体(2) 85 面や辺の垂直と平行
直方体と立方体(3) 86 見取り図とてん開図
直方体と立方体(4) 87 組み立てたときの位置関係 1
直方体と立方体(5) 88 組み立てたときの位置関係 2
直方体と立方体(6) 89 かけられたひもの長さ
直方体と立方体(7) 90 位置の表し方

 

 

図43 オンデマンド学習システムの科目一覧

 

図44 オンデマンド学習システム内講義一覧覧

 

図45 オンデマンド学習システムのコンテンツ再生

 

(課題)

 本システムは大学向けに開発されたものであり、小学校中学校の児童・生徒が利用するには一部課題も生じた。その課題について述べる。

    1. 学習システムの課題
      学習システムは前述のように大学向けに開発されている。そのためにインタフェースならびに学習課程の登録などに一部課題があると考える。ただし現場の先生は慣れの問題として語っているように、現実問題としては低学年から利用し活用していただいていた。
    2. コンテンツの問題
      コンテンツはDSI社の協力を得て提供し、これは先生方に好評を得たが、当初予定していた学校作成のコンテンツを登録するにはいたらなかった。これは院内学級と本校との学習のスピードの違いや、準備不足の点があり、院内学級への個別指導が適当であったことも原因の一つである。今後は本校の授業や行事をコンテンツ化し登録することを検討する。
    3. システムの習得
      システムにはさまざまな機能を有していたが、残念ながらすべての機能を利用するにはいたらなかった。これは機能自体が望まれているものではないことも要因の一つであるが、システムの習得に時間がかかること、また今までeラーニングそのものに関わったことがないため、概念としてご理解いただくのに時間を要したことも原因の一つとしてあげられる。今後更なる研修ならびにディスカッションを行う必要がある。
    4. 管理システムの問題
      これも先ほどの述べたように大学を基本として作成されているシステムのため、管理体系が小中学校と異なる。たとえば大学では教員と学生は教科でのつながりしかないが、小中学校、特に小学校においては教員と児童の関係は基本的に担任というつながりであり、管理体系が異なってくる。小中学校における管理システムが必要である。

7.3 コミュニケーションシステムを活用した事例

 コミュニケーションシステムを利用した事例としては基本的に先生と先生、先生と児童・生徒、児童・生徒同士の組み合わせで実施した。その組み合わせは下記のとおりである。

(先生同士)

倉敷市内院内学級の先生の交流の場
本校と院内学級との交流の場
院内学級と原籍校の先生との交流の場

(先生と児童・生徒)

院内学級と原籍校の先生との交流の場

(児童・生徒同士)

院内学級と本校の児童・生徒との交流の場
院内学級と原籍校の児童・生徒の交流の場
倉敷市内院内学級同士の交流の場

 等の掲示板を計14個作成し、利用していただいた。この中で一番活発にやり取りが行われたのは院内学級の先生同士の交流の場である。各病院が距離的に離れていて気軽に会うことができないこと、また授業時間などが異なったり外出している時間があったりとなかなかつかまらないことが多いため、このようなリアルタイム性を問われることがないコミュニケーションシステムが有効活用されたと考えられる。

図46 掲示板の実際

 また院内学級同士の交流も盛んに行われた。院内学級同士の交流はいままでも実施されていたものの、距離の問題等からあまり進んでいなかったが、コミュニケーションシステムを利用することにより、テキストベースであるが交流が進んでいってる。また中学年の児童が多いためキーボードは上級生に代わりに打ってもらったり、画像を貼り付けるなどの工夫をしているところもあった。
 さらに院内学級の先生と原籍校の先生間でのやり取りをコミュニケーションシステムを利用して行うということも行われた。他市から来た入院患者もいるため、そのような原籍校の先生がたびたび病院に通うことは困難である。そこでこのコミュニケーションシステムを利用し原籍校と院内の先生が情報を共有しておられた。
 先生方からはライブ授業システムよりも活用できるというお話もあった。その理由は院内学級の児童・生徒の中には相手に自分の現状の姿を見せたくないという子もいるからである。児童・生徒によっては、また保護者の中には現在の姿をみんなに見られたくないという気持ちをもたれる方も少なくない。ライブ授業システムであれば、互いに見ながら話をすることが原則となるため(一部片方のみの配信となった場合もあるが)、自分の姿をみんなの前に出さなければならない。ところが掲示板であれば基本はテキストのため、基本的には相手に自分の姿を見せる必要がない。また自分の姿を出すか出さないか(写真や動画を利用して)は自らの判断で可能である。また自分の時間にあわせて書き込みをすることができるので本校や原籍校に対しての気兼ねが少なくて済む点もメリットとしてあげておられた。

(課題)

 オンデマンドシステムと同じくこのシステムも基本的に大学での利用を前提としている。そもそも掲示板とは講義の中でお互いディスカッションをし理解を深めていくために存在していた。ところが小中学校における掲示板の活用方法はもっぱらコミュニケーションに軸を置いているためにいくつか問題が生じる結果となった。
 例えば投稿を修正できないなどである。大学においては修正箇所などは自分で訂正するこができるものの、小中学生であれば自ら修正することが困難なときもあり、その際には教員が確認し、修正または削除する必要がある。
 さらにこのシステムは先生方の情報共有の場として盛んに活用されていたが、残念ながらそのような情報を共有するためにはこのコミュニケーションシステムは一覧性が限られ、昔の投稿を見ることが難しく見落としてしまう結果となることもある。
 最後にこのシステムはリアルタイム性が求められないため、自分の体調や時間に合わせ書き込み、交流を行うことができる。しかしながら院内学級同士のやり取りの中で2回中断された時期があった。一つは片方の病院のネットワークがつながらなかったことであるが、もう一つは片方の病院に入院している児童が体調を崩し参加することができなかったことである。


前のページへ 次のページへ