5.GISchoolの開発




5.1 システムで必要な機能要件


 このシステムは小学生が,一人で利用することを前提に開発する。野外学習で「調べる・まとめる・学ぶ」活動を実現するためGISchoolは次の用件を満たすものとする。



図 3 システム概念図


図 4 学校と家庭との接続イメージ


5.2 システム(GISchool)の有効性


このシステム(GISchool)を利用することで以下の有効性が得られることを目指した。

表8:GISchoolを利用することでの有効性
1 「地図の理解力の向上」
 現在位置や周辺の道路や建物などを地図上で確認
2 「まとめツールとしての野外利用」
 現在位置に関連付けて,音声や文字,絵を登録可能
3 調査地域に応じた地図を選択利用可能
 バス等での移動時,広域の場合には20万分の1の地図を指定可能
徒歩などの場合には,2万5千分の1や2500分の1を指定でき,いろいろ
な授業に対応出来る
4 「まとめツールとしての教室での利用」
 地図と登録地点や音声,文字,絵などを元にして,より精度の高いまと
め学習及び発表ができる
5 「まとめツールとしてのインターネット公開への利用」
 まとめた結果を地図と共にインターネットに公開できる


図 5 GISchoolの画面1

1)「地図の理解力の向上」

 現在位置が中心に来るようなシステムであり,現在位置や周辺の道路や建物などと地図を関連付けて理解することが出来る。生徒がGISchoolを利用することで,地図の理解力を身に付けることにつながる。

2)「まとめツールとしての野外利用」

 現在位置に,登録したい時に登録することが出来るので,まとめツールとして利用が出来る。野外授業の調査中も教室でのまとめ学習時にも,地図と地図上に登録したデータを元に整理できるので,生徒自身も思い出すことが出来るし,まとめたものを見たり聞いたりする人も理解度が上がる。

3)調査地域に応じた地図を選択利用可能

 今回の小学校の授業では,3年生から6年生までを対象にした。3年生の行動範囲は狭く,学校周辺を徒歩で移動する程度である。これに対し6年生は修学旅行などもあり,行動範囲が他県にも及ぶことになる。
 授業の教科も理科・社会・総合的な学習など利用用途も様々に考えられるし,調査対象も様々である。
 GISchoolでは,使用する地図を選択し切り替えることが出来るので,複数の学年や様々な授業に対応可能である。

4)「まとめツールとしての教室での利用」

 調査地点が登録された地図と登録した音声,文字,絵などを元データにして,当日を思い出しながら,より分かりやすいまとめ学習及び発表用のデータ・資料を作成することが出来る。また,データ資料を元に発表することも出来る。

5)「まとめツールとしてのインターネット公開への利用」

 発表用のデータ・資料は,地図データと共にインターネット上に公開することも出来る。

図6 GISchoolの画面2

  生徒は,以下の各アプリケーションを使用することが出来る。

 いずれも,簡単な操作で使用できるソフトウェアである。「アプリ自由選択」も用意してあるので,必要なアプリケーションは適宜,設定することで使用することが可能である。

 登録地点には丸印が表示される。丸印は5分割されており,どのアプリケーションで登録したかは,丸印内の登録位置と色で確認出来る。
 一地点に複数の情報を登録することが可能。
 ファイル名は自動生成されるので,野外でファイル名を指定する手間は省け,使い勝手は良い。

5.3 システムの開発                

図7 GISchoolの構成イメージ

 GISchoolは,以下のもので構成されている。(図 システムの構成図)参照。



1) タブレットPC

 富士通 FMV-STYLISTIC TB/93 B を選定した。タブレットペン入力出来るものである。生徒は,文字変換機能(ペンで手書きした文字を変換する機能)を好んで使用していた。
 2時間程度の授業では,バッテリーをフル充電する必要があるので,事前確認が必要。

2)GPS

 GARMIN製 Geko201をベースに使用した。電源ONから緯度経度取得までが短時間である。GPSをUSB接続状態で,連続(30分程度)使用した際に再起動などの事象の発生する場合がある。問題事象の回避策としては,GPSの電源をこまめにOFFしたり,USBの代わりにPCMCIAカード経由で接続する方法である。Tabletパレットへの固定方法も工夫した。

3)USBカメラ

 Logicool製 Qcam
 USBカメラ(QV-40)を選定し,首掛け式に加工した。USBカメラ+操作が簡単なアプリケーション:ImageStudioを使用した。
 登録した緯度経度との連動はアプリケーション:ImageStudioに依存するため,自動では緯度経度の対応付けが出来ません。緯度経度の対応付けに関しては,運用(手動)で対応する必要がある。

4)地図データ

 国土地理院の数値地図や各自治体の地形図,航空写真を地図データ化し,緯度経度を対応させました。国土地理院の承認を得ることが困難であった。(使用する縮尺に応じた使用承認や複製承認の区別、利用目的や範囲、印刷部数に関する応答が煩雑で、相当の回数に及んだため)
 地図には,20万分の1や2万5千分の1, 2500分の1など様々な縮尺の地図を採用し,授業の指導案に応じて,ケースバイケースで最適な地図を選択した。

5)GISchool

図8 アプリケーション
選択画面

 「図 5 GISchoolの画面1」の「登録」ボタンを押すことで,「図8 アプリケーション選択画面」が表示する。タブレットPCとGPS,USBカメラ,地図データを連携したシステムのソフトウェアを開発した。現在位置に,音声や画像(動画と静止画),テキスト文字,絵などを関連付け,登録出来るシステムである。生徒が慣れるのに苦労しない様に,出来るだけ簡易な操作と簡単なアプリケーションを使用した。使い慣れた任意のアプリケーション(初期設定済)をGISchoolのメニューから選択して起動する機能もある。


6)Tabletパレット

写真− 1 Tabletパレット
利用時の様子

タブレットPCと周辺機器を接続したシステムを野外で使用するための固定板(画板のようなもの)を作成した。タブレットPCにGPSを接続し,テストした際,手で持った場合の重量,衝突なども考慮した。出来るだけ軽く,安全で,使い勝手が良く,持ち運びも出来るというのが必要要件であった。この制作と量産には多くの時間を要した。実際に使用して,紐の長さなど変更する必要があっ た。現状でも,重さや使い勝手など改良の余地はあった。今後は生徒自身がタブレットPCを持ち歩くためのオリジナルのTabletパレットの作成も一考であると思われる。




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