3.システムを活用した実践




3.1 班に1台の活用

◆鳥取県三朝町立西小学校(田中靖浩教諭)の実践
●5年理科「流れる水のはたらき」
         〜川探検 上流・下流 ・中流の様子を調べよう〜
 


(1)学習のねらい

  1. 視点を決めて川の流れを観察することによって、流れる水の働きについて、理解を深める。
  2. 分担して観察した記録を比較検討することによって、上流・中流・下流による川の様相の違いに気づく。


(2)システムの活用場面

  1. 上流・中流・下流の川の様相を課題別グループで写真にとり、サーバに送信する。
  2. 川の観察をして課題について気づいたことを、川の様相の写真にコメントとして加える。
  3. グループごとに、写真を示しながら観察して気づいたことを発表する。
  4. 各グループの観察結果記述を参考にして、上流・下流・中流の川の様相の変化をワークシートにまとまる。


(3)学習の流れ

  1. 流れる水のはたらきを校庭の斜面や流水実験器を使って実験して調べる。
  2. 実際の川に見学に行き、流れる水のはたらきを観察する。 観点別のグループを作り、観点に沿って、カメラ付携帯電話で写真を撮り、送信する。
  3. 観察したことを整理し、流れる水のはたらきについて考える。
    学校に帰り、観察して気づいたことをコメントとして写真に書き加える。
    各グループの観察したことを発表する。
    他グループの観察記録を見ながら、上流・中流・下流の川の様子や水のはたらきについて、ワークシートにまとめる。


(4)準備

  1. 見学コースにしたがって、課題別のグループ編成。
  2. 課題と観察地点をマトリックスにしたまとめ用のワークシート。


(5)学習の様子

学習活動 児童への働きかけ・児童の気づき 活動の様子
1. 流れる水のはたらきを校庭の斜面や流水実験器を使って実験して調べる。 流れる水の働きを調べよう。斜面で小さな川を作って実験してみよう。
流水実験器も使えるね。流れる水の働きや岸の様子が分かるぞ。
2. 実際の川に見学に行き、流れる水のはたらきを観察する。(近くの川) 本物の川を観察しよう。学校近くの川はこんな感じだけど、上流や下流はどうなっているのかなあ。
観点に沿ってカメラ付携帯電話で写真をとろう。
(上流〜下流)
午前中4時間を使って、上流から下流までを観察しよう。
(上流) 上流の渓谷からスタートです。上流の渓谷には大きな石があります。
人と比べると石の大きさが分かります。
上流の川の様子をうつします。グループで受け持った課題で観察しよう。
上流では、川ばかりでなく山を見上げると谷の深さが分かります。
渓谷から少し下ったところでも、川の流れの様子をうつします。ここは、石の大きさがちがうね。写真はうまくとれたかなあ。
私たちは、災害を防ぐ川の工夫を調べるよ。こっちにコンクリートの護岸があるね。
(送信) とった写真を送信しよう。渓谷では送信できなかったけど、ここからなら送れるよ。移動のバスの中からも送信できたよ。
(中流) 中流では流れの様子がちがってきたぞ。
(下流) 河口の近くには、砂の中州ができているよ。
河口では、川の水が波に向かって流れ込んでいるよ。
3. 観察したことを整理し、流れる水のはたらきについて考える。 学校に帰ってきたよ。観察して気づいたことを、写真にコメントとしてつけ加えよう。課題別グループの発表をするよ。
各グループの調査結果をよく見て、一人一人がワークシートにまとよう。上流・中流・下流のちがいを、整理しよう。


(6)実践の成果

●学習のねらい達成について

 課題を持って川の様相を観察するために、参考となる場面を写真に切り取るという作業は有効であった。どの場面を写真にとれば、課題解決の資料になるかという視点で、子どもたちが取材活動を行うことができた。
  取材で得た画像を簡単にサーバにアップすることができたのは、学習内容に時間を割くことができることにつながった。
  自分たちが撮った写真にコメントをつけることによって、自らの観察を明確に意味づけることができた。
  別の課題で取材を行った他グループの観察結果もあわせて、川の様相を見つめることができ、クラス内での協同学習をスムーズに行うことができた。
  グループ別の観察結果発表を行う際には、写真を示しながら、発表することができ、観察したことを、わかりやすく発表することにつながった。

●カメラ付き携帯電話の活用について

 画素数が小さく、詳しい観察には向かないが、その分、コメントを付加することによって、伝えたいことは伝えることができた。
今回は、コメントを学校のPCを利用して書き込んだが、携帯端末で書き込むこともできるのは、様々な活用バリエーションにつながる。
  簡単に写真を撮り、サーバに送信することができるので、児童は失敗を恐れることなく、取材活動を行うことができた。
  メール添付という方法で、画像を送信するため、少し手順の慣れが必要であったが、それでも児童は簡単に使いこなしていた。

●サーバシステムの活用について

 送信された画像やコメントデータをPC上で整理したり、2次利用することで、様々な授業に活用することができる。
  プレゼンモードは、学習過程における発表ツールとしても活用できる。

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◆三重県阿児町立神明小学校(中西康之教諭)の実践
●5年社会「人にやさしい車」〜ユニバーサルデザインを探そう


(1)学習のねらい

  1. 人にやさしい車の見学を行うことによって、ユニバーサルデザインを見つけ、どんな点が人にやさしいかに気づくことができる。
  2. 撮影した写真を見比べることによって、その違いを知ることができる。
  3. インタビューや写真撮影など、多様な情報収集法を用いて調べ学習を行い、課題を解決していくことができる。


(2)システムの活用場面

  1. 学習班ごとに、人にやさしい車の見学・写真撮影を行い、サーバに送信する。
  2. インタビューするだけでなく、自分たちで触って体験して、そのよさを理解する。
  3. 写真を提示して発表しながら、わかったことをわかりやすく伝えることができる。
  4. それぞれの児童が車のユニバーサルデザインを知り、それを生かした「未来の車」を考案する。


(3)学習の流れ

  1. 人にやさしい車を見学し、気になったところ、ユニバーサルデザインだと考えたところを撮影し、体験する。
  2. 最新のデザインと古いデザインの車とを比較し、その違いに気付く。
    ・気付いたことはカメラ付き携帯電話で撮影して送信する
    ・新旧デザインの違いを比較できるよう、撮影・送信・提示に工夫をする
    ・クラス内での発表会をして、気付いたことを交流し合う
  3. 勉強したことの発表会をする。
    ・福祉集会で、勉強したことをみんなに伝える


(4)学習の様子

学習活動 児童の活動・指導上の
留意点
活動の様子・児童が撮影した画像
(1)人にやさしい車を見学し、気になったところ、ユニバーサルデザインだと考えたところを撮影し、体験する。 疑問におもったこと、不思議だなあとおもったこと、など溝口さんに質問しましょう。
触ったり空けたりして、体験してみましょう
撮影には許可をもらいましょう。
(2)最新のデザインと古いデザインの車とを比較し、その違いに気付く。 お話を聞いたり、質問したりして、違いに気付くよう指導する。

気付いたことはカメラ付き携帯電話で撮影して送信する。

カメラ付き携帯電話の撮影では近づきすぎないように指導する

新旧デザインの違いを比較できるよう、撮影・送信・提示に工夫をする。

新旧のデザインで同じ箇所を連続して撮影し、後々の学習に生かすように指導する。
できるだけ同じ大きさ同じ向き同じ場所からの撮影が望ましいことを伝える。
本実践の場合

【撮影・送信する】

この活動において、画像の撮影、画像の選択、画像の送信をまとめて行う。
そのため以降の活動は、発表のための班の話し合いに移っていくことができる。

【発表会の準備をする】
デジタルカメラの場合



【撮影する】

【取り込む】

【選ぶ】

(3)クラス内での発表会をして、気付いたことを交流し合う 自分たちが気付いたことを発表しよう。
新旧のデザインで違いがあった箇所は必ず比べるように発表しよう。

勉強したことの発表会をする。

ウェッビングの結果を発表しよう。車だけでなく、文房具やシャンプーなどのユニバーサルデザインにも注目しよう。

福祉集会で、勉強したことをみんなに伝える。

私たちが調べた「人にやさしい車」のことについて、発表会をしよう。
全校にみんなに聞いてもらおう。
(4)未来の車を創造する。 人にやさしい車、環境に優しい車など、今まで勉強したことと、身近な人へのインタビュー結果から、未来の車を創造する。 (児童の作品1)

(児童の作品2)


(5)実践の成果

  1. ユニバーサルデザインを探すという学習において、探し出したものや聞いてわかったことを写真に撮影し、残しておくことは、学習の深まりという点において、有効であった。
  2. カメラ付き携帯電話で撮影した画像を、簡単にサーバにアップロードすることができるシステムを使えたのは、この学習を進める上で有意義であった。各学習のステップ間での時間調整の必要性がなく、シームレスに学習が進められた。
  3. 提示するものと、個々の児童用パソコンに表示されるものとが同じ画面が出るので、見失うことなく学習に集中することができる。また発表の練習などにおいても、大型提示装置を使わず個々のパソコンで、発表と同じメニュー練習ができるという便利さもあった。
  4. 他の班の撮影した画像も自由に見ることができ、班の間の学習の交流が自然と進んでいった。
  5. 画像をメールに添付してサーバに送信するだけで、アップロードされる仕組みは学習中の無駄を省き、学習をスムーズに進めることができた。デジタルカメラを使用すると、配線を行ったり、データを吸い上げたりと、個々の対応に追われる場面もあるが、このシステムでは、それがなかった。
  6. 送信された画像は、プレゼンテーションソフトなどでの二次利用が可能であり、多様な学習、深まりのある学習への広がりが期待できる。
  7. やや画像が小さく見づらいものもあったが、大型提示装置などを活用することで、写真そのものをプレゼンテーションの素材として活用できるシステムであった。
  8. 今回は写真の説明は、言葉による発表を用いて文字入力はしなかったが、PCや携帯からの文字入力を行い、写真を説明する方法も、学習の形態を多様にすると期待される。

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◆福島県福島市立福島第四小学校(高玉美加教諭・堀部 誠教諭)の実践
●2年生活科「町をたんけんしよう パート3」


(1)本時の学習のねらい

グループごとに探検活動やその振り返り活動をし、町の人々や様々な場所と自分たち とのかかわりを考えることができる。


(2)携帯電話や撮影した画像の活用について

探検グループ

  1. 携帯電話は、グループに同伴している保護者が操作する。保護者は、子どもの満足感や困っていることを適時とらえて画像やメールで送信する。担任は、教室に残っている児童とともに探検グループの気付きや町へのかかわりの様子を確認し、協力しあって活動するよう賞賛や励ましのメールを送る。

表現グループ

  1. 前時の探検を、画像や探検カードなどから振り返り、楽しかったことや気付いたことを振り返る。


(3)学習の流れ

探検グループ 教室の表現グループ
計画をもとに、3グループが町探検を進める。

※ 探検には、保護者がサポーターとして同行して指導に当たるほか、携帯端末で子どもたちの活動を撮影し、情報共有用の画像掲示板に送信するなどの支援も行った。
前時の画像をプリントして掲示物を作成しながら探検を振り返り、表現する。
保護者が携帯で撮影した画像の一部
保護者が送信[探検へ出発!オー](メール)

送信(メール)
[ゆずみそをぺろりとなめました。]

送信(メール)
[来年、四小に入学する幼稚園の友だち]

送信
[図書館で本をさがしました。](メール)

探検を終えて、教室にもどる。
好きな場所やお世話になった人を表そう。

どらやきグループの探検カード



電子黒板で刻々更新される探検中のグループの活動(画像)を見る。ゆずみそをなめたことや図書館で本をさがしたようすなどを知ることができた。
「Cちゃん楽しそうだね。」
「D君たちは、花の写真館にも行ったんだね。」
  教師は、探検グループの活動の様子を見取り、「おいしそうなどら焼きだね」「気をつけて帰ってきて」などの賞賛や助言(指令ではない)が、リアルタイムにグループに送られた。

探検から帰ってきたグループの子ども達と、送られてきた写真を見ながら、すぐ話をすることができた。
「D君、こんなこと言ったでしょ。」
「えー、もうそんなこと知ってるの?」
  ・・・
「この本を借りているのは、ぼくだよ。」「よく本を借りられたね。」


(4)考察

  1. 携帯電話によるリアルタイムな見取りと支援について

 探検活動は、「町」全体を学習の対象としており子ども達の活動範囲が大変広い。今までは探検計画の実施状況については、探検後の発表会や付き添いの保護者の感想等から把握せざるを得なかった。しかし、見えない部分の方が多く、子どもへの言葉かけ等の支援も適切であるのかが不安であった。だが、今回は、保護者からのメールや画像により「計画通りにドラヤキが上手に焼けて、大喜びで菓子店を後にしたこと」「花の美術館で、真剣に展示物を見ることができたこと」など、グループごとの思いや願いが実現された姿をリアルタイムで見取り、子どもの満足感や成就感を共感的に理解することができた。どのグループも自分たちで立てた計画を実行し、町の人々や様々な場所に対して進んで聞いたり、見たり、探したり、作ったりしながら、町の人々や様々な場所のよさや自分自身のよさに気付いて真剣に町にかかわることができた。その見取りを「指令」メールで伝えたり、帰校した子ども達への言葉かけに生かしたりして、自分たちでできたという気付きを強めることができた。
  保護者からは、「担任からのメールを子どもに伝えると、『えーっ、どうして先生が知っているの!!』と驚き、喜ぶ反応が見られ、楽しかった。」という感想が聞かれた。
  また、「画像をたくさん送信してほしい」という担任の要望に応え、保護者は子ども達の活発な活動を夢中になって追いかけながら撮影し、送信してくれた。しかし、その最中に担任からのメールが着信すると操作が煩雑になってしまい、担任の「指令」を十分に読み取ったり、子どもに伝えたりすることは難しかったそうだ。担任が一人一人の支援計画を明確にし、それに基づいて保護者にシャッターポイントを依頼しておくとさらに効果的だったと思われる。

  1. 画像やカードによる具体的振り返りについて

 教室に残った子ども達は、過日町探検を済ませ、その表現活動を行っていたが、教室のパソコンのWebページ上に送られてくる、現在町探検を進行している友達の様子が気になり、表現活動に集中できない様子が見られた。友達の探検活動の様子から、自分たちの探検活動を振り返る視点を明確に持たせる工夫が必要だった。また、過日実施した探検のWebページと現在の町探検のWebページを別々にするべきだった。

  1. 子ども達の情報の共有化について

 探検を2回に分けて実施し、互いの探検活動の様子をリアルタイムで見ることができたことは、自分の探検先以外の人や場所の気付きを広めることつながった。特に、友達の探検活動の画像を教室で見ながら探検の準備を進める子ども達にとっては、「自分たちも探検に行くのが楽しみ」「準備を進めよう」という意欲付けになった。

  1. 保護者との連携の視点から

 携帯を使用せずに実施した7月の町探検でも、今回と同様に保護者に引率していただいた。しかし、子どもが場に応じた接し方ができなかったことや探検先の都合で活動が変更になるなど、トラブルが多発し、付き添いの保護者もだいぶ困惑したという感想が寄せられた。
  今回は、担任と双方向の関係が常に構築されている安心感や子どもの活動のよさを送信しようという意識から、子ども達の活動を余裕を持って見つめていただくことができた。その結果、生活科の町探検のねらいを保護者にも理解していただくことができた。

  1. システムの改善点として

 本時では、教師から、「おいしそうなどら焼きだね」「気をつけて帰ってきて」などの、励まし(指令ではない)がグループに送られる場面がよく見られた。「指令」以外に「教師からのコメント」を明示できる画像があっても良いと思われる。


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