平成 14年度より施行されている学習指導要領では、各教科及び総合的な学習の時間においてITの活用により学習の効果を一層高めるように工夫することとされ、今後IT活用型教育が幅広く実践されていくものと思われる。
本プロジェクト では、教育現場における IT活用を日常化する上で、とりわけ個に応じた学習支援及び学習意欲の向上という観点から、「ユビキタス学習環境」と「IT自由教室」に求められる要件について、全体会議及び各部会の中で検討した。
教育現場における IT活用を日常化していく上で、従来の学習活動の中で子ども達一人一人が使用してきた教具、例えば、鉛筆、消しゴム、筆箱、ノート等と同様な感覚で普及可能なIT教具の導入が効果的だと思われる。
また、学校内の限られた教室であるコンピュータ教室以外の教室、すなわち普通教室でも、手軽に活用できる手段を用意する必要もある。
さらに、教師の授業時における学習支援や学習指導といった活動を、バックアップする仕組みも用意する必要がある。
本プロジェクトでは、教育現場における IT活用を日常化する上で、コストパフォーマンスに優れ、限られた時間と労力で活用でき、しかも子ども達の学習意欲向上に効果的なIT教具について、以下の3つの観点から検討を行った。
子ども達一人一人の学習活動の中で、子ども達が身近に感じかつ継続して活用できる IT教具は、可搬性に優れ、親しみやすくそして安価であることが必要である。本プロジェクトでは、従来のIT教具と比較すると導入コストが安価なUSBメモリを活用することとした。そして、そのUSBメモリ内にeラーニングソフトを格納し、学校内外で継続的に学習活動を行っていくことを可能とした。
USB学習帳を開発するにあたり、USBメモリに格納するeラーニングソフトの機能要件を、以下の1.から3.の3つの観点から検討した。
(一斉学習)
- 授業準備のための手間が少ない。
- 授業で使用する教室のコンピュータ環境やネットワーク環境に影響されない。
- 一斉学習の中でも、子ども達の理解度合に応じて、個別学習を進行できる。
- 子ども達の学習状況や学習進捗を確認できる。
(習熟度別学習)
- 授業準備のための手間が少ない。
- 授業で使用する教室のコンピュータ環境やネットワーク環境に影響されない。
- 習熟度別学習の中でも、子ども達の理解度合に応じて、個別学習を進行できる。
- 子ども達の学習状況や学習進捗を確認できる。
(個人学習)
- 放課後に補習等を目的とした個人学習を実施する際、準備の手間が少ない。
- 放課後に補習等を目的とした個人学習を実施する際、使用する教室のコンピュータ環境やネットワーク環境に影響されない。
- 放課後の個人学習や家庭学習時の学習履歴が保存できる。
- 自分の学習状況や学習進捗を確認できる。
普通教室において ITを活用した個に応じた学習支援を実践するにあたり、一人1台のノート型PCと無線LAN技術を活用することとした。そこで、普通教室において、子ども用PCと教師用PC間での簡単かつ柔軟なデータ通信環境を実現するために、無線LAN環境構築機器に求められる最低要件について検討した。
普通教室で、 ITを活用して効果的に学習指導を行っていくためには、子ども達と教師との間のコミュニケーションを支援する仕組みが有効である。そこで、普通教室に無線LAN環境を構築することにより、教師が学習指導の中で簡単に子ども達の学習履歴を活用できるようにするために、IT教具に求められる要件について検討した。
今回、教師が、手軽に、子ども達の授業外での学習活動を支援でき、また子ども達の学習状況を把握できるように、ペンダントあるいはキーホルダー型の小型軽量メモリである USBメモリを活用し、下記のような「USB学習帳」を開発する。
番号 | 項目 | 説明 |
USB1 | 構成 | 下記内容を含む。 1.教材や演習問題などの「教材コンテンツ」 2.教材や演習問題の表示、演習問題解答の自動採点、採点結果や学習履歴の格納を行う「 eラーニングソフト」 3.そのソフトウェアにより保存された「学習履歴データ」 |
USB2 | オートブート機能 | PCのUSBスロットに差し込むだけで、必要なソフトウェアが自動的に立ち上がる。 |
USB3 | 自動データロギング機能 | eラーニングソフトを用いて学習した際、履歴、解答、成績が、学習日とともに保存される。 |
USB4 | ポータビリティ | 様々な PCで利用できるよう、WEBブラウザ(IE)で動作するソフトウェアとする。 |
USB5 | デザイン | eラーニングソフトは、入力操作、画面遷移が、マニュアルを読まなくても直感的に推察できるようなインターフェイスデザインとする。 |
普通教室でのグループ学習及び習熟度別学習での利用を想定し、一つの教室を複数セグメントに分割するには、電波を放射状に送出するのではなく、ポール先端部に平面アンテナをつけ、釣鐘状の電波到達エリアを実現するのがよいと考えられる。そのような観点から、下記仕様を設定した。
番号 | 項目 | 説明 |
WLAN1 | 規格 | 2.4GHz帯、IEEE802.11b対応で、TCP/IP通信をサポートした無線LANのアクセスポイントとする。 |
WLAN2 | 形状 | 可搬で普通教室に容易に設置できるように、自律型アンテナポールに、 ・平面アンテナ(先端部) ・アクセスポイント機器 を装着した構造とする。 |
WLAN3 | 同一エリア内セグメント分割機能 | 一つのエリア(教室)内に、複数の無線エリア(セグメント)を設置できる。 |
USB学習帳が無線LANにより相互接続されると、様々なデータやコンテンツの送受信、共有が可能になる。
一つのサーバを設置し、それを介して情報共有する方式は、ソフトウェア製作の面では容易、効率的であるが、サーバ導入や運営に関する負担、さまざまな教育環境(教室)での利用のしやすさを考慮すれば、そのような「集中サーバ方式」は好ましくないと考える。そこで、今回は、各ユーザ(子ども達、教師)の
PCがサーバ機能を有し、その場(居室)に集まったもの同士で、簡単に情報交換ができるような「分散サーバ方式」にもとづいたシステムを開発する。
番号 | 項目 | 説明 |
App1 | 分散サーバ機能 | 子ども達、教師の USB学習帳及びUSB教務手帳にWEBサーバプログラムを搭載し、PCに挿入した段階で、サーバ機能が自動的に立ち上がる。 |
App2 | 学習履歴集計機能 | 子ども達の USB学習帳に格納された学習履歴データを収集し、集計結果を教師に一目でわかるようにビジュアル表示する。 |
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