5.開発




5.3 開発成果


5.3.1 USB学習帳

 USB学習帳のキャップにキャラクターシールや名前シールを貼り、子ども達が親しみやすくした。( Fig.5-1 )
 この USB学習帳は、子ども達一人一人に配布した。( Fig.5-2 )

Fig.5-1 IT自由教室でのユビキタス学習のイメージ
Fig.5-2 自分用の USB学習帳を選ぶ子ども達たち

Fig.5-3 USB学習帳をPCに挿入すると表示される開始画面の例(小学校算数の例)

 USB学習帳にはオートブート機能を搭載し、USB学習帳をPCのUSBスロットに挿入すると同時にeラーニングソフトが自動起動し、 Fig.5-3 のような学習開始画面がPCに表示されるようにした。
 画面の指示に従って、子ども達は教材の閲覧、演習問題の解答入力を行っていく( Fig.5-4 )。 演習問題についてはeラーニングソフトが自動採点を行い、採点結果や学習履歴データはUSBメモリ内に保存される。
 USB学習帳を教室のPCに挿入すると、教師用PCに挿入したUSB教務手帳に学習履歴情報が送信され、教師は子ども達の学習状況を把握分析できる。
 USB教務手帳には、

が格納されている。
 USB教務手帳にもオートブート機能が搭載されており、PCのUSBスロットに挿入すると授業支援ソフトが自動起動し、 Fig.5-5 のような学習状況確認画面が表示される。



Fig.5-4 USB学習帳での学習画面の例
(小学校算数の例)
Fig.5-5 USB教務手帳での学習状況確認画面の例

USB学習帳・USB教務手帳の仕様を下表にまとめる。

Table5-1 開発したUSB学習帳・USB教務手帳のプロトタイプ仕様
1.USB学習帳・USB教務手帳
1-1.USBメモリ容量 32M バイト
1-2.対応OS Windows 2000、Windows XP
1-3.構成 (1)オートブート部
・自動起動用プログラム
・ WWWサーバ
(2)eラーニングソフト(WWWブラウザで動作)
・ 学習実行制御用プログラム
・ 学習履歴管理用プログラム
・ (保護者用)学習内容確認用プログラム
・ (教師用)学習状況確認用プログラム
(3)教材コンテンツ・データ部
・ HTML及びFlash形式の問題/解答表示用プログラム
・ 問題/解答データ(CSV形式)
・ 解説用データ(WWWブラウザで表示可能な形式)
(4)学習履歴データ部
・学習結果データ(CSV形式データ)
・ 学習過程データ(WEBサーバ・ログ)
1-4.コンテンツ
(今回の調査研究用に制作したコンテンツ)
(1)小学校実践授業用教材1【小学3年】
・単元「表とグラフ」
・ 内容確認用HTML形式コンテンツ(7種類の演習問題)
(2) 小学校実践授業用教材2【小学3年】
・ 計算練習用Flash形式コンテンツ(8種類全120問)
・ 算数えきでん大会用コンテンツ(1種類)
・ 保護者向け計算練習指導用HTML形式コンテンツ(8種類)
(3)中学校実践授業用教材1【中学2年】
・単元「平行線と角」、「三角形の内角と外角」
・問題演習用HTML形式コンテンツ(2種類全33問)
(4)中学校実践授業用教材2【中学2年】
・単元「三角形の合同条件」
・内容確認用HTML形式コンテンツ(1種類/問題演習)
・内容整理用HTML形式コンテンツ(1種類/シミュレーション)
(5)高等学校実践授業用教材1【高校1年】
・単元「二次関数の最大、最小」
・ 問題演習用Flash形式コンテンツ(2種類全8問)
(6)高等学校実践授業用教材2【高校1年】
・単元「二次不等式」
・ 問題演習用Flash形式コンテンツ(4種類全160問)
・問題演習解説用HTML形式コンテンツ(3種類)
(7)高等学校実践授業用教材1【高校3年】
・単元「順列・組合せ、確率」
・ 問題演習用Flash形式コンテンツ(3種類全45問)

Fig.5-6 USB学習帳を身につけている子ども達
ITを教育現場に普及させるためには、システムの機能や使いやすさ、といった点のみならず、安価で導入しやすいことや子ども達自身が「是非使いたい」「持っていると格好がいい」と感じることが必要である。USB学習帳の場合、単価数千円程度であり子ども達一人一人に配布することも十分可能である。また、今回小学校での調査研究において、約1カ月間の実践期間中、子ども達が、授業時以外でも、USB学習帳をペンダントのように身につけ学校生活を過ごしていたという状況が見られ( Fig.5-6 )、普及しやすいものと考える。


5.3.2 無線LAN構築キット

 子ども用 PCと教師用PCが無線LANで接続され、USB学習帳内の学習履歴を従来のようなサーバと呼ばれる特別なPCを介することなくUSB学習帳とUSB教務手帳間で直接やりとりする機能を実現している。今回の調査研究では、実践授業時に確実に授業を進行させるという点から、学習履歴データのUSB教務手帳へのアップロード機能のみに限定した形で授業実践を行った。( Fig.5-7 )
  Fig.5-7 では、教室内で子ども達を班分けし、各班用に可搬式の無線LAN構築キット(ポール先端部にアンテナをとりつけたもの)を設置した例を示している。
 今回、無線 LAN構築キットとして、教育現場への普及しやすさを考慮して、下記要件を満たすものを設計した。

    1. 普通教室内の全ての場所で使用可能なこと
    2. 可搬性を有すること
    3. 軽量で安全なこと
    4. セグメントを分けた無線 LAN環境を実現できること

 実際の無線 LAN構築キットの写真を Fig.5-8 に示す。今回の調査研究では、授業実践校の教室内全ての場所で通信が可能であり、なおかつ隣接する教室には干渉しないように、アクセスポイントの送信電力を調整した。また、アクセスポイントには、各端末PCに自動的にIPアドレスを割り振るDHCPサーバ機能を内蔵したものを採用し、軽量可搬型で、設定も容易な無線LAN構築キットを提供した。

Fig.5-7 普通教室でのユビキタス学習の概要

 これにより、コンピュータ専用の教室でなくても、例えば普通教室に、子ども用 PCと教師用PCを持ち込み、可搬式無線LAN構築キットを介してPC間の通信が可能な環境を構築できる。その上で、次項に述べるUSB教務手帳により、子ども達が、教室でPCに自分専用のUSB学習帳を差し込み学習を進めると、自動的に、学習履歴が教師のUSB教務手帳に送信され、受信データの集計処理を行い、子ども達の学習状況を画面で確認できる。
 仕様を下表にまとめる。

Table 5-2 無線LAN構築キット仕様
無線 LAN構築キット
2.1アクセスポイント部 下記の 3つの仕様を満たす無線LANアクセスポイント
・ IEEE802.11b準拠
・外部アンテナ端子付き
・ DHCPサーバ機能
2.2無線アンテナ部 下記の 3つの仕様を満たす無線LAN用アンテナ
・放射パターン特性 ± 45°
・ 2.4GHz帯対応
・放射電力調整機能付き

Fig.5-8 可搬式無線 LAN構築キット、先端アンテナ部(左下)、アクセスポイント脚部(右下)


5.3.3 USB教務手帳

 既に述べたように、 USB学習帳には、WEBサーバソフトウェア(apache)が内蔵されており、PCに装着された段階で、WEBサーバが自動起動される。WEBサーバ起動後、WWWブラウザで動作するeラーニングソフトが起動し、学習が可能となる。
 教材コンテンツは、 HTML及びFlash形式の「教材表示用テンプレート」と問題や学習履歴など、画面表示に必要な動的情報(「パラメータ」)から構成される。パラメータはCSV形式のテキストファイルで格納されており、eラーニングソフトにより、「教材表示用テンプレート」にパラメータを読み込ませることにより、学習画面を生成、表示する。また、演習問題への解答などのユーザ入力データは、eラーニングソフトにより、CSV形式の学習履歴データとして保存される。USB学習帳の動作フローを Fig.5-9 に示す。USB学習帳を用いた教育情報データ交換の処理フローを Fig.5-10 に示す。なお、 Fig.5-11 には、家庭学習の場合の処理フローを示す。

Fig.5-9 子ども達用PCにおけるUSB学習帳の動作フロー


Fig.5-10 ユビキタス学習システムの動作フロー
(教室での利用の場合)


Fig.5-11 ユビキタス学習システムの動作フロー
(家庭学習の場合)


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