6.実践授業の実施内容と成果




6.1 実践授業の実施内容

 各学校における、実践授業の実施内容を下表にまとめる。

Table 6-1 実践授業の実施内容














実施内容 算数(三年生)
1.みつわ学習(朝の 10分間計算練習)
2.コンピュータ教室での一斉授業時における、学習内容定着を目的とした問題演習
3.家庭学習(学校での学習内容の復習)
4.算数えきでん大会(計算練習まとめ授業)
実施期間 1.みつわ学習(計 15回) 2003年11月11日〜12月4日
2.算数授業(計 8時限、内6時限) 2003年11月11日〜11月21日
* 11月21日は、授業参観
3.家庭学習(モニター家庭 34家庭) 2003年11月11日〜12月4日
4.算数えきでん大会 2003年12月10日
実施対象 3年生全クラス(2クラス計55名)
実施形態 PC一人一台でのコンピュータ利用学習
1.個人学習(みつわ学習、家庭学習)
2.一斉授業内での個人学習(問題演習)
3.グループ形式学習(算数えきでん大会)
IT環境 1.みつわ学習用 PC環境(コンピュータ教室のディスクトップ型PC36台+みつわ教室に設置したノート型PC19台)
2.一斉授業用 PC環境(コンピュータ教室のディスクトップ型PC36台)
3.家庭学習用 PC環境(家庭学習モニター用ノート型PC23台+各家庭のパソコン)
4.ノート型 PC用無線LANカード20枚
5.無線 LAN構築用キット 1式
6.USB学習帳(一人1個)
教材内容 1.「みつわ学習」
・割り算(2位数÷1位数)
・何百の足し算/引き算
・筆算の足し算(3位数+3位数)
・筆算の引き算(3位数−3位数)
・あまりのある割り算
・足し算(2位数+2位数)
・引き算(2位数−2位数)
・筆算の掛け算(2位数×2位数)
2.授業(表とグラフ)
・「正」の字を使った表づくり
・二次元の表の見方
・棒グラフを読む
・様々な棒グラフを読む
・棒グラフの書き方
・表とグラフのまとめ
3.家庭学習(学校内での放課後学習含む)
・1.、2.の教材内容
4.算数えきでん大会
・1.の教材内容を、7周分の問題に整理し、グループ毎に全員が正解したら次周の問題に進める形式で学習
実施風景 1.みつわ学習(計算練習)
2.算数授業(「表とグラフ」)
3.放課後及び家庭学習
4.算数えきでん大会(友達と助け合いながら、7周の問題に完走)


Table 6-1 実践授業の実施内容 【続き】










実施内容 数学( 2年生)
1.普通教室での一斉授業形式による、コンピュータ利用問題演習と個別指導
2.普通教室での一斉授業の中で、板書による一斉指導と、個別学習支援を目的としたコンピュータ利用個人学習をブレンディングした形式での授業実践
(コンピュータ利用個人学習内容)
  ・前回学習内容確認用の問題演習と個別指導
  ・学習内容整理用シミュレーション学習
実施期間 1. 2003年11月17、19、20日(計5時限)
2. 2003年11月21日(1時限) *附属中学公開研究授業内にて実践
実施対象 2年生3クラス(計106名)
実施形態 PC一人1台でのコンピュータ利用学習
1. ,2. 一斉授業内での個人学習
IT環境 1.ノート型 PC36台
2.ノート型 PC用無線LANカード36枚
3. USB学習帳(一人1個)
教材内容 1.問題演習用教材
・平行線と角
・三角形の内角と外角
2.前回学習内容確認用教材
・合同な図形の性質
3.シミュレーション教材
(条件を選択しながら三角形をコンピュータで自動作図し、三角形の合同条件を考える)
実施風景 1.一斉授業形式での問題演習と個別指導
2.普通教室の中での eラーニング活用


Table 6-1 実践授業の実施内容 【続き】












実施内容 数学(1年生)
1.普通教室での一斉授業形式による、コンピュータ利用グループ演習
2.普通教室での一斉授業形式による、個別学習支援を目的としたコンピュータ利用個人学習
実施期間 1.2003年11月19、20日(計2時限)
2.2003年11月27日(1時限)
実施対象 1年生1クラス(計20名)
実施形態 PC一人一台でのコンピュータ利用学習
1.一斉授業内でのグループ学習
2.一斉授業内での個人学習
IT環境 1.ノート型PC20台
2.ノート型PC用無線LANカード20枚
3.無線LAN構築用キット 1式
4.USB学習帳(一人1個)
教材内容 1.グループ学習用教材
  ・ 二次関数の最大、最小の解法学習用問題
2.個人学習用教材
  ・ 二次不等式の解法整理用演習問題
実施風景 1.一斉授業形式での問題演習と個別指導


Table 6-1 実践授業の実施内容 【続き】









実施内容 数学(3年生)
1.普通教室での一斉授業形式による、個別学習支援を目的としたコンピュータ利用個人学習
2.授業欠席者を対象とした、普通教室での一斉補習授業の中での、個別学習支援を目的としたコンピュータ利用個人学習
実施期間 1.2003年11月18日〜28日(計12時限)
2.2003年12月4日(放課後1時限)
実施対象 3年生文系6グループ(計137名)
実施形態 1.PC一人一台でのコンピュータ利用学習
2.一斉授業内での個人学習
3.一斉補習授業内での個人学習
IT環境 1.ノート型PC23台
2.ノート型PC用無線LANカード23枚
3.無線LAN構築用キット 1式
4.USB学習帳(一人一個)
*計23個のUSB学習帳を共用して使用
教材内容 1.一斉授業時個人学習用教材
  ・確率、順列、組み合わせ演習問題
2.一斉補習授業時個人学習用教材
  ・一斉授業時個人学習用教材と同じ
実施風景 1.一斉授業形式での問題演習と個別指導


6.2 実践授業の成果

 今回の調査研究では、小・中・高等学校の異なる学校種でのユビキタス学習環境の活用方法について検討を行い、実践授業にて有効性を検証した。下表に結果を示す。

Table 6-2 実践授業の成果(有効性)














実践授業のねらいと IT活用方法
  • 朝の計算練習、算数授業、放課後学習、家庭学習といった様々な学習活動シーンの中で、 ITを日常的に活用していく上での課題を抽出する。
  • 算数への興味、関心を高める。
  • 算数嫌いの子ども達の学習意欲の向上を図る。
実践授業の成果と IT活用の有効性
  • USB学習帳に演習問題を中心としたコンテンツを格納することにより、学校及び家庭での様々な学習活動シーンの中で、活用することができた。
  • 子ども達は USB学習帳をペンダントのようにぶらさげて学校生活を送っており、ライフスタイル面も含め、IT活用の日常化の可能性が示唆された。
  • 一斉授業時に、 USB教務手帳を使用して子ども達の学習状況を確認することにより、個別指導、グループ単位での指導、クラス全体への指導等、学習状況に応じた効果的な学習指導を実施することが可能と思われる。
  • 楽しく、主体的に学習できた。
  • キー操作も、 3年生の子ども達でもきちんとできた。
  • 手軽さが子ども達にはよかった。
IT活用における
課題
  • 実践授業開始直後、子ども達が予想外の機器の使用をし( USB学習帳を正常終了する前に、PCより脱着してしまう)、データが正常に保存できないケースが発生した。
  • USB学習帳の使用方法をきちんと指導しておくとともに、小学校では使用上でのトラブル等を最小限に留めるための運用面での工夫も必要である。
  • 家庭学習時に、各家庭が所有している特定機種においてトラブルが発生した。


Table 6.2 実践授業の成果(有効性) 【続き】










実践授業のねらいと IT活用方法
  • 普通教室での一斉授業の中で、板書による一斉指導と、 ITを活用した個別学習をブレンディングした形式での授業を日常化していく上での課題抽出
実践授業の成果と IT活用の有効性
  • USB学習帳に、板書による一斉指導内容の確認及び整理用教材を中心としたコンテンツを格納することにより、普通教室での一斉授業の中で、板書による一斉指導と個別学習支援を目的としたコンピュータ個人学習を連携した授業を実践することが可能であった。
  • ユビキタス学習環境により、コンピュータを利用した授業経験が少ない教師でも、コンピュータ教室ではなく普通教室で IT活用した授業を実践していくことが可能ではないかと思われる。
  • 数学への興味、関心が高まった。
IT活用における
課題
  • 普通教室で一人一台ノート型 PC環境を準備し授業実践を行うにあたり、大容量バッテリは必須である。
  • 教科書やノート等への書き込みによる学習も想定し、ノート型 PCを一時格納するスペース確保を工夫する必要がある。
  • ノート型 PC保管場所の制約から、ノート型PCを授業時にその都度コンピュータ教室から普通教室に移動する形式で実施した。この点が大変であった。
  • 今回の USB学習帳では問題解答途中にメモ等を記載する機能がないため、コンピュータ利用した問題演習時に計算用紙を配布する必要があった。
  • タブレット PCを活用して、問題解答途中をメモ書きしながら学習できる環境が有効ではないか。
  • 家庭に持ち帰らせて学習させることが有効ではないか。


Table 6.2 実践授業の成果(有効性) 【続き】












実践授業のねらいと IT活用方法
  • コンピュータを利用した個人学習用及びグループ学習用環境を用意し、個人及びグループによる主体的な学習活動を支援する授業を実践する上での課題抽出
実践授業の成果と IT活用の有効性
  • 一人一個の USB学習帳を用意することにより、個人及びグループにより主体的に学習する姿勢が見られ、苦手な数学も楽しく学習できたという子ども達の評価も得られた。
IT活用における
課題
  • コンピュータ利用学習を進める上で、難易度や解説の充実といったコンテンツの質と出題数などの量の両面での検討及び改善が重要である。教師自身によりコンテンツを編集、修正、追加できる機能が必須である。
  • 子ども達がコンピュータを利用して主体的に学習活動を進めていく上で、学習履歴を確認しながら、自分で学習計画を立案する機能も今後必要になると思われる。


Table 6.2 実践授業の成果(有効性) 【続き】









実践授業のねらいと IT活用方法
  • 複数クラスの子ども達を対象とした、コンピュータ利用個人学習による個別学習支援を、一人の教師が普通教室で一斉授業形式で実践する上での課題抽出
実践授業の成果と IT活用の有効性
  • 1クラス分(23名)のUSB学習帳を複数クラス(計137名)で共用利用できるような機能をUSB学習帳に付加することにより学習者情報をデータ管理する手間なく、普通教室内でコンピュータ利用した個別学習支援を実践することが可能であった。
  • 一斉授業時に、 USB教務手帳を使用して子ども達の学習状況を確認することにより、個別指導、グループ単位での指導、クラス全体への指導等学習状況に応じた効果的な学習指導を実施することが可能と思われる。
  • USB学習帳の活用は、発展学習のための補習学習および理解度を高めるための補充学習において有効ではないかと思われる。
  • USB学習帳を家庭学習用宿題ノートとして学習管理する活用例も考えられる。
  • 他教科での活用では、英語や社会等が考えられる。
IT活用における
課題
  • 普通教室で一人一台ノート型 PC環境を準備し授業実践を行うにあたり、大容量バッテリは必須である。
  • 一人 1台のノート型PC環境による授業準備作業として、ノート型PCの充電環境の準備も検討しなければならない。
  • USB学習帳内に保存される学習履歴をプライバシー保護の点から、個人単位で暗号化して保存するとともに、そのデータを参照できる必要がある。


6.3 学習形態別の有効性

 前項の実践授業の成果から、学習形態別(一斉学習、習熟度別学習、個人学習)にユビキタス学習システムの有効性や教育的効果について整理する。


6.3.1 一斉学習


6.3.2 習熟度別学習


6.3.3 個人学習



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