本節では、試作する教材の要件について検討を行った結果について述べる。 要件調査にあたっては、手書き入力に関する専門的技術をもつ富士通研究所の研究員、実践授業を行う三木市緑が丘東小学校の教員、教材開発や授業設計に関する指導助言を行う立場から三木市立教育センターの指導主事、教育工学を専門とする大学教員、実践環境の手配や構築を担当する富士通株式会社のSEらが協力して進めた。
具体的な検討手順として、実証実験の期間(2学期)や対象学年(5年生)での授業を前提に、教材内容の検討を行った。算数の計算問題や漢字の書き取り、見写(書き方)、地図への書き込み、絵画デザインなどの多くの内容を検討した。
これらの中から、開発期間や技術的な実現性も考慮して、今回の実践授業で利用する教材を決定した。対象教科としては、学習過程の中で「手書き」の比重が高く、反復学習が必要な、算数と国語を対象とすることにした。教材試作にあたっては
1-2の目的・狙い、であげた以下の5項目の機能目標の達成を目指した。
なお、教材検討にあたっては、児童ひとりが一台ずつタブレット PCを使用する環境を前提に検討した。
決定した教材の内容と、上記5項目の機能目標を実現するために、動きのある WEB コンテンツの作成環境として広く普及している Macromedia
Flash MX を教材開発環境として採用することにした。これによって、機能目標 D(インターネットからの利用)が解決でき、機能目標E(現場教師によるカスタマイズ)にも寄与すると考えた。
また、機能目標 A(手書き解答)、 B(正しい書き方判定)、 C(自由書き込み)を Macromedia Flash 教材で実現するため、別途富士通研究所で開発した、学習用手書き認識部品、および自由手書き部品
( Flash MX のライブラリ )を使用した。
実際の教材を開発するには、上記手書き部品を直接利用する形では教材構成が複雑になり、開発効率が悪いだけでなく、機能目標E (現場教師による教材作成)の達成が困難になる。このため、筆算や漢字書き取り等、特定の意味をもった教材構成要素を、上記部品を組み合わせる形で、
複合部品 として試作した。試作した複合部品には、小数割り算部品、分数計算部品、漢字書き取り部品、などが含まれる。これらの複合部品や基本部品、アニメーションなどの各種Flashコンポーネントを組み合わせて、教材の形に構成したものを
教材テンプレート と呼ぶ。この教材テンプレートに実際のコンテンツをセットすることで手書き電子教材が実現できるような形にした。
図 5-1に手書き電子教材の構成を示す。教材テンプレートに個々のコンテンツをセットすることは現場教師にも可能であり、このような教材構成とすることにより、機能目標E(現場教師による教材作成)の要件を満たすことが可能となった。
教材を使用するにあたり児童の個人IDを入力するログイン画面での要件としては、
を結論とした。
また、パスワードで保護する内容はほとんどないこと、パスワードを忘れる児童がいることを考えて、児童はパスワード設定なしでログインすることとした。
児童が学習した状況を確認する学習記録参照画面での要件として、
を抽出した。
また、児童が自分自身の学習記録を参照するためには、児童のログイン時にパスワード設定をかけて、自分自身の学習記録だけを参照できるようにすることが必要となる。
一斉授業で使用する教材としては、これまでノートや教師が用意した学習プリントの代わりになるもの(自由ノート教材)と漢字教材、算数教材の3種類について要件の検討を行った。
自由ノート教材の要件としては、
を抽出した。
また、一斉授業で使用する漢字教材については、以下を要件として抽出した。
一斉授業で使用する算数教材については、以下を要件として抽出した。
自主学習で使用する教材としては、漢字教材、算数教材の2種類について要件の検討を行った。
自主学習で使用する漢字教材と算数教材については、一斉授業で使用する教材の要件に加えて以下の要件が必要であると考えた。
本節では、サーバソフトの要件について検討を行った結果について述べる。
認識・評価サーバは、主として手書きされた解答を自動採点する機能を実現するものである。上述した教材を実現するために認識・評価サーバが満たすべき要件は以下である。
学習記録サーバは、主として児童が学習した結果を記録するためのサーバである。上述した教材を実現するために学習記録サーバが満たすべき要件は以下である。
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