6.実践授業等の実施内容




6.1 実践授業のIT環境(活用したハードウェア、ソフトウェア、コンテンツ等)

 本プロジェクトでは以下の機器・ソフトウェアを活用してきた。

名称 数量 主な仕様等 利用目的
タブレット PC
FMV-STYLISTICS TB93/B
32 台 (*1) CPU: 超低電圧モバイル Pentium III-933MHz
mem: 256MB
HDD: 40GB
OS: Microsoft Windows XP Tablet PC Edition
児童用クライアント
教材試作
教材サーバ
PRIMERGY C150E
1 台 CPU: Celeron 2.0GHz
mem: 256MB
HDD: 80GB
OS: Microsoft Windows 2000 Server
教材データ・プログラムの格納
学習記録の管理
Macromedia Flash MX 3 本 Flash コンテンツの開発 教材試作
教科書体フォント 35 本 (*2) - 教材実行時の表示文字の字形
電子黒板・液晶プロジェクタ 1 セット - 児童の教材等の提示・発表
収納庫 3 本 1 本に 12 台のタブレット PC を収納可能 タブレット PC の保管・充電

*1: 児童用 31 台、教師用 1 台。
*2: 教材開発 PC 用 3 本を含む。

 プロジェクタを接続した教師用タブレット PC と児童用のタブレット PC31 台を図3のような構成でネットワークで接続し, PC サーバに格納した手書き電子教材を使った実践授業を実施した。児童用タブレット PC は児童ひとりに一台を割り当て、座席は4人が一組のグループ形式での配置とした。児童用タブレット PC は 100BASE-TX の有線 LAN で接続し、 AC 電源は使用せず内蔵バッテリでの運用とした。
  なお、本実験では、開発した手書き教材に加えて、児童のタブレット PC の画面を教師用のプロジェクタに投影するためにパソコン画面転送ソフトを使用した。

図6−1.一斉授業での機器構成

 家庭へのタブレット PC 持ち帰りによる家庭学習実験のためにスタンドアロン環境で動作する手書き教材を開発した。学習履歴に関してはスタンドアロン版の学習履歴サーバと一斉授業環境での教材サーバ用の学習履歴サーバが通信して学習履歴の同期を実現することにした。また、家庭持ち帰りのためにタブレット PC を家庭に持ち帰るための手提げバックを準備した。


6.2 実践授業の内容

 実践授業は、兵庫県三木市立緑が丘東小学校において、下記のように60時間(予定を含む)実施した。
  最初に、総合的な学習の時間を利用して、タブレット PC に慣れるための練習を行った。この段階では、文字を書いたり数字を書いたりして紙に鉛筆で書くのとは違う感触と筆圧に慣れることを目指した。児童は,指導者の不安などなかったようにすぐに慣れて,自由に使いこなし始めた。タブレット PC 上では,文字を丁寧に書かないと正確に認識しない為,副次的に文字を丁寧に書くようになる効果も生まれた。

日時 クラス 教科 公開
10/27 5 年 3 組 総合 タブレット PC の練習  
  5 年 2 組 総合 タブレット PC の練習  
  5 年 1 組 総合 タブレット PC の練習  
  たんぽぽ学級 生活 書いてみよう  
10/28 5 年 3 組 総合 タブレット PC の練習  
  5 年 2 組 総合 タブレット PC の練習  
  5 年 3 組 総合 タブレット PC の練習  
10/29 5 年 3 組 国語 タブレット PC の練習  
  5 年 2 組 国語 タブレット PC の練習  
  5 年 1 組 国語 タブレット PC の練習  
10/30 たんぽぽ学級 国語 漢字の練習  
11/7 たんぽぽ学級 国語 漢字の練習  
11/10 たんぽぽ学級 算数 数えてみよう  
11/12 5 年 3 組 算数(小数のわり算)  
  5 年 2 組 国語(漢字の練習)  
  5 年 1 組 国語(漢字の練習)  
11/13 5 年 3 組 算数(小数のわり算)  
  5 年 2 組 国語(漢字の練習)  
11/14 5 年 3 組 算数(小数のわり算)  
  たんぽぽ学級 生活 作って遊ぼう  
  5 年 2 組 国語(漢字の練習)  
  5 年 1 組 国語(漢字の練習)  
11/17 5 年 3 組 算数(小数のわり算)  
  5 年 1 組 国語(漢字の練習)  
11/19 たんぽぽ学級 生活 作って遊ぼう  
11/19 5 年 3 組 国語 漢字学習  
  5 年 2 組 算数(小数のわり算)  
11/20 5 年 3 組 算数(小数のわり算)  
11/21 たんぽぽ学級 生活 作って遊ぼう  
11/25 5 年 3 組 算数(小数のわり算)  
  5 年 2 組 算数(分数のたし算)  
  たんぽぽ学級 国語 文を作ろう  
11/26 5 年 2 組 算数(分数のたし算)  
  5 年 2 組 算数(分数のひき算)  
11/27 たんぽぽ学級 国語 文を作ろう  
11/28 5 年 3 組 算数(小数のわり算)  
12/1 5 年 3 組 算数(分数のたし算)  
12/1 たんぽぽ学級 生活(秋を楽しもう)  
12/2 5 年 3 組 算数(分数のひき算)
  たんぽぽ 生活(秋を楽しもう)
12/5 たんぽぽ学級 生活  ( 秋を楽しもう )  
12/10 5 年 3 組 算数(図形の面積)  
  5 年 2 組 算数(図形の面積)  
12/11 たんぽぽ学級 生活 (秋を楽しもう)
  5 年 3 組 算数(図形の面積)
12/15 たんぽぽ学級 国語 文を作ろう  
12/18 5 年 3 組 総合 アニマシオン大会  
12/19 5 年 3 組 国語  2 学期の漢字の復習  
  5 年 2 組 国語  2 学期の漢字の復習  
  5 年 1 組 国語  2 学期の漢字の復習  
2/6 5 年 3 組 国語 漢字練習  
  5 年 2 組 算数 小数のわり算の復習  
2/9 5 年 3 組 国語 漢字の読み方と使い方 参観日
2/10 5 年 3 組 国語 漢字練習  
2/16 5 年 3 組 国語と算数 宿題チェックテスト  
2/16 5 年 2 組 算数 分数の計算の復習  
2/23 5 年 2 組 国語と算数 宿題チェックテスト  
2/23 5 年 1 組 算数 小数のわり算の復習  
2/27 5 年 1 組 国語と算数 宿題チェックテスト  

 以下では、代表的な実践授業の内容を説明する。


6.2.1 実践授業の内容(12/2 の公開授業)

(1)実施日  2003 年 12 月 2 日

(2)学年(人数) 5年生(31名)

(3)単元名 分数のひき算

(4)本時の目標

同分母分数の減法の仕方を考え、その計算ができる。

(5)準備物 児童用タブレット PC ( 31 台)、計算のびのびカード、教師用タブレット PC (1台)、プロジェクタ、電子黒板、分数カード、牛乳パック

図6−2. 自由ノートへの記入


図6−3. 自由ノートを使った説明

(6)利用した手書き入力電子教材  100 マス計算、自由ノート(お助けマス、お助けテープ)、分数の減法の練習問題。

(7)展開(学習活動のみ)

(ア)タブレット PC の準備をする。

    1. 電源を入れる。
    2. 教材を起動し、ログインする。
    3. メニューを出す。

(イ)タブレット PC で 100 マス計算をする。

    1. 100 マス計算の引き算をする。
    2. 採点結果を各自の計算のびのびカードに記入する。

(ウ)前時のことを思い出し、課題をつかむ。

    1. 今自分が何リットルのお茶をもっているか確認する。
    2. ゲームの説明を聞く。(前時のつづき)
    3. カードを引く。(児童別に異なる計算式の組み合わせ)

(エ)水筒のお茶の残りを考える。(図 6‐2)

    1. 立式を自由ノートに書く。
    2. マスまたはテープの図に考え方を自由に描く。

(オ)自分の考えをグループで話しあう。

    1. お互いの考えをタブレット PC で説明しあう。

(カ)考えを発表する。(図 6‐3)

    1. プロジェクタを使って説明する。
    2. いろいろな考え方を聞き、理解する。

    真分数―真分数の場合
    仮分数―真分数の場合
    1−真分数の場合

(キ)わかったことを発表し、まとめる。

( ク) 練習問題をする。

    1. タブレット PC で練習問題をす
    2. 各自答え合わせを行い、誤答箇所を直す。

図6−4. 分数練習教材


6.2.2 実践授業の内容(新出漢字の練習)

 実施日  2003 年 11 月 13 日

(1)学年(人数) 5年生(3 1 人)

(2)単元名 1秒が1年をこわす

(3)本時の目標

新出漢字の読み方と筆順を知り、正しく書いたり読んだりできるようにする。

(5)準備物  児童用タブレット PC (31台)・プロジェクタ

(6)利用した手書き入力電子教材 漢字の練習問題ステップ1・ステップ2

(7)展開(学習活動のみ)

(ア)タブレット PC の準備をする。

(イ)タブレット PC の漢字練習ステップ1を使って、新出漢字の練習をする。

(ウ)特に気をつけなければいけない漢字の注意点を聞く。

(エ)タブレット PC の漢字練習ステップ2を使って、新出漢字の練習をする。

    1. ステップ2を書く。
    2. 各自答え合わせを行い、誤答箇所を直す。わからないところは、?マークを押して、正しい筆順を見ながら書き直す。


6.2.3 実践授業の内容(小数のわり算の練習)

(1)実施日  11 月 13 日

(2)学年(人数)5年3組(31人)

(3)単元名 小数のわり算

(4)本時の目標

小数のわり算の筆算ができる。

(5)準備物 児童用タブレット PC ( 31 台)、教師用タブレット PC 、プロジェクタ、電子黒板

(6)利用した手書き入力電子教材 小数のわり算の計算練習

(7)展開(学習活動のみ)

(ア)タブレット PC の準備をする。

(イ)タブレット PC で 100 マス計算をする。

(ウ)小数の筆算のしかたのポイントを聞く。

(エ)小数の筆算をする。

    1. わからないところや困ったことがあれば、質問する。

(オ)小数でわる筆算のしかたを発表する。

    1. プロジェクタを使って説明する。
    2. 説明を聞き、理解する。

(カ)小数の筆算の計算練習をする。

      1. タブレット PC で練習問題をする。
      2. 各自答えあわせを行い、誤答箇所を直す。


6.3 家庭環境での実践(家庭・自主学習)

 タブレット PC を家庭へ持って帰っての実践検証を次のように行った。今回は,タブレット PC 本体の中に教材をインストールしておき,家庭でも単体で教材が動作するようにして実践を行った。本体を持って帰る時は,事前に学校で手提げバッグを用意しておき、それに入れて持ち運びをするようにした。


6.3.1 持ち帰り実践の概要

(1)実施方法

 次のように,一週間単位で連続して持って帰って実践を行った。基本的に毎日もって帰って,あくる日に学校に持ってくるようにした。これを 5 年の 3 クラスについて順次行った。ある程度連続して家庭で使用できるようにした方が家庭で使用する場合の効果や問題点が分かりやすいのではないかという判断でこのような形を採った。


(2)実施内容

 児童各自がタブレット PC を使用して行った課題は,次のようである。


(3)持ち帰り実践の効果

 持ち帰り実験のあと、 5 年生のまとめの漢字と小数の筆算のテストを実施した。この結果,定着率の向上が見られた。しかし,実践期間が短い為,今後もう少し長期にわたる実践検証を行っていく必要がある。


6.4 インターネット環境での実験

 e-Learning 環境での利用可能性を検討するために、教材および、認識評価サーバ、学習記録サーバをインターネットサーバ上におき、教材をインストールしていないタブレット PC による利用実験を行った。
  本実験は当初、児童の家庭学習にても実施予定であったが、

 このため、インターネット環境での実験では、児童ではなくプロジェクトメンバーが動作の確認とレスポンスの測定を行った。

 実験は,以下のような実施環境で行った.
  三木市立教育センターのサーバに教材ファイル、認識・評価サーバ、学習記録サーバを動作させ、インターネットに接続したタブレットPCには、教材起動コマンドだけをインストールして実行した。実験したインターネット環境は以下の通り。

    1. 富士通研究所の社内 LAN から Proxy を経由したアクセス
    2. PHS(B-mobile 128K) からのアクセス
    3. プロジェクトメンバー自宅 (ADSL 1.5M 基地局から 2Km 以内 )
図6−5.インターネット経由の教材使用環境


6.4.1 動作確認

 起動コマンドは、 Flash Player に三木市立教育センタのサーバ上の教材ログイン画面の URL を与えて起動するようにしたものである。 WEB ブラウザに URL を与えて教材を動作させることも可能ではあるが、 WEB ブラウザ経由の教材起動では

の理由により、 Flash Player に URL を与えて直接 Kick する方式とした。また、現状の Flash の制限により、認識・評価サーバと学習記録サーバは教材が登録されているサーバと同一ドメインであることが必要と分かった。
  動作確認のため、 12月下旬に富士通研究所の社内 LAN から Proxy 経由で三木市立教育センターのサーバにアクセスし動作実験を行った。当初の実験では、インターネット経由で教材の一連の動作は確認されたものの、教材によって画面表示に時間がかかり過ぎる問題が検出された。原因を調査した所、各教材ファイルに不要なモジュール(フォント)が組み込まれていて教材ファイルが肥大化していたこが原因と判明し、不要なモジュールの削除を実施した。
  上記対応の結果、高速の社内 LAN 環境 (100M)では Proxy 経由で三木市立教育センターのサーバにアクセスし問題なく動作することを確認した。



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