7.プロジェクトの評価について




7.1 評価の方法について

 本プロジェクトの目標がどの程度達成できたかをどのように評価するかを検討するにあたり、評価対象・評価の観点と評価方法(児童・先生等へのアンケート・ヒアリング)・評価事項を『評価項目検討ワークシート』を元に検討・分析し、評価のために以下のような活動を行った。

    1. 公開授業見学者向けアンケートの作成・実施
    2. 教師向けアンケートの作成・実施
    3. 児童向けアンケートの作成・実施
    4. 保護者向けアンケートの作成・実施
    5. 教材作成者向けアンケートの作成・実施

 アンケート結果については 7.3 を参照。


7.2 評価の結果

 ここでは実践の経過やアンケート結果等から、本プロジェクト活動の有効性に関する評価結果をいくつかの観点に整理して述べる。

    1. 電子教材
観点 評価結果
新規性
  • 公開授業見学者・教師に対するアンケート結果において、既存の教材・教具に比較してよい、または指導しやすいという点で高い評価が出ている。
  • これは「手書きによる筆順指導」「手書きによる筆算の指導」という従来のドリル教材(紙・電子媒体を問わず)にはあまり見られない機能を、自然な形で実現したことが基礎にあると考えられる。
  • 実際、児童向けアンケートのでも「書き順」評価・助言に対するポジティブな意見が数多く見られる。
機能及び操作性
  • すべてのアンケート結果において、児童の操作の容易性に関して非常に高い評価が出ている。
  • 「100マス計算」教材のように、毎時間の授業の最初に(あたりまえのように)使われたものもあり、これを裏付けている。
  • 児童が独自の使い方を見出す場面(「自由ノート」教材で定規で線を引くなど)もあったが、これは機能の問題ではなく、タブレットPC+手書き電子教材が日常の教具(ノートやプリント)に近いものとして受け入れられていることを意味するものと考えられる。
  • 機能的には課題がいくつか残っている。特に文字の誤認識については(数は少ないものの)児童の学習意欲の低下・保護者の疑問に結びつく結果となっている。
学習環境別の有効性
  • 児童向けアンケートのコメントにあるように、個別学習(授業中・家庭学習を問わず)においては、回答後即時評価され、誤答の修正を行うことができる点が高く評価されている。
  • 一斉授業の中のグループ学習の場面においては、タブレット PC 上の「自由ノート」で表現された個人の考えを他のグループメンバーに見せて議論することが自然に行われており、公開授業参加者からの高い評価を得ている。
教材開発の容易性
  • 教材作成者向けアンケートの結果から、教材開発のための研修の必要性はあるものの、学校や教育センターの教職員による教材作成・修正が可能となっていることは実証されている。
  • 本プロジェクトの授業実践で必要とされる手書き電子教材の範囲については、教材テンプレートの利用等により容易に教材開発を行うことができるようになっている。
  • 課題としては、教材作成のフレームワークとして選択したマクロメディア Flash が必要であること、本プロジェクトでの実践の範囲を超えた学習に必要な手書き電子教材を作成しようとした場合に、マクロメディア Flash のスクリプト言語上で教育用手書き部品とのやり取りを記述する必要があり、容易とはいえないことが上げられる。

    1. 一斉授業
観点 評価結果
従来と比較しての指導の容易性
  • 公開授業見学者向けアンケートの結果において、指導のしやすさについては高評価を得ている。
  • 教師向けアンケートのコメントにもあるが、従来指導の難しかった筆順の指導が十分に可能であること、「 100 マス計算」をはじめとして児童の学習結果がすぐに評価されることなど、従来のドリル教材では対応しづらい学習内容に容易にかつ効果的に対応できている。
指導上の問題点
  • 公開授業見学者の観点では指導上それほどの問題点が指摘されなかった。
  • 学習記録の関係で実践環境ではネットワーク接続が必要となっており、それに起因するトラブルが特に授業開始の際に散見された。また、タブレット PC 特有のペン操作によるトラブルもあった。この点は教師向けアンケートでも指摘されている。
  • 教材の各タブレット PC への配布や画面転送等の機能が必要となってくるが、そのためのシステム機能を教師が理解し、操作できるようになる必要がある。この点も教師向けアンケートのコメントに現れている。
児童の興味・理解度の変化
  • 児童向けアンケートでは、新しい物に触れる興味を差し引いても、「漢字ドリル」や「 100 マス計算」に楽しみながら取り組んでいたことがうかがえる。
  • この点については、教師向けアンケート・保護者向けアンケートの結果でも高く評価されている。
  • 理解度に関しては、児童の感想では、「書き順が直ってきた」などプラスに働いているように見える。また、実践授業の期間前後に行った学習調査結果によれば、計算問題や漢字の書き取り問題の正解率の上昇が確認されている。

    1. 自主学習/家庭学習
観点 評価結果
学習の継続性
  • 児童向けおよび保護者向けのアンケート結果において、児童が継続的にタブレット PC と手書き電子教材を使った学習を行いたいという評価がはっきりと現れている。必要な教材が今後も提供されるという前提で、継続的な学習に結びつくことが期待できる。
自主学習/家庭学習での問題点
  • 保護者向けアンケートの意見で、長期利用による視力低下への心配を気にしている点が目立っている。
  • 家庭に持ち帰って使うことそのものについて、ネガティブな意見も散見されている。
家庭学習での実施環境のパフォーマンス
  • 実践するうえではクラス内の全児童に利用させることが必要となり、家庭からのインターネット接続環境が整わず、各タブレット PC に教材をインストールし単独実行する運用とした。十分な性能が出ていたと考えられる。
  • インターネット経由での利用については、速度面に着目して実験した。当初十分な性能を出せずにいたが、教材ファイルのサイズの見直し等で改善し、利用上問題のない性能が出せることを確認した。
家庭学習での実施環境設定の容易性
  • 上記の通り、家庭学習の実験は教材の単独実行が可能な形で実施しており、家庭での教材利用についてはあまり問題はなかったと考えられる。(保護者向けアンケートでも同様)
  • ただ、単独実行可能とするために各タブレット PC に教材ファイルを配布する必要があり、それが教師の負担となる可能性がある。
  • インターネットを通じた利用の場合は、教師の負担は少なくなると思われるが、家庭でタブレット PC をインターネット接続することが必要となる点が問題になる可能性が高い。


7.3 アンケート結果(抜粋)

 アンケート調査は公開授業見学者・教師・児童・保護者・教材作成者に対して行われた。集計結果とコメントからの抜粋を以下に示す。


7.3.1 公開授業見学者向けアンケート(回答数: 24)

■集計結果

【授業中の児童に関して】

【先生の指導に関して】

【使用していた教材について】

【その他】

■コメント抜粋



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