7.プロジェクトの評価について




7.4 プロジェクト成果の有効性について(教育効果と有効性)


7.4.1 学習到達度調査より

 タブレット PC や手書き電子教材に関するアンケート評価に加えて、タブレット PC を使用した5年生の児童に対して学習到達度調査を行い、国語(漢字)と算数(計算)問題に対する理解度、関心・意欲・態度、自信及び国語及び算数学習で好きなこととタブレット PC を使用して学習したこととの相関関係等を探ることにした。
  今回は、タブレット PC を学習に回数が多い( 22 回)グループA( 33 名)と小ない( 7 回)グループB( 35 名)で比較してみた。調査対象になった母集団の数が小ない為、統計的には明確に判断できないがある程度傾向を推測するものとした。

(1) 国語(漢字)の問題 (表の単位はいずれも%)


ア 漢字に対する関心・意欲・態度

 タブレット PC を使用することにより漢字学習により意欲的に取り組むようになってきたことが推測できる。
(表 8-3 、 8-4 )

表8-3 漢字学習に対する姿勢(グループA)
  10 月 1 月
新しい漢字はきちんと覚えるまで、くりかえし練習するようにしている。 48.4 60.0 11.6

表8-4 漢字学習に対する姿勢(グループB)
  10 月 1 月
新しい漢字はきちんと覚えるまで、くりかえし練習するようにしている。 46.7 39.3
7.4


イ 漢字の問題についての自信

 筆順の問題及び漢字の書きについて「自信がある」と回答した児童の割合が増加している。タブレット PC を用いて漢字学習を繰り返し行ったことが児童にとって充実感をもたらし漢字に対する自信につながってきたと推測される。(表 8-5 、 8-6 )

表8-5 各漢字の筆順及び書きに対する自信(グループA)
  10 月 1 月
筆順「破」 58.1 71.0 12.9
筆順「発」 71.0 83.9 12.9
漢字の書き「周囲」 74.2 83.9 9.7
漢字の書き「準備」 71.0 87.1 16.1

表8-6 各漢字の筆順及び書きに対する自信(グループB)
  10 月 1 月
筆順「破」 53.3 66.7 13.4
筆順「発」 66.7 66.7 0
漢字の書き「周囲」 83.3 86.7 3.4
漢字の書き「準備」 66.7 70.0 3.3


ウ 漢字学習で気をつけていること

 漢字の筆順に気をつけている児童の割合が増加している。筆順の学習は、タブレット PC を使用する目的及び効果として重視していた一つであり、仮説どおりの効果があがりつつあるのではないかと推測できる。(表 8-7 、 8-8 )

表8-7 漢字学習に関して気をつけていること(グループA)
  10 月 1 月
漢字の筆順 83.9 87.1 3.2

表8-8 漢字学習に関して気をつけていること(グループB)
  10 月 1 月
漢字の筆順 83.3 63.3
20.0


(2) 算数の問題(計算)の問題 (表の単位はいずれも%)


ア 小数のかけ算の問題の正解率

 タブレット PC の使用が、かけ算及び小数に対する計算力の向上に影響しているのではないかと推測できる。(表 8-9 、 8-10 )

 

表 8-9  小数のかけ算に対する正解率(グループA)
  10 月 1 月
1.7 × 3.2 83.9 90.3 6.4
3.5 × 5.8 83.9 93.5 9.6

表 8-10  小数のかけ算に対する正解率(グループB)
  10 月 1 月
1.7 × 3.2 86.7 83.3 − 3.4
3.5 × 5.8 86.7 63.3 − 23.4


イ 算数の問題についての自信

 小数のかけ算の問題について、自信がある児童の割合が上昇している。タブレット PC 使用による学習が自信に反映していることが推測できる。(表 8-11,8-12 )

表 8-11  小数のかけ算に対する自信(グループA)
  10 月 1 月
1.7 × 3.2 83.9 90.3 6.4
3.5 × 5.8 83.9 93.5 9.6

表8-12 小数のかけ算に対する自信(グループB)
  10 月 1 月
1.7 × 3.2 83.3 86.7 3.4
3.5 × 5.8 60.0 63.3 3.3


ウ 算数学習で好きなこと

 小数の問題について、「好き」・「どちらかといえば好き」な児童の割合が上昇している。タブレット PC を用いて小数の計算練習をすることにより小数に対する抵抗感が減り好感度が上昇したものと推測できる。(表 8-13 、 8-14 )

表 8-13  小数問題に対する好感度(グループA)
  10 月 1 月
小数をもちいて,様々な数を表す問題 51.6 67.7 16.1

表 8-14  小数問題に対する好感度(グループB)
  10 月 1 月
小数をもちいて,様々な数を表す問題 70.0 73.3 3.3


エ 算数学習でおもしろさを感じるところ

 計算問題ついて、おもしろいと感じている児童の割合が上昇している。タブレット PC を使った計算練習が計算問題に対する興味関心度を高めたものと推測できる。(表 8-15 、 8-16 )

 

表 8-15  計算問題に対する好感度(グループA)
  10 月 1 月
計算問題(+,−,×,÷の問題) 51.6 67.7 16.1

表 8-16  計算問題に対する好感度(グループB)
  10 月 1 月
計算問題(+,−,×,÷の問題) 70.0 73.3 3.3


オ タブレット PC の使用と学習到達度との関係

 タブレット PC を使用した学習に対して好感を持っている児童は、学習到達度も高い傾向を示した。

表8-17 タブレットPCを使用した学習に対する好感度と国語・算数の学習到達度
  学習到達度
国語 算数
国語でのタブレットPC学習 好き 80.5 64.8
嫌い 78.0 61.4
算数でのタブレットPC学習 好き 79.9 65.4
嫌い 77.2 52.2


7.4.2 タブレットPCの有効性

 調査結果や授業の様子を踏まえてタブレット PC を学習に使用することにより次のような効果及び有効性がいえる。


(1) 自由手書き機能による新しい授業スタイルの可能性

 自由にメモ書き等も記録することができるデジタルノートとしてタブレット PC を使用することによりプロジェクター等で PC の画面を直ぐに提示できるので自分の考えをすぐに全員の場へ発表することができる。自分の考えているイメージがそのまま表示しやすいのでお互いの意見交換がスムーズに進み論議も深まると思われる。


(2) 手書きによる解答、自動採点の有効性

 手書きした漢字や計算問題に対するリアルタイムな採点が可能になり児童の問題に取り組もうとする学習意欲を長時間高く保つことができる。調査結果からも意欲を維持しにくい漢字や計算の反復練習に対して好感度を維持している。


(3)筆順判定機能の有効性

 (2)と関連することであるが筆順の自動判定をすることができる為、自分で筆順も交えた漢字の学習を進めることができる。その結果、調査結果にあるように漢字学習に意欲的に取り組むようになったり、筆順に注意するようになっている。また、筆順判定機能を応用して軌跡の判定も行えるようになれば、他の教材での活用も幅広く考えることができる。



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