2.提案プロジェクトの概要




2.1 提案プロジェクトの全体像

 本プロジェクトで開発する「でじたるキッズミュージアム」( DKM )の全体構想は下図に示す通りである。

    1. オンライン上にテーマ別の DKM を構築する。本プロジェクトでは,各々の DKM がメンバーおよび協力校を対象とした閉じられた参加型の博物館である。メンバーおよび協力校の教師と児童生徒が随時参加し,静止画や動画,文書など各種データを保存・閲覧することができる。
    2. 各 DKM に「展示室」を開室し,その内容に関連した学年,学級,グループの総合的な学習の成果を展示する。「展示室」は随時新しく増設可能なものとする。各テーマ別の DKM の管理・運用は,部屋の「管理人」が行う。本プロジェクトでは鳴門教育大学の大学生・院生が行う。完成した作品は「展示室」にて Web 上で公開する。
    3. 各「展示室」には適宜必要な数の「準備室」を併設する。「準備室」では,地域や校種を越えて子どもたちが情報交換や共同学習を行うことができる。 その際,ペン書きのよさを生かしながら相互にリアルタイムにやりとりするためのタブレットを利用したコラボレーションツールを開発する。
    4. 通常,博物館の出品・展示においては,その内容の質や表現技法の高さが要求される。 DKM には,そのテーマに関する専門家およびデザインの専門家が「学芸員」として,参画し,内容や表現に関するオンライン指導を行なう。 子どもたちから提出された作品上に赤ペンを入れ,修正指導していくためのネットワーク上のタブレットツールが有効になる。
    5. 各 DKM の「管理人」が学校と校種を越えた子ども同士の共同学習を企画・運営・支援する。また,「管理人」は「学芸員」との連絡・調整を行う。
    6. 教育実践がどのように行われたのか,教師はどのような支援・指導を行ったのか,実践に関する詳細な情報(指導案や教材,ワークシートなど)については,「教師ポートフォリオ」として各学校の学習成果物(展示物)にリンクし公開する。
    7. 「展示室」の内容に関するサイトとリンクをはり,より専門的な情報の検索ができるようにする。


2.2 提案プロジェクトの汎用性

 本システムは主に小中高等学校の総合的な学習の成果の記録・保存・発表の場,交流と共同学習の場を拡大するものである。これまで学校単位あるいは単年度にとどまっていた総合的な学習の成果の発信を,ネットワーク上に博物館を構築することにより,学校単位であっても複数年にわたって継続的・発展的に,さらに学校や校種,地域を越えての共同学習,発信を可能にする。本システムの利用者の目的および範囲に応じて,個人,学校,地域,全国,世界など,様々なレベルでの活用が可能である。
  また,教員養成系の大学・学部で導入し学校現場と連携することで,学校支援のみならず,総合的な学習に関する教育実践力向上の場,日常的継続的な「教育実習」の場として活用することができる。
  さらに,将来的には,既存の博物館が本システムを用いて学校現場と連携することで博物館への理解・活用の機会を拡大するとともに,子どもたちが自らの学習成果を体系的な知の中へと組み込んでいく作業を通して「博物学」のもつダイナミックな世界へ一歩を踏み出すことの魅力を体験することになる。


2.3 有効性の検証

  1. 本プロジェクトでは,開発するシステムを活用して4つの博物館( DKM )を同時に開設し,開設のタイプによる有効性と課題,手だてを明らかにする。このことにより,本システムの多面的な活用形態の可能性を明らかにする。
  2. 本プロジェクトに参加した教師および児童生徒に対する質問紙調査および面接調査,学習記録と学習成果の分析により,本システムを活用して校種間あるいは地域間で交流したり,タブレットツールで「学芸員」からの指導を受けたり, Web 上で表現したりする上での有効性と問題点を明らかにする。
  3. 「管理人」である鳴門教育大学の大学院生ならびに「学芸員」である学部生および専門家やデザイナーに対する質問紙調査および面接調査により本システムの有効性と推進していく上での問題と手だてなどについて明らかにする。
  4. また,本プロジェクトに余力があれば,本システムの個人利用形態の可能性を追究する。つまり,ある特定のテーマについて自主的に研究を進めている個人が同じテーマを追究する者と本システムを介してコラボレーションを図り,情報交換・共同研究を展開し,その成果を博物館開設という形で公開する。本システムは子どものためのものであるが大人による利用,個人による活用の可能性を同時に探る。



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