8.プロジェクトの成果と課題




 座談会という形態をとって,集まることのできるメンバーにより今回のプロジェクトの成果と課題について語った。

参加者

  村川:プロジェクトリーダー(鳴門教育大学教授)
  A,B,C:バーチャル学芸員(鳴門教育大学学部生)
  D,E,F,G:バーチャル管理人(鳴門教育大学大学院生)
  H,I  :システム開発者((株) JR 四国コミュニケーションウェア)
  J,K ,O :研究協力者
  L,M,N:授業実践者(各協力学校)

 

 


8.1 DKM(でじたるキッズミュージアム)の使用上のメリット・デメリット

(村川) DKMのプロジェクトも一段落つきました。ズバリDKMの使い勝手について,どのような点がよかったのか,また,どんな部分が問題だったのかについて,聞かせてください。
(A)パソコンを使うことで,子どもたちも興味を持って活動ができたと思いますし,我々学部生も,遠く離れている子どもたちと一緒に学習できたのがよかったと思っています。また,不便だったのは,大学院生のゼミ室までこないと書き込めないという点でしょうか。
(村川)それは,結局どういうことなのかな。
(F)大学として,一般の講義棟からはポートの関係でアクセスできないようになっているので,たとえば,家でも常にブロードバンド環境であれば,大丈夫ですね。
(A)ちょっと時間があるときに書き込みたいなっていうときに,わざわざゼミ室までこないといけないのが,困りました。
(村川)でもね,わざわざゼミ室にくることで,学部生同士が相談しながら,話し合うでしょ。それがまた意味があるんだね。まぁ,結果論ですが。
(B)リアルタイムで活発に活動できたことがとてもよかった。電話と違って,画像があることが,こちらも支援がしやすいし,問題点を見つけることにつながった。課題として見えてきたのは,実際にこのプロジェクトを現場でやろうとしたら,誰に意見をもらえばいいのか困ってしまうのではないかと思います。
(村川)本来は,子どもたちが取り組んでいる内容に関係する人を「バーチャル学芸員」として,お願いする。しかし,専門家でなくても,子どもたちが「よし」として取り組んでいる内容で,第三者的に関わってくれる人であれば,意味があると思います。
(C)使うのが,パソコンだったので,子どもたちも興味を持ってやっていたように思います。活発に活動ができるシステムだと思います。課題としては,教師側として,しっかりとこのプロジェクトをする意義をフォローする必要があるのではないかと思います。そうでないと,単なるPCいじりになってしまうかもしれませんね。
(村川)いいこと言うねえ。では,「バーチャル管理人」として,関わった院生の人に聞いてみましょう。
(D)支援,指導が容易にできること,それをみてすぐに評価もできる,これがよかったですね。子どもはそれを受けて,改善しあうことができる。友達同士高めあうツールでしたね。ただ,実施するにあたり,それぞれの学校の実施時期等の調整が大変で,連絡調整がうまくいかないと,適切な時期に適切な支援ができないこともありますね。
(村川)今回は,学部授業「総合演習」の中で使ったが,本来は,子どもたちとその内容に詳しい学芸員が行うということである。ただ,学校のメディア環境が難しいのが問題である。これらがクリアされたときは,さらに有効ないいツールといえるでしょう。
(E)総合が深く実践されていくと,教師だけの支援では難しくなってくる。遠隔で,いろんな人の支援がもらえる,出会えるということは,とてもいいですね。担任以外の大人と関われるのが有効だといえます。子どもたちは,出会いを求めていますよね。課題については,PCにたけた人がいるかどうかですね。コーディネートをする人がいるかいないかで決まりますね。

(村川)「教師は,出会いの仕掛け人」ということを私は常々言ってきました。 DKMはまさに,出会いを仕掛けるツールですね。
(F)総合学習では,特に協同的に学ぶということが重要ですよね。調べ学習は,独善的になりがちです。だから,問いただすことが必要です。できたものは,多くの他者に見られて初めて意味がある。それを作り上げていくということを経験できるのが評価できます。惜しむべくは,今回のプロジェクトでは,子どもたちにとっては,途中からの取り組みであったことです。最初から,こういうものがあるということがわかっておれば,もう少しダイナミックになっていたかもしれません。先が見えにくかったのが,今回の残念なところです。
(村川)しかし,はじめから博物館というゴールを決めておくことによる弊害もあるのではないでしょうか。
(G)選択肢の一つであっていいと思います。学年の一つのプロジェクトの中のある部分,博物館を作ることをめざすという感じですね。
(村川)博物館に展示するんだということが子どもたちにわかっておれば,資料収集や構成で,もう少しスムーズになるということもありますね。開発の立場から,Hさんどうですか。
(H)いくつかの学校で,実際に使っているところを見せてもらいましたが,まず驚かれるんですよね。リアルタイム感におどろき,そのうち楽しくなってくるようです。いくつか話が出ましたが,センターサーバーをこちら側( JR四国コミュニケーションウェア)で提供したのですが,ポート開放の問題で接続できないという問題がありましたね。今後,全ての学校がこれらを使って接続できる環境になっていくのかというのは,実は見えてないんです。そのため,システムとしては,通常開いているポートを使うようにしていくことが,このソフトウエアを広めていく方法だと感じました。ただ,その実現には,数年かかってしまうという問題もあります。
(村川)県内レベルであれば,OKだというところもありましたが,現状では,ある面クローズドな世界での運用にならざるを得ないですね。もっとネット環境がスムーズになれば,それこそ世界レベルでの運用ができるわけですね。

(H)あるところでは,学校のネットが自治体ネットにつながり,それらは住基ネットにつながっているから,ポート設定は変えられないということがありました。これでは,お手上げです。
(K)ハードに関わる問題がやはりありましたね。開発段階であったこともありますが,セッティングの苦労が相当必要であったので,軽やかに使えないものであったと思います。多岐にわたって多くの人が関わり,各学校の環境に合わせていく労力が必要でしたね。陰で支えていた院生や学部生,企業の取り組みの量が相当大きかったと思います。
(村川)ただ,これは,ある学級で総合学習を行っているときに,いろいろなGT(ゲスト・ティーチャー)に来てもらいたいと思うけれど,日常的に来られない人がいる。そういう人が時間を気にせず,家庭から接続できるという可能性がある。GTに継続的に支援してもらえるということです。


8.2 総合的な学習におけるDKMの有効性と課題

(村川)ちょうど今でましたが,総合学習を行っていく中で,こういったDKMの有効性がどこにあるのかについて,話してもらえればと思います。
(F)総合学習では,協同的な学びが有効だと思われます。また,ふり返りもそうです。協同的な学びでは,子どもたちのアンケートの中にもありますが,自分たちの地域に有効なメッセージを,地域外に伝えるときに,それらは有効なのかどうかがわからないんです。地域外には,そのメッセージが伝わらないというのは,実は見えてないんです。今回のように,学外の人と協同的に作り上げる状況になると,それらに気づいていきます。協同的に活動する中で,自分たちが学んできたことが,きちんと活かされたのかどうか,絶えず子どもの中で,語りが誘発されるのではないでしょうか。他者との出会いによって,振り返ることができていたと思います。
(村川)総合学習では,子どもたちがよくいろいろなことを調べますが,調べていくだけでは,何が大事なのかわからないし,人にどう伝わるとかそういうことは意識せず,そのまま終わる学級もあれば,パンフなどで発信することで初めてそれらに気づくということもありますね。今の話でいうと,これらを活動の途中段階で行う仕組みであるということですね。つまり,学習の最後にまとめや吟味,振り返りが行われるのではなくて,途中段階に形成的に行われていくのですね。まぁ,デメリットとしては,もっとじっくり考えた方がいいときでも,途中でアドバイスがたくさん入ってしまうことが考えられますかね。子ども自身がアドバイスに振り回されて,じっくり考えなくなってしまうのではないということですが,それについては,どうでしょうか。
(K)担任は,どの辺まで子どものふり返りやねらいをもっているのでしょうか。それについて「バーチャル学芸員」や「バーチャル管理人」は聞き取り調査をして,支援を行ったのでしょうか。
(村川)今回,ほとんどの学校が,総合できちんと活動ができている学校を選びました。課題設定をきちんとして,追求をして,まとめの段階でDKMを利用し始めました。流れは,担任がきちんと持っているので,DKMでは,その学びの成果をどう表現するか,などについて我々が協同的に関わっていきました。だから,表現物の構成や文章の見直しなどで第三者(DKM)が関わるようにしました。実際の関わりの中で,「バーチャル学芸員」はどうでしたか。君たちが一番悩んだのは,実はそこでしょう。
(C)はい,実際に支援する場面で,相手の先生が,どう考えているのかということをとても考えましたね。そして,どこまでしてくれるのだろうということも色々考えました。そうすると,こちらからはどこまで手をさしのべたらいいのかということについて悩みました。同じチーム内でも,人によってアドバイスの仕方が違うこともありましたね。詳しく具体的にアドバイスする人もいましたが,わたしは,あえて曖昧にアドバイスしました。そこは,私自身がまだ悩んでいるのでそれが課題といえますね。
(村川)実はその部分はDKMに限らず,GTが教師と一緒に支援するときに必ず起こる問題ですね。そうすると,事前にバーチャル学芸員と担任教師が打ち合わせる必要があるのではないかということも見えてきます。子どもの目標が何であり,それに向かっての支援を役割分担してどうするのかという情報が必要になってきますね。逆にいうと,今回のように離れているからこそ,それらがよく見えない。そのためにも,支援者だけが使う裏のボードのようなものがあればよかったのではないかということですね。
(B)私も支援のことは,問題であると思いました。先に動いていたチームを参考にして,すぐに答えを出さないという姿勢をとりました。しかし,担任の先生がどういう思いでやっているかについてわからないまま支援したので,やはり先に担任の意図を知っておくことが必要だと思いました。
(K)その点については,今回はどのくらい「バーチャル学芸員」に情報が伝えられていたのですか。
(G)今回はチームごとにバラバラでした。しかし,「バーチャル管理人」側が,大学院生であるが同時に現職の教師であるということもあり,それらを聞かずとも我々の方でわかる部分がずいぶんありました。学部生では,そのあたりの隔たりがどうしても生じます。現場を見て初めて謎解きができる部分があります。逆にいえば,そこが難しいと思ったということは,学部生のリアルな学びができているということになりますね。
(村川)しかし,支援者である「バーチャル学芸員」がその学校や子どもたちの前に行くことができないという状態で,どうするのかというのが,今回のDKMのポイントであると思います。そのため,先程述べたような担任教師と支援者との共通の連絡の場を作ることが必須となってきますね。
(K)私は先日,ロンドンの大英博物館に行って来ましたが,平日だったためか,子どもたちがたくさん博物館に訪れていました。しかも一般の大人が連れて行っています。その大人は,マニュアルを持っており,たとえば,この展示を見たら,子どもたちにこんな質問をしてくれと書いてあります。実は日本の学校に来るGTは,本当は困っているのだと聞きます。何を話してやればいいのか,どこまで助けてあげればいいのかなど,担任がGT自身に期待していることが何なのかについてよくわからず,困っていますね。これらのことを考えると,やはりGTに対する手だてが必要であるということが見えてきます。
(G)普通の授業では,GTが何をしゃべり,どんなことをしたのかというのは,ビデオでも撮らない限り残りません。しかし,DKMでは,それらの様子をふり返ることができますね。もっといえば,その支援内容の質を問うことができます。アドバイスをやりすぎたとか,そういう相談,議論ができますね。そして,複数のGTが関わっていますから,互いの支援がボード(「準備室」や「展示室」)上で見えるということです。これは,GTにとっても大変有効であるといえます。
(A)実際にアドバイスする上で「バーチャル管理人」から,ポイントを記した紙をいただきました。それを見ながら,支援の仕方について,学部生の中で話し合うことができました。
(村川)だからといって,例えば,三人が相談して一つのコメントを書くのではないよね。三人別々のコメントを書くけど,そのコメント自体をお互いに見合うことができるんだね。そんな中で,これは少し具体的に書きすぎだとかを議論ができるのがいいですね。気づきを促すための示唆的な支援がどのようなものなのかについて,議論できたことがよかったね。それに,だからといって子どもたちは全部受け入れることもなく,きちんと取捨選択していたところもあったね。
(E)子どもたちがバラバラに活動しているような総合学習の場合,書き直しや教師のチェックがなかなかできないことが多いけれど,多くの支援者が入ったことで,きちんとそれらを見て,洗練された内容ができあがっていったように思います。そして,子どもの変容をボード上の記述内容の変化から読みとることができるはずなのに,我々「バーチャル管理人」が本職は教師であるため,本来は担任教師がすべきことまでを,やりすぎてしまったのではないかなと反省しています。ですから,今後「バーチャル学芸員」が地域の人などの場合は,担任がもっとメインで関われるような仕組みである必要がありますね。
(D)こっちのチームは,赤ペン添削を最初一人ずつでやっていたのですが,徐々に相談しながら協同的に一つのコメントを考えるようになりましたね。また,子どもたち自身も他のボードでどんなアドバイスをもらっているかを見て,自分たちの書いている内容がこれではわからないので書き直そうということになったとも聞いています。常に成果物を最後に発信するのではなく,途中途中で発信するからこそ,そういう見直しが常に行われ,質の高いものになっていくのだと思います。課題としては,向こうの先生の単元のねらいが十分わからなかったことですね。担任の思いを「バーチャル学芸員」も「バーチャル管理人」ももっと知るべきでしょう。そういうことができなかったことが気になりました。

(村川)本来,「バーチャル管理人」は,そこで行われていることを熟知していることが前提ですよね。つまり,担任ですね。そうすると今いったようなズレはなくなるでしょう。まとめると,このDKMのいい面としては,「つどい,つくる,まなびあう」という部分です。大人が,「バーチャル学芸員」として入ることにより,他の「バーチャル学芸員」の支援がよく見えるということです。専門家はしゃべりがうまいとは限らないし,彼ら同士が学びあうことは少ないですよね。通常一人だけGTとして呼ぶことが多いし。しかし,DKMでは,アドバイスをどうやっているかを共有できるという部分に価値があるでしょうね。


8.3 子どもの変容

 さて,今度は,子どもの変容について見てみましょう。何か感じましたか。
(D)ある学級では,最初は男の子が遊んでいたが,自分たちのチームがやったことを展示室に載せなければならないということを意識したら,真剣になったという声をもらいました。実は,やんちゃ坊主ほど,関係性を求めているんだなぁといえますね。人とのインタラクションを求めている。知らない人だけど,通じ合えるということを体験しながら,コミュニケーションが行われたのかなと思いますね。子ども一人ひとりが責任ある仕事だと意識したということですね。

(G)明倫小学校の場合は,昔と今の写真を比較しようとしていた子どもがいたが,その意味が我々にはわからなかったんです。「バーチャル学芸員」が書き込んだことにより,彼らは再取材したそうです。そしてついでにたくさんのことを聞いてきたというのです。つまり,「バーチャル学芸員」が書き込んだコメントがなかったら,単なる単純な比較で終わっていたのに,このままの写真ではいけないんだということに気づき,内容を再構成するまでに至ったのだろうと思います。
(村川)パンフレットのようだと詳しく文字を書くこともできるが,博物館で考えたとき,限られているスペースでそれらを伝えるのは難しいですね。少ない情報でいかに伝えるか,これは,ものの本質をどのくらいわかったのかで決まるのだと思います。
(G)通常の発表では,責任があまり発生しませんよね。しかし,DKMのように常に外部に見てもらうことで,内容が伝わらなかったときに,どうしてなのか考えます。伝わらない原因は,見せ方が悪いのか,内容が本質に迫ってなかったからなのかのどちらかですよね。今回の例では,見せ方ではなく,内容が本質にせまっていなかったのだということに気づいたわけです。
(A)子どもたちは,DKMを通じて,情報を選んで整理して,発信するということを結果的に場数を踏んで経験できたのだと思います。
(C)第四小学校では,「バーチャル学芸員」が書き込んだものを見たとき,子どもたちの漏れてきた一言が印象に残っています。「まだこんなにもある」「まだ調べないといけないことがある」自分たちがこれでよかったと思っていたのに,まだあったという言葉です。これは,子どもの向上心が育ち始めたのかなと思いました。ただ,「もうむりや」と言う子どもたちもいたので,その子たちのやる気をどのようにつけるかというのが,現場の担任の役割なのかなとも思いました。


8.4 教員養成教育におけるDKMの成果と課題

(村川)今回,学部の「総合演習」に絡ませてもらったが,DKMでの学部生の学校現場への関わりは,教育実習より長い期間のものでした。子どもたちと関われることはもちろん,同時にメディア環境を実際の現場で触れ,活用していくということを体験してもらいました。そのあたりどうでしたか。
(A)「総合演習」の発表が先日ありました。自分たちが,どうやってプレゼンをすればいいかということの勉強になりました。何をどうやって伝えたらいいのかということをしっかり考えることができました。また,教員をめざす立場としても,総合学習や子どもとの関わりに深く入ることができたと思います。
(村川)教育実習との違いはある?
(A)面と向かってのやりとりでは,アドリブも効くけど,ネットワークを使うと,限られた情報の中での支援をどうするのかについて考えたことに意味があったと思います。
(B)こういった学習ソフトの使用をもっと学校教育に取り入れた方がいいと思いました。もっと活用できたらいいと思ったのですが,自分自身は,技術が好きではなく,情報処理の時間は逃げていました。実習で,教室のPCを先生も子どもも使っていなかったのを見たので,これからもっと使っていきたいと思いました。
(村川)DKMに関わるまで,みんなはあまりメディア環境に触れることがなかったけれど,DKMに関わることで,様々なツールの活用を経験して,それらを一気に学べたみたいだね。情報教育が私の担当した「総合演習」のコースのメインの目的ではなかったわけだが,結果的には,情報教育をいっぱい学べたことになるね。
(B)今までしていたのは,中学校で言語のみ。何でこんなことしなければいけないのかと思いつつも,テストにでるから覚えないといけないと思ってやっていました。コンピュータはそういうイメージのものだと思っていました。だけど,DKMで実際にやってみて,もっと違う使い方のコンピュータ利用について,学校で教えるべきだと思うようになりました。
(F)村川先生,私も少しインタビューさせてもらっていいですか。
(村川)どうぞ,どうぞ。
(F)今回,活動を通してプレゼンを作る機会が結構ありましたが,それについてどうですか。
(A)他の講義を受けているときも,教官が提示するプレゼンのシートを見て,「あれは,文字が多すぎる」とか,「出す順番を変えた方がもっとよくわかるのに」というように,他の人のプレゼンがとても気になるようになりました。
(C)まえは,プレゼンをパソコンで作っているのを見ただけで,すごいと思っていたんですが,今は違います。やっぱり中身が大事なんだということを一番に見るようになりました。
(F)質を感じ始めたんですね。これは,一生もののいい学びをしたことだと思いますよ。あなたたちが教師をする頃には,教室にコンピュータがあって,プロジェクターがあって,それらをうまく使いながら授業するのが当たり前の世界になっているはずです。そんなとき,今回学んだようなことを知っているか知らないかでは,ずいぶん差が出るように思いますよ。
(B)子どもたちがDKMで,同じようにものを作り上げていく姿を見ながら,自分たちもこうやって,だんだんと活動が高まっていくんだなと感じました。子どもたちにアドバイスしながら,自分もそうなんだなと思いました。
(F)私たちも,最初に学部生にであったときの印象と,今の君たちは,ずいぶん違いますね。最初であったときは,大丈夫かなと思うほど,無反応だったものね。
(A)大変でしたけど,こんな風にいい発表ができて,やり遂げたあとの満足感が違いました。

(B)ちょうど,「総合演習」のはじめのグループ分けの説明の時に,このグループのイメージビデオを見たんですけど,そのビデオを見て「こんな風に作れるんだ」という期待感もありました。何より現場と関われるし,とても楽しそうだという印象を持ったので,村川グループを選んだんですがそれがとてもよかったと思っています。
(F)そうすると,あの時点ですでに各グループのプレゼン力が問われていたと言えますね。せっかくいいものを持っていても,それを伝えることができないと,意味がないですよね。第一段階だと私は思っています。ちょうど君たちは,何度も中間発表する中で,振り返り,さらに質を高めるという活動をしてきました。それが今こんな形で,よい評価を受けることにつながったんですね。
(C)そうですね。また,実習における発問以上に精選したものがDKMのアドバイスになっていたように思います。授業の場合,途中で失敗をしても,フォローがききますが,DKMでは,なかなかフォローできないという現実を感じています。また,自分は中学校教育専攻なので,中学生を想定したら,どうなるのだろうかということに興味があります。
(E)ボード上にアドバイスを書き込むとき,場当たり的な言葉がけではなく,みんなから見られているという添削コメントは,非常に緊張するものでした。他の人はどんなに書いているのかなという興味や,「そうか」と気づかされる部分が結構たくさんありましたね。協同的に支援するのは,大切だなと思いました。また,情報教育の面からも,学部生たちがはじめは文字入力もおぼつかない状態から,どんどん伝えたい内容を精選して,すばらしい発表ができるようになっていった様子を見て,うれしくなりました。情報スキルそのものを目的とするのではなく,自然と身に付くようなスタイルで活動できたのがよかったと思います。
(D)私は教師になって15年ですが,自分が教員養成大学の学生の時,こんなのがあればよかったなぁと思います。自分が書いたことが他の先生の読まれるということは,社会とつながっているということです。そういう経験はとても大切だと思います。
(H)通常,教師はアドバイスについて振り返ったり,それ自体を学んだりする機会はほとんどないですね。教員養成の場合でも,教育実習しかないですよね。現場にでてしまえば,それらを学ぶことはできないので,今回の取り組みは意味があったのではないかと思います。
(村川)教育実習は通常,4週間ですね。今回のDKMでは,4カ月あまりにわたる子どもたちとの関わりでした。それだけ長いので,子どもたちと関わりつつ,その関わりをふり返り検討する時間がたくさんとれたともいえます。長期の実習として,意味があったはずですね。長期的な教育実習を実現するための一つの仕掛けとしても価値があるように思います。



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