5.実践報告




5.2 適応指導教室での実践活動


5.2.1 A適応指導教室


(1) 教室の状況

学習指導する適応指導員
午前:児童館(PC環境なし)
パソコンが置いてある午後の教室
  1. 通室児童・生徒数  小学生6名(平成 16年1月30日現在)
  2. 教室での時間割
  3. 9:00〜10:30 教科学習の時間
    10:30〜11:00 自由時間(テレビなど見てもよい)
    11:00〜12:00 ルールのある遊び(運動がメインだがメンバーによりカードゲーム等もする)
    12:00〜13:00 昼食
    13:00〜13:30 自由時間
    13:30〜14:00 掃除
    14:00〜保護者の迎えがあるまで 自由時間
        注)この時間割りに基づき、個々の事情に合わせ時間帯を選ぶことができる。


(2)現状と適応指導員の願い  

  1. 現状
    • 保護者がつきそって登校し、そのまま教室にいることがある。
    • 保護者同士の口コミで通室生徒が集まっている。
    • 母親同士が知り合いというケースがある。
    • 学習時間帯にパソコンが利用できない。
  2. 適応指導員の願い(思い)


(3)内 容

  1. 目標
    1. 保護者と児童の関係の充実に向けてITの利用
      • 子供と保護者が一緒にパソコンを使う機会を作る。
      • 指導者が保護者と密に連絡を取り合うことにより行事や持ち物の周知を徹底させる。
    2. 保護者へのサポートとしてのICTの利用
      • 保護者が気兼ねなく話せる場所をWEB上に提供し、共通の悩みを話し合うことで保護者自身の精神の安定を図る。
    3. 学習場面でのICT利用
      • 教室全体でローマ字学習、キーボード練習に取組み、それぞれに目的を持たせ意欲向上につなげる。
      • 児童の学習において、「WEB で宿題」の学習機能を使い児童に適した問題を作成配布し学習面をサポートする。また、宿題の出題とケアによって児童の学習意欲の向上をめざす。
  2. 経過
08月18日 トレーニング運用開始
10月01日 本稼動開始(「WEBで宿題」等)
10月15日 メンタルフレンドに操作説明会の実施
10月21日 保護者、生徒合同の操作説明会の実施
        「WEB で宿題 」について説明後、実際に会議室に書き込み、指導者とのメールのやりとりまで実習した。
10月31日 メンタルフレンドの設定変更完了。
メンタルフレンドは生徒とメールができるようになった。
12月04日 適応指導員は「WEB で宿題」で小学3年児童向けの問題を作成。配布した。
01月21日 「 WEB で宿題」で小学校 6年児童向けに問題を作成。
  1. 実施計画と進捗状況

 1.の目標に基づき、実施スケジュールを作成した。
また、現場の実態に合わせ、適応指導員と常時、打ち合わせを行い柔軟に対応することとした。

計画項目 目的 成果
ICT利用を通じて 保護者と児童の関係の充実に向けてICTの利用  ○
お知らせの周知 保護者と児童の関係の充実に向けてICTの利用  ×
おとなの会議室利用 保護者へのサポートとしてのICT利用  ×
親子で宿題 学習場面でのICT利用  △
ローマ字入力マスター 学習場面でのICT利用  ×


(4)成果と今後の課題

 実施計画を立てる段階で高い目標を掲げたが、教室の現状や不登校傾向児の状態を考えると、性急な部分もあったと考えられる。さらに、継続した利用が必要である。

  1. ICT利用を通して

    1. 適応指導員と児童及び保護者との交流
        担任通信欄を利用し、メールの交換が行われ、更にはWEB上で、宿題を出すことによる学習の充実に加え、コミュニケーションの充実を図ることができた。
    2. 他適応指導教室の生徒との交流
        「WEB で宿題」 の利用により、他教室へ移った児童(生徒)を、前適応指導員がサポートすることができた。これまでは、他の適応指導教室同士の通信手段は電話に限られており、児童(生徒)にとっては、気軽に近況を報告する手段はなかった。ネットワークで結ばれた気軽な通信手段を利用し、生徒にとってはコミュニケーション手段の充実となり、適応指導員にとってはサポート体制の充実が図られたことになった。
    3. 原級担任との交流
        稀ではある原級担任と保護者間のメールのやり取りもあり、今後の展開に期待できると考える。

  2. お知らせの周知

      適応指導者は、行事や持ち物の周知などICTを利用して徹底させたいと考えた。これまでも、適応指導員は毎月のスケジュールをプリントして保護者に渡しており、行事がある場合も迎えに来た保護者に直接話す場面も多く、必要があれば携帯電話で確認する。という形で、保護者への周知が行われていた。実際には、保護者宅にパソコンがないことや「WEB で宿題 」の習得に時間がかかるという負担を保護者にはかけたくないという適応指導員の配慮から、今回は実施を中止した。

  3. おとなの会議室の利用

[おとなの会議室]を利用して、保護者同士が気兼ねなく悩みや相談をしてもらうことを目的とし、保護者参加の講習会は実施したが、そのニーズを引き出すにはいたらなかった。

<理由>

  1. 宿題を通じ、コミュニケーションが充実

  適応指導員は教室での学習を大切しており、宿題は、児童からの意欲が感じられた時、宿題を出すことがある。
  通室生の中にパソコンを使いこなせる保護者がおり、この親子向けに「WEB で宿題 」から宿題を出すことができた。この児童は、宿題を提出することにより、適応指導員からの励ましの言葉を大変喜び、学習面だけでなく、コミュニケーションを充実することに役立った。また、 宿題は児童にとっては負担になる場合もあり、適応指導員は児童の様子を見ながら出題することとしている。
  また、適応指導員は他の生徒にも問題を作成しており、 児童の様子を見極めながら利用 を勧めたいとの意向を確認している。

  1. ローマ字入力のマスター

  適応指導員は午前中の活動の中に、毎日「学習」の時間を取り入れている。この「学習」の時間にローマ字学習を取り入れることを企画したが、午前中の学習には、パソコンを使える環境がなく、断念せざるを得なかった。当面は、午後の自由時間の中で、興味を持った児童にはゲームなどを取り入れながら、適応指導員の判断でローマ字習得の機会を伺うこととしている。


5.2.2 B適応指導教室


(1)教室の状況

    1. 開室時間は月曜日〜金曜日   9:00 〜 16:00

    2. パソコンのそばで会話する
      生徒と適応指導員
    3. 通室 児童・生徒数    3名


(2)現状と適応指導員の願い

  1. 現状
  1. 適応指導員の願い

−どんなことも、できるかできないかわからない時には自分にもできると思って着手してみよう。途中で諦めることなく。と指導している。
−自分にとっていい事は期待して待っていてもなかなか訪れないものだ。むしろ不都合なことが望んでもいないのにどんどんぶつかってくる。だからこそ不都合な ことやいやな事も、こうなったら自分にプラスになるように作り変えてやろうとチャレンジ゛してみよう。


(3)内 容

  1. 目標
  1. 経過
08月18日 トレーニング運用開始
10月01日 本稼動開始
10月15日 パソコン設置場所を職員室から一階の教室に移動した。
          生徒がよりパソコンを使いやすい環境になった。
10月29日 ・生徒、メンタルフレンド向けに操作説明会(第一回)実施
   生徒 2人、メンタルフレンド参加
・生徒の在籍校であるS中学校において原級担任に操作説明を実施
(二人とも参加いただいた)
説明会 --- 「 WEB で宿題」 について説明後、会議室に書き込み、担任通信欄を使ってメールのやりとりまで実習。
通室生は、適応指導員、原級担任とメールのやりとりができた。

生徒にメールを書く先生方
S中学校にて

10月31日 メンタルフレンドが生徒とメールができるようになった。
メンタルフレンドからメールを受信〜積極的に使用したい〜
11月11日 操作説明会(2回目)実施。メンタルフレンドBさん参加
デジカメで撮影した写真を取り込みメールに添付して送る実習
をした。さっそく適応指導員が写真を添付して送ってみた。
〜・・・見てください〜(適応指導員)
〜とても綺麗な夕焼けですね、久しぶりに・・・〜(生徒)

適応指導員の添付写真

11月06日 遠足に出かけよう、という企画がクラスの会議室の中で出てきた。
12月05日 生徒 f3「 WEB で宿題」 に参加決定。原級担任の先生にも参加決定。
12月09日 生徒f3さんに「WEBで宿題」の操作説明。
生徒f3さんの原級担任にも操作説明を行った。
適応指導員、原級担任と担任通信欄を使ってメールのやりとり、会議室への書き込みが出来た。
12月18日 B適応指導のクリスマス会実施。
生徒とメンタルフレンドを中心に企画が出来上がった。
01月08日 長野市教育委員会より譲り受けた中古パソコン2台を設置
2階第2教室と第4教室に設置した。

  1. 実施計画と進捗状況

 1.の目標に基づき、実施スケジュールを作成した。
しかし、現場の実態に合わせ、適応指導員と常時、打ち合わせを行い柔軟に対応することとした。

計画項目 目  的 成果
ICT利用を通じて PCの扱いに慣れコミュニケーションを充実
学校復帰の支援 教科の先生からサポートにICTを利用 ×
在籍校との連携 原級担任との連携としてのICT利用
ホームページで交流 生徒の情報発信場面でのICT利用 ×

(4)成果と今後の課題

  1. ICT全体を通して
  1. 教科の先生からサポートにICTを利用

 数学の授業だけ学校復帰していた生徒について、教科の先生と連携し学習についてさらにサポートしたいと考えた。原級担任とのやりとりはできたが、教科の先生に参加いただくところまでいたらなかった。教科の先生方にご理解いただくには、時間的制約や環境等の面で、困難であった。
  今後は、環境を整えつつ、 「 WEB で宿題」 の宿題機能も利用し学習支援を検討していくこととしたい。

  1. 在籍校との連携

 原級担任に参加していただき、操作説明会にも参加していただくことが出来た。結果として生徒とメールのやりとりすることも実現した。現在も一人の先生は継続して生徒とメールのやりとりができている。メール交換によりクラスから離れていることのわだかまりもやや和み、文化祭等の行事へも参加することが出来た。

  1. ホームページを通じて交流

 パソコン好きの生徒を中心にホームページ作りをしたらどうだろうかと考えたが、生徒は午前で帰宅することが殆どであったため、活動が出来なかった。クリスマス会や周囲を撮影した写真等を使い今後は学級新聞作りを行っていきたいと考えている。



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