(1)教室の状況
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通室生は、ほとんどが中学生であるが、小学生も通室している。
(2)現状と適応指導員の願い
- 現状
- 通室生(在籍)となっているが、通室がままならない生徒がいる。
- 適応指導員は、児童生徒の在籍校との連携を重視している。
- 通室生の殆どはパソコンが好きである。
- 適応指導員は全てにおいて生徒を見守り強制はしない。見極めができたところで活動の後押しをすることを大切に考えている。
- 適応指導員の願い
- 教室の活動を通じて、自分の生活を見つけだし、自分を取り戻していってほしい。
(テーマ)「まったりと そして Never Mind 」
−自分で決める「どんな時間に・何をするか」
−できることから始める「するも自分 しないも自分 変えるも自分」
−自分らしい活動(マイプラン)とかかわりあう活動(チーム活動)
(教室での指導) a . 集団適応指導 b.基礎的基本的学習指導
c.自己判断・自己決断の醸成- 親子の信頼関係を築いてほしいと願っている。保護者の考えを聞きながら共に子どもたちを支援したい。
(3)内 容
- 目標
- 自宅にいる不登校傾向児への支援として
生徒の自宅で「 WEB で宿題」を使い、通室回数を増やす下地としてコミュニケーションする。- 不登校傾向児の在籍学校との連携にICTを利用する場面で
原級担任、教科担任、進路、部活などの先生に参加してもらい、児童生徒の
在籍学校と連携しながら児童生徒へのサポート、コミュニケーションを行う。- 不登校傾向児の自己発信にICTを利用する場面で
- 児童生徒の興味に応じてパソコンを活用。ホームページ作成や、メール発信など
- 児童生徒の個からの情報発信をサポートする。
- ICTを使い、交流する場面で
- 教室の枠にとらわれず、コミュニケーションをする。毎日会うことはないが「WEBで宿題」を通して多くの人々と交流し生徒の学びの世界を広げる。
- 経過
08月18日 トレーニング運用開始 10月01日 本稼動開始 10月02日 通室がままならない生徒のためにパソコンの貸し出しを検討。その後生徒の意向で保留になったが対応への準備ができた。 10月24日 中学生の生徒が以前通っていた前適応指導教室の適応指導員とメールのやりとりをはじめた。 11月17日 生徒の在籍校の教頭先生の参加決定
教頭先生から生徒へもメールを送っていただいた。
生徒も教頭先生のメールに向き合い、返事を送った。12月05日 他適応指導教室と卓球交流会開催
会議室への書き込みがきっかけとなって、他適応指導教室との交流が始まった。
会議室だけでなく、担任通信欄の適応指導員のメールを利用して交流が深まり卓球交流の話が出来あがった。12月08日 学級新聞作り講習会
通室生徒たちから学級新聞を作りたいという話が持ち上がったため作成講習会を開催し、生徒 5名参加した。
ホームページビルダーを利用して、文字入力、絵や写真の取り込み、ファイル保存を実習した。 12月クリスマスまでには完成する予定。12月24日 学級新聞掲載
教室で希望していたクリスマスの日に掲載ができた。01月16日 「WEBで宿題」へ生徒2名参加決定 (生徒Hさん、生徒Iさん) 01月18日 本適応指導教室に在籍した記念の文集を作りたいという話が生徒から提案された。
Word で作成することにした。
講習会を実施。 Word の操作方法について実習した。
生徒 5名参加。男子生徒3人が初参加。01月22日 生徒からフォーラムに書き込みがあった。
〜ネーミング・・・ハッピーコミュニケーションというのはどうですか?〜 01月26日 生徒Hさんの原級担任が参加決定
原級担任とメールのやり取りが始まる。01月28日 学級新聞作りのための Wordの講習会を実施。
1.の目標に基づき、実施スケジュールを作成した。
また、教室の実態に合わせて、適応指導員と打合せを行い、できることはいつでも実施して行くこととし、「 WEB で宿題」の利用に関して、生徒の様子を見ながら、使ってみたいという意思表示をした時に対応し、ID登録を行ってきた。
計画項目 | 目的 | 成果 |
ICT利用を通じて | 保護者、児童、在籍校等の連携の充実に向けたICTの利用 | ○ |
自宅でコミュニケーション | 通室してこない生徒の関係の充実に向けてICTの利用 | × |
在籍校との連携 | 原級担任、学校窓口の先生との連携手段としてのICT利用 | ○ |
ホームページ (学級新聞)作成 |
生徒の情報発信場面でのICT利用 | ○ |
他教室との交流 | 学習場面でのICT利用 | ○ |
保護者との情報交換(追加) | 子どもの様子を保護者とICTを利用して情報交換 | ○ |
(4)成果と今後の課題
当教室のテーマにあるように、小集団での活動を充実するために、適応指導員は子どもたちが自ら高めてきた意識の醸成の中で、ICTを適宜提案し子どもたちを支援するツールとして活用していただいた。
ICTが1つのツールとして、適応指導教室の小集団において、他の生徒に興味を示し、仲間意識を持つことができ、在籍校のクラスという大きな集団へ復帰の足がかりを作ることになることが期待される。
また、日常的に不登校傾向児と対応している適応指導員の的確なICT利用の提案が子どもたちを後押しすることになったと考えられ、適応指導教室における適応指導員の指導力が、ICT活用の効果に大きく影響すると考える。
通室して来ない生徒のために、どこからでもアクセスできる「 WEBで宿題」は利用価値の高いツールだろうと思われた。適応指導員や原級担任から教室の様子を知らせたり、コミュニケーションをとることができる。該当の生徒に適応指導員から話をしたところ、一度は「使ってみたい」という返事をもらい、保護者にも了解を得たが生徒からの「どうしても気乗りしない」との意思表示があったため適応指導員の判断で保留することにした。この件に関しては、準備した段階に留まったが、生徒の使ってみたいという意思表示があったらすぐに対応できる状態となっている。
在籍校、特に原級担任との連携を望まれるところであるが、本適応指導教室の場合は、
適応指導員の計らいで学校窓口となる教頭に参加いただけることになった。教頭自身からメールを生徒に送ってもらったこともあり、生徒は恐縮しながら返事を書いていた。原級担任以外に在籍校との連携ができた貴重な事例となっている。
原級担任の参加についても、生徒が原級担任とやりとりをしたいという意思表示があった時に参加をいただいた。生徒個々に原級担任への思いも違うことから、生徒の気持ちに配慮しながら今後次第に利用していきたいと考える。
原級担任とのコミュニケーションを考える場合、原級担任が抱える環境にも配慮し、実施していく必要がある。
発足当初、目標として上げた「ホームページ作成」が「WEBで宿題」上で掲載される学級新聞作りとなって実現できた。作成にあたっては、主に作成した生徒、掲載内容について情報集め(同室生へのインタビュー)をした生徒など、それぞれが自然と役割分担ができ、また、掲載内容は通室生同士の紹介であり、自分を客観的に見つめたり、思いがけない部分で自分を他人に評価されたりといった場面がみられ自分や他者との関係・存在について考えるよい機会となった。
会議室への「卓球交流の呼びかけ」の書き込みから発展して他教室との卓球交流が実現した。
会議室の利用からメールを使うことに発展した。通室生は適応指導員のメールアドレスを使い、具体的な実施計画ができ上がった。この活動は、不登校傾向児の活動を広げるきっかけを作ることにつながった。
適応指導教室という学習の場であり、適応指導員のメールアドレスを利用したメールのやりとりは、不便を感じた部分もあったが、子どもたちの中にも教室間の公式の会話と受け止められていたと考える。
しかし、適応指導教室において、生徒同士のメールアドレスの付与についても、どの場面でどのような位置づけで提供して行くか今後の検討課題である。
保護者とのメール交換が、12月から始まり月2回程度、家での子どもの様子を知らせてくるようになり、適応指導員は本適応指導教室での様子を知らせるなど、子どもの様子について情報交換が始まった。
適応指導員及び保護者にとって、適応指導教室や家庭での子どもの活動情報を共有できるとともに、適応指導員にとってもその指導の方向についての確認や修正にも役立つこととなっている。
毎日通室し、適応指導員と直接話をすることもできるが、時折メールを送ってくる生徒がいる。 1月くらいから、週に1回くらい家でメールをしてから適応指導教室に来るという行動が、今まで続いている。
内容は、自分の気持ちを書いてきている。最近では「こんなことができるようになった。」という前向きの気持ちを伺わせる内容のものになってきた。直接の会話と違ってメールは静かに考える場が持てるのかもしれない。以前は抽象的な夢を語るような内容だったが、次第にメールの内容が具体的になってきた。「外国で暮らしたい」「映画の○○のような場所が好きだ」といった抽象的な夢のような内容が、「いやなことがあったが、こうやって乗り越えた。」「高校には浪人せずに行きたい。」というふうに自分自身の問題を現実の問題として捉えるようになってきた。どうやって乗り越えたか書くということは、何をすべきか自分の課題が見えてきたことでもある。つまり自分のすべきことがわかってきていると考えられる。メールは、従来のコミュニケーションとしての直接対話のように質問を受けて答えるのではない。自分から書く、語ることである。書くことで自己表出が出来る。そして自己を確認し次のステップに自分を押し出して行くことでもある。
適応指導員が生徒とメールのやりとりをする上で心がけていることは、「共感」の気持ちを持って生徒に応えることである。
ICTは、そうした適応指導員と通室生の間を緊密にし、自分を安心して吐露できる場として、信頼できる適応指導員とのメール交換の継続につながっている。
(2)教室の状況
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(2)現状と適応指導員の願い
- 現状
- 教室での過ごし方は様々である。(勉強する子、漫画を読む子、卓球をする子など)
- 男子生徒が多い。
- 卓球スペースは狭く、動きが制限されている。
- 殆どの生徒が夕方まで在室し、教室は居心地のよい場所となっている。
- 通室生は殆どがパソコンが好きである。
- 適応指導員の願い
- 教室で安心して過ごせるよう心がけながら、いつも生徒の傍にいて話を聞くことを大切にしている。
- 思春期の入り口で迷いが多い中、適応指導教室の一員として過ごすことで、友達を思いやる気持ちや、自己を大切に思う気持ちを育てたいと願っている。
(3)内 容
- 目標
- 教室としての取組みにICTを使う場面で
教室全体として誰もが参加できるイベントを企画し、同じ教室に集まる生徒同士がお互いを認め合う機会にする。- 進路指導にICTを利用する場面で
・原級担任をはじめ、生徒の在籍校と連携をして進路の情報を伝え、生徒の希望があれば相談に乗ることができるようにする。- 学習支援にICTを使う場面で
勉強したい子には勉強できる環境を与え、そうでない子にもできる範囲内で学習する時間を持たせる。- 生徒の自己発信にICTを利用する場面で
生徒の興味に応じてパソコンを活用。ホームページ作成や、メール発信など生徒の個からの情報発信をサポートトする。
- 経過
08月18日 トレーニング運用開始 10月01日 本稼動開始 10月29日 原級担任の参加について確認がとれない。生徒の在籍校において事務処理が止まっている状況であることがわかった。
適応指導員から原級担任の参加についてもう一度確認してもらうことになった。11月14日 原級担任2名参加決定
K中学2名の先生に参加していただいた。11月17日 [こどもの会議室]にD適応指導教室の生徒S3生が初書き込み。
卓球交流会をしようと企画され、教室の枠を取り払った生徒同士のコミュニケーションのきっかけとなった。11月末 C適応指導教室の生徒と交流が始まる。
C適応指導教室とD適応指導教室の生徒は、互いに適応指導員のIDを使ってメールを交換した。12月05日 C適応指導教室で卓球交流会を開催
お昼は持参し、一緒の教室で食べ、午後は卓球に汗を流した。
メールを交換した相手と実際に会い話をすることで交流が深まった。01月13日 生徒S2生から宿題を出してほしいというメールが来た。
適応指導員はさっそく国語の問題を作成、生徒S2生に送った。01月14日 適応指導員 数学問題作成配布 宿題名「挑戦してみよう!」 01月22日 適応指導員 数学1を配布 宿題名「挑戦してみよう!」 01月26日 適応指導員 国語(ことわざ)作成配布 「解いてみよう(国語)」 01月30日 適応指導員 国語(ことわざ2)作成配布宿題名「解いてみよう2」
- 実施計画と進捗状況
1.の目標に基づき、実施スケジュールを作成した。
計画項目 | 目的 | 成果 |
ICT利用を通じて | 他教室の生徒との交流 | ○ |
できることからはじめよう | イベント企画への呼びかけICTの利用 | ○ |
進路における原級担任との連携 | 進路指導としてのICT利用 | △ |
学習支援 | e −ラーニングの 利用 | ○ |
得意分野 | 生徒の情報発信の場面でのICT利用 | × |
(4)成果と今後の課題
- ICT全体を通して
- 原級クラスとの交流
12月に入ってから、長野市が提供している担任用メールアドレスを使い、原級の生徒から通室生宛(適応指導員用アドレス)にメールが入り、2名の生徒が一部学校復帰することができた。
クラスを抜けてしまったという後ろめたさはあるが、一方クラスに戻りたいという感情がある。それを後押しすることになったと考える。その他の生徒からも、「クラス(原級)に遊びに行ってみようかな」との声が教室内で聞けるようになった。
- 交流の広がり
卓球交流における他教室との合同企画や「こどもの会議室」での自由なコミュニケーションなど、不登校傾向児にとっては、これまでは教室内に閉じがちであった活動や人とのかかわりがICTの活用により広がってきた。
また、隣接する学校内にある不登校児向けの教室「ふれあい教室」の先生(養護教諭)の参加がこの 2月決定した。少しずつ連携の輪が広がりつつある。- できることからはじめよう(イベント企画)
生徒たちには、適応指導員による講習を実施した。講習ではインターネットの利用に際してのマナーや「WEBで宿題」システムなど資料を、サポート担当が用意した。
イベントの企画に際して、 12月末の「メンタルフレンドを送る会」を他の適応指導へ教室ライブ中継してはどうかとの企画もあったが、通室生たちの情報発信意欲が醸成作されていなかったので、ライブ中継については中止した。しかし、C適応指導教室との卓球交流などに「WEBで宿題」会議室、担任通信欄を使った情報交換により、イベントが実施できた。
- 進路における原級担任との連携
在籍校との連絡がスムーズに行かない面があり対応が遅れたが、生徒とコミュニケーションができるケースも出てきた。
進路に関しても在籍校との連携は大切である。今回は、対応の遅れやまた、新たな入試制度の導入などの多忙から、進路担当や原級担任に十分なご協力をいただくことができなかったが、今後は少しずつ、通室生の支援に役立てていけるものと考えている。
- 学習支援
1月に入り生徒の一人が「宿題を出してほしい」というメールを適応指導員に送ってきたことがきっかけとなり、適応指導員は「WEBで宿題」の宿題機能を使い生徒に宿題を作成し配信した。一人の生徒からの要請であったが通室生全員に配信した。教室のパソコンに数人の生徒が集まり宿題について話をする光景も見られるようになった。
宿題を提出するにあたり、適応指導員は、当該生徒が不登校の期間が長いことを考慮し、生徒の希望の国語や数学Iを基に、生徒が簡単だと思われる内容を選んだ。また、高校入試を控えていたため、受験校の過去の入試問題を合わせて提出した。適応指導員は、子どもの負担感や意欲に配慮し、宿題を提出することで学習への意欲を引き出そうした。
また、本事例から、適応指導教室における e -ラーニングの利
用方法は、不登校傾向児の状態を把握している適応指導員の
指導のもと、励まし等のケアを併用することで、その活用が
推進された。
パソコンの周りに集まる生徒
と適応指導員
- 得意分野
ホームページ作成に興味がある生徒や、楽器演奏が上手な生徒などが在室するので、情報発信につながるようサポートしたいと考えた。今回は生徒の意識が高まらなかったために実施できなかったが、卓球交流をした他適応指導教室が学級新聞を発行したことから、徐々に本教室でも学級新聞を作りたいという生徒の意欲が高まりつつある。