7.考察




 不登校傾向児の資質や傾向について一概に論じることはできないと考える。また、今回の研究においてそれを分類する数の不登校傾向児を扱うことも困難であった。
 しかし、研究の過程で聞き取った適応指導員からの意見を総合的に勘案すると、小学生の場合は、保護者との関係の修復が大きな要素といえた。いろいろなケースが想定されるが、これまでの家庭環境の中で十分な愛情を受けることができず、幼児帰りを起こしているケースなども見られる。
 そして、中学生になると、さらにいろいろな要素が加わり、現象として対人恐怖症的な態度や多動的な行動など、その原因や不登校を起こしたきっかけ及び不登校の時期や期間などにより問題も複雑となり個々の対応が困難であるとともに、原因等を見極めるには相当の時間と労力を要する。
 むしろ、本研究においては、不登校傾向児の原因等を深く追求するのではなく、「不登校児が適応指導教室に行ってみよう」と考えたその前向きな姿勢を重要に捉え、ICTがどのように関わり、後押しできるかについて力点を置いて研究を進めた。

7.1 不登校傾向児の利用において

 不登校傾向児の多くは不登校を経験している。しかし、適応指導教室へ通室を決めるにあたり、本人自身が適応指導教室に来ることを決断したかもしくは保護者や在籍校の勧めで通室することになったか、いずれにしても不登校児が自分に対して前向きな姿勢を持とうと努力している姿が見られる。その好機を逃さず捉えながら、心を開いていない状況に十分配慮し焦らず対応することが重要である。
 適応指導教室においては、上記の条件を踏まえた上で、不登校傾向児の間合いに合わせたICTの活用は、効果的であったと考える。
 その効果的手段について、次に述べる。


(1)子ども同士の交流の手段

 不登校傾向児は、当初は自己否定をしたり、他人を受け入れないという場合も多い。また、その心の傷の深さは個々の不登校傾向児により異なるが、適応指導教室においては、その状況に関係なく、子ども同士も互いに関わりを持たなければいけない環境にある。その中で、適応指導員は、不登校傾向児が、適応指導教室に関係する人々すなわち、通室生同士やメンタルフレンドなど多くの人々や物事と関わりをもって成長してほしいと願っている。
 また、相手を受け入れようとする姿勢が多少出てくる頃には、子ども同士の自助活動は大きな力となる。
 卓球交流の事例をはじめとし、ICTによるコミュニケーションツールの活用で、他教室との交流等子どもたちの間にコミュニケーションの輪が広がり、これまでは個々の適応指導教室のみに閉じていた子ども同士の人間関係を大きく広げることに有効であった。
 このことにより、不登校傾向児自身の視野が広まり、自己肯定ができるようになり自己の発信意欲につながったケースや学校への一部復帰につながったケースが現れた。
  また、事例やアンケートなどから、在籍校との児童生徒との交流も加わるとさらに有効な活動ができると考える。( 5.2.4D適応指導教室を参照)


(2)保護者との関わりの手段

 小学生の場合は、保護者が送迎を受け持つ。不登校傾向児の心の傷の深さや家庭環境等により適応指導教室にいる間中、母親と一緒にいる場合や送迎時のみ適応指導教室に保護者がくる場合と様々である。
  適応指導員の保護者に対する指導として、不登校傾向児が新しいところに踏み出すために3日間はがんばってつれてきてほしいとお願いしている。これまで多くの子どもたちを扱った経験上、また不登校傾向児が保護者や適応指導員の対応を試している場合もあり、様子を見る期間と考えている。
  通室当初の子どもの状況を考えると、ICTを利用した活動は時期尚早である。
  不登校傾向児が一定の安定を取り戻した時点で、適応指導員の判断によりICTを活用することが望ましい。
  小学生の場合は、保護者がICTを利用できることも大きな要因となる。
  A適応指導室での事例でみられるように、不登校傾向児が母親とともにパソコンを使った活動を家でもできたことが、学校復帰への大きな原動力となった。
  また、保護者が「WEBで宿題」を通して、定期的に家庭での生徒の様子を伝えてくるようになり、適応指導員は家庭での状況を知り、適応指導員もその指導の自信につながり、保護者も適応指導教室での子どもの様子や教室の営みを適応指導員から聞かされることにより、家庭での生徒とのコミュニケーションにもつながるようになってきた。


(3) 適応指導員の関わりの手段

 適応指導教室での不登校傾向児との関わりにおいて、適応指導員の役割は重要である。不登校傾向児は、適応指導員が自分を受け止めてくれる存在であることを期待している。しかしながら、不登校傾向児の態度や表に現れてくる表現は必ずしも素直とは限らない。自分を受け入れてくれるかを試す態度をとることもある。
  ICT活用の場面において、不登校傾向児が適応指導員にある程度、心を開いた時点が基本となる。この基本的な部分がない場合には、適応指導教室におけるICTは有効に活用できない。
 不登校傾向児と適応指導員との間に信頼感が芽生えた時点で、ICTは有効に活用できる。また、信頼関係が生まれてくるころになると、不登校傾向児は適応指導員への自分の気持ちを素直に吐露するようになってくる。
 直接、話ができる環境にありながら、あえてメールを利用して話しかけてくる場合もあった。不登校傾向児にとって、適応指導員と面談して相対した形で質問に答えるのではなく、メールに書くことで、自らの訴えたいことを、自らの意志で書き、語ることで自己表出ができていることに着目したい。


(4)メンタルフレンドの関わりの手段

 メンタルフレンドは、不登校傾向児と年齢も近く心を開きやすい土壌をそのキャラクターに持っている。
  また、適応指導員との連携により、適応指導教室内での明るいフランクな雰囲気作りをするなど、教室運営にも大きく寄与することができる。適応指導員との積極的な連携を作ることで、不登校傾向児のサポートに対して大いに貢献することができる。
 ICTの活用は、不登校傾向児のサポートや適応指導員との密な情報交換を可能にし、有効的に活用できる。
 しかしながら、今回は活用事例がそれほど多くなかった。それは、家にパソコンがないメンタルフレンドが多かったこと、連絡の手段は携帯メールや電話が主流であったためと考える。
 今後は、通信手段としての携帯メールの活用についても、その好悪を検討し利用の方向を考えていく必要がある。


(5)自主的な情報発信の手段

 不登校傾向児が、子ども同士の絆や教室への帰属意識が出てきた時点で、自己発信の有効な手段としてICTが活用された事例がある。( 5.2.3C適応指導教室の事例を参照)
 卓球交流会を一つの契機として、同室内の他の生徒を意識するようになり、ホームページを作って発信したいと発案された。このことをきっかけに、WEB上に学級新聞を掲載することができた。
 学級新聞の発信は、単に情報発信だけが重要なのではなく、その作成の過程において、ICTの講習会や新聞作りの企画や実行において教室内での共同作業を経験し、学級新聞が自分たち自身を吐露する場となりまた、自分を自覚し、他人を認められる、不登校傾向児自身の活動につながっていった。このことは、自らを表現したがらない不登校傾向児にとって大きなチャレンジだったと考えられる。


(6) ICT技術へ有効適用の手段

 学習に立ち後れていると感じている不登校傾向児にとって、新たな活動へのチャレンジは、難しい。文集作りをきっかけに、教室内の適応指導員や友達、そしてサポート部隊の支えで、パソコンの習得に意欲を示すようになってきた。パソコンの習得への意欲が自己への自信の第一歩となったと考えられる。(C適応指導教室の事例を参照)


(7)自己学習、自主学習「eラーニング」運用の手段

 本研究は、適応指導教室におけるeラーニングの展開において、初歩段階であったと考える。さらに実践例を重ねることで、効果的な活用法を見いだせるのではないかと思う。
 今回の事例では、不登校傾向児が自ら意志を持って学習に望み、その意欲を沈滞させないように、適応指導員が配慮する中で、「WEBで宿題」で宿題が出題された。この研究を通じて、家で行うeラーニングの活用の有効性が見えてきた。
 小学生の事例では、家での学習と適応指導教室での学習への取り組みにより、学習意欲を引き出すことができた。しかし、家での母親との関係作りや家での学習習慣作りに主眼が置かれており、本事例においては、eラーニングが学習意欲を生み出したとは断言できない。しかし、その一助は担ったものと思う。
 また、中学生の事例においても不登校傾向児は自らの意志を持って学習に望み、その意欲を沈滞させることなく次の学習への意欲に結びつくように、適応指導員の配慮が行われた。中学生にとって、初歩的な導入としては効果的であったと考える。
 今後はさらにコンテンツの量を増やすことで、eラーニングの可能性をさらに高めることが可能ではないかと考えられる。

7.2 適応指導教室での利用において

 本研究の主体は、適応指導教室を中心とした環境において行われた。
  適応指導教室の役割は、

    1. 集団適応指導
    2. 学習指導
    3. 教育相談指導 等
      (長野市中間教室の設置目的を参照)

 適応指導教室においては、不登校傾向児に対応する場合、大きく上記の3つを指導目的としている。適応指導教室は、学校復帰に向けて小集団ではあるが、集団での活動を学ぶ場である。心を閉じたままではいけないと考え、適応指導教室に通室してきた不登校傾向児に対して、適応指導員が核となり、共に通う子どもたち同士の中に共感を育み、自分を認められる活動や他人を受け入れる活動へと広げて行く場である。そのためにこれまで、地域探索や運動そして教科学習と適応指導教室ではいろいろな活動が営まれていた。
  適応指導教室においては、ICTは、地域探索や運動といった学習と同様に1つのツールであった。しかし、パソコンを置き、適応指導員の助言の中で、その活用を不登校傾向児たちの心の回復と歩調を合わせながら、適切な場面で活用されたことで、それぞれの生徒に微妙な変化となってよい影響を与え合うこととなった。
  また、ICTの導入により、適応指導教室間の交流が生まれ、不登校傾向児の活動や考え方が広がり、適応指導教室の外との関係作りを模索する生徒も出てくるようになった。
  ICTというツールが、単に個対個の活動に留まらず、集団としての活動を支援し、その結果として個々の不登校傾向児に好影響を与えることになったと考えられる。
  本研究では、長野市という地域に閉じた研究であり、不登校傾向児の心の状態を考えたとき、どこまでその広がりを持たせることが可能かは本研究の中では、読みとることはできないが、ASP機能を利用していることから、その広がりについても期待ができる。
  また、不登校児のように、家での一人の生活や家族だけとの会話などに留まっている姿ではなく、適応指導教室が同じように心に傷を抱えるもの同士が心を癒す安心できる場としてまた、学習の場として他人との関わりを回復する「生きる力」を育て、且つ教科等の学習を支援する場としてICTが有効に利用できたと考える。
  さらに、適応指導教室を取り巻く関係者が、ICTの利用により関係を密にすることで、側面からのサポートが期待される。

<参考>長野市中間教室(適応指導教室)設置目的

 不登校児童生徒を対象に、長野市教育委員会が行う集団適応指導、学習指導、教育相談等の指導援助に必要な中間教室(適応指導教室)を設置する。


7.3 適応指導員中心の利用において


(1)適応指導員の役割

 本研究で取り上げた適応指導教室において、不登校傾向児ともっとも密接に関わっているのは、適応指導員の存在である。適応指導員は、常に自室で抱える子どもたちと関わり、直接対話によって指導を行っている。不登校傾向児の日々の変化からその成長過程をつぶさに見てきている。すなわち、不登校傾向児のその状態や変化に対応した指導を行うことができる。
 不登校傾向児の指導においてICTの機能性ゆえに有効なのではなく、多くの場合適応指導員の導きによりICTの有効性が引き出されてくると考えられる。
 本研究では、不登校傾向児がICTを利用する場合も、原級担任やメンタルフレンドとのコミュニケーションをとる場合も、適応指導員の指導の下に行われることになった。
 適応指導教室においては、不登校傾向児に対して、単にICTを自由に利用させるということではなく、学習の一端として、1つには「生きる力」の育成、すなわちコミュニケーション能力の育成、もう1つには、教科における基礎学力の定着をめざしたeラーニングが適応指導員の指導の下で実施されることで、効果的に活用された。
 これまでの対話型の直接的な対話によるコミュニケーションの重要性は変わることはないが、ICTによる補完的なコミュニケーションツールの有効性が実証できた。
 また、eラーニングにおいてはさらに研究が必要であるが、適応指導員の指導と在籍校との連携によりさらに効果的な学習の機会を不登校傾向児に提供することが可能であると考える。


(2)多様なコミュニケーションパスの存在

 不登校傾向児と適応指導員を中心に、適応指導教室には多くの関係者が関わっていることがわかってきた。
 図7.3に見るように、複雑で多様なコミュニケーションパスが存在し、且つその関わり方の深さも異なっている。
 強いて言えば、図7.3の太線で表示した関係が多くの場合、もっとも重要であり、本研究における事例や要望等からも伺える。
 不登校傾向児と適応指導員との関係においては、直接的なコミュニケーションが多く、強く存在するが、適応指導教室が集団活動であることまた適応指導員との充実したコミュニケーションを望む不登校傾向児にとっては、ICTによるコミュニケーションパスは重要である。
 また、不登校傾向児にとって、どのコミュニケーションパスがもっとも有効であると言うことは一概には断定できない。
 不登校傾向児にとっては、自分を理解し、立ち直りのきっかけが作れるコミュニケーションパスであれば、どの場合でも重要である。
 また、適応指導員にとって、不登校傾向児の対応を支える活動、すなわち原級担任を始めとする在籍校との連携、家庭における不登校傾向児の様子や活動の把握及び保護者との協力と、1人の不登校傾向児を取り巻く人々の協力が必要であり、これまで直接的なコミュニケーションに頼ってきたこの連携の中にICTによる補完ができたことで、サポート体制の強化と不登校傾向児への支援が可能になったと考える。

図7.3 適応指導教室を中心としたコミュニケーション関連図


7.4 システム要件


(1)提供環境

導入システム「WEBで宿題」は下記の環境で提供された。

  1. 商用ASPサービスでの提供
  2. コミュニケーションツールとしての機能
システム名 主な機能 特徴点
担任通信欄 メール 先生を中心としたメールの送受信 生徒同士でのメールの送受信は不可
会議室 掲示板 みんなの会議室、クラスの会議室、大人の会議室、こどもの会議室と利用用途ごとに会議室へ入ることができる。
フォーラム 提示板 目的を持って提示板を開設する。管理者が依頼に基づき開設する。
学級新聞 システム内のホームページ システム内に開かれた発表の場。 HTMLで記入
予定表 予定表 学校の行事・休みなどを登録し、共有する。

 (注)本研究での「WEBで宿題」の利用イメージと利用権限は、参考資料1を参照のこと。

  1. ラーニングとしての機能
システム名 主な機能 特徴点
WEBで宿題/学習状況 宿題作成登録機能 インターネット上で、先生が出した宿題を家庭で学習し、採点結果も即時に分かる。(先生の意向により即時になさないこともできる)
    1. その他

 「WEBで宿題」に補助的に利用したシステムやアプリケーションは次のとおりである。

(生徒用サイト)

(先生用サイト)




(2)システムの要件

  1. 利用状況について 

 「WEBで宿題」を基本の提供システムとして、適応指導員を中心に、利用促進を図った。適応指導教室においては、不登校傾向児への利用普及及び関係者への周知を含め、適応指導員の協力が欠かせなかった。
  本研究期間においては、適応指導員及び不登校傾向児の利用普及は進んだが、家庭や原級担任及びその他関係者への利用研究は緒に着いたばかりという結果であった。

  1. 適応指導員

 本システムの導入については、概ね役に立ったと考えている。児童生徒との利用は、全員の適応指導員が役に立っていると回答しており、原級担任との関係においても利用が期待できると考えている。
 しかし、保護者については、パソコンが家になかったり、携帯電話が普及したりしていることから、1つの利用ツールとしての価値はあるが、データ等から見てそれほど必要感があったとは受け止められなかった。

  1. 不登校傾向児

 アンケートから利用した児童生徒は、80%強(66頁)に上り、今後とも利用したいと答えた児童生徒は、約64%(68頁)おり、利用したくないと答えた生徒は7%(68頁)に留まった。概ね、不登校傾向児にとって期待通りだったと考えられる。
 中には、シンプルでとても使いやすかったとコメントしてくれている生徒もいた。
 不登校傾向児は、他の教室との交流ができたことやメンタルフレンド、原級担任との交流ができたことをよかったこととして上げている。
 また、会議室でいろんな人(生徒同士)と話ができてよかったと感じている。一つの適応指導教室での何となく感じていた閉塞感が緩和でき、適応指導教室間のコミュニケーションを充実することができた。

  1. 原級担任

 アンケートの回答をいただいた原級担任は、ほとんどが利用していなかった。利用した先生からは、通室生とのコミュニケーション手段として有効であると回答をいただいた。(75頁)
 また、利用されなかった先生からも今後は利用してみたいとの意見が 100%だった。(76頁)
 日常の業務の煩雑さに追われ、インターネットの利用さえも、通室生とのコミュニケーションをとることが難しい場合があるという苦しい胸の内を明かされている先生もおられた。
 この分野での利用は、パソコン環境の整備などとも関係することと思う。
 また、原級の児童生徒との交流を望む声もあり、適応指導員からも同様の意見があった。在籍校の児童生徒との交流への期待が大きい。

  1. 保護者

 利用意向は、利用データからは必要性があまりないようであったが、保護者からのアンケートによる利用要望や定期的に適応指導員との情報連絡をする保護者が現れるなど、「WEBで宿題」の手軽さから今後は利用が進む可能性がある。
 ただし、小学生の保護者の利用のように、迅速な対応が望まれる場面においては、携帯電話のようなツールの必要性もあることがわかった。

  1. メンタルフレンド

 メンタルフレンドの活動が、これまで適応指導員から分かりづらい面があった。通室生とメンタルフレンドとのコミュニケーションには、携帯電話やメールを利用することがほとんどであった。
 「WEBで宿題」の導入により、適応指導員とメンタルフレンドとの情報交換がスムーズになり、これまでの携帯電話やメールによる連絡を補完し充実することができた。
 保護者と同様であるが、家にインターネットに接続されたパソコンがない場合の手段の検討も今後の課題と思われる。

  1. システム全体に関する意見要望
  1. ネーミングについて

 「WEBで宿題」は、宿題から受けるイメージに多少の抵抗を感じているように見受けられた。
  また、各サイトの名前、担任通信欄、会議室についても、適応指導教室でのネーミングとしてはふさわしくないと感じている。

  1. ID・パスワードについて

 適応指導員は、入力時の煩わしさなどを感じながらも、セキュリティの確保の面から必要性を感じている。

  1. 担任通信について
  1. 送信相手先の見直しについて 

 送信相手が先生を中心としていることから、生徒自身は不便さを感じている。また、適応指導員も3分の1は見直すべきだと考えている。
 一方、適応指導教室での利用を考えた場合、小集団ではあるが、一つのクラスと捉えることができる。担任通信欄の利用を学級の活動の一環として捉えることで成果があった部分や子どもの活動に、何らかの形で適応指導員が関与することにより、安心した学級運営ができるメリットもある。
 本件については、利用促進を進める中で、さらに検討が必要であると考える。

  1. 参加者一覧の表示について

 利用者の利便性を考えて、送信可能なメンバーの名前が表示される仕組みとなっており、関係者が多くなると自分と関係が把握できず、煩わしさと威圧感を感じる部分がある。しかし、よくないと答えている回答者は4分の1程度に留まっていることから、今後の利用状況により判断していく必要がある。

  1. 会議室

 会議室は、それぞれの用途で作られているが、適応指導員にとってすべての会議室の利用用途を理解したうえで、利用しなければならない部分もあり煩雑さを感じたようであった。
 また、保護者は大人の会議室での話が中心となるが、保護者のみが抱える問題については、保護者と適応指導員といった関係者のみに閉じられた安心して話せるサイトがほしいとの意見があり、今回の提供サイトでは不満足であったと考えられる。
 しかし、不登校傾向児は会議室をうまく利用しており、今後への利用意向にも会議室を第1位に挙げており、不登校傾向児にとって、気軽に他の適応指導教室との交流ができるツールとして位置づいたと考える。

  1. その他のコミュニケーションツール
  1. 学級新聞

 学級新聞の作成にあたっては、不登校傾向児の意向を組みながら、実施する方向が必要であったことから、1教室のみの事例に留まった。
 しかしながら、学級新聞の作成にあたり、適応指導教室における教育的効果は大きかったと考える。
 また、他の適応指導教室でもその利用意向が、適応指導員や児童生徒から挙げられており今後に期待ができると考える。

  1. フォーラムについては、その利用用途が会議室とダブり、使いこなせない部分があった。利用用途が明確に示されると、今後の利用用途も増える可能性がある。
  1. 「WEBで宿題(学習機能)」についての意見要望

 本研究の中で扱えた事例は、少数に留まっている。
 これは、学習を提供する教材が少なく、適応指導教室の通室生すなわち小学校の低学年から中学3年までの、個人個人への対応が本研究の中では困難であったことによる。
 事例は少なかったが、不登校傾向児からの意志表示により実施されたことで学校復帰への一助になり、教室内での学習意欲の醸成にもつながった。
 適応指導教室におけるeラーニングの利用については、適応指導員のほとんどが利用意向を示し、児童生徒からも利用意向が伺えた。
 今後は、年間を通じて、教材の整備を図り実施することで多くの成果が期待できると考える。
 しかしながら、システム上簡易に教材が作成できる便利さはあるが、回答欄の分数表示ができないことや大文字小文字の認識があり、問題作成時のシステム的な課題が存在した。今後、利用が進むにあたり、改善を要することが想定される。



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