2.プロジェクト概要




 

 本プロジェクトでは、上記1.の目標に従い、まず情報倫理授業を中学・小学校で同期型e−ラーニングシステムによって支援する授業実践を行い、次に非同期型e−ラーニングシステムの教材コンテンツの制作に進んだ。
  コンテンツ制作の間は授業実践の間が空くので、この間にe−ラーニングシステムを利用した授業実践のニーズのある教員を募集し、交流学習や施設見学学習等の応用可能性を検討する授業実践を行った。
  どうしてもコンテンツ制作にある程度の時間がかかることから、最後に非同期型e−ラーニングシステムの試用や研修利用の実践を行った。このフェーズについては本年度にいくつかの授業実践を積み重ね、さらに知見を蓄積することが必要と考える。
  上記の授業実践記録については、プロジェクトで解説したWEBサイト( e-lessons.net)で情報を公開し、さらに東京都の公立学校の教育の情報化を推進する教員と社会人情報化ボランティアが集う「とうきょうED研究会」メーリングリストで公開し、内容の検討を重ねてきた。その成果を、とうきょうED研究会が主催する年2回のオフラインの研究会、さらには財団法人 コンピュータ教育開発センターの成果発表会で発表する予定である。


2.1 プロジェクトチーム構成

 本プロジェクトでは、「授業実践チーム」(先進的実践事例を有する専門教育主事と現場教員で構成)「コンテンツ制作チーム」(ライターおよびWEB制作者で構成)「システム管理チーム」(e−ラーニングシステム運用会社が担当)、「プロジェクト管理・コーディネート」(事務局で構成)を設置し、それぞれが協力しつつ並行して実践活動を支える体制とした。
  授業実践チームはプロジェクト前半にこれまでの実績を活かし、情報倫理授業の教材制作や授業設計を行うとともに、同期型e−ラーニングをどう利用するかを検討し、授業実践を行った。プロジェクト後半では、非同期型e−ラーニングシステムに対応した情報教育の教材コンテンツを作成するとともに、授業実践の評価を担当した。
  コンテンツ制作チームはプロジェクト前半に、情報倫理授業・社会人講師授業・交流学習・施設見学授業等それぞれの授業実践で利用する教材コンテンツの制作を担当した。かつ、プロジェクト後半は特に携帯電話マナーのコンテンツ制作を中心に活動し、あわせて実践事例によるWEBサイト構築を行った。
  システム開発チームは授業実践チームおよびコンテンツ制作チームと協同しつつ、同期型・非同期型e−ラーニングシステムの管理と障害対応等を行った。
  プロジェクト管理とコーディネートの担当者は、打ち合わせ等によって各チームのコラボレーションを実現し、進行を管理するとともに、授業実践の支援を行った。


2.2 実施体制

 上記各チームは、次のようなリーダーを実施責任者とし、プロジェクトの進展に伴ってネットワークを広げてゆく体制で実践活動を行った。

    1. 授業実践チーム
    東京都総合技術教育センター 榎本竜二専門教育主事
    あきる野市立増戸中学校 紙澤雅一教諭
    墨田区立墨田中学校 三橋秋彦教諭
     ※ 授業実施校担当教諭、支援者が多数参加
  1. コンテンツ制作チーム
    (株)クレステック ディレクター 古川功一
    (株)クレステック ライター 海老澤 剛
    ライター・編集者 遠藤哲夫
     ※ 他WEB制作者等複数が参加
    1. システム設定・運用チーム
    (株) NTTラーニングシステムズ 高野 千尋
    (株) NTTコミュニケーションズ 赤塚 裕計
     ※ 他SE・ネットワーク管理者複数が参加
    1. プロジェクト管理・コーディネート
    (財)科学技術融合振興財団 事務局長 湯澤太郎
    授業実践・記録支援 網代 剛


2.3 スケジュール


2.3.1 授業実践スケジュール

 授業実践は、次のような日程で合計7件について実施した。

    1. 同期型e−ラーニングシステムによる情報倫理授業(第1回目)
      1. 日時・2003年9月18日 1時限〜3時限
      2. 実施校・あきる野市立増戸中学校(CAI教室)
      3. 講師・都立総合技術教育センター 榎本竜二教諭(水道橋より中継)
      4. 指導者・紙澤雅一教諭
      5. 学習者・第2学年3クラス
      6. 教科・総合的な学習の時間

    2. 同期型e−ラーニングシステムによる情報倫理授業(第2回目)
      1. 日時・2003年10月6日 5〜6時限+放課後
      2. 実施校・墨田区立墨田中学校(コンピュータ教室)
      3. 講師・都立総合技術教育センター 榎本竜二教諭(水道橋より中継)
      4. 指導者・三橋秋彦教諭
      5. 学習者・第3学年2クラス+放送部部員
      6. 教科・総合的な学習の時間

    3. 社会人講師授業での同期型e−ラーニングシステムの利用
      1. 日時・2003年10月2日 5時限
      2. 実施校・あきる野市立増戸中学校(体育館)
      3. 講師・(社会人講師)(株)リクルート 大橋幸子氏
           (ゲスト遠隔講師)パソカレッジ 森 万見子氏
      4. 指導者・紙澤雅一教諭
      5. 学習者・第2学年合同
      6. 教科・総合的な学習の時間

    4. 同期型e−ラーニングシステムによる情報倫理授業(第3回目)
      1. 日時・2003年10月27日 5時限
      2. 実施校・世田谷区立三宿小学校(音楽室)
      3. 講師・都立総合技術教育センター 榎本竜二教諭(水道橋より中継)
      4. 指導者・田中うた子教諭、石田和子教諭
      5. 学習者・第5学年2クラス
      6. 教科・道徳(地域公開授業)

    5. 同期型e−ラーニングシステムによる設備見学授業
      1. 日時・2003年11月13日 5限
      2. 実施校・東京都立田無工業高校(コンピュータ室)
      3. 講師・境浄水場 長谷川氏(境浄水場より中継)
      4. 指導者・渡邊教諭
      5. 学習者・都市工学科第2学年
      6. 教科・工業(設備紹介授業)

    6. 同期型e−ラーニングシステムを利用した交流学習
      1. 日時・2003年11月14日 2限〜4限
      2. 実施校・江東区立数矢小学校および西東京市立田無小学(視聴覚室)
      3. 指導者(責任者)・日下部和彦教諭(数矢小学校)・劉悦子教諭(田無小学校)
      4. 指導者(担任等)・(数矢小学校)秋山教諭・西脇教諭
                    (田無小学校)馬場教諭・遠山教諭・目黒教諭
      5. 学習者・第2学年(数矢小学校)、第1学年(田無小学校)3クラス個別
      6. 教科・総合的な学習の時間(交流学習)

    7. 非同期e−ラーニングシステムを試用した情報倫理学習の模擬授業
      1. 日時・2004年 2月 9日 放課後
      2. 実施校・墨田区立墨田中学校(コンピュータ教室)
      3. 教材・携帯電話のマナー(非同期型e−ラーニング用教材コンテンツ)
      4. 指導者・三橋秋彦教諭
      5. 学習者・放送部部員(課外活動による模擬授業)
      6. 教科・総合的な学習の時間を想定

    8. 非同期e−ラーニングシステムによる情報教育の教員研修(試用)
      1. 日時・2004年 2月 2日〜9日
      2. 実施・サーバ上の非同期型e−ラーニングシステムおよびWBTを公開
      3. 教材・情報倫理〜情報化の光と影〜(非同期型e−ラーニング用教材コンテンツ)
      4. 指導者・榎本竜二専門教育主事
      5. 学習者・小・中・高教員(模擬研修)
      6. 教科・教員研修


2.3.2 コンテンツ制作スケジュール

 また授業実践で用いる教材コンテンツとして、以下の5点を制作・収集した。

  1. 同期型e−ラーニングシステム用体験型情報倫理教材

     9月18日あきる野市立増戸中学校および10月6日墨田区立墨田中学校の第1回〜2回同期型e−ラーニングシステムによる情報倫理授業実践のために制作し、その後、10月27日世田谷区立三宿小学校の情報倫理授業のために、改定を加えた。
      都立総合技術教育センターにおいて、教員研修や高校生向けの校外研修に利用している、 HTMLやJavaScript等を利用した体験型の情報倫理教材を、特に同期型e−ラーニングシステムで講師が操作しながら解説できるよう加工して制作した。

  2. 非同期型e−ラーニングシステム用情報教育教材

     プロジェクト開始当初については、プロジェクト前半で実施した同期型e−ラーニングの授業実践をe−ラーニングシステム上に記録し、これをベースに非同期型e−ラーニングシステム用の教材とすることを想定していた。しかし実際の同期型e−ラーニングシステムの記録機能を検証したところ、非同期型教材に利用するには機能が不足していたため、別途非同期型教材を制作し、公開することとした。
      オリジナル教材として、都立総合技術教育センターにおける教員研修・高校生の校外研修で利用している情報教育全般のテキストを、コンテンツとして利用できる形態に加工し、章ごとに理解度を測る問題集を付加し、非同期のe−ラーニングシステム上で利用できるコンテンツとして構成した。

  3. 非同期型e−ラーニングシステム用携帯電話モラル教材

     情報倫理授業実践、また研究会のメーリングリスト等を通じて、携帯電話に関するモラルやマナーの教材・授業実践について、高いニーズが存在することがわかってきた。非同期型e−ラーニングのコンテンツに加工できるような教材が見受けられなかったため、コンテンツ制作チームによりシナリオを作成し、キャラクター設定等をおこなって、FLASHアニメーションを中心とした教材コンテンツを新たに制作した。
      本教材コンテンツを利用した授業実践は、2月9日に墨田区立墨田中学校での模擬授業として行った。

  4. 社会人講師授業用職場解説コンテンツ

     10月2日あきる野市立増戸中学校で実施された社会人講師授業の中で、外部の職場から社会人ゲストの中継を行い、仕事の内容や楽しさ、職場の様子を解説してもらうための教材コンテンツを、コンテンツ制作チームの取材により作成した。
      高齢者を中心としたパソコン教室が中継元であったため、高齢者がコンピュータで作成した作品等の映像を中心に構成し、働くこと・学ぶことの楽しさを伝えるようなMS−PowerPoint用プレゼン資料を制作し、同期型e−ラーニングシステム上のコンテンツとした。

  5. 設備見学授業用浄水場解説コンテンツ

 11月13日東京都立田無工業高校都市工学科の工業の時間に、境浄水場の施設見学・解説を行う同期型授業用のコンテンツを、コンテンツ制作チームの取材によって制作した。
  東京都の水道がどこから来てどのように家庭に供給されるか、という説明から、緩速ろ過方式という、境浄水場独特のろ過方式とその保守の動画までを、MS−PowerPoint用資料とし、それを同期型e−ラーニングシステム上の教材コンテンツとして構成した。


2.3.3 会議・研究会スケジュール

 プロジェクト推進にあたって、各チーム内・担当者間では随時打ち合わせ等を行ったが、次のようなスケジュールで全体会議・研究会を開催し、チーム間の打ち合わせや授業実践等の評価、方針の策定を行った。

(1)8月度全体会議

(A)日付  2003年8月2日 13:00〜18:00
(B)議題  プロジェクト申請内容の説明と運営方針の策定
プロジェクト推進体制の確認
第1回情報倫理授業実践校(あきる野市立増戸中学校・9月18日)の決定と授業内容の検討

(2)9月度全体会議

(A)日付  2003年9月25日 18:00〜21:00
(B)議題  プロジェクト推進体制の確認
第1回情報倫理授業(あきる野市立増戸中学校・9月18日)の報告と検討・今後の情報倫理授業実施方針の策定
第2回授業実践校(墨田区立墨田中学校・10月6日)の決定と授業内容の検討
社会人講師授業(あきる野市立増戸中学校・10月2日)決定と授業内容の検討
プロジェクトホームページ概要の検討

(3)10月度全体会議

(A)日付  2003年10月16日 15:00〜18:00
(B)議題  第2回情報倫理授業(墨田区立墨田中学校・10月6日)の報告と検討・第1回情報倫理授業と比較した授業評価・アンケート等の分析
第3回情報倫理授業実践校(世田谷区立三宿小学校・10月27日)の決定と授業内容の検討
情報倫理授業用教材を小学校向けに再構成するための検討
社会人講師授業(あきる野市立増戸中学校・10月2日)の報告と授業評価
施設見学授業実践校(東京都立田無工業高校・11月13日)の決定と授業内容の検討
交流学習授業実践校(江東区立数矢小学校・西東京市立田無小学校)の決定と授業内容の検討・通信手段の検討

(4)CEC中間報告会

(A)日付  2003年11月12日 11:00〜15:30
(B)内容  本年度Eスクエアアドバンスプロジェクトの中間報告と委員会による評価

(5)11月度全体会議

(A)日付  2003年11月17日 18:30〜21:00
(B)議題  CEC中間報告会の報告とプロジェクト運営方針の策定
第3回情報倫理授業(世田谷区立三宿小学校・10月27日)の報告と検討・中学校授業と比較した授業評価
施設見学授業実践校(東京都立田無工業高校・11月13日)の報告と授業検討(特に情報倫理授業と比較して)
交流学習授業実践校(江東区立数矢小学校・西東京市立田無小学校)の報告と授業検討(特に情報倫理授業と比較して)・通信手段・利用ソフトウェアに関する改善検討
非同期型e−ラーニングシステム用教材制作の検討(情報教育教材および携帯電話のモラル教材)

(6)12月度全体会議

(A)日付  2003年12月9日 18:00〜21:00
(B)議題  非同期型e−ラーニングシステム用教材制作経過の報告と内容の検討
同期型e−ラーニングシステムの機能評価と代替案の検討
交流学習授業実践校(江戸川区鹿骨小学校・江戸川区立第六葛西小学校)の決定と実施システム・スケジュールの検討

(7)1月度全体会議

(A)日付  2004年1月10日 18:00〜22:00
(B)議題  非同期型e−ラーニングシステム用教材制作の報告と内容の検討
同期型システムによる授業実践評価と得られた知見のまとめ
交流学習授業実践校(江戸川区立鹿骨小学校・第六葛西小学校)の実施システム・スケジュールの検討(2月後半)

(8)2月度全体会議

(A)日付  2004年2月9日 15:00〜20:00
(B)議題  非同期型e−ラーニングシステム模擬授業の検討・実施・同期型システム利用授業との比較による授業評価
プロジェクト発表会(拡大全体会議・2月22日)に関する検討
成果報告書・成果報告発表会(3月5日・6日)に関する検討

(9)プロジェクト発表会(予定)

(A)日付  2004年2月22日 14:00〜17:00
(B)議題  プロジェクト成果についての発表とプロジェクトメンバーを含む学識経験者等による評価・今後の方針の検討
成果報告発表会(3月5日・6日)に関する検討

(10)CEC成果発表会(予定)

(A)日付  2004年3月5日・6日
(B)議題  プロジェクト成果についての発表と評価委員・参加者からの質疑応答
プロジェクト成果についての展示と説明・普及活動


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